人事DD(人事デューデリジェンス)の意味や目的、注意点を解説
2024年2月19日
このページのまとめ
- 人事DDとは、「人事デューデリジェンス」の略称
- 人事DDとは、組織や人材の面におけるデューデリジェンスのことを指す
- 人事DDの主な目的は「リスクの発見」「価値評価」「人事PMIの支援」の3つ
- 人事DDの対象は、人事制度や労務関係、組織構造など
- 人事DDを実施する際は、双方の従業員の心情やかかるコストなどに注意する
「M&Aでの人事DDとは何?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?
人事DDとは、「人事デューデリジェンス」の略称で、組織・人材面におけるデューデリジェンスを指します。人事制度や労使関係などが調査対象となります。
本コラムでは、人事DDの用語の解説や、実施する目的、注意点を紹介します。また、人事DDの対象となる項目や一般的な流れについても解説します。
目次
人事DDとは
初めに、人事DDの意味と重要性を解説します。
人事DDの意味
「人事DD」はⅯ&A用語で、「人事デューデリジェンス」の略語です。組織や人材の面におけるデューデリジェンスのことを指します。
デューデリジェンスとは、買収したい企業の中身について調査を行い、その企業が抱えるリスクを洗い出す作業のことです。
一般的にデューデリジェンスはDDと略されます。DDの対象は、財務・ビジネス・IT・法務・人事など広範囲にわたることが特徴です。その内、人事面でのDDのことは人事DDと呼ばれ、「HRDD」と表記されることもあります。労務分野のDDを含む場合は、「人事労務DD」と呼ばれます。
人事DDの重要性
M&Aの成功要因はさまざまありますが、その中でも「人」の要素は特に重要です。なぜならば、人材が収益の源泉となっているケースが多いためです。
たとえビジネスモデルや現時点での業績が優れていても、人事の部分に問題がある(または買収後に生じた)場合、M&A後に想定していたシナジーを得られなかったり、業績が大幅に悪化したりするおそれがあります。
わかりやすい例を挙げると、優秀な人材のモチベーション低下や離職によって業績が悪化する事態が考えられます。また、下記の事態も想定されます。
- 人材の価値を見誤ることで、企業価値を正しく評価できない
- 簿外債務(未払賃金など)や法的問題(違法な残業など)を引き継いでしまう
- 組織文化が大きく異なる企業を買収し、PMIに苦労する(失敗する)
こうした事態を未然に防ぐ、もしくは対策を万全にするためにも、人事DDは重要なプロセスです。
関連記事:デューデリジェンス(DD)とは?意味や実施の流れをわかりやすく解説
人事DDの主な3つの目的
人事DDの目的は、主に以下の3つです。
1.人事に関するリスクの抽出
Ⅿ&Aにおけるリスクの1つが、売り手企業の従業員のモチベーション低下です。
Ⅿ&Aで当初想定していたシナジー効果が得られない原因は、買収された側の企業の従業員が出身会社のやり方にとらわれ、うまく連携が取れないことにあります。
また、モチベーションの低下は、幹部や優秀な社員の流出につながることもあります。
そのほか、M&Aを破談にする要因となる「ディールキラー」の有無を調べることも目的です。途中でM&Aが破談になった場合、それまでに費やしてきた時間とお金が無駄になってしまいます。あらかじめディールキラーの分析を行うことが大切です。
2.企業価値の評価
企業価値評価とは、企業自体の価値や株式の価値を算出することです。買収予定金額に対して適正な金額であるかを判断するために行います。
企業価値評価は、マーケットアプローチ・インカムアプローチ・コストアプローチという3つの価値評価方法で、企業価値・株価の価値を算出するものです。
ただし、上記の価値評価だけでは企業の本当の価値は図れません。そこで人事DDを実施することによって、まだ気づけていなかったさらなる組織・人材面の価値を発見することが可能になります。また、隠れていたリスク面を見つけ出すことも人事DDの目的です。
人事DDにより、企業価値価格は増減します。
3.人事PMIの支援
会社統合後、迅速にシナジー効果を得るために行うマネジメントを、PMI(Post Merger Integration) と呼び、人事面での視点が入ったPMIは人事PMIと呼称されます。
