M&Aの意向表明書(LOI)とは?サンプルや書き方のポイントなどを解説

2024年3月26日

M&Aの意向表明書(LOI)とは?サンプルや書き方のポイントなどを解説

このページのまとめ

  • 意向表明書とは、買い手企業が売り手企業に対して買収の意向を示す書面のこと
  • 意向表明書には法的拘束力はなく、省略される場合もある
  • 意向表明書とは違い「基本合意書」には内容に関して双方の合意がある
  • 意向表明書はM&Aの状況や交渉内容に応じて内容を調整する
  • 意向表明書の作成は、専門性を持ったM&Aアドバイザーに相談するのがおすすめ

M&Aで企業買収を検討しているなかで、意向表明書の存在を初めて認識した方もいるでしょう。意向表明書は法的拘束力はないものの、買い手としての意向を伝えることで取引をスムーズに進める役割を果たします。

本記事では、意向表明書の主な役割や作成のポイントなどを解説します。また、基本合意書との違いや作成に悩んだ場合の相談先についてもご紹介するので、最後まで目を通してみてください。

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意向表明書(LOI)とは

意向表明書とは、M&Aの過程において、買い手が売り手に提出する書類のひとつです。英語では「LOI(Letter of Intent)」と呼ばれることもあり、買収の意思表示をする目的で作成されます。

書式は法律で定められていませんが、多くの場合、買い手の会社概要や購入希望金額、M&Aのスケジュールなどが記載されています。
M&Aの取引を円滑に進めるカギとなるため、慎重に作成・提示する必要があります。

意向表明書に関して把握しておきたい2つのポイントは、以下のとおりです。

  • 意向表明書の法的拘束力はない
  • 意向表明書は省略できる場合もある

それぞれを詳しく解説します。

意向表明書の法的拘束力はない

意向表明書は、法的な拘束力をもつ書類ではないとされるのが一般的です。意向表明書の受け渡しがおこなわれるのは、デューデリジェンスが完了していない段階であるため、買い手企業の意志を伝える程度のものとして扱われます。

最終的な判断は、デューディリジェンスの結果を受けてからとなるため、意向表明をしていたからといって必ずしも契約が成立するわけではありません。ただし、意向表明書に法的拘束力がないとはいっても、M&Aをスムーズに実施するという点においては、重要な役割を果たす場合があります。

意向表明書は、購入の意志を示すだけではなく、希望の買収金額やスキームなどを記載するのが一般的です。双方の合意で契約が済んだ後、買い手企業が合理的な理由なく一方的に意向表明書の内容を変更することは、実質難しいでしょう。

つまり、意向表明書には法的拘束力はないものの、M&Aにおいて重要な書類であることは間違いありません。

意向表明書は省略できる場合もある

複数の譲受企業と交渉を実施しているケースでは、各企業から意向表明書を受け取ることで、自社の条件と合う企業を選別していくのが一般的です。一方で、具体的にM&A交渉を進めている企業が1社のみである場合は、比較の必要がなくなるため、意向表明書が省略されることもあるでしょう。

先にもご紹介したとおり、意向表明書自体には法的拘束力がないため、M&Aの実施に必ずしも必要な書類とは定められていないのです。

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意向表明書を提出するタイミング

意向表明書はデューデリジェンスの完了前に受け渡しされるとお伝えしましたが、具体的には初回のトップ面談を終えたタイミングで提出されるのが一般的です。交渉を前向きに進めていくという姿勢を示すために、タイミングを逃すことなく提出する必要があります。

後ほど詳しくご説明しますが、意向表明書には、企業概要や買収予算、暫定スケジュールなどが記載されています。売り手企業が意向表明書に記載された情報を確認し問題が無ければ、より具体的に内容をまとめた基本合意書を締結したうえで、デューデリジェンスに進むという流れです。

意向表明書と基本合意書の違い

意向表明書と混同しやすい書面に「基本合意書」があります。

基本合意書とは、意向表明書を受けた売り手側が合意をし、双方がM&Aを進める意思を確認した際に取り交わす書面です。意向表明書と同じく、基本的な事項に法的拘束力はありません。

