M&A戦略とは?戦略の種類や策定方法、便利なフレームワークや事例も解説

2024年3月29日

M&A戦略とは?戦略の種類や策定方法、便利なフレームワークや事例も解説

このページのまとめ

  • M&Aを成功させるためには、M&A戦略を明確化する必要がある
  • 売り手の主なM&A戦略は、第三者への事業承継・選択と集中・イグジットの3つ
  • 買い手の主なM&A戦略は、既存事業の拡大・関連事業の獲得・新規事業への参入の3つ
  • 自社分析や市場調査を行ったうえで、目的を明確にしてM&A戦略を策定する
  • M&A戦略を客観的に策定できるよう、フレームワークを活用する

M&Aを成功させるためには、M&A戦略を策定することが大切です。M&Aの目的や得たい成果を明らかにして戦略を立て、戦略に基づいて相手探しや条件の決定を行いましょう。

本記事では、M&A戦略の種類や策定方法、戦略策定に使える便利なフレームワークなどを紹介します。M&A戦略をどのように立てるべきかわからない方や、M&Aに向けて準備を進めたい方はぜひ参考にしてください。

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M&A戦略とは

M&A戦略とは、M&Aによってどのような目的を達成するか、そのためにはどのような相手とどのようなM&Aを行うのか、といった準備や計画のことです。

M&A戦略を明らかにしないままM&Aを進めてしまうと、相手選びに失敗して想定していたシナジー効果が得られなかったり、お互いの経営資源をうまく活用できなかったりするリスクがあります。

買い手がM&Aに成功して投資を回収するためにも、売り手が希望する価格で自社や事業を譲渡するためにも、まずはM&A戦略の策定から始めましょう。

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売り手企業のM&A戦略

ここでは、売り手企業のM&A戦略として代表的なものを3つ紹介します。

第三者への事業承継

売り手のM&A戦略として多いのが、第三者への事業承継です。自社に後継者候補がいない場合は、M&Aを活用して第三者に事業を承継することで、廃業を免れられます。

相手次第では、経営基盤を安定させられたり、事業をさらに成長させられたりする可能性もあります。

少子高齢化によって多くの企業が後継者不足に悩んでいる昨今、M&Aは有効な選択肢となりうるでしょう。

選択と集中

選択と集中のためにM&Aを行うこともあります。M&Aでは、特定の事業のみを譲渡することも可能です。

不採算事業を切り離すことで、財務状況を改善させられる可能性があります。また、コア事業に経営資源を集中させるために、ノンコア事業を譲渡するケースもあります。

事業を多角化した結果コア事業が伸び悩んでしまった場合は、M&Aを活用してスリム化することが効果的です。

イグジット

ベンチャー企業の場合は、イグジットの手段としてM&Aが選択されることがあります。

イグジットとは、創業者や出資者が株式を売却し、利益を獲得して投資資金を回収することです。イグジットの手段としては、主にIPO(株式公開)とバイアウト(M&A)があります。

M&Aによるイグジットは、IPOに比べてハードルが低く、投資資金を回収しやすいのがメリットです。現状では赤字であるものの将来性がある場合、IPOは難しくてもM&Aでイグジットを成功させられる可能性があります。

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買い手企業のM&A戦略

次に、買い手企業のM&A戦略として代表的なものを紹介します。

既存事業の拡大

1つ目は、既存事業の拡大です。既存事業と同業種の企業あるいは事業を買収することで、既存事業を拡大できます。

既存事業の拡大には、さらに事業規模の拡大、エリア拡大、市場シェア拡大(ロールアップ戦略)があります。

事業規模拡大

同業を買収することで、事業規模を効率よく拡大できます。

規模が拡大することで、大量仕入れが可能になってコストを削減できたり、ブランド力が強化されて広告費を削減できたりなどのスケールメリットも享受できるでしょう。

たとえば、スーパーマーケットでは同じ地域の同業を買収する事例が多く見られます。一定の地域内で出店数を拡大することで、共同仕入れ・共同配送によって大幅なコスト削減を実現できるのがメリットです。

エリア拡大

自社が進出していないエリアにある同業を買収することで、エリアを拡大できます。たとえば、タクシー事業を手がける第一交通産業グループは、1960〜2000年代にかけて同業を次々と買収し、新たな都道府県や地区に進出しています。

ゼロから新しいエリアに進出する場合は、そのエリアで新たに知名度を上げ、顧客を獲得しなければなりません。

すでにそのエリアで信頼を獲得している企業を買収することで、スピーディーに事業を軌道に乗せられる可能性が高いです。

参照元:第一交通産業グループ「沿革・歴史」

市場シェア拡大(ロールアップ戦略)

