このページのまとめ
- 個人でも会社を買うケースが増えている
- 個人が会社を買うことで、スムーズに起業し会社を成長させられる可能性が高い
- 個人が会社を買う際の費用目安は、300万円〜500万円程度
- M&A仲介会社やマッチングサービスなどを利用してM&Aを進めることが大切
- M&Aを成功させるためには、デューデリジェンスや従業員への対応を徹底する
個人でも会社を買うことは可能です。買収先の経営資源を活用することで、ゼロから起業するよりもスムーズに事業を成長させられる可能性があります。しかし、初めてM&Aを行う場合は、わからないことや不安な点も多いでしょう。
本記事では、個人が会社を買う方法や流れ、成功のポイントや注意点などを解説します。M&Aを活用して起業や独立を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
個人が会社を買うことは可能
個人が会社を買うことは可能です。「会社を買う」とは、厳密には会社の経営権を掌握する目的で会社の株式を取得することを指します。
近年、個人で会社を買うケースが多く見られます。その背景は以下のとおりです。
- 事業承継問題の解決策として、M&Aで会社を売却する経営者が増加した
- 個人で会社を買える環境が整備された
1つ目は、経営者の高齢化や後継者不足など、事業承継問題を抱える中小企業が増加していることです。事業承継問題の解決策として、M&Aで会社の売却を検討する経営者が増えており、個人でも購入できる規模の案件が増えています。
中小企業庁が発表している「2022年版中小企業白書」によると、2021年度の国内のM&A件数は過去最多の4,280件でした。中小企業の事業再編は増加しており、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が「事業継続・引き継ぎ支援センター」を設置するなど、行政もM&Aを後押ししています。
2つ目は、小規模なM&Aを専門に扱う仲介業者やマッチングサイトの登場により、個人でも会社を買える環境が整備されたことです。
ひと昔前までは、個人や中小企業が会社を買収できる環境は整備されておらず、売却を検討する会社の情報を入手することすら困難な状態でした。そのため、M&Aは大手企業が実施するもの、というイメージがありました。
しかし、近年では中小企業や小規模事業者、さらには個人でも会社を買える環境が整備されています。小規模な案件も増えていることから、個人のM&Aが進んでいます。
個人でのM&Aが盛ん
近年、話題になっている言葉に「個人M&A」があります。個人M&Aとは、会社ではなく個人が少額で会社を購入する方法です。
個人M&Aが注目され始めたのは、2019年から始まった働き方改革の影響です。本業以外に副業に取り組むサラリーマンが、独立起業する手段としてM&Aを行うようになりました。
自分でゼロから起業するためには豊富な資金が必要であり、事業が軌道に乗るまで時間がかかる可能性も高いです。一方、M&Aで既存会社を買収することで、既存会社の経営資源を利用して起業できます。
個人M&Aが行われやすい会社
個人M&Aの対象となりやすい業種は、以下のとおりです。
- 飲食店
- 小売店
- Webサイト
- 学習塾、音楽教室、スポーツ教室
- 小規模旅館や民泊施設
- 不動産仲介業
- 美容院やエステサロン
- 薬局、歯科、内科などの医療関連施設
- 小規模製造業
- 介護施設
上記の業種は、設備や専門スタッフを確保できれば、異業種や初心者でも比較的容易に参入できるのが特徴です。
また、設備や店舗の規模が小さい場合は、比較的低価格で買収できます。そのため、個人M&Aのハードルが低い業種といえるでしょう。
個人が会社を買う3つの方法
個人が会社を買う方法として、以下の3つがあります。
メリット |
デメリット |
|
金融機関・公的機関に相談する |
|
|
M&A仲介会社に相談する |
専門家がM&Aの一連のプロセスをサポートしてくれる |
手数料が発生する |
