会社を継ぐとは?親の会社を引き継ぐメリットや手続き方法、注意点を解説

2024年5月22日

会社を継ぐとは?親の会社を引き継ぐメリットや手続き方法、注意点を解説

このページのまとめ

  • 会社をスムーズに継ぐためには準備が重要
  • 会社を継ぐ方法には「贈与」「相続」「M&A」の3種類がある
  • 会社を継ぐタイミングは先代の経営者と相談しておく
  • 会社を継ぐための流れと個人事業を継ぐための流れには違いがある会社を継ぐ際は事業承継の専門家に相談するとトラブルが防げる

「会社を継ぐ」は事業承継のこと 

「会社を継ぐ」は、一般的に事業承継を指す言葉です。代々続く企業を子どもが継ぐ場合や、創業者から二代目として継ぐケースなどがあります。

子どもが親の会社を継ぐためには、適切なタイミングで実施したり、メリットデメリットなどを考えて動く必要があります。

親の会社を継ぐことに関する現状

親の会社を継ぐことは、高齢化社会の影響を受けている状況です。以前は平均寿命が現代よりも短く、若い後継者が後を継ぐケースが主流でした。

しかし、現代は高齢化の影響により、先代の経営者が長く経営者を続けるケースが増加しています。後継者は、先代が経営を続けている間は親の会社に入社して経営を学んだり、別の会社に入社してスキルアップを図っていたりするケースが一般的です。

親の会社に入社した子どもであれば、そのまま親の会社を継ぐケースが多くなります。しかし、ほかの会社に入社した場合には、親の会社にもどらずにキャリアアップを目指すケースも増えてきました。そのため、子どもが親の会社を継ぐとは限らない状況になってきています。

また、少子化が進んでいることから、別の兄弟が後を継ぐケースも減少しており、後継者不在問題が深刻です。近年では、親族への継承を行わずに、M&Aを利用した第三者への事業承継を行う企業も増加しています。

下記の記事でくわしく解説していますのでぜひご覧ください。

関連記事:「事業承継とは?成功に向けたポイント方法や進め方を解説

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会社を継ぐ後継者の選択肢と注意点

会社を継ぐ後継者には、大きく分けて次の3パターンがあります。

  1. 息子・娘・親族の場合
  2. 従業員の場合
  3. M&Aなど第三者の場合

それぞれの選択肢の特徴や注意点を解説するため、参考にしてください。

1. 息子・娘・親族の場合

会社を継ぐ候補として最初に思い浮かぶのが、息子や娘、そして親族です。子どもや親族が後継者になることを望む経営者は多く、親族が後継者であれば従業員や取引先の理解も得られやすくなります。

子どもや親族が後継者になる場合の注意点は、遺産相続です。複数人の親族がいる場合、遺産相続で不公平が起きれば、トラブルになってしまいます。会社のことを優先する場合、後継者となる子どもや親族にすべて事業の資産を相続させるのが理想的です。経営に携わらない親族に事業の資産を継がせてしまえば、経営に支障が出てしまうかもしれません。

しかし、相続人が複数いる場合は、それぞれの相続人が法定相続分の遺産相続をする権利を持ちます。相続人が4人いれば、それぞれが4分の1ずつ相続できる権利があることから、後継者だけに事業の資産を集中させるのは大変です。

後継者だけに事業の資産を相続させる方法には、「後継者以外の親族には無議決権株式を相続させる」「個人的な資産を事業資産とは別に用意する」などの方法があります。子どもや親族に事業承継を行う場合には、相続に関して定めておき、遺言書に明記しておかなければなりません。

2. 従業員の場合

親族の次に候補になるのが、自社の従業員です。優秀な従業員がいると経営者としてふさわしく、従業員や取引先の理解も得られます。

従業員を後継者に選ぶ際の問題は、譲渡時の対価です。中小企業で後継者になる場合、基本的には先代の経営者が持つ株式を引き継ぎます。その際、従業員は遺産の相続はできないことから、株価に対して対価を支払わなければなりません。しかし、会社を引き継ぐだけの対価になる資産を、一従業員が所持しているケースは少なく、対価を用意できない問題があります。

また、個人保証や担保の変更ができない点も、事業承継を行う際の問題です。中小企業の経営者の多くは、金融機関から融資を受けるために個人保証や担保を行っています。事業承継を行う際には、個人保証などを後継者に変更しなければなりません。しかし、後継者が従業員の場合、金融機関が変更を認めないケースがあります。また、個人資産の担保提供を行おうとしても、従業員が資産を持っておらず、実現しない問題もあります。

下記の記事でくわしく解説していますのでぜひご覧ください。

関連記事:「親族外承継とは?メリット・デメリットや方法を解説

3. M&Aなど第三者の場合

親族や従業員への事業承継が難しい場合、M&Aで第三者に引き継ぐ選択肢もあります。M&Aを行えば、廃業を避け、事業を継続できるでしょう。

第三者に事業承継を行う際の注意点は、買い手が見つからない場合があることです。たとえば、業績が下がっている企業の場合、事業を引き継いでもらえる人物を探すのは難しいでしょう。もし、見つかった場合でも、譲渡価格が安くて合意に至らない場合もあります。

さらに、事業承継が実現しても、従業員の雇用が保証されない問題もあります。M&A後に雇用条件の変更を行うケースもあるでしょう。第三者に会社を継いでもらう場合には、条件面も考慮して進めなければなりません。