人事DDを行うことで、人事システムや、人材に関する育成方法の違いなどが可視化できます。人事DDの結果は後々の人事PMIに活かすことが可能です。
人事DDの対象
人事DDの対象は多岐にわたります。
ここでは、人事DDの対象の項目とその注意点を解説します。
1.人事制度
業務内容が同じでも、会社が異なれば処遇水準も異なります。
2つの異なる人事制度を統合させることは、Ⅿ&A後に各社の従業員同士に軋轢を生まないためにも重要です。Ⅿ&Aを行う前の各社の人事理念を理解し、一貫性のある人事管理を目指します。
ただし、企業風土や過去の労使交渉の経緯などにも違いがあるため、人事制度を表面的に統合させるだけでは内部まで統合させることはできず、従業員が不安や不満を抱き、トラブルや人員流出の要因になり兼ねません。そのため、人事制度の統合は慎重に行いましょう。
2.人事構成
従業員の人数のほか、従業員の役職や勤続年数についても、調査し、分類しておくことが重要です。
特に買収される側の従業員は、今までの自分のポストや組織構造が変わってしまうのではないかと不安を感じていることが多いです。
Ⅿ&A後にどの人員をどのポストに配置し、組織をどのように再構築していけばよいか検討を重ねて、できる限り双方の従業員から不満が出ないように人事構成を行いましょう。
3.役員やキーパーソン
売り手企業の役員やキーパーソンとなる人員へのインタビューはⅯ&Aを成功させるために大切な過程です。その際は従業員の精神面に細心の注意を払いましょう。
詳細な内容のインタビューを受ける人員は、自分が話す内容によっては、解雇や大幅な減給などの不利益を被る可能性があるのではないか、と不安に感じる可能性があります。
そういった不安に気付けないままⅯ&Aを押し進めると、役員やキーパーソンのモチベーションが下がり、優秀な人員の流出につながりかねません。
相手の心情を慮り、丁寧な対応を心掛けましょう。
4.人件費などのコスト
人件費などのコスト面の確認も重要です。売り手企業の従業員の給与やその他の人件費について正確に把握します。その他の人件費とは、厚生年金基金や健康保険組合の福利厚生制度、そして退職金制度です。
退職金や年金制度においては、簿外債務が発生していないかを確認することも忘れないようにしましょう。
また、残業の発生状況を正確に把握し、未払いの残業代など賃金の未払いや、36協定に触れる過度な残業などの法令違反が行われていないかの確認も大切です。
5.労使関係
売り手企業に労働組合がある場合、その存在がⅯ&Aの実現に影響を及ぼす可能性もあります。そのような事態を避けるためにも、売り手企業において健全な労使関係が保たれているかを調査します。会社と労働組合間の労働協約の開示請求などは法務DDの分野ですが、労使の間に訴訟やストライキなどのトラブルがなく、労使関係が健全といえるかの確認は人事DDの範疇です。
また、労働組合がない企業の場合でも、労働者(従業員)と使用者(会社)の間でトラブルが起きていないかを確認します。トラブルが起きている場合には、トラブルがどのような内容であるかを丁寧に調べて把握しておきましょう。
6.労働契約などの労務関係
労働契約などの労務関係の確認作業も行います。売り手企業の労働協約や労使協定の確認、就業規則、従業員との雇用契約などの確認を行いましょう。コンプライアンス上の問題の有無に関しても調査し、継承するにあたって問題がないかを確かめてください。
7.企業文化
企業にはそれぞれ文化があり、同じ業種の会社であっても企業文化は異なります。
その価値観は仕事のスタイルに反映されるため、売り手企業の企業文化をよく理解する必要があります。売り手企業の企業文化を無視して統合し、買い手企業の企業文化に無理に沿わせるのでは、売り手企業出身の従業員は戸惑い、不満を持つようになるでしょう。いつまでたっても双方の従業員同士が相容れないという状況を生んでしまいます。
お互いの企業文化をうまく融合させ、仕事のスタイルや方針を新しいものにすることで、初めてシナジー効果を発揮します。
8.組織構造・職務権限
買収対象となる企業の組織構造や職務権限・分掌を把握します。基本的には組織図を分析しますが、組織図がなかったり、実態に沿わない組織図となっていたりする場合もあります。そのため、経営陣や従業員へのヒアリングも実施し、実態を正確に把握することが重要です。