小規模な同業を複数買収することで、効率的に市場シェアを拡大できます。これがロールアップ戦略です。

前述の第一交通産業グループは、小規模なタクシー業者を連続的に買収することで、タクシー業界内でシェアを獲得してきました。2020年3月末時点でタクシー保有台数は8,326台であり、国内最大と言われています。

ロールアップ戦略は、市場でシェア上位を狙う企業にとって効果的な選択です。

参照元:Qualities「保有台数日本一&黒船サービスとも提携 攻めまくるタクシー会社『第一交通』」

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関連事業の獲得

2つ目は、既存事業と関連する事業を拡大し、サプライチェーンの拡大やラインナップ拡充を狙う戦略です。

サプライチェーン拡大

サプライチェーンの川上や川下の事業を獲得することで、流通コストの削減や生産・販売の安定化、効率化などを狙えます。

たとえば、スーパーマーケットでは仕入れや物流機能を拡充するために、食品の卸売業や物流事業を手がける企業を買収するケースが多く見られます。

買収により、自社が多くの工程を管理できるようになるのもメリットです。近年では、人権問題や環境問題に関心が高まっています。原材料の仕入先や製造委託先などが問題を起こしていた場合、自社も批判の対象になるリスクは否定できません。

サプライチェーンにおける人権問題や環境問題のリスクヘッジのために、関連事業を獲得するケースも見られます。

ラインナップ拡充

既存事業と類似しているもののターゲットや価格帯などが異なる事業を買収することで、自社の商品やサービスの幅を広げられます。これがラインナップ拡充戦略です。

たとえば、ドラッグストアがスーパーマーケットやコンビニエンスストアを買収することで、ドラッグストア内で食品や生活用品を安く販売しやすくなります。利益率の高い医薬品で収益を上げつつ、生活必需品を販売して集客を増やすことが可能です。

既存商品の成長が見込めない場合は、関連事業を買収してラインナップを広げる戦略が効果的です。

また、経営資源を共有しやすくなるため、既存事業と関連事業双方の経営を効率化できる可能性もあります。

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新規事業への参入

3つ目は、新規事業への参入です。新規事業をゼロから立ち上げるよりも、参入したい事業ですでに成果を出している企業を買収した方が、効率的かつ低コストで事業を軌道に乗せられる可能性が高いです。

経営の多角化

M&Aによって新規事業を獲得することで、経営の多角化を目指せます。収益源を増やすことは、リスク分散のためにも重要です。

たとえば、ソニーはエレクトロニクスに加え、ゲームや音楽、金融など幅広い事業を展開しています。2023年上半期は、ゲーム&ネットワークサービス分野、金融分野、音楽分野の大幅な増収により、グループ全体で売上高が前年同期比9,371億円も増加しました。

M&Aによって新規事業に参入できれば、スムーズに経営の多角化を実現できるでしょう。

さらに、既存事業と新規事業のシナジー効果によって、収益をさらに拡大できる場合もあります。

参照元:ソニーグループポータル「2023年度中間報告書」

事業ポートフォリオ転換

既存事業に成長が見込めない場合は、新規事業に参入して事業ポートフォリオの転換を目指すのも1つの方法です。

たとえば、富士フィルムは主力事業であった写真フィルムの売上が低迷したことを受け、ヘルスケア・化粧品市場に参入しました。その後、ヘルスケア・マテリアルズ・ビジネスイノベーション・イメージングの4分野へと事業ポートフォリオを転換し、グループを成長させました。

M&Aを活用して将来性が期待できる新規事業に効率よく参入することで、成長の鈍化を打破できる可能性があります。

参照元:株式会社富士フイルムヘルスケアラボラトリー「沿革・歴史」

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M&A戦略を策定する方法

M&A戦略を策定する基本的な流れは以下のとおりです。

売り手1自社を分析する
2市場調査を行う
3M&Aの目的を明らかにする
4譲渡する範囲や買い手の条件などを具体化する
5シナリオプランニングを行う
6自社の紹介資料を作成する
7買い手候補を選定する
買い手1自社を分析する
2市場調査を行う
3M&Aの目的を明らかにする
4買収したい企業や事業の条件などを具体化する
5シナリオプランニングを行う
6売り手候補を選定する
7売り手候補へのアプローチ方法を検討する