M&Aマッチングサイトを利用する |
|
M&A仲介会社に比べるとサポートが手厚くない可能性がある |
以下では、それぞれの特徴やメリット、デメリットについて解説します。
金融機関・公的機関に相談する
1つ目は、金融機関や公的機関に相談する方法です。金融機関であれば銀行や信用金庫、日本政策金融公庫、公的機関であれば商工会や商工会議所、事業承継・引継ぎ支援センターに相談できます。
金融機関や商工会、商工会議所は、地元密着型でM&Aをサポートしており、地元の企業の案件を中心に扱っていることが多いです。同じ地域の企業を買収したい場合に適しています。
一方、比較的規模の大きい案件を取り扱う傾向があるため、個人M&Aの予算で購入できる会社が見つからない可能性もあります。
全国規模で会社を探したい場合は、事業承継・引継ぎ支援センターがおすすめです。全国47都道府県に設置されており、無料で相談できます。
なかでも、事業承継・引継ぎ支援センターが展開する「後継者人材バンク」は、個人M&Aに適しています。後継者人材バンクは、創業を目指す起業家と、後継者不在の企業や個人事業主をマッチングさせる事業です。個人M&Aの対象となる規模の案件が見つかりやすいでしょう。
一方、M&A仲介会社と比較するとサポート範囲が限られており、一連のプロセスを支援してもらえない可能性があります。
M&A仲介会社に相談する
手厚いサポートを受けてM&Aを進めたい場合は、M&A仲介会社の利用を検討しましょう。
M&A仲介会社は、売り手と買い手の間に立ち、交渉から成約、成約後のフォローまでをサポートする会社です。国内外で大きなネットワークを持っており、国内だけでなく海外の案件を扱っている場合もあります。
M&A仲介会社には、弁護士や中小企業診断士、税理士など、それぞれの分野に精通した専門家が在籍しているのが特長です。中立的な立場でアドバイスしてくれ、手続きや交渉など、M&Aを手厚くサポートしてくれるのも魅力です。
一方、高額な手数料が発生する可能性がある点には注意しましょう。着手金や中間金など、成約後に支払う成功報酬以外にも手数料がかかる場合もあります。
M&Aマッチングサイトを利用する
小規模な案件を気軽に見つけたい方には、M&Aマッチングサイトの利用がおすすめです。
M&Aマッチングサイトでは、案件探しから売買交渉、手続き、代金の支払いまでをオンラインで行えます。小規模な案件が多く登録されており、予算や業種、エリアなどで絞って理想的な案件を見つけやすいのが魅力です。
また、M&Aを専門に行っている会社が運営していることが多く、専門家のサポートを受けながらM&Aを進められる場合も多いです。
一方、M&A仲介会社に比べると、サポートが手厚くない可能性があります。初めてのM&Aに不安を抱えている方は、相談・交渉から成約までをトータルで支援してくれるM&A仲介会社にお願いするとよいでしょう。
関連記事:事業買収とは?買い取る手法や目的、メリット・デメリットを解説
個人が会社を買う際の費用相場
個人が会社を買う際の費用相場は、300万円〜500万円程度です。もちろん、案件の規模によって費用が異なるため断言はできません。買収後に必要な運転資金も考慮すると、1,000万円程度用意すれば個人でも問題なく会社を購入できるでしょう。
規模が大きすぎると、個人で経営するのが難しい可能性があります。また、相場とかけ離れた金額で購入すると、投資を回収できず失敗してしまうリスクが高いです。
まずは、300万円〜500万円を目安に案件を探してみましょう。
個人が会社を買う際の主なスキーム
個人が会社を買う際の主なスキームは、以下の2つです。
スキーム | メリット | デメリット |
株式譲渡 | 経営資源を全て引き継げる | 負債も引き継ぐため、リスクが大きくハードルが高い ある程度の買収資金が必要 |
事業譲渡 | 特定の事業のみを買収できる 少ない資金で買収できる | 契約の締結や許認可の取得をし直す必要がある |
ここでは、スキームごとの特徴やメリット、デメリットを解説します。