基本合意書は「MOU(Memorandum of Understanding)」と呼ばれます。
基本合意書を「LOI」と呼ぶケースもありますが、一般的には意向表明書が「LOI」、基本合意書が「MOU」と表記されます。

意向表明書と基本合意書の違いを、以下の表にまとめました。

 

意向表明書(LOI)

基本合意書(MOU)

目的

買い手が売り手に対して買収の意向を表明して、大まかな条件を提示する。その後のM&Aを、円滑に進める目的を持つ

売り手と買い手の双方が、売却(買収)条件において合意した内容を書面にし、確認する目的を持つ

出す時期

秘密保持契約書の締結後、またはトップ面談の前後

トップ面談後、またはデューデリジェンスの実施前

記載内容

  • 買い手側の意向
  • M&Aを進める基本条件
  • 買い手側と売り手側が合意した内容
  • M&Aを進める具体的な条件

役割

買い手から売り手への意思表明両者間に合意はない

両者が、条件面において合意に達したことを文書化する

M&Aを進めるうえでともに重要な書類となるため、違いを理解しておくことが大切です。

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M&Aの際に取り交わされる基本書類

M&Aの各段階において取り交わされる基本書類は、以下の4つです。

  • 秘密保持契約書(NDA/CA)
  • 意向表明書(LOI)
  • 基本合意書(MOU)
  • 最終契約書(DA/SPA)

ここでは、意向表明書以外の3つについて解説します。

秘密保持契約書(NDA/CA)

秘密保持契約書は英語で「NDA(Non Disclousure Agreement)」や「CA(Confidential Agreement)」とも呼ばれます。

秘密保持契約書とは、M&Aの検討において知り得た企業情報を、第三者に漏らさないことを誓う書類です。M&Aの検討は機密事項であり、もし外部に漏洩してしまうと、売り手企業の損失につながるおそれがあります。

締結のタイミングは、売り手側が買い手側に情報を開示する前です。秘密情報の開示範囲や損害賠償義務、契約の有効期間などを規定します。

基本合意書(MOU)

基本合意書(MOU、Memorandum of Understanding)は、売り手と買い手の双方で合意したM&Aの内容を詳細にまとめた書類です。

デューデリジェンスの実施要綱や独占交渉権など、意向表明書よりも具体的な内容について記載されており、M&A実施の条件を確認する役割があります。

双方の意思がある程度固まった時点で作成されます。その後は基本合意書に沿ってM&Aが実施されます。

最終契約書(DA/SPA)

最終契約書とは、M&A実施に向けて取り交わされる、正式な契約書のことです。

英語だと「DA(Definitive Agreement)」や「SPA(Stock Purchase Agreement)」と表記されることもあります。

双方の最終的なM&Aの意思決定を確定する書類であるため、最終契約書には法的拘束力が生じます。買収価格や買収条件、クロージング条項などの詳細が記載されます。

関連記事:M&Aの契約書・記載項目をわかりやすく解説【ひな型あり】

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意向表明書の書き方のサンプル

ここでは、意向表明書のサンプル書式を載せます。

意向表明書には定められた雛形やテンプレートはありません。M&Aの手法や状況の違いによって項目は適宜変更してください。

今回はM&Aの手法に「株式譲渡」を選んだ場合の例文を掲載します。


〇〇〇〇年〇月〇日(=提出日)

意向表明書

〇〇株式会社(=相手の売り手側の企業)
代表者 代表取締役 〇〇 〇〇 殿

所在地 東京都渋谷区〇〇〇 2番24号 
株式会社〇〇〇〇〇(=買い手側の企業)
代表者 代表取締役 〇〇 〇〇   印

拝啓 貴社におかれましては、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

このたびは、貴社の株式譲渡のご案件(以下「本件」といいます)につきまして、弊社に検討の機会をくださいまして、誠にありがとうございます。

ご開示いただきました資料をもとに社内で検討しました結果、弊社が本件に大きな関心を抱いておりますことを、以下のとおり表明いたします。

なお本書面にて表明する弊社の意向は、現時点における公開情報及び貴社より受領した諸資料のみに基づくものです。追加の情報及びより詳細な企業調査の結果等によって変更が生じる可能性がありますことをお含み置きいただきますよう何卒お願いいたします。