以下では、特に重要なプロセスについて解説します。

1.自社を分析する

M&A戦略を策定する前に、まずは自社の現状について分析しましょう。現状を見つめ直すことで、どのような相手とM&Aを行うべきか、M&Aでどのような経営資源を手に入れるべきかなどが見えてきます。

自社が持つ経営資源や財務状況、今後の成長可能性やリスクなどを客観的に分析しましょう。

自社を分析する際は、SWOT分析のようなフレームワークを活用することがおすすめです。戦略策定に使えるフレームワークについては、次の章で解説します。

2.市場調査を行う

自社の現状だけではなく、自社を取り巻く外部環境を分析することも欠かせません。

M&Aを行う目的によって、市場調査を行う範囲は異なります。既存事業の拡大や事業承継を目的とする場合は、同業種の市場調査を中心に行いましょう。一方、新規事業への参入を目的とする場合は、異業種も含めて幅広く調査する必要があります。

市場調査を行いながら、どのような相手と組むべきか、どのような形でのM&Aが可能かなどを検討し、M&Aの方向性を具体化していきましょう。

3.M&Aの目的を明らかにする

自社分析や市場調査の結果をもとに、M&Aの目的を明らかにしましょう。なぜM&Aを行うのか、M&Aでどのような成果を期待するのかを明確にします。

特に、買い手の場合は、M&Aで獲得したい経営資源を特定することが大切です。売り手が持つ技術やノウハウ、人材、ネットワークなど、さまざまな経営資源が考えられます。何を獲得したいかを明らかにすることで、売り手を選びやすくなるでしょう。

4.M&Aの対象や条件を具体化する

M&Aの目的を明らかにしたら、M&Aの対象や条件を具体化します。

売り手が検討すべき主な論点は以下のとおりです。

  • 譲渡する対象(企業全体を譲渡するのか、一部の事業を譲渡するのか)
  • 買い手の条件(業種や規模など)
  • M&Aを実施するタイミング
  • 希望するスキーム
  • 希望譲渡価格
  • M&A後の経営陣や従業員の処遇(経営陣や従業員をそのまま残してほしいか)
  • M&A後の取引先との関係性(既存の取引関係を維持してほしいか)
  • M&A後の商号やブランド名(商号やブランド名を残してほしいか)
  • その他、譲渡の基本方針

買い手が検討すべき主な論点は以下のとおりです。

  • 買収する対象
  • 売り手の条件
  • 希望するスキーム
  • M&Aを実施するタイミング
  • 予算
  • 経営統合の進め方
  • 税務・会計上のリスク
  • その他、買収の基本方針

M&Aの目的をもとに、M&Aの詳細な論点を詰めて戦略を具体化しましょう。

5.シナリオプランニングを行う

M&A戦略を具体化した後は、シナリオプランニングを行います。

シナリオプランニングとは、将来において起こりうる結果を複数想定し、それをもとに戦略の策定や検証を行うことです。複数のシナリオを想定して戦略をブラッシュアップさせることで、不確実性にも対応できるような戦略を策定できます。

複数のシナリオを想定し、将来的な環境変化やそれに伴う市場変化に対応できるような戦略になるようブラッシュアップしましょう。

6.相手先を選定する

M&A戦略を決定したら、戦略をもとに相手先を選定しましょう。

M&Aの目的や戦略に合う企業を複数ピックアップします。はじめに20〜30社ほどリストアップしてロングリストを作り、徐々に条件を絞って数社程度に減らし、ショートリストを作成するのが一般的です。