職務分掌(組織の担当者が行う業務を配分し、責任の所在と業務範囲を明確にすること)が曖昧となっていたり、指揮命令系統が錯綜(1人の部下が複数人の上司から指示を受けているなど)していたりする場合、改善の必要性があると判断できます。
9.労災状況
主に、労災事故の発生度合いや補償の進捗などを確認します。
高頻度で発生している場合、原因を特定し、改善策を検討する必要があります。労災の頻度が高いと、余分な支出の発生源となり得るだけでなく、従業員の安全を脅かしたり、離職や企業イメージの低下を招いたりするおそれがあるためです。
また、労災に対する補償が済んでいない部分は、貸借対照表に計上されない簿外債務に該当します。簿外債務を引き継ぐと業績の悪化を招くリスクがあるため、買収を検討する際には注意が必要です。
10.内部通報制度
内部通報制度とは、組織内で発生している違法行為や倫理に反する行為、不正行為などに関して、特定の窓口に報告する仕組みです。上場企業を中心に、企業内部の不正を明らかにし、改善を促す制度として導入されています。
内部通報制度の有無や内容・運用状況が確認対象となります。通報窓口の所在や数、通報後の手続きプロセス、内部通報分野の責任者などを調査します。調査の際には、消費者庁のガイドラインや公益通報者保護法を確認することが一般的です。
11.有期契約労働者の雇用期間に関する事項
有期契約労働者とは、半年などの単位で労働契約を締結・更新している労働者であり、アルバイトや契約社員などが該当します。有期契約労働者の有無や、有期雇用契約期間の実態を把握する必要があります。
e-Gov「労働契約法」によると、通算で有期雇用契約が5年を超えて繰り返し更新された場合には、労働者の申し出によって無期労働契約に転換されます(18条)。また、非合理かつ不適切な雇止めは認められず、従来の有期労働契約と同一の条件で契約が更新されます(19条)。
社員が有期雇用か無期雇用かどうかは、会社の中長期的な人事施策や資金繰りにも影響する可能性があります。したがって、あらかじめ実質的に無期雇用となっている社員の有無や、今後無期雇用に転換し得る社員の数などを確認することが重要です。
参照元:e-Gov「労働契約法」
人事DDの流れの一例
この章では、人事DDの流れの一例をご紹介します。
人事DDは、売り手企業との基本合意契約を済ませた後、最終条件交渉の前の段階で行います。
1.秘密保持契約の締結
Ⅿ&Aの基本合意契約が済むと、売り手企業の人事責任者が集まって秘密保持契約を締結するのが一般的です。これは本格的な統合の交渉を開始する前に行う契約です。
人事DDでは、売り手企業の顧客情報や従業員個人の家族構成や報酬額などの個人情報も含め、多岐にわたる非常に重要なデータを集めます。そのため、秘密情報を第三者に漏洩しない旨を定めた契約書を締結します。
また、買い手企業と売り手企業がⅯ&Aのために議論を重ねる過程で、買い手側も自身の情報を開示する可能性があります。そのため、秘密保持契約は買い手企業にとっても重要な契約です。
この契約を交わした後は、得た情報を注意して管理する義務があり、第三者に漏洩してはいけません。特に個人情報の取り扱いには十分な配慮が必要です。
2.売り手による資料提出
DDを進めるうえで売り手企業に提出を求める資料はたくさんあります。
基本的に以下の通りです。
- 会社案内
- 組織図
- 従業員名簿
- 株主名簿
- 定款
- 就業規則、退職金規定等の規定資料
- 三期分の決算書及び確定申告書
- 商業登記簿謄本
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録
- 月次試算表
- 経営計画書
- 固定資産台帳
- 固定資産納税通知
- 不動産売買契約書
- 不動産登記簿謄本
- 不動産の図面、その他不動産関連資料一式
- 取引先との契約書一式
- リース契約書一式
- 知的財産関連資料
- 訴訟、紛争関連資料
- 行政許認可証一式
- 行政指導に関わる資料
上記以外にも必要となる資料が出てきた場合、追加で提出を求めます。
3.買い手による就業条件の分析
次に、売り手企業の就業条件の確認を行います。始業時間や休憩時間、休暇や休日の設定が買い手企業とどのように違うのかを確かめます。従業員が出張する場合の出張旅費の規定なども会社によって異なるため、細部に至るまで丁寧な分析が必要です。
就業条件の分析は、双方の条件を存続させた場合に新会社に与える財務的な影響を検証するために大切な作業です。