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会社を継ぐ3つの方法 

会社を継ぐための方法には、次の3つがあります。

  1. 相続で親の会社を継ぐ
  2. 贈与で親の会社を継ぐ
  3. M&Aを実施する

特に、相続や贈与とM&Aでは仕組みが変わるため、確認しておきましょう。

1. 相続で親の会社を継ぐ

先代の経営者が亡くなったタイミングで会社を継ぐ場合、相続で会社を継ぐことになります。相続で会社を継ぐ場合、先代の経営者が所持していた会社の株式を引き継ぐことで自動的に会社の経営権を獲得できます。また、会社が保有している資産の獲得も可能です。

相続で会社を継ぐ場合には、相続税がかかります。業績が良いほど相続税が増えるため注意しましょう。
ほかにも以下のような課題があります。

課題1:経営権を確保するために多数の株式が必要

会社を継ぐためには、株式の半分以上、できれば議決権比率3分の2以上の株式を保有したいところです。ただし法定相続割合で株式を相続すると複数の相続人に株式が分散してしまい、経営権が確保できないケースがあります。

特に中小企業では、経営権を持たない株主が経営に介入し、経営者を代えようとすることもありえます。株式を相続する際には、遺言や生前贈与を利用して、後継者が必要な株式を確実に受け取れるように準備するべきです。

課題2:負債を相続するリスクがある

中小企業の経営者はしばしば自らが融資の保証人になっています。そのためそのまま相続を実施すると、債務も引き継がれる可能性があります。

昨今は「経営者保証ガイドライン」により、後継者が保証人にならずに済む対策も提案されているため、相続時にはこのガイドラインを理解し、金融機関と交渉することが重要です。

課題3:相続人との間にトラブルの可能性がある

会社を一人で継ぐためには、親などが持っていた株式を基本的には一人で相続する必要があります。しかしこれが親族間のトラブルの原因になるケースもあります。

トラブルを避けるためには、会社の株式以外の財産をほかの親族に優先的に相続させるなど、配慮が必要です。

2. 贈与で親の会社を継ぐ

先代の経営者が存命の状態で会社を継ぐ場合、贈与になります。先代の経営者や、後継者のタイミングで会社を引き継ぐことができるメリットがあります。

贈与で事業承継を行う場合、贈与税が課せられるため注意しましょう。ただし、年間110万円以内の贈与は非課税になる制度があるため、制度を使えば負担を軽減して事業承継が実施できます。

贈与における主な課題は以下の通りです。

課題1:不動産などの贈与では追加の費用が必要

生前贈与を実施する場合、贈与税以外にほかの費用が発生しかねません。

たとえば不動産を生前贈与するときは、その名義を変更する手続きが必要です。その際には、登録免許税や不動産取得税などの費用がかかります。これらの税金は、相続と生前贈与とでは税率が違って、生前贈与の方が高い税率で課税されます。

そのため、不動産を生前贈与する際には、これらの税金がどれくらいかかるかなどを確認しておくべきです。

課題2:生前贈与が認められない場合がある

生前贈与はいつでも認められるというわけではありません。たとえば、高額な物を何度も生前贈与すると、税務署からの注意を引くことがあります。経営者が会社の株式を低く評価した上で多くの生前贈与をすることなどは、特に税務署の目に留まりやすいと言えるでしょう。

生前贈与をするときには、その証明となる書類を作っておくことが大切です。特に年配の人が生前贈与を実施する場合はタイミングが重要になるので、証明書類を用意しておくことをおすすめします。

3. M&Aで第三者が継ぐ

M&Aは「合併と買収(Mergers and Acquisitions)」の略語です。合併は2つ以上の企業が1つになることを指し、買収は一方の企業が他方の企業を買い取ることを指します。提携も含めることがありますが、一般的には含まれません。

M&Aと聞くと、良いイメージを持たない方もいらっしゃるかもしれません。理由の1つとして、特に最近のニュースなどでよく見かけるのが、上場企業の「敵対的M&A」だからでしょう。

上場企業の場合、株式を購入できる人が経営陣の同意を得ないまま株式を買い取り、議決権を得て買収することも可能です。このような事例が、敵対的買収や敵対的M&Aとしてよく報道されます。

しかし、上場していない中小企業の場合、基本的には経営者の同意なしに株式を買うことはできません。売り手と買い手の双方が同意した上でM&Aが行われるのが通常です。このようなM&Aは「友好的M&A」と呼ばれます。

M&Aでは、適切な人材や企業を外部から探して事業を承継します。親族や社内に適切な後継者が見つからない場合や、後継者候補が事業承継を希望しない場合などに、M&Aが考慮されます。M&Aにおける課題は以下の通りです。

課題1:時間がかかる

M&Aで会社を売買するには、通常6ヶ月から1年ぐらいかかります。交渉やデューデリジェンスなど、時間がかかる工程が多いからです。条件が合わない場合など、交渉が長引くと数年かかることもあります。そのため、時間には余裕を持って取り組むことが大切です。