7.相手先へのアプローチ方法を検討する

相手先候補が決まったら、アプローチ方法を検討しましょう。

アプローチ方法としては、大きく3つの選択肢があります。

アプローチ方法メリットデメリット
直接アプローチするスピーディーに交渉を進めやすい

M&Aに関する情報を当事者間のみにとどめられる

手数料がかからない
ハードルが高い

適正な相場がわからず損してしまう可能性がある

交渉に失敗して信頼関係を壊してしまうリスクがある
M&A仲介会社やFAを利用するアプローチを専門家に依頼できる

専門家からアドバイスを受けながらM&Aを進められる

ネットワークを活かして、戦略に合った相手を提案してくれる
手数料がかかる

信頼できる専門家に依頼する必要がある
M&Aマッチングサービスを利用するインターネット上で気軽にアプローチできる

幅広い相手にアプローチしやすい
手数料が安い
相手が見つかるまで時間がかかることが多い

情報漏洩のリスクに注意が必要

仲介会社のような手厚いサポートは受けられない

直接アプローチするのはハードルが高いため、実際はM&A仲介会社やFA、マッチングサービスなどを利用するケースがほとんどです。

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M&A戦略を策定する際のポイント

M&A戦略を策定する際は、以下のポイントを押さえましょう。

  • M&A以外の選択肢も検討する
  • M&Aのスキームを慎重に検討する
  • 専門家のサポートを受ける

それぞれのポイントについて解説します。

M&A以外の選択肢も検討する

M&A戦略を策定する際は、M&A以外の選択肢も検討しましょう。

M&Aはあくまでも経営戦略の1つです。M&A以外の選択肢の方が適している場面もあるでしょう。
また、M&Aを行ったからといって、必ずしも成功するとは限りません。想定していたシナジー効果を発揮できなかったり、統合がうまくいかず従業員から反発を受けたりする可能性もあります。投資回収に失敗してしまうリスクもあるでしょう。

M&Aは企業を成長させるための手段であり、目的ではありません。M&Aありきで進めるのではなく、本当にM&Aが適切な選択肢なのかを検討することが大切です。

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M&Aのスキームを慎重に検討する

M&Aの目的を果たすためには、どのスキームを選ぶべきか慎重に検討しましょう。

代表的なスキームは以下のとおりです。

スキーム概要メリットデメリット
株式譲渡売り手の株主から買い手が株式を買い取り、子会社化する手続きが比較的簡単買い手は、負債も含めてすべてを引き継ぐ必要がある
事業譲渡売り手の一部あるいは全部の事業を買い手が引き継ぐ買い手が引き継ぐ事業や資産を選べる許認可の再取得や契約の再締結などが必要
会社分割売り手の事業の一部あるいは全部を別会社に移転させる株式を対価とできるため、買収資金を用意する必要がない税務や財務手続きが複雑

買い手は、負債も含めてすべてを引き継ぐ必要がある
合併複数の会社を法的に1つにまとめることシナジー効果を早期に発揮しやすい

対等な立場でのM&Aという印象がある
手続きが複雑
成約後のPMI(統合プロセス)が大変
株式交換親会社が持つ自社株式を、子会社の株主が持つ株式と交換する買収資金を用意する必要がない買い手の株主構成が変化する
株式移転全ての発行済株式を別会社に取得させ、完全親子会社を設立する買収資金を用意する必要がない買い手の株主構成が変化する

買い手の1株あたりの利益が希薄化する

M&Aでは、株式譲渡が用いられるケースが多く見られます。しかし、M&Aの目的や期待する効果によっては、ほかのスキームの方が適切な場合があります。M&Aの目的に合ったスキームを選ぶことが大切です。

専門家のサポートを受ける

M&A戦略を策定する際は、信頼できる専門家のサポートを受けることをおすすめします。

M&A仲介会社や戦略コンサルタントなどの専門家からアドバイスを受けることで、自社の経営課題を解決して成長につなげられるような戦略を策定できます。

特に、M&A仲介会社は戦略の策定から成約までを一貫してサポートしてくれます。はじめてM&Aを行う場合も、安心してM&Aを進められるでしょう。

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M&A戦略の策定に活用できるフレームワーク

M&A戦略を策定する際は、フレームワークを活用することがおすすめです。フレームワークを使うことで、効率よく戦略を考えられたり、自社の環境を客観的に分析できたりします。

M&A戦略の策定には、以下のようなフレームワークが役立ちます。

  • SWOT分析
  • バリューチェーン分析
  • マイケル・ポーターの競争優位の戦略
  • アンゾフの成長マトリクス
  • プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント

ここでは、それぞれのフレームワークについて見ていきましょう。

SWOT分析

SWOT分析とは、自社の外部環境と内部環境を、以下の4つの要素ごとに分析するフレームワークです。

  • Strength(強み)
  • Weakness(弱み)
  • Opportunity(機会)
  • Threat(脅威)

外部環境と内部環境を、プラスとマイナスに分けて分析します。

SWOT分析は、戦略策定の第1段階である、自社の分析の際に活用できるフレームワークです。自社が伸ばすべき強みや改善すべき点、将来的なリスクなどを客観的に分析できます。

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析は、原材料の調達から販売までの一連の流れの中で、それぞれの工程がどのような価値を生み出しているかを分析するフレームワークです。

そもそもバリューチェーンとは、ビジネスの流れを価値の連鎖と捉え、各工程が作り出す価値に注目する考え方です。アメリカの経済学者であるマイケル・ポーターが提唱しました。