敬具

1.弊社の概要

会社名    株式会社〇〇〇〇〇           
本店所在地  東京都渋谷区〇〇〇 2番24号            
代表者名   代表取締役 〇〇 〇〇               
事業概要   BtoC向けWebサイト制作、Webマーケティング事業

2.希望する株式譲渡の価額、取引形態

希望価額:〇千万円~〇億円
取引形態:株式譲渡(100%発行済株式の譲り受け) 

3.譲渡価額の算出方法

受領いたしました貴社の資料情報に基づき、DCF法を採用して計算しています。

4.本件を希望する背景

顧客の拡大と収益の向上を目指し、M&Aを検討いたしました。
弊社は〇〇分野に強みがあるものの、△△の領域は開拓を進めている段階です。
貴社が誇る△△のサービスに関する卓越したノウハウと、優秀なエンジニアの皆さまのお力を引き継ぎ、貴社と弊社の連合グループとしてさらなるビジネスチャンスを掴みたいと考えております。

5.貴社役員及び従業員の処遇につきまして

従業員:全員を引き続き雇用し、待遇を同条件にて維持
取締役:任期までは引き続き、同条件にて委任契約を継続

6.対価の支払い方法と資金調達方法

支払い:貴社指定の口座宛に銀行振込にてお支払い

資金調達:手元の現預金及び一部借入金によって調達

7.スケジュール

基本合意の締結:〇〇〇〇年〇月〇日
デューデリジェンスの実施:〇〇〇〇年〇月〇日
最終合意契約の締結:〇〇〇〇年〇月〇日
クロージングの実行:〇〇〇〇年〇月〇日

8.デューデリジェンスについて

調査方法:弊社が指定する専門家による調査
調査範囲:財務、税務、法務、ビジネス
期間:〇〇〇〇年〇月〇日~〇〇〇〇年〇月〇日
費用:弊社の全額負担

9.独占交渉権

〇〇〇〇年〇月〇日まで、弊社との独占交渉権を認めていただきたく存じます。
期間中は他社と本件に関する協議をなさらないようお願い申し上げます。

10.本意向表明書の有効期限

本意向表明書の有効期限は、以下のうち最も早く到来した日といたします。

(1)基本合意の締結日
(2)最終合意契約の締結日
(3)本件の検討中止を表明した日
(4)〇〇〇〇年〇月〇日

11.秘密保持

本意向表明書の存在及び内容につきまして、第三者に一切漏洩しないようお願いいたします。

12.法的拘束力

本意向表明書は暫定的な意向を示すものであり、法的拘束力は有しないものといたします。

以上


上記のサンプルを参考に、分かりやすい意向表明書を作成しましょう。
作成の際は、情報に誤りがないかしっかり確認してください。

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意向表明書に書くべき内容

意向表明書に記載する内容は、買収側の企業概要や買収スケジュール、検討している買収価格などさまざまです。
この章では、意向表明書に記載する重要度の高い項目とその内容について解説します。

  • 買い手企業の概要
  • M&Aの目的
  • M&Aのスキーム
  • M&Aの対象範囲
  • 譲渡希望価格およびその算定根拠
  • 資金の調達方法
  • スケジュール
  • 有効期限
  • 買収後の経営方針
  • 独占交渉権取得希望の表明
  • 交渉の窓口
  • デューデリジェンスの範囲や内容
  • 役員や従業員の処遇

なお、紹介する項目すべてを意向表明書に記載する必要はありません。M&Aの状況や交渉内容に応じて内容を調整しましょう。

買い手企業の概要

意向表明書の冒頭には、買い手企業の会社概要を記載します。記載内容が充実していると、売り手企業の判断材料が増え、優先的に取引を進めてもらえる場合があります。

具体的な記載内容は、商号・代表者氏名・会社所在地・事業内容・沿革・資本金額・財務状況・グループ概要などです。買い手がグループ経営をしているなら、関係会社の商号も記載しましょう。会社案内用の資料を別途添付することも効果的です。