課題2:従業員の反発

特に中小企業では、経営者の変更が会社に大きな影響を及ぼすケースが少なくありません。M&A後、新しい経営者に対して元の従業員が反発することも考えられます。

反発を防ぐには、職場の環境改善など、統合の過程をしっかり管理することが重要です。ただし変化への抵抗はある程度は仕方ない部分もあると考えておく方が良いでしょう。

課題3:人材の流出

M&Aでは、従業員をそのまま引き継ぐことが多いですが、交渉によっては労働条件が変わることもあります。条件が悪化すれば、従業員が会社を辞めてしまう可能性もあります。

これを避けるためには、M&Aの交渉段階で労働条件についてしっかり話し合い、合意に至ることが大切です。

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親の会社を継ぐ4つのタイミング

事業承継で困りやすいものに、会社を継ぐタイミングがあります。いざという時に備えて、どのようなタイミングで事業承継を行えるか知っておきましょう。一般的には、次の4つの場面で、事業承継が行われます。

  1. 親が亡くなったとき
  2. 高齢化で引退をするとき
  3. 周囲からのプレッシャーが強くなったとき
  4. 引継ぎの約束時期が来たとき

下記の記事でくわしく解説していますのでぜひご覧ください。

関連記事:「親の会社を継ぐメリット・デメリットは?家業を継ぐ手続きもあわせて解説

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親の会社を継ぐ10のメリット

事業承継に向け、親の会社を継ぐメリットを知っておきましょう。次のようなメリットが考えられます。

  1. 自分の裁量で経営できる
  2. 売却や譲渡もできる
  3. 起業よりも事業を行いやすい
  4. 文化や技術を守れる
  5. 勤務時間が調整できる
  6. 定年やリストラがない
  7. 新しい人脈が増える
  8. 親族の希望をかなえられる
  9. 資産を引き継げる
  10. 子どもを後継者にできる

それぞれのメリットに関して解説するため、親の会社を継ぐ際の参考にしてください。

1. 自分の裁量で経営できる

親の会社を継ぐ場合、自分の裁量で経営できるメリットがあります。先代の経営方針を継ぐこともできれば、自分の方針で新しい事業を立ち上げることもできます。

先代の経営を近くで見ている場合は、先代の経営方針を軸に事業を行うのも1つの方法です。また、従業員と親交がある場合には、従業員の理解を得ながら経営しやすいのもメリットでしょう。

2. 売却や譲渡もできる

受け継いだ事業を売却したり、譲渡したりできる点もメリットです。事業譲渡であれば、必要な事業だけを残し、不要な事業を売却すれば資金を獲得できます。また、会社自体を売却してしまえば、多額の利益獲得につながるでしょう。

より高く売却するためには、事業を拡大して企業価値を高めることが大切です。企業価値が高くなるほど、良い条件で交渉を進められるでしょう。

3. 起業よりも事業を行いやすい

起業する場合よりも、事業を行いやすい点が会社を継ぐメリットです。すでに事業は行われているため、必要な設備や従業員などがそろっています。

自分で起業をする場合、会社の設立手続きから始まり、オフィスの契約や従業員の採用、設備導入などさまざまな準備が必要です。時間はもちろん、多額のコストも必要でしょう。また、事業によっては免許が必要になったり、従業員への教育コストが掛かったりもします。

会社を継ぐ場合には、必要な経営資源がそろっています。顧客や取引先もすでにあり、売上を確保しやすい点もメリットです。

4. 文化や技術を守れる

会社を継ぐことで、会社が持つ技術や文化を守れる点もメリットです。企業によっては、伝統文化や技術のように、受け継ぐべき伝統を持っている場合があります。

5. 勤務時間が調整できる

人事DDの調査範囲は、法務やビジネス、財務などの別分野と被っている部分もあります。例えば退職金や年金は財務DD、人事構成やキーパーソンはビジネスDDとの関係性が高いです。

そのため、デューデリジェンスの調査結果を最大限活かすには、人事DDの調査データを法務など別分野のDDにも共有することが効果的です。反対に、別分野におけるDDの調査結果が人事DDの手助けとなるケースもあるでしょう。

6. 定年やリストラがない

定年やリストラの心配がないことも、経営者のメリットです。一般的な企業で働く場合とは異なり、60歳や65歳の定年はありません。また、会社の都合でリストラされることもないでしょう。

ただし、事業が継続できるかどうかは経営者次第です。業績が悪くなってしまえば、定年よりも前に倒産したり、廃業したりしてしまうため注意しましょう。

7. 新しい人脈が増える

新しい人脈を獲得できる点も、経営者のメリットです。家業を継ぐことで、ほかの会社で勤めていた場合とは違った人脈を獲得できます。

たとえば、既存の取引先や顧客を引き継ぐことで、人脈を獲得できます。新しい取引先に出会い、人脈を広げるケースもあるでしょう。特に、既存の取引先の場合は、先代の経営者が関係性を築いてくれていることから、後継者も関係性を築きやすいメリットがあります。