バリューチェーンは、主活動と支援活動の2つに分けられます。

バリューチェーン概要具体例
主活動原材料の調達から販売までの一連の流れのこと仕入、製造、出荷、マーケティング、販売など
支援活動企業活動を支える業務のこと技術開発、人事・労務管理など

バリューチェーン分析を行うことで、自社の事業がどの段階で価値を生み出しているのか、どの工程に課題があるのか、などが明らかになるのがメリットです。

バリューチェーン分析は、以下のステップで行いましょう。

  1. 事業の工程を洗い出し、主活動と支援活動に分ける
  2. 各工程のコストや収益性などを把握する
  3. 強みと弱みを分析する
  4. VRIO分析を行う

VRIO分析とは、自社の競争優位性や経営資源を評価する分析手法です。Value(経済的価値)・Rarity(希少性)・Imitability(模倣可能性)・Organization(組織)の4つの項目ごとに、各工程を評価します。VRIO分析によって、特にどの工程が競争優位性をもたらしているのかを把握できます。

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マイケル・ポーターの競争優位の戦略

マイケル・ポーターの競争優位の戦略は、競争戦略を以下の3つに分けて考えるフレームワークです。

競争戦略概要
コストリーダーシップ戦略商品やサービス提供にかかるコストを抑え、競争優位を獲得する戦略
差別化戦略競合他社と異なる商品やサービスを提供し、競争優位を獲得する戦略
集中化戦略特定の市場やターゲットに経営資源を集中させ、競争優位を獲得する戦略

M&Aを活用して競争優位を獲得したいと思ったら、マイケル・ポーターの競争優位の戦略をもとに具体的なM&A戦略を考えるとよいでしょう。

アンゾフの成長マトリクス

アンゾフの成長マトリクスは、成長戦略を市場軸と製品軸の2軸から考え、企業を持続させるための成長戦略を検討するフレームワークです。

既存製品新規製品
既存市場市場浸透戦略新製品開発戦略
新規市場新市場開拓戦略多角化戦略

商品と市場という2軸から成長戦略を策定できるため、M&Aを用いた成長戦略の方向性を検討する際に役立ちます。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントは、自社が注力すべき事業や経営資源をどのように分配すべきかを決めるためのフレームワークです。

市場の成長率と市場シェアという2軸から、以下の4つの象限に分けて事業や商品の位置づけを考えます。

市場成長率市場シェア
花形
問題児
負け犬
金のなる木

花形に分類される事業や商品は、現状を維持するべきものです。市場の変化に取り残されないよう、経営資源を積極的に投下する必要があります。

問題児は、市場成長率は高いものの市場シェアが低く伸び悩んでいるものです。市場シェアを拡大させられるよう、投資を行う必要があります。

負け犬は、市場成長率と市場シェアどちらも低く、成長が見込めないものです。撤退を検討するべきと考えられます。

金のなる木は、市場成長率は低いものの、市場シェアを獲得しており安定的な収益源になっているものです。現状維持のために投資を行いつつ、収益の獲得も強化する必要があります。

M&Aでどのような事業を買収しようか迷った場合は、まずは自社の事業を4つの象限に当てはめましょう。そして、金のなる木や花形を中心に、不足しているものをM&Aで買収するのが効果的です。

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M&A戦略策定の参考にしたい企業事例5選

M&A戦略を策定する際は、M&Aを積極的に行っている企業事例や、M&Aで大幅な成長を実現した企業事例を参考にしましょう。

ここでは、M&A戦略を考えるうえで参考にしたい5つの事例を紹介します。

1.ソフトバンク

ソフトバンクグループは、M&Aを積極的に行い、事業の多角化を実現している企業の1つです。

ソフトバンクは、もともとパソコン用パッケージソフトの流通事業を営む企業でした。ソフトバンクが初めてM&Aを行ったのは、1994年です。ITの本場に参入するための地図とコンパスを手に入れるため、アメリカのコンピューター関連の見本市や出版社をグループに取り込みました。

2006年には、ボーダフォン株式会社を買収し、移動通信事業に参入します。

以降、半導体テクノロジーを扱うアメリカのアーム社や投資ファームであるフォートレス・インベストメント・グループなど、さまざまな企業を買収して事業を拡大させてきました。

新規事業への参入に、M&Aを積極的に活用している企業事例です。

参照元:ソフトバンクグループ「ソフトバンクグループの歩み」

2.ココカラファインとマツモトキヨシ

株式会社ココカラファイン(以下、ココカラファイン)と株式会社マツモトキヨシホールディングス(以下、マツモトキヨシ)の経営統合は、ドラッグストア業界における代表的なM&Aです。