株式譲渡
株式譲渡は、売り手の株主から保有株式を買い取り、経営権を引き継ぐスキームです。売り手企業の経営権を得る代わりに、買い手に金銭を支払います。
会社の名義や資産、負債、契約関係など、会社を丸ごと引き継ぐと考えるとわかりやすいでしょう。
株式譲渡は、経営資源をそのまま引き継げるため、スムーズにビジネスを始めやすいというメリットがあります。
一方、資産だけでなく負債も引き継ぐため、リスクが大きい点には注意が必要です。また、ある程度の買収資金を用意する必要があります。
事業譲渡
事業譲渡は、売り手の事業の全部または一部を引き継ぐスキームです。
買収する事業を選べるため、挑戦したいビジネスに関する事業のみを引き継げます。株式譲渡に比べると、少ない資金で買収できるのがメリットです。また、必要な資産のみを選んで引き継げるため、負債や簿外債務を抱えるリスクを回避できます。
一方、契約や取引関係、許認可などはそのまま引き継がれません。そのため、従業員や取引先と契約を再締結したり、許認可を取得し直したりする必要がある点には注意しましょう。
個人が会社を買うメリット5つ
個人が会社を買うメリットは、以下の5つです。
- 起業・新規立ち上げの負担が小さい
- 独立できる
- 資産が増える可能性がある
- 不労所得化できる
- 成長したら高く売却できる
それぞれについて解説します。
1.起業・新規立ち上げの負担が小さい
会社を購入することで、少ない負担で起業・新規事業立ち上げを実現できるのがメリットです。
ゼロから起業する場合、多額な資金と労力が必要であり、時間もかかります。一方、既存の会社をM&Aで買収し、設備や従業員を引き継いでビジネスを行うことで、負担を軽減できます。その分の資金を新たな設備投資や人材確保のために使うことも可能です。また、取引先や顧客情報などもすべて引き継げるため、事業をスムーズに軌道に乗せられるでしょう。
さらに、許認可が必要な事業に参入したい場合も、その許認可を取得している会社を買うとスムーズです。
2.独立できる
個人事業主として独立したい場合は、個人事業を買収するという方法もあります。独自の技術力や強固な顧客基盤、優良な取引先を有している事業を買収することで、短期間でビジネスを軌道に乗せられる可能性が高いです。
脱サラして飲食店を始めたい方や、士業事務所の代表として独立したい方などは、個人事業の買収を検討してみてはいかがでしょうか。
3.資産が増える可能性がある
会社を購入することで、資産が増える可能性も期待できます。土地や設備といった有形資産だけでなく、技術やノウハウ、ブランドといった無形資産も増えるため、資産を有効活用して事業を拡大できるでしょう。
すでに会社を経営している場合は、買収した会社と既存事業の間でシナジー効果が働き、効率よくビジネスを加速させられる可能性もあります。
4.不労所得化できる
個人M&Aで会社を買うことで、役員に就任して役員報酬を獲得できることもメリットです。例えば、株式譲渡のスキームで会社の経営権を得た場合、基本的には会社の代表取締役に就任します。役員に就任することで、毎月一定額の役員報酬を獲得できます。
役員として経営を行う以外にも、会社の経営を他の人に任せて、株主の立場からアドバイスすることも可能です。この場合、株主として配当金を受け取るため、経営に直接関与することなく不労所得を得られます。
5.成長したら高く売却できる
M&Aで会社を購入した後、会社を成長させて売却するという方法もあります。企業価値を高められれば、買収時よりも高い価格で売却できるかもしれません。売却益を獲得し、連続起業家としてさらに新たなビジネスに挑戦することも可能です。
このように、個人が会社を購入することで、経営者として成功できるチャンスが広がります。
ただし、必ずしも経営に成功するとは限りません。経営判断を誤り、損失が発生する可能性もあります。失敗するリスクも想定して、撤退する基準を決めておくことが大切です。
個人が会社を買うデメリット4つ
一方、個人が会社を買うことには以下のようなデメリットがあります。