8. 親族の希望をかなえられる

親族の希望や期待を実現できる点も、会社を継ぐメリットです。特に、先祖代々続く会社であれば、子どもや親族が後継者になることを喜んでもらえるでしょう。

また、後継者がいないことで、廃業してしまう企業も多い状況です。後継者不在の状況を解決し、会社を存続できれば、先代の経営者を含めて喜んでもらえるでしょう。

9. 資産を引き継げる

会社の資産を引き継げる点もメリットになります。親から会社を引き継げば、企業の資産は後継者が獲得できるでしょう。

資産には不動産だけではなく、

  • 従業員
  • 取引先
  • ノウハウ
  • 技術
  • 特許
  • 販売のネットワーク

なども含まれます。

経営資源や資産を獲得できる点は、親の会社を継ぐメリットです。

10. 子どもを後継者にできる

自分の子どもを後継者にできる点も、親の会社を継ぐメリットです。会社が業績を上げている場合、子どもに多くの資産を残せるでしょう。子どもの将来の生活をサポートしてあげられる点でも、会社を継ぐことはメリットになります。

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親の会社を継ぐ10のデメリット 

親の会社を継ぐ際には、デメリットも考慮しなければなりません。次のような問題やリスクもあることを知っておきましょう。

  1. 責任が重い
  2. 経営悪化のリスクがある
  3. 負債も引き継がなければならない
  4. 経営が安定するまでに時間が掛かる
  5. 次の後継者も選ばなくてはならない
  6. 従業員との関係に悩まされやすい
  7. 取引先との関係に苦労する
  8. 家族の理解が必要になる
  9. 周囲から嫉妬されやすい
  10. 廃業の決断が難しい

それぞれのデメリットに関して解説するため、会社を継ぐ際の参考にしてください。

1. 責任が重い

会社を継ぐことで、責任やプレッシャーが重くなります。経営者は経営判断を行い、最終決定を下す必要があるからです。決定次第で会社の今後に影響するため、心理的な負担は大きいでしょう。

もし、経営が悪化すれば、自分が責任を取らなければなりません。従業員とは違い、倒産しても失業保険を得られない点もポイントです。経営者は辞めたくても簡単には辞められないことからも、責任の重さがデメリットになります。

2. 経営悪化のリスクがある

自分が後を継いだ結果、経営を悪化させてしまうリスクもあります。自分の代で、長く続いた会社を廃業させてしまうこともあるでしょう。

会社の経営は難しく、景気の悪化など予想どおりに進まないこともよくあります。また、従業員とトラブルになってしまったり、資金繰りに失敗してしまったりする可能性もあります。自分の判断で会社の今後が変わるリスクがあることを考慮し、後を継がなければなりません。

3. 負債も引き継がなければならない

会社を継ぐ場合、負債も引き継がれる点はデメリットです。たとえば、連帯保証を負っていないか確認しておきましょう。経営者の場合、金融機関から融資を受けるために、連帯保証人になっている場合があります。連帯保証人は、企業が経営破綻した際に、借り入れを個人で返済しなければなりません。

事業承継で引き継ぐ資産には、負の資産もあります。連帯保証のように、どのような負債を引き継いでいるかは入念に確認しましょう。

4. 経営が安定するまでに時間が掛かる

会社を引き継いでから経営が安定するまで、時間が掛かることを覚えておきましょう。企業文化や技術はそう簡単に引き継げるものではありません。

また、会社を引き継いだ場合、先代の経営者と比較されるケースが増えます。経営者に不足している能力を指摘されることも多く、認めてもらうまで時間が掛かってしまうでしょう。周囲に認められないことで焦りが生まれ、経営が安定しない場合もあります。

経営を安定させるためには、余裕をもって事業承継を行うことが大切です。タイミングを見計らい、事業承継に向けた準備も進めておきましょう。周囲は後継者に対して、余計なプレッシャーを与えず、サポートする姿勢も大切になります。

5. 次の後継者も選ばなくてはならない

会社を継ぐと、また次の後継者を選ばなければなりません。後継者選びに時間を掛けてしまうと、親族の高齢化が発生し、後継者不足が進んでしまいます。

会社を継いだ場合には、早いタイミングで後継者候補を探しておきましょう。複数人の後継者を選定し、それぞれに意思確認を行うことも欠かせません。もし、後継者が見つからない場合には、M&Aを使用して第三者に事業承継を行うことも選択肢に含めましょう。

6. 従業員との関係に悩まされやすい

親の会社を継いだ場合、従業員との関係に悩まされることもあります。従業員との関係性が良好になるように取り組みましょう。

もし、関係が良くない場合、従業員が事業承継に反対する場合もあります。反対した従業員が会社の重要な役職にいる場合には、事業承継ができてもサポートが見込めないでしょう。

会社を継ぐ際には、従業員との関係性を築くことが大切です。後を継いで何も分からない状況なのに、従業員に助けを求められない事態は避けなければなりません。

7. 取引先との関係に苦労する

取引先との関係性も、後継者が悩まされやすいポイントです。代替わりが行われることで、足元を見られたり、取引の中止を伝えられたりする場合があります。

先代の経営者が取引先と良い関係性を築いていたからといって、後継者が関係性を引き継げるとは限りません。既存の取引先だからと油断せずに、一から関係性を築くつもりでコミュニケーションをとりましょう。

8. 家族の理解が必要になる

会社を引き継ぐにあたり、家族の理解も必要になります。場合によっては、今の仕事や地位を捨てて、会社を継がなければならないからです。

たとえば、後継者になる前は、別の企業で働いている場合もあるでしょう。後継者になることで、前職よりも収入が減ってしまう可能性もあります。

生活にも大きく関わることから、会社を継ぐことを家族に反対されるかもしれません。すでに仕事などの社会的なステータスを所持している場合は、家族の理解を得られるかがポイントになるでしょう。

