このページのまとめ
- 日本企業の買収・M&Aの件数は、年々増加している
- 日本企業の買収額の歴代ランキング1位は約6.8兆円で、製薬業界でのM&A案件
- 日本の大企業と海外企業とのM&Aが、買収額の上位に多数ランクインしている
- 日本企業が海外企業を買収するM&A件数も増えている
- 日本の大企業による買収のほか、中小企業同士でのM&Aも増えている
「日本企業の買収事例にはどのようなものがある?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
日本企業のM&Aは年々増加しており、国内にとどまらず、海外でも実施されています。
本コラムでは、日本におけるM&A動向や、日本企業が関わった案件の買収額の歴代ランキングを紹介します。
また、買収の規模や国内・海外に分けて、日本企業のM&A事例を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
日本企業の買収・M&A件数の動向
戦前の日本では、大企業による買収・M&Aや、財閥による組織再編などが活発に行われていました。
戦後のバブル期においては、日本の大企業が積極的にクロスボーダーM&Aを実施しました。
その後バブル経済は崩壊しますが、不況を機に国がM&Aに関連する制度の整備を急進します。
制度が整えられた結果、日本企業の買収・M&Aが活発化しました。
元来、買収・M&Aは大企業によって実施されることがほとんどでしたが、中小企業における案件数も増加していきます。
下記のグラフは、1985年から2022年までのM&A件数の推移を示したものです。
※中小企業庁『2018年版 中小企業白書』『2023年版 中小企業白書』をもとに作成
買収・M&Aの実施件数は増加傾向にあり、M&A市場は盛況であるといえます。
2020年はコロナ禍の影響によって一時的に3,730件に下落しました。
しかしその年を除けば、M&Aの件数は2022年までの10年間、右肩上がりで推移しています。
2022年には過去最多件数の4,304件をマークしました。
買収・M&Aに対する「ハゲタカ」「乗っ取り」などのマイナスなイメージはほとんど払拭され、事業承継や企業の躍進のための手段として浸透しつつあります。
国や支援機関によるサポート体制も今後さらに充実することが予想され、買収・M&Aの件数はますます増加していくでしょう。
参照元:
中小企業庁『2018年版 中小企業白書』第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命
中小企業庁『2023年版 中小企業白書』第2章 新たな担い手の創出
中小企業庁『事業承継の支援策』
日本企業が関与したM&Aの買収額・歴代ランキング
2023年までに日本企業が関与したM&Aについて、買収額の歴代ランキングを紹介します。
買収額の歴代ランキングの上位10件は下記のとおりです。
日本の大企業と海外企業とのM&Aが、買収額が巨額になる傾向があります。
順位 | 買収金額 | 発表年 | 買収企業 | 被・買収企業 |
1位 | 約6.8兆円 | 2018年 | 武田薬品工業 | シャイアー <アイルランド> |
2位 | 約3.3兆円 | 2016年 | ソフトバンクグループ | Arm <イギリス> |
3位 | 約2.3兆円 | 2017年 | ベインキャピタル <アメリカ> | 東芝メモリ |
4位 | 約2.25兆円 | 2006年 | 日本たばこ産業株式会社(JT | ギャラハー <イギリス> |
5位 | 約2.2兆円 | 2020年 | セブン&アイ・HD | スピードウェイ <アメリカ> |
6位 | 約2兆円 | 2023年 | 日本産業パートナーズ(JIP) | 東芝 |
7位 | 約1.75兆円 | 2006年 | ソフトバンクグループ | ボーダフォン <イギリス> |
8位 | 約1.65兆円 | 2014年 | サントリーHD | ビーム <アメリカ> |
9位 | 約1.57兆円 | 2012年 | ソフトバンクグループ | スプリント・ネクステル <アメリカ> |
10位 | 約1.2兆円 | 2020年 | ウットラムグループ <シンガポール> | 日本ペイントHD |
M&Aの買収額・歴代ランキング1位は、武田薬品工業株式会社によるシャイアー社(Shire plc)の買収です。その買収額は約6兆8,000億円にのぼります。
武田薬品工業株式会社はシャイアー社の買収によって、メガファーマとして世界トップレベルの売上高になりました。
参照元:
武田薬品工業株式会社『武田薬品によるシャイアー社買収の申出について』