また、売り手企業がこれまで適用していた就業条件が、法令違反をしていなかったかの確認も行います。
4.買い手による人事制度の分析
売り手企業の組織構成の確認も行います。どの部門にどの程度の人数の従業員が就いているのかなど従業員の人員分布の確認や、全体の年齢構成も調査します。
そして、等級制度・昇格や降格など評価の基準・報酬水準など、基幹人事制度の仕組みの確認も重要です。
例えば、昇格や降格の評価基準が、買い手企業は実力主義であるのに対して、売り手企業は年功序列であるという大きな差異がある場合を想定してみましょう。等級が同じであってもどちらの企業出身かによって能力に明白な差が出る可能性もあります。そのような事態は統合後のトラブルの火種になり得るでしょう。
また、基幹人事制度の分析を行うことで人件費の水準が把握でき、統合前から統合後にかけての人件費の推移が算出できます。
5.年金や退職金制度の分析
買収後に発生する退職金や年金の金額を見積もります。また、自社(買い手企業)と売り手企業における年金・退職金制度の相違点を明確化し、「統合に伴う財務・会計に対する影響把握」や「統合方針の検討」を行います。
こうした分析の実施により、買収後に発生する支出を加味した上で、買収金額の査定や買収可否の検討、買収後の戦略策定を行いやすくなります。また、年金・退職金制度の統合をスムーズに行いやすくなる効果も期待できるでしょう。
6.企業文化などの分析
次に売り手企業の企業文化の分析です。
- どのような組織文化や価値観を持っているのか
- 従業員の思考様式は成果重視なのかプロセス重視なのか
- 従業員同士のコミュニケーションは取れているか
- どのようなタイプの従業員が多いのか
- 会社として目指す姿はどのようなものか
- 人事のマネジメントの方針はどのようなものか
- 業務遂行上のルールはあるのか
- 社内で独特の慣例などはないか
など、さまざまな観点から分析します。
また、給与計算や勤怠管理の方法や、どのような人事システムを使用しているかも確認しましょう。売り手企業のカラーや運営スタイルを確認することが、統合後の新会社のスムーズな運営に役立ちます。
7.マネジメントインタビュー
マネジメントインタビューとは、売り手企業の経営陣や従業員に行うインタビューのことです。資料だけでは見えてこない会社の雰囲気を掴み、経営陣や役員・従業員の心境や人となりを知るために行います。統合後、新会社で共に働くメンバーになる人たちの本音を知ることは、Ⅿ&Aを成功させるために非常に貴重な機会です。
マネジメントインタビューは通常、税理士や弁護士、公認会計士など、士業の先生に同席してもらいます。ここで気を付けたいのが、インタビューする側(買い手企業側)の雰囲気です。インタビュー前に同席してもらう士業の先生方と打ち合わせをして、インタビュー相手が身構えたり緊張したりしないよう、圧迫感のない雰囲気作りを心掛けましょう。
8.人事DDの結果報告・分析・データの活用
調査が完了したら、M&A仲介会社などの専門家から買い手企業に対して結果報告が行われます。買い手企業では結果を分析し、「人事面の統合をどのように図っていくか」「買収後にどのような人事制度を作り上げていくべきか」を検討します。
ただし、人事面の統合や買収後のリスクへの対処、人事戦略の策定などを一度に完璧に行うことは難しいため、優先的に取り組む事項とそうでない事項を分けて考えることがポイントとなります。
また、必要に応じて人事DDの調査結果をビジネスや財務など、他の分野のデューデリジェンスに役立てることも重要です。この点に関しては、次項でくわしくお伝えします。
人事DDの注意点
ここでは、Ⅿ&Aを成功させ想定していたシナジー効果を得るために、人事DDを進める上で注意したい点をいくつか紹介します。
ポイント1:従業員の心情に気を遣う
Ⅿ&Aを行う際、買い手側企業の従業員も一定の緊張や不安は感じると予想できますが、売り手側企業の従業員はより大きな不安を抱えます。自分たちの労働環境がどのように変わるのか、今までとこれからの評価は変化するのかなど、心配事が多くなるでしょう。
従業員のそういった心情に気を遣いましょう。
人事DDを進める段階で従業員の心情への配慮が不足していたり、コミュニケーションがうまく取れないまま買収を進めた場合、優秀な人材の流出にもつながってしまいます。
ポイント2:買収額に見合った人事DDを行う