9. 周囲から嫉妬されやすい

後継者争いが発生した場合には、周囲から嫉妬を受けやすくなります。後継者になれなかった人々が、素直に後継者を認めるとは限らないからです。

たとえば、経営者の座を奪われたと非難される恐れもあります。嫌味を言われるなど、嫉妬されてしまうことはデメリットでしょう。

10. 廃業の決断が難しい

会社を継いだ場合、廃業の選択を迫られるケースもあります。業績次第では、事業をあきらめなければならない場合もあるからです。

廃業は簡単に決められるものではなく、無理をして事業を継続するか、潔く諦めるかの選択が求められます。業績を維持できるとは限らないため、事業存続の選択を迫られる点は、心理的なデメリットです。

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親の会社を継ぐために必要な3つの準備  

親の会社を継ぐためには、準備を整えておくことが欠かせません。次の3つに関しては、準備しておくと良いでしょう。

  1. 会社の現状を把握する
  2. 実務を行い現場を知る
  3. 事業承継で活用できる支援を調べる

それぞれのポイントを解説するため、後を継ぐ際の参考にしてください。

1. 会社の現状を把握する

会社を継ぐ際には、まず会社の現状を把握しましょう。経営状況を確認し、経営に問題はないか、改善すべき箇所はないか確かめておきます。

経営状況を確認するためには、財務諸表を確認しましょう。財務諸表は保管義務があるため、どの会社でも所持しています。

財務諸表のなかでも大切なものが、財務三表と呼ばれる次の3つです。

  • 損益計算書
  • 貸借対照表
  • キャッシュフロー計算書

財務三表を確認しておくことで、自社の財産状況や収支状況が分かります。お金の流れも把握できるため、どのように資金が使われているかも確認しておきましょう。会社の現状が分かれば、会社を継いだ際に、経営方針を決めやすくなります。

2. 実務を行い現場を知る

親の会社で働き、現場を知っておくことも欠かせません。現場を知ってから後継者になることで、従業員からの理解も受けやすくなります。

現場で働けば、自社の事業を理解でき、業務に必要なスキルも獲得できます。また、従業員と一緒に働くことで、コミュニケーションもとりやすくなるでしょう。会社に対する改善点や、不満を聞き出せるかもしれません。

現場を知らずに経営を行うと、従業員から批判される場合もあります。実際に業務を行い、自社への理解を深めることが欠かせません。

3. 事業承継で活用できる支援を調べる

事業承継を行う際に、活用できる支援を確かめておきましょう。たとえば、事業承継では次のような支援を受けられます。

  • 事業承継税制
  • 金融支援
  • 遺留分に関する民法の特例
  • 所在不明株主に関する会社法の特例

金融支援を活用すれば、事業承継に必要な資金の融資を受けられます。また、事業承継税制を使えば、事業承継で相続や贈与を受けた自社株式の金額を控除し、相続や贈与の計算ができます。

事業承継を支援する法律に、「経営承継円滑化法」があるため確認しておきましょう。事業承継をスムーズに行い、引継ぎの負担を減らすためにも、支援の活用が欠かせません。

参照元:中小企業庁「経営承継円滑化法による支援

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会社を継ぐ際に求められる3つの能力 

会社を継ぐために、後継者としての能力を身に着けることも欠かせません。特に、次の3つの能力を育てておきましょう。

  1. 経営能力
  2. リーダーシップ
  3. 実務能力

それぞれに関して解説します。

1. 経営能力

経営者に求められるのが、経営能力です。経営を行うためには、一従業員とは異なる能力が求められます。経営能力に含まれるとされる知識や能力には、次のような種類があります。

  • マーケティング
  • 財務
  • 経理
  • 法務
  • 慎重さ
  • 向上心
  • 時流を読む力

会社を継ぐにあたり、経営に必要な能力は勉強しておきましょう。

2. リーダーシップ

従業員の支持を得るためには、リーダーシップが欠かせません。事業を進めるために、的確な判断と指示が求められます。

リーダーシップには、「コミュニケーション能力」「行動力」「発想力」などが含まれます。会社のトップとして、人々を引っ張る力も欠かせません。

3. 実務能力

経営を行うためには、自社が行う業務や事業に対する理解も必要です。営業や事務などに関して、経営者が行えるようにしておくことも欠かせません。

経営者になる前に、従業員として働き実務の能力を育てるのも良いでしょう。現場で知識を得ておくことにより、経営に活かせる考えが生まれることもあります。

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法人事業を継ぐ場合の流れ

親の会社を継ぐ際は、どのような流れになるのかを知っておきましょう。一般的には、次のような流れで会社を継ぎます。

  1. 会社を継ぐ意思表示を行う
  2. 会社の現状を把握する
  3. 債務の把握と調整を行う
  4. 実務経験を積む
  5. 債務の把握と調整を行う
  6. 承継を実施する
  7. 従業員や取引先に通知する

それぞれのプロセスに関して解説するため、参考にしてください。

1.会社を継ぐ意思表示を行う

会社を継ぐ際は、後継者選びから始まります。後継者選びに向けて、会社を継ぐ意思表示を行っておきましょう。意思表示をしておくと、先代の経営者が後継者選びに悩みにくくなります。