- 簿外債務を引き継ぐ可能性がある
- 人材が流出する可能性がある
- 顧客や取引先から反発される可能性がある
- 事業の自由度が制限される
デメリットや対処方法を理解したうえで、会社を購入しましょう。
1.簿外債務を引き継ぐ可能性がある
買収先を慎重にチェックせずに会社を購入することで、簿外債務を引き継いでしまうリスクがあります。
会社を買う場合、会社の資産や負債をすべて引き継ぐのが原則です。資産状況は帳簿に記載されるのが基本ですが、帳簿に掲載されていない債務が存在することもあります。簿外債務とは、帳簿に記載されなかったために、貸借対照表に計上されていない隠れ債務のことです。具体的には、未計上の買掛金や未払金、退職一時金などをいいます。
会社を購入する際は簿外債務も引き継がれ、支払い責任は経営を引き継いだ者、つまり会社を買った人に移ります。
簿外債務によって想定外の出費が発生し、会社購入のために多額の借金を抱えるリスクもあるでしょう。
また、税務署とのトラブルや訴訟リスクなど、顕在化していない問題を抱えている場合もあります。表面化していないリスクを隠して会社を売却する悪質なケースもあるため、デューデリジェンスをしっかりと行うことが大切です。
2.人材が流出する可能性がある
引き継ぎがうまくいかず、人材が流出する可能性もあります。従業員が新しいオーナーに対して不信感や不安を抱き、M&Aを機に辞めてしまうかもしれません。
人材が流出すると、従業員が持つ技術力やスキル、ノウハウも失ってしまいます。その結果、買収時に期待していた成果を発揮できず、M&Aに失敗してしまうリスクが高いです。
買収先の従業員に対しては、M&Aの背景やM&A後の方針などについて丁寧に説明し、しっかりと引き継ぎを行うことが欠かせません。
3.顧客や取引先から反発される可能性がある
従業員だけでなく、顧客や取引先からも反発される可能性もあります。
M&A後は、既存の取引関係を継続するために、取引契約書を結び直すケースが多いです。
説明や引き継ぎが不十分な場合、顧客や取引先から反発を招くことも考えられます。会社が新体制になっても、これまで通りの関係を維持すること、今まで以上に顧客・取引先との関係性を深め、努力することなどを、顧客や取引先に対して丁寧に伝えましょう。。
盤石な経営基盤を実現し、今後会社を成長し続けるためには、既存顧客や取引先との関係性を深めることが大切です。
4.事業の自由度が制限される
会社を購入して起業する場合、ゼロから起業する場合と比べて事業の自由度が制限されます。買収した会社の事業を軸に、ビジネスを展開する必要があるためです。
経営資源を利用できることはメリットでもある一方、事業を自由に進めるうえでの障壁となる可能性もあります。会社を買う前によく調査し、自身のやりたいビジネスが実現できるかをチェックしましょう。
個人が会社を買う流れ
個人が会社を買う際の主な流れは以下のとおりです。
- 予算・業種などを設定する
- 購入できる会社を探す
- 売買交渉を申し入れる
- 秘密保持契約を締結する
- 経営者・代表者と交渉する
- 基本合意書を締結する
- デューデリジェンスを行う
- 最終契約書の締結・支払いを行う
- PMI(統合手続き)を行う
それぞれの流れについて解説します。
1.予算・業種などを設定する
まずは、買収に必要な予算や買収企業の業種などを決めましょう。
予算が多いほど、買収できる企業の規模が大きくなり、規模のメリットを活かして事業を成長させやすくなります。
個人M&Aを行う場合は、買収戦略を策定した後に予算や業種を決めることが大切です。
買収戦略が曖昧なままM&Aを進めると、適切な会社を選べず期待していた成果を上げられない可能性があります。事業が立ち行かなくなることも考えられます。また、予算度外視で会社を選ぶと、設立後の運転資金が不足してしまい、倒産してしまうかもしれません。
もちろん、安ければ安いほどよいというわけではありません。予算面だけでなく、将来性も考慮して買収する業種を検討しましょう。