M&Aの目的

買い手側のM&Aを実施する熱い意思や理由、目的などを記載します。M&Aの目的に加えて、今後のビジョンを具体的に記載することで、売り手側に好印象を与えられます。

例えば、シナジー効果の有無、事業規模・エリアの拡大、事業の多角化、知名度の向上、新規事業への参入、設備・人材の獲得などが挙げられます。

M&Aの実施が売り手にとって魅力的に映るような内容を具体的に盛り込みましょう。

M&Aのスキーム

スキームとは、株式譲渡や事業譲渡など、M&Aを実施する手法・形態のことです。意向表明書では、買い手側が希望するスキームを提示します。

株式譲渡の場合は、検討している取得株数や取得割合、事業譲渡の場合は取得を検討している事業を記載します。

スキームの選択は売り手側にとっても重要であるため、ある程度相手に譲歩したスキームを提案することが、交渉を円滑に進めるポイントとなります。

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M&Aの対象範囲

意向表明書には、M&Aの対象範囲を記載しましょう。対象範囲を決めることで、売り手企業が売却の可否を判断しやすくなります。

M&Aで取引される範囲はさまざまなものがあり、一部の事業を取引したり、会社ごと買い取ったりと多種多様です。対象範囲をあらかじめ提示することで、売り手側はM&A実施の判断をしやすくなり、その後の進行を円滑に行えます。

また、M&A実施範囲を決めた経緯や、M&A後に得られるシナジーなど、将来性や相手へのベネフィットを、熱意を込めてアピールしましょう。

譲渡希望価格およびその算定根拠

買い手側の譲渡希望価格を提示しましょう。

売り手企業は、多くの場合、買収価格をM&A実施の重要な判断材料としています。後に価格の変更を交渉される場合があるため、譲渡希望価格は「○○円~○○円」と幅を持たせた価格帯で提案しましょう。

また、価格の算定根拠も合わせて記載することがポイントです。収益性や市場価値、保有純資産などから企業価値を算定したと併記することで、提示価格の妥当性が増します。

なお、譲渡価格は、デューデリジェンス後に変更しなければならない場合もあるため、価格が当初より下回る可能性がある旨を記載すると、トラブルを未然に防げます。

資金の調達方法

M&Aの実施にかかる資金をどのようにして調達するかを記載します。

資金の調達方法は、多くの場合、自己資金と金融機関からの借入れで構成されますが、より細かく記載することで、計画性や信頼性をアピールできます。例えば、増資・内部留保・LBO・資産売却・補助金・助成金の利用などが資金調達方法として挙げられます。

ただし、金融機関から多額の借入れを行う場合、売り手側に支払能力を疑われるおそれがあります。資金確保の事実を伝えるために、目途の立った資金源を記載しましょう。

スケジュール

スケジュールの項目では、M&Aを進行するスケジュール予定を記載します。

この項目をもとに交渉が進められるため、現時点での予定、M&A実施の流れをできるだけ詳細に提示する必要があります。

記載内容は、基本合意締結日・デューデリジェンス実施日・最終契約締結日・クロージング実行日などです。ただし、スケジュールは交渉が進むにつれて適宜変更される可能性があります。変更があった場合は、売り手企業への報告を忘れないようにすることが重要です。

有効期限

意向表明書の記載内容がいつまで有効なのかを示します。有効期限を設定することで、売り手側が意思決定しやすくなるため、M&Aのプロセスが円滑に運びます。

多くの場合、売り手側が提示する期限に合わせて決めますが、買い手側からの提案も可能です。また、基本合意書や最終契約書など、取引の段階ごとに区切って期限を提示することもできます。

買収後の経営方針

M&Aが完了した後の経営方針をあらかじめ決めておきましょう。

取引後の動向は、売り手企業にとって重要な判断要素の一つとなります。M&Aの経営方針を明確に提示することで、売り手側に買収後のビジョンをイメージさせて、買収に伴う不安を和らげることが可能です。

具体的な記載内容は、事業戦略・M&A後のシナジー・組織の再編・M&A後の資金計画・M&A後の利益計画・取引先への対応などが挙げられます。この項目でも、M&Aにかける熱意をアピールできれば、売り手側に良い印象を与えることができます。

独占交渉権の取得希望の表明

入札方式のM&Aでは、複数の買い手が付く場合もあります。そこで、買い手企業を自社だけに限定する「独占交渉権」を付与してもらえるように、意向表明書で願い出るとよいでしょう。