武田薬品工業株式会社『Shire社買収完了のお知らせ』
ソフトバンクグループ株式会社『当社によるARM買収の提案に関するお知らせ』
株式会社東芝『東芝メモリ株式会社の株式譲渡完了及び特定子会社の異動に関するお知らせ』
日本たばこ産業株式会社『Welcome to the Delight World Vol.16』
株式会社セブン&アイ・ホールディングス『7-Eleven, Inc.によるSpeedway取得』
株式会社東芝『TBJH 合同会社による当社株式に対する公開買付けの結果並びに親会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ』
ソフトバンクグループ『ボーダフォン買収完了に関するお知らせ』
ソフトバンクグループ『当社によるスプリントの戦略的買収(子会社化)について』
サントリーホールディングス株式会社『2014年12月期 決算概況(連結)』
日本ペイントホールディングス株式会社『2020年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)』
【大型】日本企業が関与した買収・M&Aの事例
ここでは、日本企業が実施した買収・M&Aについて、買収金額が比較的大きい大型案件の事例を3つ紹介します。
- JICとJSRの買収・M&A事例
- アステラス製薬とIveric Bio社の買収・M&A事例
- KDDIとローソンの買収・M&A事例
それぞれの買収・M&Aの事例について、詳しく解説します。
JICとJSRの買収・M&A事例
2024年3月、官民ファンドの株式会社産業革新投資機構(以下「JIC」)は、半導体材料の大手であるJSR株式会社(以下「JSR」)を株式公開買付け(TOB)によって買収することを発表しました。
JSRはJICによるTOBに賛同の意を表明し、株主にもTOBへの応募を推奨しました。本案件は友好的TOBとして進められています。
今回のJSRの買収は、JICの完全子会社にあたるJICキャピタル株式会社を通じて新規設立したJICC-02株式会社がJSRの株式を買い付ける形式で実施されました。
買収企業 | 被・買収企業 |
株式会社産業革新投資機構 | JSR株式会社 |
JSRは、半導体フォトレジストに強みを持ち、世界シェアも高い企業です。
しかしスマートフォンやパソコン関連の半導体の需要が低下した影響を受け、売上が減少していました。
今回の買収・M&Aの最終的な目標は、半導体業界の再編を促進することです。
今後、JICはJSRを完全子会社化し、日本産業の国際的競争力アップを目指し、業界再編を推進していく予定です。
参照元:
株式会社産業革新投資機構『JICC-02 株式会社によるJSR株式会社(証券コード:4185)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ』
株式会社産業革新投資機構『JICC-02 株式会社によるJSR株式会社(証券コード:4185)に対する公開買付けの結果に関するお知らせ』
JSR株式会社『JICC-02株式会社による当社株式等に対する公開買付けの開始予定に関するFAQ』
アステラス製薬とIveric Bio社の買収・M&A事例
2023年5月、アステラス製薬株式会社(以下「アステラス製薬」)はアメリカのバイオ医薬品会社であるIVERIC bio, Inc.(以下「Iveric Bio社」)を買収する契約を締結したことを発表しました。
アステラス製薬の持株子会社であり、本社がアメリカにあるアステラスUSホールディング Inc.の100%子会社のBerry Merger Sub,Inc.を通じて、Iveric Bio社の買収を実施しました。
買収企業 | 被・買収企業 |
アステラス製薬株式会社 | IVERIC bio, Inc. |
Iveric Bio社の買収は、総額約59億米ドルで合意に至りました。この金額は75%のプレミアムを乗せた価額になります。
日本円に換算すると、買収額は約8,000億円です。
Iveric Bio社は眼科領域の最先端をいく企業です。Iveric Bio社を獲得することにより、アステラス製薬は眼科領域におけるケイパビリティを獲得できます。
今回の買収・M&Aは、アステラス製薬が掲げる重点領域での製品ポートフォリオの構築に対し、Iveric Bio社の事業が大きく貢献すると判断し、実施されました。
本買収は7月に完了し、Iveric Bio社はNASDAQ市場から上場廃止となり、アステラス製薬の子会社となりました。
参照元:
アステラス製薬株式会社『米国 Iveric Bio社買収に関する契約締結のお知らせ』