意思表示が行われていない場合、「ほかの兄弟や親族を経営者候補に想定している」「後を継ぐ意思がないと思っていた」などのケースが発生するかもしれません。会社を継ぐ意思がある場合、早めに意思表示を行い、コミュニケーションを欠かさないようにしましょう。

2.会社の現状を把握する

会社の経営を引き継ぐ際には、まず会社の現状を把握することが必要です。直接親から会社の状況について話を聞くだけでなく、経営状況・財務状況・取引先との関係など客観的なデータを詳細に調べましょう。

親からは言いにくい情報などもあるかもしれません。そのため、自ら情報を収集し、現状を分析することが大切です。また、会計上記録されていない債務なども考えられるため、外部の専門家に相談するのも良い方法です。

さらに会社を引き継ぐために、引き継ぐ株式を確認しておきましょう。家業を営む会社は、非上場のケースが多くあります。非上場企業の場合、定款に「株式の譲渡制限に関する規定」が定められているか確認しなければなりません。

「株式の譲渡制限に関する規定」とは、株式譲渡を行う場合、取締役会や株主総会で承認を得なければならない、と定めている条項のことです。定款に記載された機関に承認されなければ、株式を引き継ぐことができません。

後継者として会社を引き継ぐ場合にも、「株式の譲渡制限に関する規定」は適用されます。どのような手続きが必要になるか把握し、準備を進めておきましょう。

3.会社の承継時期を選ぶ

会社の承継時期を選ぶには、親の引退時期や健康状態、本人の意向を考慮し、関係者間で話し合う必要があります。また、事業に影響を与える経済情勢や業界の動向も考慮することが大切です。

4.実務経験を積む

会社を着実に運営するには、実践的なノウハウが不可欠です。そのため、状況が許すなら、事業を引き継ぐ前に現経営者のもとで業務の経験を積むことが望ましいです。

また、経営者としての業務だけでなく、現場の社員の業務も理解しておくことが重要です。会社全体の概要を把握し、可能な限り深く理解しておきましょう。

5.債務の把握と調整を行う

会社が持っている債務を把握しておきましょう。中小企業の場合、融資を受けるために、経営者が個人保証を受けている場合があります。

経営者の交代をきっかけに、個人保証の見直しを行うことも重要です。事業に問題がなければ、個人保証が不要になる場合もあるでしょう。また、個人保証の条件が古いことから、見直しが必要になるケースもあります。

さらに、債務の削減が可能な場合は、経営者を交代するタイミングで見直しましょう。滞っている売掛債権の回収がある場合、回収して債務の返済を行うことが大切です。複数の融資を受けている場合は一本化したり、条件の良いローンに変更するなどして、調整を行うことも検討しましょう。

6.承継を実施する

債務の把握と調整ができたら、事業承継を進めましょう。まずは、株式譲渡を行う側が、会社に株式譲渡承認請求書の提出を行います。

次に、株式譲渡承認請求書を受け取った会社側が、定款で定められた機関にて、株式譲渡の承認を議論します。株主総会、または取締役会で実施しましょう。

承認を受けたら、会社は譲渡側に株式譲渡承認通知書を送付します。通知書を受け取れば、譲渡側と譲受側で、株式売買契約書の締結を行いましょう。

最後に、譲渡側と譲受側が共同で、会社に対して株主名簿書換請求を行います。株主名簿に譲受側の名前が記載されたら、取引が成立します。株式を発行している場合、譲渡側から譲受側に対して、株券の受け渡しも必要です。

7.従業員や取引先に通知する

会社の承継前後では、従業員・取引先・顧客・金融機関など関係者に通知することが重要です。具体的な計画・ビジョン・変更点を明確に伝えましょう。

従業員・取引先は引き続き会社との信頼関係を維持したいと考えています。そのため、承継に伴う変更や影響について詳細に説明し、彼らの要望やニーズに適切に対応することが欠かせません。

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個人事業を継ぐ場合の流れ 

親の事業を継ぐ場合、法人ではなく個人事業の場合もあります。個人事業を継ぐ際の流れも知っておきましょう。個人事業の場合には、次のような流れで承継を行います。

  1. 現経営者が廃業届を出す
  2. 後継者が開業届を出す
  3. 従業員や取引先に挨拶をする
  4. 資産・負債を確認して引き継ぐ

それぞれのプロセスを解説します。

1. 現経営者が廃業届を出す

個人事業を継ぐためには、現経営者が廃業届を出さなければなりません。また、廃業届以外にも、次のような書類を提出する必要があります。

  • 所得税の青色申告の取りやめ届出書
  • 事業廃止届出書
  • 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書

また、税金に関しても、法人と異なるため覚えておきましょう。個人事業の場合、課税対象は個人です。そのため、事業承継で課税の義務が後継者には移動しません。

参照元:国税庁「[手続名]所得税の青色申告の取りやめ手続」「[手続名]事業廃止届出手続」「[手続名]所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続

2. 後継者が開業届を出す

続いて、後継者が開業届を提出しましょう。後継者は事業を引き継ぐために、新しく個人事業主になるからです。

後継者にも、提出が必要な書類があります。開業届以外に、次のような書類を用意しましょう。

  • 個人事業の開業・廃業等届出書
  • 青色申告承認申請書
  • 青色事業専従者給与に関する届出書
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

書類のうち、「青色事業専従者給与に関する届出書」は生計をともにする家族がいる場合のみ必要です。また、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」に関しては、従業員を雇用する場合のみ提出してください。