本来は基本合意書の締結時に付与される権利ですが、意向表明書の提出前に双方の意思が固まっていれば、意向表明書に記載するケースもあります。

独占交渉権は売り手に不利な条件となるため、有効期限や価格改定などの重要事項の変更は売り手の合意が必要であるという旨も併記すれば、承諾するハードルを下げられます。

交渉の窓口

意向表明書には、M&A交渉の窓口を記載する項目も記載できます。
取引の際、どこに連絡すればよいのか、電話番号やメールアドレス、担当者氏名などを盛り込むことで、親切な印象を与えます。

また、M&A仲介業者を取引の窓口として利用する場合は、その旨を記載して、業者の連絡先を記載することで信頼性が高まるでしょう。

優先度の高い項目ではありませんが、売り手と買い手のコミュニケーションを円滑化させる効果が期待できる項目といえます。

デューデリジェンスの範囲や内容

デューデリジェンスとは、売り手企業の財務や人事労務、法務、コンプライアンスなどビジネスに関わるさまざまなリスクを調査することです。

この項目を提示することで、売り手側がデューデリジェンスの事前準備をすることができるので、M&A交渉がスムーズに進められます。

意向表明書では、デューデリジェンスの実施範囲や内容、実施期間を記載します。

デューデリジェンスを実施する範囲に関しては、細かく決めすぎると売り手側が身構えてしまうため、記載内容については慎重な判断が求められます。

役員や従業員の処遇

M&A後に役員や従業員の処遇をどうするのかについて、具体的に提案しておきましょう。
M&Aの実施後は、売り手企業の組織再編が行われることが多く、役員や従業員の人事の刷新も合わせて実施されます。待遇が現状より低い、または、改善されない場合は、M&A実施後に従業員の反発を呼び、離職につながってしまうでしょう。

給与や福利厚生など、今よりも良い待遇を提示すれば、売り手企業から優先的に交渉を進めてもらいやすくなります。

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【買い手側】意向表明書の作成内容の6つのポイント

入札形式のM&Aでは、意向表明書の内容が充実していれば、売り手側から優先的に交渉してもらえる可能性が高まります。

ここでは、買い手企業が意向表明書を作成する際に、内容に盛り込むべきポイントを紹介します。

  1. M&Aの目的とメリット
  2. 買収後のシナジー効果を含んだ価格設定
  3. M&Aに対する熱意
  4. 売り手の希望を満たした条件提示
  5. 競合他社より有利な条件
  6. M&Aアドバイザーの事前確認

以下で詳しく解説します。

1.M&Aの目的とメリット

M&Aを行う目的と得られるメリットを強くアピールしましょう。売り手側からすると、金額面だけでなく買収後の行く末も気になるポイントです。
M&A後の経営プランや、将来ビジョンが具体的に想像できる内容を盛り込むことで、売り手側にM&Aを前向きに検討させる効果が期待できます。

また、M&A後のメリットを随所に記載することも重要です。認知拡大につながったり、新規事業へ挑戦できたりするなど、魅力的なシナジーを提示することが効果的です。

2.買収後のシナジー効果を含んだ価格設定

取引価格の設定においては、M&A後に売り手側が得られるシナジー効果を計算に入れた額を提示しましょう。価格の高さは、売り手企業を高く評価しているという態度を示すことにもつながり、好印象を与えます。

売り手企業が所有する経営ノウハウや技術力と、買い手企業とのかけ合わせによって得られるシナジー効果を存分にアピールしましょう。

3.M&Aに対する熱意

M&Aに対する熱意をアピールすることも効果的です。熱意を伝えることで、ほかの買収候補社との差別化や、企業としての将来性を評価してもらえます。

売り手企業は、同じ条件で入札している買い手企業が複数ある場合、より熱量の高い買い手に買ってもらいたいと感じるでしょう。

達成したい目標や新たに挑戦する事業などの意気込みに加えて、社会や株主への還元もアピールできれば好印象につながります。

4.売り手の希望を満たした条件提示

売り手の希望を満たした条件の提示は、大変重要なポイントの一つです。
複数の買い手企業が意向表明書を提出している場合、売り手企業に魅力を感じさせる条件を提示することで、交渉成功の可能性が高まります。