アステラス製薬株式会社『米国Iveric Bio社の買収完了および子会社の異動に関するお知らせ』
KDDIとローソンの買収・M&A事例
2024年2月、KDDI株式会社(以下「KDDI」)が株式会社ローソン(以下「ローソン」)に対する株式公開買付け(TOB)を開始することが発表されました。
ローソンは株主に対してTOBへの応募を推奨しており、本件は友好的TOBだといえます。
買収企業 | 被・買収企業 |
KDDI株式会社 | 株式会社ローソン |
ローソンの株式はもともと親会社の三菱商事株式会社(以下「三菱商事」)が50.06%を保有しており、KDDIは2.11%を保有していました。
今回の買収・M&Aでは、その他の株主や新株予約権者が保有する残りの47.84%の買付けを目的としたTOBです。
1株あたりの買付け価格は約19%のプレミアムを上乗せした1万360円に設定され、TOBがスタートしました。
TOBの結果、応募は買付け予定数の下限を超えて3,903万1,496株の応募がありました。
TOBの実施後、KDDIは三菱商事に次ぐ第2位の大株主となります。
本TOBを機に、KDDIは通信事業とコンビニ事業とのシナジー効果の創出を目指します。
参照元:
株式会社ローソン『KDDI株式会社による当社株券等に対する公開買付けの開始予定に関する賛同の意見表明及び応募推奨並びに資本業務提携のお知らせ』
株式会社ローソン『KDDI株式会社による当社株券等に対する公開買付けの開始に関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ』
KDDI株式会社『株式会社ローソン(証券コード:2651)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ』
株式会社ローソン『KDDI株式会社による当社株券等に対する公開買付けの結果並びにその他の関係会社及び主要株主の異動に関するお知らせ』
【海外】日本企業が関与した買収・M&Aの事例
ここでは、日本企業が海外の企業と実施した買収・M&Aの事例を3つ紹介します。
- ゼンショーHDとSnowFox社の買収・M&A事例
- 東京ガスとロッククリフ・エナジー社の買収・M&A事例
- 富士フイルムとEntegris社の買収・M&A事例
日本企業による海外企業の買収・M&Aは活発化しています。
それぞれの買収・M&Aの事例について、詳しく解説します。
ゼンショーHDとSnowFox社の買収・M&A事例
2023年6月、株式会社ゼンショーホールディングス(以下「ゼンショーHD」)が、SnowFox Topco Limited(以下「SnowFox社」)を買収することを発表しました。
SnowFox社は、北米およびイギリスで事業展開している企業です。
ゼンショーHDは新設した子会社を通じてSnowFox社の全株式を取得し、同年9月にSnowFox社の完全子会社化を完了しました。
買収企業 | 被・買収企業 |
株式会社ゼンショーホールディングス | SnowFox Topco Limited |
ゼンショーHDはフードサービスチェーンの経営や販売・食材加工のシステムの開発を行う企業です。世界各地にグループ会社があり、グローバルに事業を展開しています。
今回100%子会社化するSnowFox社は、北米やイギリスにおいて寿司のテイクアウト店や製造卸売業などの日本食に関する事業を営んでいる会社です。
本買収によってSnowFox社が有するネットワークとノウハウを取り込み、ゼンショーHDグループのさらなる業容拡大と海外事業の成長力強化につなげるとしています。
参照元:
株式会社ゼンショーホールディングス『SnowFox Topco Limited の株式取得(子会社化)に関するお知らせ』
株式会社ゼンショーホールディングス『SnowFox Topco Limited の株式取得(子会社化)完了に関するお知らせ』
東京ガスとロッククリフ・エナジー社の買収・M&A事例
2023年12月、東京ガス株式会社(以下「東京ガス」)は、アメリカのテキサス州でガス開発・生産事業を行うRockcliff Energy Ⅱ LLC(以下「ロッククリフ・エナジー社」)を約4,050億円で買収することを発表しました。
東京ガスの100%出資子会社である東京ガスアメリカ社が出資する、TG Natural Resources LLC(以下「TGNR社」)を通じて、ロッククリフ・エナジー社の全株式を取得して完全子会社化しました。
買収企業 | 被・買収企業 |
東京ガス株式会社 | Rockcliff Energy Ⅱ LLC |