人事DDは、多くの調査や専門的な分析が必要となるため、専門家に委託する部分が多くなります。当然、それに伴って費用も時間もかかります。
Ⅿ&Aを失敗させないためのリスクの抽出や専門知識が必須の調査は必要な出費といえるでしょう。しかし、人事DDの対象範囲は広く、調査に時間がかかる内容も多いため、費用が嵩む可能性もあります。買収額に見合わない出費は本末転倒です。コスト意識を持ちましょう。
ポイント3:クロスボーダーM&Aの案件は慎重に取り扱う
クロスボーダーM&Aとは、海外企業とのⅯ&A案件や、主なビジネスを海外展開している企業とのM&A案件を指します。
クロスボーダーM&Aの案件では、日本と海外の税制や法制度の違いなどが壁となることがあります。国内企業同士のⅯ&Aと比べ、人事DDの範囲も内容も多岐にわたり、それに伴う手続きも非常に複雑なものとなります。価値観の擦り合わせをしっかり行いましょう。
ポイント4:M&Aスキームによって労働契約の引き継ぎが異なる
M&Aスキーム次第で労働契約に対する影響は異なるため、あらかじめ影響を予測・対策しておくことが重要です。
株式譲渡や株式交換・移転では、株主構成のみが変更となるため、労働契約の移転に特段の法的規制や手続きはありません。また、合併では、労働契約の内容がそのまま引き継がれます。
一方で事業譲渡では、労働契約の引き継ぎに際して、労働者から個別に同意を得る必要があります。
会社分割では、吸収分割契約もしくは新設分割契約の定めによって、移動する労働契約の範囲が決定されます。承継対象から除外される、もしくは強制的に承継対象とされることで、労働者側が不利益を被るリスクがあります。
そのため、法律の規定により、一定の要件に合致する従業員は異議の申し出を行い、承継の対象から外れる(もしくは対象となる)ことが可能です。
ポイント5:調査結果を別分野のDDにも活かす
人事DDの調査範囲は、法務やビジネス、財務などの別分野と被っている部分もあります。例えば退職金や年金は財務DD、人事構成やキーパーソンはビジネスDDとの関係性が高いです。
そのため、デューデリジェンスの調査結果を最大限活かすには、人事DDの調査データを法務など別分野のDDにも共有することが効果的です。反対に、別分野におけるDDの調査結果が人事DDの手助けとなるケースもあるでしょう。
参照元:e-Gov「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」
人事DDの費用相場
人事DDは、一般的にM&Aや人事労務の専門家にアウトソースします。この章では、仲介会社や社労士などの士業に依頼する場合にかかる費用の相場を解説します。
仲介会社に依頼する場合
M&A仲介会社に依頼する場合、デューデリジェンス費用に人事DDの部分が含まれているケースがほとんどです。デューデリジェンスにかかる費用は、人事を含めて合計100〜200万円程度が相場です。1日あたりでは、1〜5万円程度となります。
また、完全成功報酬制の仲介会社であれば、人事DDの費用も成功報酬に含まれます。成功報酬は、取引金額の1〜5%が相場です。
社労士などの士業に依頼する場合
社会保険労務士や弁護士などの士業に人事DDを依頼する場合、人事DD単体で考えると、仲介会社よりも費用は高い傾向があります。一般的には、人事DD単体で50〜100万円程度、時間単価では1〜10万円程度が相場です。
アウトソース先に関係なく、人事DDには相応の費用がかかります。また、他分野のDDも含めると多額の費用がかかります。したがって、各会社の状況に応じて、重視したい分野を絞った上でDDを実施することが、費用対効果を高める上でおすすめです。
まとめ
人事DDは、Ⅿ&Aを進める中で、人事に関わるリスクを避けるために必要不可欠なステップです。
クロスボーダー案件の場合、Ⅿ&Aについての豊富な経験に加え、海外の法制度や慣習に関わる専門知識も必要になります。
人事PMIの過程では、売り手側企業の人事制度のよい面を取り入れるなど、売り手企業側の立場の尊重も大切です。双方が満足できるM&Aにしていくことが、統合後によりよい人事制度を設けるうえで重要なポイントです。
丁寧に人事DDを行い、大きなシナジー効果を得て、Ⅿ&Aを成功に導きましょう。
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