M&Aスキームの選び方でも他社と差別化できるため、相手が求めるM&Aの実施法をしっかり調査しておくことがポイントといえます。

5.競合他社より有利な条件

複数の企業が意向表明書を提出している状況では、競合他社よりも有利な条件を提示して差別化を図ることも有効です。売り手企業は、最も良い条件を提示してくれる買い手企業に惹かれます。

たとえば、他社よりも企業規模で勝る場合は資本力を、知名度・ブランド力が強みの場合には提示金額の大きさを伝えることで、優位性をアピールしましょう。

中小企業であれば、取引先の魅力や地域密着経営をはじめとするコネクションの強さ、大学との提携など、他社では出せない独自性を主張することがポイントです。

6.M&Aアドバイザーの事前確認

意向表明書を提出する前の下書き段階で、M&Aアドバイザーに確認してもらいましょう。
M&Aアドバイザーは、売り手企業に好意を持たせる書き方を熟知しています。

記載内容に抜け・漏れがないかの単純なエラーチェックをはじめ、魅力的な内容になっているか、売り手側の希望条件が満たされているかなど、専門家の目を通すことで、精巧な書類を作成できるようになります。

また、売り手企業の特徴や企業文化、強みなどを総合的に分析して、交渉に有効となる内容や記載項目についてのアドバイスをもらうことも可能です。

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【売り手側】意向表明書の内容確認の5つのポイント

意向表明書では、重点的に着目されるポイントが買い手と売り手の目線では異なる場合があります。

売り手側が確認するべきポイントは主に5つです。

  1. 買収価格の妥当性
  2. 従業員の処遇
  3. 買収後の経営方針
  4. 機密保持について
  5. 売り手にとって譲れない条件

以下では、買い手企業が売り手企業に提出する意向表明書において、売り手側が確認すべき内容のポイントを紹介します。

1.買収価格の妥当性

買取価格の妥当性については、算定方法や根拠を必ず確認することが重要です。

意向表明書は後で変更できるため、買い手企業が意図的に買収価格を釣り上げて、独占交渉権を獲得した後で、値下げ交渉に出る恐れがあります。円滑な取引を実現させるためにも、はじめに買い手が提示する買収金額の妥当性を確認しましょう。

2.従業員の処遇

従業員の処遇も、チェックするべきポイントです。従業員の雇用を守るために、経営権が移行した後の給与、労働条件、福利厚生や役職など、従業員が不満なく働き続けられる処遇かどうかを必ず確認しましょう。

3.買収後の経営方針

買収後の経営方針も、確認すべき重要な項目です。会社や事業が継続する以上、いい加減な事業者に引き継ぐことはできません。M&A後の将来設計や経営方針について、具体的に記されているかを確認してください。

自社にマッチングしている経営方針であるかどうかを見極めましょう。

4.機密保持について

意向表明書では、企業の機密事項を扱います。上場企業がM&Aに関わる場合は、インサイダー情報が漏洩するリスクも存在するため、意向表明書において、機密保持について厳密な対応や信用に足る記載があるかを確認しましょう。

5.売り手にとって譲れない条件

売り手企業があらかじめ譲歩できない条件を決めておくと、取引候補となる買い手企業を絞り込みやすくなります。

譲れない条件としては、上述の従業員待遇やM&A後の方針、提示金額などが挙げられます。事業や従業員の雇用を守るために、必須条件の提示・確認は必ず行いましょう。

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意向表明書の作成に関する相談先

意向表明書の作成がうまくいかない場合は、M&Aに関する知識が豊富な専門家の手を借りてみるのもおすすめです。具体的には、次の4つの相談先を検討してみましょう。

  • M&A仲介会社
  • 銀行などの金融機関
  • 税理士や公認会計士などの士業専門家
  • 商工会議所・商工会

各相談先によって、特徴やサポート内容が異なります。それぞれの違いを知って、適切な相談先を選べるようにしましょう。

M&A仲介会社

M&A仲介会社の特徴をまとめました。

手数料相場売却価格の5%程度
サポート内容条件の合う企業とのマッチング、M&A関連業務のサポート、M&A手続きの進行
向いている人M&Aと関連して法務・税務・財務までまとめて相談したい人
注意点業者が多いため選別が難しい