参照元:国税庁「[手続名]青色事業専従者給与に関する届出手続」「[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出

3. 従業員や取引先に挨拶をする

個人事業を引き継ぐ場合にも、従業員や取引先に挨拶は行いましょう。特に、取引先への挨拶は欠かさないようにしてください。挨拶を怠ることで、今後の取引に影響が出るかもしれないからです。

経営者の変更が伝えられなかったことを理由に、取引を中止される恐れもあります。直接挨拶に出向いたり、挨拶状を送ったりして経営者変更を伝えましょう。

また、取引先に対しては、事業口座が変わることも伝えておきましょう。事業口座は先代の経営者が作成しており、先代の経営者名義になっていることが多いからです。

4. 資産・負債を確認して引き継ぐ

資産を確認し、引継ぎを行いましょう。事業に必要になる、確認すべき資産は、次のとおりです。

  • 商品
  • 設備
  • 預貯金
  • 不動産
  • 売掛金

資産の引継ぎには以下の2つの方法があります。まず、売買による引継ぎです。後継者が譲渡代金を親に支払って資産を引き継ぎます。この場合、譲渡代金と取得したときの資産の差額に所得税が課されます。

次に、贈与です。贈与では無償で資産を承継できますが、贈与された資産の時価(市場価格)が110万円を超えると贈与税が課されます。引き継ぐものには資産だけでなく債務や借金も含まれます。贈与税は、資産から債務を差し引いた金額にかかります。

事業を引き継ぐ際には、事業運営に必要なものかどうかを確認しましょう。たとえば先代から引き継ぐ借金や個人保証などは、承継後の負担となります。経営者としての負担を軽減するためには、先代に借金の返済を依頼したり、承継前に借金の額を減らすよう提案することが重要です。

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親の会社を継ぐ際の3つのポイント 

親の会社を継ぐために、大切なポイントを3つ紹介します。

  1. 会社を継ぐタイミングを相談しておく
  2. 経営者に必要な能力を身につける
  3. 専門家に相談する

それぞれのポイントを紹介するため、参考にしてください。

1. 会社を継ぐタイミングを相談しておく

スムーズな事業承継のために、会社を継ぐタイミングを相談しておきましょう。先代の経営者と後継者で、同じ認識を持っておくことが大切です。

会社を継ぐために、先代の会社で働くことも考えておきましょう。一般的に、後継者育成には5年から10年は掛かるとされています。会社を継ぐ際には、後継者が成長する期間も考慮しなければなりません。

親の会社を継ぐのに適したタイミング

事業承継で気になるのが、親の会社を継ぐのに適したタイミングです。中小企業庁の調査によると、「40歳から49歳で事業を継いだ後継者が、最も事業承継に良い時期だった」と回答しています。

会社の状況次第で変わりますが、40代の間には事業を引き継げるように、準備しておくと良いでしょう。

参照元:中小企業庁「事業承継ガイドライン

2. 経営者に必要な能力を身につける

経営者に必要な能力を把握し、身に着けることも大切です。一般的には、次のような能力が必要だとされています。

  • 事業に関する技術
  • 事業に関するノウハウ
  • 経営者になる覚悟
  • 経営に関する知識と経験
  • 斬新な発想
  • センス
  • 精神力

自社の事業やノウハウに関しては、先代の経営者から教えてもらうようにしましょう。経営に関する知識も学んでおくことが欠かせません。

新しい発想や精神力に関しては、後継者自身で努力して成長させることもできます。本を読んだり、セミナーに参加したりして学びましょう。

3. 専門家に相談する

事業承継実施に向け、専門家に相談をしておくことも欠かせません。事業承継の方法や手続きに関してアドバイスを受けられるでしょう。

M&Aを使用した事業承継を行う場合は、M&A仲介会社への相談もおすすめです。承継方法に悩んでいる場合にも、一度相談してみましょう。

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親の会社を継ぐ際に活用できる資金対策  

親の会社を継ぐ際には、補助金や税制上の優遇措置を受けられる場合もあります。事業承継時に損をしないためにも、確認しておきましょう。活用できる資金対策には、次のような例があります。

  1. 事業承継税制を使う
  2. 事業承継補助金を活用する
  3. 株式の移転対策を行う

それぞれに関して解説します。

1.事業承継税制を使う

事業承継税制は法人や個人事業主の後継者が特定の資産を取得した場合に、贈与税や相続税の支払いを一定の期間猶予する制度です。この制度には「法人版事業承継税制」と「個人版事業承継税制」があります。法人版は非上場企業の株式などを取得した場合に適用され、贈与税や相続税の支払いを一定の要件を満たす限り猶予し、後に後継者が亡くなった場合には支払いが免除されます。

2018年の税制改正により、法人版事業承継税制では、以前の措置に加えて、非上場株式の制限や納税猶予の割合が変更されました。具体的には、非上場株式の制限が撤廃され、納税猶予の割合が引き上げられました。

事業承継税制の適用には認定が必要であり、申請書や報告書は都道府県の担当課に提出する必要があります。くわしくは以下をご参照ください。

参照元:国税庁「法人版事業承継税制」「個人版事業承継税制

2.事業承継補助金を活用する

事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業などが事業を引き継ぐ際に、新しい取り組みを促進したり、事業再編や統合に伴う経営資源の引継ぎを支援する制度です。2024年3月現在、事業承継・引継ぎ補助金の8次公募交付申請は終了していますが、9次公募の公募要領開示および交付申請受付が開始されています。