2.購入できる会社を探す
予算や業種などを設定した後は、実際に購入できる会社を探します。個人で候補先を見つけることは難しいため、M&A仲介会社やM&Aマッチングサイトを活用しましょう。
M&A仲介会社にサポートを依頼する場合は、複数の候補先がリスト化されたロングリストや、さらに候補先を絞ったショートリストを作成してもらい、希望に合う会社をピックアップします。
M&Aマッチングサイトであれば、希望する条件を選択して検索し、候補先を選びましょう。この時、会社の財務面と非財務面を総合的に検討して、将来的に成長が期待できそうな会社を選ぶことが大切です。
3.売買交渉を申し入れる
複数の候補先の中から買収したい会社が見つかったら、売買交渉の申入れを行います。
M&A仲介会社を利用する場合は、仲介会社が間に入って交渉をサポートしてくれます。最終的な買収先が決まるまで、1ヶ月程度かかることも多いため、時間に余裕を持って取り組むことが大切です。条件を厳しくしている場合はなかなか買収先が見つからないこともあるため、適宜条件を調整する必要があります。
M&Aマッチングサイトを利用する場合は、マッチングサイト上でコミュニケーションをとりながら、売買交渉を進めましょう。
4.秘密保持契約(NDA)を締結する
買収先が決まった後は、双方で秘密保持契約(NDA)を締結します。
秘密保持契約とは、M&Aを公開できる段階まで、口外しないことを約束する契約です。M&Aを計画していることや、買収先の経営状況などが第三者に知られると、会社経営に悪影響を及ぼします。そのため、秘密情報の取り扱いについてルールを定めておく必要があります。
秘密保持契約を締結していないと、情報が漏洩して損害を被ることになりかねません。例えば、自社のM&Aのうわさを聞いた買収先の従業員から話が広がり、取引先や顧客に不安を与えてしまう可能性があります。
万が一のリスクに備え、情報漏洩により損害を受けた場合にM&Aの解除ができるような契約を締結しておきましょう。
5.経営者・代表者と交渉する
秘密保持契約を締結したら、本格的な交渉フェーズに入ります。事業の詳細や財務情報、従業員データなどを提供してもらい、気になる部分は質問して解決しましょう。
また、M&Aを行うのに信頼できる相手かを見極めることも大切です。代表の人間性やビジネスへの考え方など、数字では見えない部分も確認しましょう。
交渉で十分話し合いが行われた後、次のステップに進むかを検討します。双方の合意を得た場合は次へ進み、どちらかが難色を示した場合、交渉は打ち切りとなります。
6.基本合意書を締結する
基本的な売買の合意が形成できた場合、基本合意書を締結しましょう
基本合意書とは、M&Aを進める意向や想定している売買条件などをまとめた書類です。、独占交渉権や独占交渉期間についても、基本合意書に記載します。
基本合意書に法的拘束力はなく、基本合意書を締結したからといって必ずM&Aを実行しなければならないわけではありません。ただし、独占交渉権や独占交渉期間など、基本合意書の一部の条項に法的拘束力を持たせることも可能です。基本合意書の締結は慎重に行う必要があります。
7.デューデリジェンスを行う
基本合意をした後は、買収先の実態を把握するためにデューデリジェンスを実施します。
デューデリジェンスとは、M&Aを実施する際に必ず行われる、買収先の価値やリスクなどの調査のことです。弁護士や税理士など、専門家に依頼する必要があります。デューデリジェンスには手数料や時間がかかりますが、M&A実施後のトラブルを防ぐためにも、慎重に行うことが大切です。
M&Aのデューデリジェンスの費用は、規模や内容、調査期間などによっても異なりますが、数十万円~数百万円程度が目安です。
デューデリジェンスで行われる調査としては、以下のようなものがあります。
デューデリジェンス | 調査対象 |
財務デューデリジェンス | 経営実態や簿外債務の有無など |
法務デューデリジェンス | 債権債務の有無や訴訟リスクなど |
人事・労務デューデリジェンス | 組織体制や従業員、残業代の支払いや社会保険加入の有無など |
