岡山県内のM&Aに関する動向や相談先、事業承継事例を解説

2024年5月22日

岡山県内のM&Aに関する動向や相談先、事業承継事例を解説

このページのまとめ

  • 岡山県の企業業績は堅調な伸びを見せている
  • 岡山県の後継者不在率はやや減少傾向にある
  • 岡山県の休廃業や解散件数は増加している
  • 岡山県でM&Aを実施する際は、専門家への依頼が必要
  • M&A仲介会社を選ぶときは、会社についてきちんと調べることが大切

岡山県の企業のなかには、M&Aを検討している方もいることでしょう。コロナ禍が収束し企業業績は堅調に伸びていますが、後継者不在率は依然として高く、事業承継が進んでいない状況が伺えます。

本記事では、岡山県のM&Aの動向やおすすめの相談先、また相談先のなかでもM&A仲介会社に焦点をあてて詳しく解説します。さらに、M&A仲介会社を選ぶときのポイントやM&A事例も説明していますので、参考にしてください。

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岡山県内の企業業績は堅調に伸びている

岡山県のM&Aについて解説する前に、岡山県内の企業業績についてご紹介しましょう。

2023年に発表された帝国データバンクの「特別企画:岡山県 2023年度の業績見通しに関する企業の意識調査」によると、2022年度の企業業績は「増収増益」が29.3%と2年連続で増加しているとのことです。さらに2023年度の業績見通しでは、27.4%の企業が「増収増益」を見込んでいます。

業績の上振れ材料として挙げられているのは、個人消費の回復や感染症の収束、原油・素材価格の動向、所得の増加、人手不足の緩和などです。しかしながら、人手不足や物価上昇(インフレ)などの懸念材料もあり、コロナ収束後、長期的な業績拡大へとつながるのかは未知数です。

不安材料は残るものの、2023年時点では、岡山県内の企業業績は堅調に伸びているといえるでしょう。

参照元:株式会社帝国データバンク「特別企画:岡山県 2023年度の業績見通しに関する企業の意識調査

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岡山県におけるM&Aの動向

ここでは、岡山県におけるM&Aの動向を解説します。はじめに、岡山県における企業の後継者の状況からご紹介しましょう。

岡山県における後継者の状況

2023年の帝国データバンク「特別企画:岡山県 後継者不在に関する企業の実態調査(2023年)」によると、岡山県の後継者不在率は57.3%と、調査を開始した2014年以降で初めて6割を下回りました。2022年と比べると、後継者不在率は3.2ポイント下回ったとのことです。

以下に、2014年からの後継者不在率を表にまとめました。                                

年度2014201520162017201820192020202120222023
不在率(%)62.962.362.562.461.864.163.460.557.3
前回比(%)▲0.60.2▲0.1▲0.62.3▲0.7▲2.9▲3.2

こちらの表からわかるとおり、2021年以降は後継者不在率は減少傾向にあります。しかしながら、依然として57.3%の経営者は後継者がいないと回答しており、事業承継が大きな課題となっているのがわかります。

次に、経営者の年齢別の後継者不在率を見てみましょう。

年齢30歳未満30歳代40歳代50歳代60歳代70歳代80歳以上
不在率(%)94.491.179.163.535.828.723.4

データによると、70歳以上の経営者のうち、約4分の1が後継者が決まっていないと回答しています。後継者がいなければ、たとえ黒字であっても経営を続けていくのは困難です。

70歳以上の経営者については、急ぎ事業承継を進める必要がありますが、50歳以上や60歳以上における後継者不在率も気になるところです。この年齢層の経営者も、本格的に事業承継について考えなければいけない時期にきていると認識すべきでしょう。「まだ大丈夫」と楽観視せず、早めに取りかかるほうが安心です。

事業承継が進まなければ、休廃業や解散が増えていきます。実際のところ、休廃業や解散の増加を示すデータがあります。

次に、岡山県の休廃業や解散について詳しくご紹介しましょう。

参照元:株式会社帝国データバンク「特別企画:岡山県 後継者不在に関する企業の実態調査(2023年)

岡山県の休廃業・解散の状況

帝国データバンク「岡山県 企業の休廃業・解散動向調査(2023年)」によると、2019年度からの岡山県における休廃業や解散の状況は次のとおりです。

年度20192020202120222023
休廃業・解散(件数)840851823741860
増減数(件数)11▲28▲82119

2021年度以降は、休廃業や解散件数は減少傾向にありましたが、2023年度に反転して増えたことがわかります。

上述したように、コロナ禍が収束し岡山県内の経済は堅調です。しかし、休廃業や解散が拡大しているのは、後継者が決まらず、経営をあきらめざるをえない企業が一定数あることを示しています。