東京ガスグループは中期経営計画のなかで、北米においてシェールガス事業を拡大することを挙げています。
その一環として同グループは、TGNR社が鉱区を持つテキサス州・ルイジアナ州で良質な資産を獲得するルートを確保しようと考えていました。
今回のロッククリフ・エナジー社の買収によって、テキサスおよびルイジアナのエリアにおいて新たな収益基盤を獲得できるとしています。
参照元:
東京ガス株式会社『米国テキサス州・ルイジアナ州における天然ガス開発・生産事業会社「ロッククリフ・エナジー社」の全株式取得について』
東京ガス株式会社『Rockcliff Energy Ⅱ LLC の株式取得及び子会社の異動に関するお知らせ』
富士フイルムとEntegris社の買収・M&A事例
2023年5月、富士フイルム株式会社(以下「富士フイルム」)は、アメリカの半導体材料メーカーのEntegris,Inc.(以下「Entegris社」)が有する半導体用プロセスケミカル事業を買収することを発表しました。
半導体用プロセスケミカル事業の買収は、Entegris社のグループ会社であり、半導体用プロセスケミカル事業をグローバル展開しているCMC Materials KMG Corporation(以下「KMG社」)の全株式を取得する方法で実施されました。
KMG社の買収は、同年10月に完了しました。買収額はおよそ7億米ドルです。
買収企業 | 被・買収企業 |
富士フイルム株式会社 | Entegris, Inc. |
今回の買収・M&Aにより、富士フイルムは半導体用プロセスケミカルの豊富な製品ラインナップを獲得しました。また、アメリカをはじめとする海外の製造拠点も拡充しました。
今後さらに半導体材料事業の成長を加速させて、半導体業界の発展に寄与していくとのことです。
参照元:
富士フイルム株式会社『米国の半導体材料メーカーEntegris社の半導体用プロセスケミカル事業を買収』
富士フイルム株式会社『米国半導体材料メーカーEntegris社の半導体用プロセスケミカル事業の買収完了に関するお知らせ』
【国内・大企業】日本企業が関与した買収・M&Aの事例
ここでは、一般的に「大企業」と呼ばれる日本企業が国内において実施した買収・M&Aの事例を3つ紹介します。
- ニデックとTAKISAWAの買収・M&A事例
- 楽天モバイルとDMMの買収・M&A事例
- オリックスとDHCの買収・M&A事例
それぞれの買収・M&Aの事例について、詳しく解説します。
ニデックとTAKISAWAの買収・M&A事例
2023年11月、ニデック株式会社(旧商号は「日本電産株式会社」。以下「ニデック」)は、株式会社TAKISAWA(以下「TAKISAWA」)に対する株式公開買付け(TOB)を完了させ、ニデックが新たにTAKISAWAの親会社および筆頭株主になりました。
この買収・M&Aは当初「同意なきTOB」として、動向に注目が集まった事例です。
買収企業 | 被・買収企業 |
ニデック株式会社 | 株式会社TAKISAWA |
2023年7月、ニデックはTAKISAWAの普通株式を公開買付けすることを公表しました。
しかしこの公表はTAKISAWA側の同意を得ない状態で行われたものです。
ニデックのTOBの意向表明を受けて、TAKISAWAは「内容・情報を精査したうえで見解を公表する予定」としていました。
同年9月、TAKISAWAは買収防衛策を講じないことを発表し、公開買付けに関する賛同の意を示しました。また、株主に対しても応募を推奨することを伝えています。
同意なきTOBとしてスタートした買収でしたが、ニデック側からの提案・説明を受けて、「本買収がTAKISAWAの企業価値につながる」「買付け価格に付与されるプレミアムが妥当である」とTAKISAWAが判断し、結果的に友好的TOBに至りました。
なお、公開買付け価格は 普通株式1株あたり2,600円です。
同年11月にTOBが成立し、TAKISAWAはニデックにグループ入りしました。
また、2023年12月にTAKISAWAは株式併合を実施することを発表します。
株式併合にともない、2024年1月末でTAKISAWAの株式は上場廃止になりました。
そして同年2月、株式併合の効力が発生し、TAKISAWAはニデックの完全子会社となりました。
参照元:
株式会社TAKISAWA『ニデック株式会社による当社株券に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ』
株式会社TAKISAWA『当社株式の大規模買付行為に関する必要情報リストの交付に関するお知らせ』