税務デューデリジェンス | 過去の納税状況や申告に関するリスクなど |
技術デューデリジェンス | 商品・サービスの技術や従業員のスキルなど |
ITデューデリジェンス | 情報システムやセキュリティリスクなど |
環境デューデリジェンス | 環境汚染のリスクやSDGsへの対応など |
8.最終契約書の締結・支払いを行う
デューデリジェンスの結果問題がないと判断されたら最終条件の交渉を行います。
そして、最終的な条件で双方が納得した後、最終契約書を締結しましょう。最終契約書の締結をもって、M&Aが成立します。最終契約書には法的拘束力があるため、締結後の取り消しはできません。
契約を締結した後、買収先に買収額を、M&A仲介会社やマッチングサービスなどに成功報酬を支払います。時間がかかる場合もあるため、最終契約書の締結日から少し期間をあけて行うことが多いです。
9.PMI(統合手続き)を行う
買収後は、PMIを行いましょう。
PMI(Post Merger Integration)は、M&Aの成立後に行う統合手続きのことです。具体的には、経営体制や組織体制、制度、業務システムなどを統合します。
M&Aは、成約して終わりではありません。M&A後は、社内が大きく混乱する可能性があります。業務ミスやシステム障害、従業員や取引先の離反といったリスクを防ぐためには、統合に時間をかけることが大切です。
スムーズな統合を実現し、期待どおりの成果を上げるためには、PMIを実施しましょう。
個人が会社を買う場合のよくある失敗例
個人が会社を買う場合のよくある失敗例は以下のとおりです。
- 簿外債務に気づかないままM&Aを進めた
- 従業員との関係構築に失敗する
会社を引き継ぐということは、経営者になるということです。経営はリスクを伴うため、経営者としての覚悟を持って取り組む必要があります。
ここでは、よくある失敗例を2つ紹介します。
簿外債務に気づかないままM&Aを進めた
1つ目は、財務状況をよく確認しないままM&Aを進めてしまい、M&A後に簿外債務の存在に気づくパターンです。簿外債務が発覚すると、思わぬ損失を被ることになります。
簿外債務を引き継ぐリスクを回避するためには、事前に財務諸表をよく確認して、財務状況を精査することが必要です。また、専門家に依頼して最終契約前にデューデリジェンスを実施し、財務リスクを洗い出しておきましょう。
従業員との関係構築に失敗する
2つ目は、従業員との関係構築に失敗してしまうパターンです。
自分の思いどおりの会社にしようと、従業員や取引先の反発を無視して自分勝手な経営をしてしまう方も存在します。
しかし、従業員との関係構築を疎かにした結果、優秀な従業員が次々と離職してしまい、事業の継続が困難になる可能性があります。
会社は従業員がいてこそ成り立っていることを忘れず、関係構築にも注力することが大切です。
個人のM&A・会社買収成功のためのポイント6つ
個人で会社買収を成功するためのポイントは、以下の6つです。
- デューデリジェンスを徹底する
- 購入したい会社は事前リサーチを行う
- 買収後の事業計画を立てる
- 従業員への対応もしっかりする
- 買収後に必要な資金も考慮する
- M&Aの専門家に相談する
それぞれのポイントを解説します。
1.デューデリジェンスを徹底する
会社買収を成功させるためには、デューデリジェンスを徹底することが大切です。デューデリジェンスを行う際は、調査する対象範囲を事前に絞り込みましょう。
デューデリジェンスにはコストや時間がかかります。限られた予算や時間内で必要な情報を調査しきるためには、事前に範囲を絞ることが必要です。
また、デューデリジェンスで入手した情報は、外部に流出しないよう厳密に管理しましょう。
2.購入したい会社は事前リサーチを行う
購入したい会社の事前リサーチも欠かせません。交渉する前から購入したい会社やその業界に関する情報収集を行い、問題点や疑問点を洗い出しておきましょう。トップ面談の際に聞きたい情報をピンポイントに質問できたり、デューデリジェンスの対象範囲を絞り込めたりします。