この補助金の支給条件は「事業を引き継ぐ際に新たな取り組みを行うこと」です。新たな取り組みとしては、新規事業のほかに業態変更や事業所の集約なども対象となります。

補助対象者に交付する補助額は、補助対象経費の3 分の2以内または2分の1以内で、補助下限額は100万円です。申請時に補助対象経費に2/3または1/2をかけた金額が100万円を下回る場合は受け付けされません。

補助上限額は600万円または800万円で、補助事業期間中に一定の賃上げを行った場合には800万円になります。ただし、補助上限額の内600万円を超え800万円以下の部分の補助率は1/2以内となります。

補助上限額の変更に関する賃上げ要件は、以下のいずれかを達成する必要があります。

  • 補助事業期間終了時に、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+50円以上となる賃上げ
  • 既に達成している事業者は、補助事業期間終了時に、事業場内最低賃金+50円以上となる賃上げ

上乗せ額(廃業費)の補助上限額は150万円であり、補助率は事業費の補助率(2/3以内または1/2以内)に従います。廃業費に関しては、少なくとも1つの事業所または事業の廃業・廃止を伴うものを補助対象とします。

よりくわしくは以下をご参照ください。

参照元:事業承継・引継ぎ補助金事務局「中小企業生産性革命推進事業 事業承継・引継ぎ補助金 経営革新枠【公募要領】

3.株式の移転対策を行う

法人の事業承継を行う場合、株式の移転対策が必要になります。後継者に株式が渡らなければ、十分な経営権を行使できず、経営に支障をきたすためです。

会社の承継プロセスでは、親から子どもへの株式移転方法をどうするかを計画します。

株式を移転する方法には、「譲渡」「生前贈与」「ホールディングス化」などの種類があります。会社の状況に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。専門家に相談し、メリットの大きい移転方法を選択しましょう。

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事業承継の事例

この章では 事業承継の事例について解説します。

株式会社ファーストリテイリング

企業名株式会社ファーストリテイリング
誰からの事業承継か父親
事業承継の形ベンチャー型事業承継

柳井正社長は父親の事業を引き継ぎつつ、世界的なファストファッションブランドであるユニクロなどを展開するファーストリテイリングを築き上げました。

柳井正社長のようなアプローチはベンチャー型事業承継と呼ばれます。これは、ファミリービジネスの資源と後継者の経験やアイデアを組み合わせ、中長期的な顧客のニーズを見据えて、新規事業や製品・サービスの開発、業態の変革など、ビジネスモデルの改革に取り組むことを意味します。「第二の創業」とも言われます。

後継者は先代と同じ道を進む必要はありません。むしろ、少子高齢化や新型コロナウイルスなどの環境変化に対応し、会社の持続的な成長を目指すために、新たなアプローチを模索する必要があります。家業の歴史や価値観、企業文化は尊重しつつも、経営環境の変化に柔軟に対応し、必要に応じて改革を行ってきたからこそ今のファーストリテイリングがあると言えるでしょう。

参照元:METI Journal ONLINE「「大廃業時代」に待った。中小企業の承継・成長に手厚い支援

株式会社星野リゾート

企業名株式会社星野リゾート
誰からの事業承継か父親
承継時の最大の課題人材不足

1991年31歳の若さで父親の後を継いだ星野佳路社長の最大の課題は人材不足でした。

その当時、旅館で働きたいという人がほとんどおらず、人材を探すことが非常に困難でした。その後の10年間、星野佳路社長は軽井沢に留まり、働き方を改革しつつ戦略を練りました。

この時期はバブル経済が終わろうとしており、リゾート開発が日本全体で進んでいました。多くのホテルが建設されましたが、同時に人口の減少が明らかであり、需要と供給のバランスが悪化することが予測されました。

資本だけでは競争に勝つことはできないと感じ、資産を持たずに運営に特化した現在のビジネスモデルを確立することに専念した結果が今であると星野佳路社長自身が分析しています。

参照元:METI Journal ONLINE「【星野リゾート・星野佳路代表インタビュー】事業承継はベンチャーの一つの形

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まとめ

会社を継ぐとは、事業承継のことを指します。スムーズに会社を継ぐためには、準備を進めておくことが欠かせません。会社を継ぐタイミングに関して話し合ったり、先代の経営者が元気な状態から手続きに取り掛かったりしておきましょう。

また、会社を継ぐ方法には、「相続」「贈与」「M&A」の大きく分けて3種類があります。特に最近は後継者不足などが理由でM&Aに注目が集まっているとされていますが、会社の状況や後継者次第でも適切な方法が変わるため、専門家に相談しましょう。事業承継のことであれば、M&A仲介会社への相談がおすすめです。

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レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、各領域に特化したM&Aサービスを提供する仲介会社です。実績を積み重ねたコンサルタントが、相談から成約まで一貫してサポートを行っています。
会社を継ごうと考えている場合には、お気軽にご相談ください。

料金に関しては、M&Aの成約時に料金が発生する、完全成功報酬型です。M&A成約まで、無料でご利用いただけます(譲受側のみ中間金あり)。

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