M&Aを専門にしている仲介業者であれば、手続き全般に関する知識とノウハウを持っているのが一般的です。M&Aに初めて着手する場合でも、丁寧に契約を進めてくれるでしょう。

M&A仲介業者のメリットとしては、契約そのものだけではなく、関連業務に関してもまとめて相談できる点が挙げられます。自社の業界において実績のある仲介業者を選べば、注意すべき点についてもアドバイスを受けられます。

ただし、M&A仲介業者は数多くあるため、比較・選定が難しい点はデメリットです。じっくりと検討し、自社のM&Aを有利に進められるようにしましょう。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

銀行などの金融機関

銀行などの金融機関の特徴をまとめました。

手数料相場案件により異なる
サポート内容相手企業とのマッチング、財務状況や企業価値の分析、M&Aスキームの検討、手続きにまつわるアドバイス提供
向いている人普段から取引のある銀行に相談したい人
注意点中小企業のM&Aは取り扱っていない場合がある、スピード感に欠ける場合がある

銀行などの金融機関でも、M&Aにまつわるサポートを提供しています。自社について理解が深い銀行に相談することで、今の状況に合った解決策が見つかる可能性があります。

また、M&Aに限らずさまざまな選択肢を検討してくれるのも、銀行ならではのメリットです。ただし、金融機関によっては中小規模のM&Aを取り扱っていない場合もあるでしょう。

取引企業のマッチングに際しても、銀行の管轄エリア内の企業に限られてしまうというデメリットがあります。

税理士や公認会計士などの士業専門家

税理士や公認会計士などの士業専門家の特徴をまとめました。

手数料相場売却価格の3~5%程度
サポート内容情報提供、調査、相手企業とのマッチング
向いている人デューデリジェンスを重要視したい人
注意点M&Aに精通している税理士や公認会計士は少ない、相手企業の選択肢が限られる

普段から付き合いのある税理士や公認会計士であれば、M&Aに関する相談にも親身になってアドバイスをくれる可能性があります。M&Aに欠かせないデューデリジェンスにまつわる知識や経験を持っている場合も多いため、頼れる存在となるでしょう。

しかし、いくらデューデリジェンスの経験が豊富でも、M&A全般の知識やノウハウが豊富な専門家は少ないのが事実です。相手企業とのマッチングを依頼する場合も、選択肢が限られてしまう恐れがあるでしょう。

商工会議所・商工会

商工会議所・商工会の特徴をまとめました。

手数料相場商工会議所へのM&A相談は無料(具体的なM&A実施に際しては他の専門家を紹介されるケースが一般的)
サポート内容M&Aにまつわる相談、補助金や助成金の紹介
向いている人中小企業ならではのM&Aの悩みを相談したい人、国・自治体の助成金・補助金の利用を検討している人
注意点具体的にM&Aを進行するための知識が不足しているケースが多い

商工会議所・商工会であれば、年会費さえ支払えば無料でM&Aについて相談できるのがメリットです。補助金や助成金にまつわる知識が豊富であるため、利用を検討している場合は積極的に活用してみましょう。

しかし、商工会議所・商工会はM&Aの具体的なプロセス進行に長けているわけではありません。実際にM&Aを進めるという段階になると、他の専門家の利用を勧められるケースが一般的です。

M&Aに関する具体的なソリューションを求めている場合は、他の手段を用いて相談する必要があるでしょう。

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まとめ

今回は、意向表明書と他の書類との違いや、主な記載項目について解説しました。意向表明書には法的な拘束力こそなものの、M&Aを進めるうえで重要な役割を果たす書類です。

ご紹介した記載内容のポイントやサンプルを参考にすれば、契約を円滑に勧められるカギとなる意向表明書を作成できるでしょう。提出のタイミングを逃すことなく、意向表明書を有効活用してみてください。

また、M&Aを進める際には、意向表明書のみならずさまざまな書類や手続きに関する知識を持っておく必要があります。M&Aの準備に不安がある場合は、知識や経験の豊富な専門家への相談を検討してみましょう。

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料金に関しては、M&Aの成約時に料金が発生する、完全成功報酬型です。無料相談はもちろん、M&A成約まで費用の心配をすることなくご利用いただけます(譲受側のみ中間金あり)。
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