M&Aで注意すべき項目をリストアップし、それぞれの項目について購入したい会社の情報をまとめておくことが大切です。
連帯保証の有無は要チェック
買収前は、特に連帯保証の有無をチェックしましょう。小規模な会社では、会社の借入金に対して経営者個人が連帯保証を負っているケースが多いです。
会社を購入する場合は、基本的に連帯保証も一緒に引き継ぐことになります。買収する側の資金や信用力によっては、連帯保証の引き継ぎが認められず買収が失敗する恐れもあるため、注意が必要です。
3.買収後の事業計画を立てる
会社を買収するにあたって、買収後の事業計画を立てることが大切です。
会社を買って終わりではありません。事業計画を策定し、買収後にどのような方針で経営を進めるのか、ほかの事業とどのように差別化するかなどの見通しを立てましょう。事業計画を立てることで、どのような企業を買収するべきかも冷静に判断できるようになります。
買収すること自体をゴールにするのではなく、事業計画を立て、買収後を見据えてM&Aに取り組みましょう。
4.従業員への対応もしっかりする
M&A後は、従業員の理解や協力を得られるよう、従業員との関係構築に努める必要があります。優秀な人材の流出は、会社にとって大きな損失になるためです。
M&A後に従業員と面談し、直接コミュニケーションをとる機会を設けるとよいでしょう。また、従業員の性格やスキルなどを正しく理解し、十分なパフォーマンスを発揮できるよう配置や待遇を見直すことも重要です。
5.買収後に必要な資金も考慮する
M&Aを行う際は、買収にかかる費用だけでなく、買収後に必要な資金も考慮しましょう。
買収後は、運営にかかる費用はもちろん、借入金返済費用やのれん代などが発生する可能性もあります。また、事業が軌道に乗るまで時間がかかるリスクも想定し、数ヶ月分の運転資金を確保しておかなければなりません。
買収後にかかる資金もふまえて資金計画を立て、十分な資金を確保したうえでM&Aを行うことが大切です。
全額を自己資金から賄えない場合は、日本政策金融公庫や地域の金融機関などに融資の相談をしておきましょう。
6.M&Aの専門家に相談する
M&Aをスムーズに進めるためには、M&Aの専門家に相談することが大切です。
1人でM&Aを進める場合、理想的な相手を探すのに苦労したり、交渉に失敗したりするリスクがあります。買収先が簿外債務や税務上の問題、訴訟リスクなどを抱えている場合、その事実に気づけないまま、最終契約を締結してしまうこともあるでしょう。
M&Aを成功させるためには、相手探しからM&A後の統合プロセスまでを一貫してサポートしてくれる、信頼できる専門家に相談することがおすすめです。
まとめ
個人でも会社を買うことは可能です。小規模な案件が増えており、気軽に利用できるM&Aマッチングサイトが登場したこともあり、個人がM&Aに挑戦できる環境が整ってきています。M&Aを利用して起業することで、買収先の経営資源を活用し、事業をより効率よく軌道に乗せられるでしょう。
個人が会社を買う際は、買収後に想定外のリスクや簿外債務が明らかになることがないよう、買収先を精査する必要があります。また、買収後は従業員対応や統合手続きを慎重に行い、スムーズな統合を目指しましょう。
M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を
個人M&Aを成功させるためには、信頼できる専門家のサポートを受けることも大切です。レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、さまざまな分野のM&Aにおいて実績を持つコンサルタントが多数在籍しています。コンサルタントが、M&Aの相談から成約まで一貫してサポートします。料金は成約時に発生する完全成功報酬型であり、M&A成約まで無料で利用できるのが魅力です。(譲受側のみ中間金あり)
会社を購入することを検討している方は、お気軽にお問い合わせください。