国もこのような状況に危機感を抱き、事業承継税制の拡大や事業承継・引継ぎセンターの設置など、さまざまな取り組みにより事業承継を後押ししています。

地域経済を支えるためにも、官民一体となって事業承継を円滑に推し進める必要があるでしょう。

参照元:株式会社帝国データバンク「岡山県 企業の休廃業・解散動向調査(2023年)

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岡山県でM&Aを行う際の相談先

岡山県でM&Aを行う際の相談先として、金融機関と公的機関、M&A仲介会社の3つが挙げられます。以下に、それぞれの特徴を大まかにまとめました。

相談先金融機関公的機関M&A仲介会社
料金高め低め  会社による
対応範囲限られる限られる充実している
特徴・地元企業との繋がりが深い
・資金調達について相談できる
・地域密着型で相談しやすい
・公的支援について詳しい
・ワンストップで依頼できる
・充実したネットワークから探せる

それぞれの相談先について、さらに詳しく解説しましょう。

取引のある金融機関

事業承継に乗り出す企業が増えるにつれて、金融機関のなかには、専門部署をおくケースが増えています。普段から取引のある金融機関は、経営状況を把握しているため、相談しやすい相手でしょう。

買い手企業であれば、買い取るための資金調達について、金融機関への相談が不可欠です。資金調達が必要な際に、金融機関は頼りになる存在です。

ただし、仲介方式ではなくアドバイザリー形式を採用している金融機関は、費用が高額になりがちです。そのため依頼する場合は、報酬金額について事前にきちんと確認しましょう。

公的機関

M&Aを実施する場合は、相談先として公的機関も選択肢のひとつです。ここでは、岡山県の代表的な公的機関として、次の5つを取り上げて説明します。

  • 岡山県事業承継・引継ぎ支援センター
  • 岡山県よろず支援拠点
  • 岡山県事業承継ネットワーク
  • 岡山県産業振興財団
  • 岡山県信用保証協会

それぞれの機関について、詳しく見ていきましょう。

岡山県事業承継・引継ぎ支援センター

岡山県事業承継・引継ぎ支援センターは、第三者承継や親族内承継など、あらゆる事業承継についてワンストップで相談できる場所です。後継者不在が理由で、事業の存続危機に瀕する中小企業や小規模事業者を支援しています。

おもな業務は次のとおりです。

  • 事業承継に関する全般的な相談
  • M&Aマッチング
  • 事業承継計画策定支援
  • 事業承継診断やセミナー実施
  • 経営者保証解除に向けた専門家支援

事業承継について、どこから始めればよいかと悩む経営者におすすめです。

参照元:岡山県事業承継・引継ぎ支援センター

岡山県よろず支援拠点

岡山県よろず支援拠点とは、中小企業や小規模事業者のための経営相談窓口です。国が設置しているため、無料で相談ができます。

事業承継というより、販路拡大や売上拡大を目指す経営者におすすめの相談先です。おもな業務は、次のとおりです。

  • 起業や創業に関する相談
  • 売上拡大や販路拡大における相談
  • 事業計画の策定
  • 補助金や助成金の相談

随時、経営に関するさまざまなセミナーも実施しています。事業承継の前に、できるだけ経営改善を図りたいという方は、相談してみるとよいでしょう。

参照元:岡山県よろず支援拠点

岡山県事業承継ネットワーク

岡山県事業承継ネットワークは、事業承継をサポートするために行政や支援機関、金融機関、士業団体などの機関により設立されたネットワークです。事業承継に関するさまざまな情報を共有し、各機関が連携して事業承継を支援します。

おもな業務は、次のとおりです。

  • 事業承継診断
  • コーディネーターによる支援
  • 専門家による事業承継計画の策定支援

とくに、岡山県内での事業承継を検討している方におすすめです。

参照元:岡山県事業承継ネットワーク

岡山県産業振興財団

岡山県産業振興財団は、経営支援から販路拡大、資金調達、人材育成、補助金・助成金への申請など、幅広い支援業務をおこなっている機関です。

事業承継に関しても、親族や従業員、M&Aによる承継など幅広く支援しています。また事業承継の形態に応じた対策を講じるために、専門家による講演会や相談会を開催しています。

参照元:岡山県産業振興財団

岡山県信用保証協会

岡山県信用保証協会は、中小企業の経営者が金融機関から融資を受ける際に、資金調達をしやすくなるようにサポートしている公的機関です。当機関が保証人になることにより、資金調達がスムーズとなります。