ココカラファインとマツモトキヨシは、2021年10月に株式交換による経営統合を行いました。両社の統合によりマツキヨココカラ&カンパニーが誕生し、ドラッグストア市場でのシェアを拡大させました。

経営統合を決断した理由は、変化するドラッグストア・調剤薬局業界で勝ち残るためです。具体的には、以下のようなシナジー効果を想定してM&Aに踏み切りました。

  • スケールメリットを活かした仕入れの改善
  • 両社の顧客基盤を活用したデジタル販売促進策の拡充
  • 店舗運営の効率化
  • 物流・システム統合によるコスト削減

2026年3月期にはグループ売上高1.5兆円、営業利益率7.0%を目指す方針です。

M&Aを活用して市場シェアを大幅に拡大させた事例として知られています。

参照元:マツキヨココカラ&カンパニー「株式会社マツモトキヨシホールディングスとの経営統合に関するご案内」

3.オリンパス

オリンパス株式会社(以下、オリンパス)は、選択と集中のためにM&Aを活用している企業です。

2023年4月には、完全子会社である株式会社エビデント(以下、エビデント)の全株式をBain Capital Private Equity, LP(以下、ベインキャピタル)に譲渡しました。

エビデントは、科学関連事業を手がける企業です。オリンパスは、ベインキャピタルにエビデントを譲渡することで、エビデントの事業特性に合った機動的かつ柔軟な意思決定が可能になるとしています。譲渡後は、医療事業を経営の柱として、医療分野に経営資源を集中させる方針です。

オリンパスは、2021年にも映像事業を日本産業パートナーズ株式会社に譲渡しており、選択と集中を強化していることがわかるでしょう。

参照元:オリンパス「オリンパスの映像事業の譲渡完了に関するお知らせ」
参照元:オリンパス「オリンパス、 子会社エビデントをベインキャピタルに譲渡~エビデントはさらなる成長とイノベーションを加速~」

4.大王製紙

大王製紙株式会社は、M&Aを活用して家庭紙事業でシェアを拡大させた企業です。

2017年4月、日清紡ホールディングス株式会社の家庭紙事業を買収しました。国内の紙市場が縮小する中、家庭紙事業に注力してシェアを伸ばすべきと判断し、買収に踏み切ったと考えられます。

さらに、2022年には三浦印刷株式会社・ダイオーポスタルケミカル株式会社・大和紙工株式会社・株式会社千明社と合併し、ダイオーミウラ株式会社を設立しました。ダイオーミウラ株式会社は、印刷やパッケージデザイン、製造、広告、販促などを手がける総合印刷会社です。

M&Aによってサプライチェーンを拡大させ、顧客の多様なニーズに応えられる企業に生まれ変わりました。

参照元:大王製紙株式会社「日清紡ホールディングス株式会社の紙製品事業の譲受を目的とした株式の取得の完了及び取得子会社の商号変更に関するお知らせ」
参照元:ダイオーミウラ株式会社「会社概要」

5.ニデック(旧:日本電産)

ニデック株式会社(旧:日本電産、以下、ニデック)は、企業成長の原動力としてM&Aを戦略的に活用している企業です。2023年5月までに、計73件のM&Aを実施しています。

ニデックは、M&Aを技術や販路を育てるための時間を買う手段と捉えています。そして「回るもの、動くもの」に特化して買収先を選定しているのが特徴です。

M&Aを成功させるポイントとしては、「適正な価格で買収する」「買収後の企業経営に注力

する」「相乗効果のある案件を選ぶ」の3つを挙げています。

参照元:ニデック株式会社「M&Aの歴史」
参照元:ニデック株式会社「Focus!日本電産のM&A戦略とは」

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まとめ

M&Aを行う際は、売り手・買い手ともにM&A戦略を策定しましょう。M&A戦略を明らかにしてからM&Aを進めることで、自社に合う相手を見つけて目的を達成しやすくなります。

売り手のM&A戦略には、第三者への事業承継や選択と集中、イグジットなどがあります。また、買い手のM&A戦略は、既存事業の拡大と関連事業の獲得、新規事業への参入の大きく3つです。

M&A戦略を策定する際は、自社分析や市場調査を入念に行う必要があります。的外れな戦略にならないよう、専門家からアドバイスをもらうことも大切です。M&A仲介会社に依頼する場合は、戦略策定から成約まで一貫してサポートを受けられます。

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