事業承継を含むM&Aの際に、資金調達が必要であれば相談してみるとよいでしょう。事業承継で資金が必要な場合でも、経営者保証を求められないため、安心して事業承継を進められます。

参照元:岡山県信用保証協会

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、M&Aに関する業務をおこなう専門会社です。売り手企業と買い手企業の間に立ち、中立的な立場でM&Aを進めます。双方から希望をヒアリングするため、意見のすり合わせもスムーズです。

また、ほとんどのM&A仲介会社は充実したネットワークを構築しているため、多数の候補先から相手を選べる点もメリットでしょう。最初の相談からクロージングまで、一貫して依頼できるため、安心して任せられます。

ただし、仲介会社によっては着手金や中間手数料が発生する点がデメリットです。規模の小さいM&Aでも数百万円単位の報酬が必要になることもあり、売り手企業と買い手企業のどちらにとっても大きな負担になる可能性があります。

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M&A仲介会社を選ぶときの4つのポイント

M&Aをおこなう際は専門家への相談が欠かせません。次のポイントを押さえることで、自社と相性のよいM&A仲介会社を見つけられるでしょう。

  • 自社と同じ専門分野の実績が豊富
  • 地元のM&Aに詳しい
  • 相談料や手数料などの報酬体系が明確
  • 担当スタッフを信用できる

ひとつずつ詳しく解説しましょう。

自社と同じ専門分野の実績が豊富

M&A仲介会社を選ぶときは、自社と同じ専門分野の実績が豊富な会社を選ぶことが重要です。

多くのM&A仲介会社は、得意とする業種や分野があります。また、大規模案件を多く扱っている会社もあれば、小規模案件に集中している会社もあるなど、得意とする案件規模も異なります。

自社の専門分野や、同程度の企業規模の案件を多く扱っているM&A仲介会社であれば、安心です。

初めての相談は無料の会社が多いため、気になるM&A仲介会社があれば足を運んでみるとよいでしょう。相談する際には、これまでどのような案件を扱ってきたのかを確認してください。

地元のM&Aに詳しい

地元のM&Aに詳しいことも重要なポイントです。知名度のあるM&A仲介会社であっても、地元のM&Aに詳しくなければ、依頼しても満足のいく結果につながりにくくなります。

岡山県の地元産業や昔から続く地元ならではの商習慣について、深い理解のある会社を選ぶことが重要です。

相談料や手数料などの報酬体系が明確

相談先を選ぶときは、相談料や手数料などの報酬体系が明確な点も大切です。M&A仲介会社の報酬体系は、会社によって異なります。M&A終了後に、想定外の料金を請求されることがないように、契約前の確認が欠かせません。

通常、ホームページには報酬体系が記載されていますが、相談する際にスタッフからもしっかりと聞いておきましょう。相談料や手数料をあいまいにしているM&A仲介会社は、信用できません。そのような会社を選ぶことがないように、時間をかけて情報収集をおこなうことが大切です。

担当スタッフを信用できる

M&A仲介会社を選ぶときに大切なポイントは、担当スタッフを信用できるかどうかです。

実績や知識、経験が豊富であることも重要ですが、自分が長年大切にしてきた会社を任せられるスタッフだと信用できなければ、M&Aはスムーズに進みません。たとえマッチング相手が見つかったとしても、わだかまりが残る結果になりがちです。

自社や従業員への想いに真摯に耳を傾けてくれて、誠実に対応してくれるスタッフであれば、安心して依頼できます。相談する際は、自社の将来を任せられるスタッフなのかをしっかりと見極めましょう。

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岡山県のM&A事例6選

ここでは、岡山県の企業が関わったM&A事例をご紹介します。

  1. 株式会社アムズブレーンの事例
  2. ロジックイノベーション株式会社の事例
  3. 株式会社三蔵農林の事例
  4. 帝人ナカシマメディカル株式会社の事例
  5. 株式会社MASAYAの事例
  6. 金光薬品株式会社の事例

M&Aを検討している方は、地元の企業がどのようなM&Aを実施しているのか参考にしてください。

1.株式会社アムズブレーンの事例

2019年、静岡市のTOKAIコミュニケーションズが、岡山に本社がある株式会社アムズブレーンを株式譲渡により連結子会社化しました。TOKAIコミュニケーションズ(以下、TOKAI COM)は、TOKAIホールディングスの100%子会社です。

TOKAI COMは、ネットワーク・データセンター・システム開発を三位一体で展開するワンストップサービス企業として、個人、法人問わず幅広く事業を展開しています。一方、アムズブレーンは、岡山県においてソフトウェアの受託開発とシステムの運用・保守を主力とする情報サービス事業を展開している会社です。

TOKAI COMは、アムズブレーンを子会社化しリソースを共有することで、情報通信事業の開発強化とシナジーの創出が可能になるとしています。

参照元:株式会社TOKAIホールディングス「株式会社アムズブレーンの株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ

2.ロジックイノベーション株式会社の事例

2021年、広島県に本社のあるアシードホールディングス株式会社は、岡山県のロジックイノベーション株式会社を株式譲渡により子会社化しました。

アシードホールディングスは、物流へのニーズに対応するため、栃木県にアシードロジスティクスセンターを開設し倉庫業を開始しました。一方、ロジックイノベーションは、倉庫を活用した物流のアウトソーシングや物流代行、および食品廃棄物・廃プラ・木くずなどのリサイクル事業で成長している企業です。

アシードホールディングスは、ロジックイノベーションのノウハウを活かすことで、付加価値の高い物流サービスシステムを構築できるとしています。

参照元:アシードホールディングス株式会社「ロジックイノベーション株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

3.株式会社三蔵農林の事例

2019年、新潟県に本社を置く株式会社雪国まいたけは、岡山県の三蔵農林を株式譲渡により子会社としました。

岡山県の三蔵農林は、マッシュルームを主力商品とし、土つくりから力を入れている会社です。「ミツクラ」のブランドは知名度も高く、雪国まいたけにとって、三蔵農林の生産能力やノウハウは魅力的でした。

雪国まいたけは、三蔵農林を子会社とすることで、マッシュルームを商品ラインナップに加えることに成功しました。このM&Aにより、雪国まいたけは事業領域の拡大や成長スピードの加速が可能になるとしています。

参照元:雪国まいたけ「会社と歴史

4.帝人ナカシマメディカル株式会社の事例

2021年、岡山県の帝人ナカシマメディカル株式会社は、大阪府に本社を置くKISCO株式会社と、同社が展開している脊椎および外傷(骨折)事業を買収し、吸収分割により同事業を承継しました。

帝人ナカシマメディカルは、この事業買収により、KISCOの製品と人材を確保することができました。このことにより、製品ラインナップの拡大や開発、営業基盤の強化を図れるとしています。

参照元:帝人ナカシマメディカル株式会社「KISCO株式会社の脊椎および外傷(骨折)事業買収について

5.株式会社MASAYAの事例

2018年、東京都のウエルシアホールディングス株式会社は、岡山県の株式会社MASAYAを株式譲渡により子会社化しました。

ウエルシアホールディングスは、質・量ともに日本一のドラッグストアチェーンを目指し、関東地方を中心に東北から近畿地方において調剤併設型ドラッグストア事業を展開する会社です。

当時、株式会社MASAYAは、岡山県で化粧品専門店の「COLOR STUDIO」と「MASAYA」の計34店舗を展開していました。

ウエルシアホールディングスは、今後も成長が見込まれる化粧品市場において、事業領域の拡大を目指すべく今回のM&Aに至りました。相互のノウハウを共有することで、シナジー効果を発揮したいと公表しています。

参照元:ウエルシアホールディングス株式会社「株式会社MASAYAの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

6.金光薬品株式会社の事例

次も、ウエルシアホールディングス株式会社が関わるM&A事例です。2019年、ウエルシアホールディングス株式会社は、岡山県の金光薬品株式会社を株式譲渡により子会社化しました。

ウエルシアホールディングスは、付加価値の高い商品やサービスを提案する専門総合店舗を目指しています。具体的には、調剤併設やカウンセリング、深夜営業および介護を軸に、ドラッグストアを全国に展開しています。

一方、1934年創業の金光薬品株式会社は、岡山県で31店舗のドラッグストアを展開していました。中国地方での出店を目指していたウエルシアホールディングスは、このM&Aによって近畿から中国地方への事業基盤を強固にできるとしています。

参照元:ウエルシアホールディングス株式会社「金光薬品株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

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まとめ

岡山県の後継者不在率は減少傾向にあるものの、依然として高い数値を示しています。地域経済を支えるためにも、事業承継は早期に解決すべき大きな課題です。なかには黒字であっても後継者が見つからず、休廃業や解散を選択せざるをえない企業も増えてきています。

このような状況のもと、昨今は、親族や従業員に承継せず、第三者へ承継する経営者が増えてきています。M&Aを活用することにより、思ってもみなかった候補先が見つかる可能性もあるでしょう。

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