株式会社TAKISAWA『「当社株式の大規模買付行為に関する対応方針(買収防衛策)」 上の対抗措置を発動しないことに関するお知らせ』
株式会社TAKISAWA『ニデック株式会社による当社株式に対する 公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ』
株式会社TAKISAWA『(訂正)「ニデック株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」の一部訂正のお知らせ』
株式会社TAKISAWA『ニデック株式会社による当社株式に対する公開買付けに関するFAQ』
ニデック株式会社『株式会社TAKISAWA(証券コード:6121)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ』
株式会社TAKISAWA『ニデック株式会社による当社株式に対する公開買付けの結果並びに親会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ』
ニデック株式会社『株式会社TAKISAWA(証券コード:6121)に対する公開買付けの結果に関するお知らせ』
株式会社TAKISAWA『ニデック株式会社による当社に対する公開買付けに係る決済の完了及び当社のニデックグループ入りに関するお知らせ』
株式会社TAKISAWA『株式併合、単元株式数の定めの廃止及び定款一部変更に関するお知らせ』
ニデック株式会社『株式会社TAKISAWAの株式併合の効力発生および、完全子会社化に関するお知らせ』
楽天モバイルとDMMの買収・M&A事例
2019年7月、楽天グループ株式会社の100%子会社の楽天モバイル株式会社(以下「楽天モバイル」)が、合同会社DMM.com(以下「DMM社」)が運営しているMVNO事業である「DMM mobile」と「DMM光」を買収することを発表しました。
スキームには会社分割を活用し、楽天モバイルは上記MVNO事業を承継しました。
会社分割の効力発生日は同年9月1日で、対価としておよそ23億円をDMM社に交付します。
買収企業 | 被・買収企業 |
楽天モバイル株式会社 | 合同会社DMM.com |
DMM社の「DMM mobile」は、2019年6月末時点で契約数が約24万を誇るMVNOサービスです。
「DMM光」は、約2万もの契約数を有する高品質なインターネット通信サービスです。
楽天モバイルはMVNOサービス「楽天モバイル」を提供しており、MVNO業界において高いシェア率を持っています。
楽天モバイルは、今回の買収・M&AによってDMM社から「DMM mobile」と「DMM光」を承継することで、さらなる顧客基盤の拡大を狙います。
また、「DMM mobile」「DMM光」においてポイントシステムを移行し、楽天グループ独自の経済圏である「楽天エコシステム」のメンバーシップの強化を図るとのことです。
参照元:
楽天グループ株式会社『楽天モバイル、DMM社よりMVNO事業「DMM mobile」等を承継』
合同会社DMM.com『DMM.com MVNO事業「DMM mobile」等を 楽天モバイルに承継』
オリックスとDHCの買収・M&A事例
2022年11月、オリックス株式会社(以下「オリックス」)は、株式会社ディーエイチシー(以下「DHC」)の株式を譲り受ける株式譲渡契約を締結したことを発表しました。
買収総額はおよそ3,000億円です。
翌年の2023年1月末、オリックスは予定どおりDHCの株式を取得し、子会社化しました。株式取得後の議決権所有割合は91.1%です。
買収企業 | 被・買収企業 |
オリックス株式会社 | 株式会社ディーエイチシー |
DHCは化粧品や健康食品などの分野において、強いブランド力を有しています。
オリックスが今回のM&AによってDHCから承継する事業は、DHCの主力事業である化粧品や健康食品などの事業です。
オリックスはこれまでも、医療機器販売会社や製薬会社に出資をする形でヘルスケア事業に注力していました。
DHCを買収することによって、ヘルスケア領域のネットワークをさらに拡大していくとしています。
参照元:
オリックス株式会社『株式譲渡契約締結に関するお知らせ』
オリックス株式会社『株式会社ディーエイチシーの株式取得(子会社化)に関するお知らせ』
【国内・中小企業】日本企業が関与した買収・M&Aの事例
ここでは、日本の中小企業が実施した買収・M&Aの事例を3つ紹介します。
- 小野写真館と桐のかほり咲楽の買収・M&A事例
- ゴーゴーカレーGとスニタトレーディングの買収・M&A事例
- 丸井織物とミチの買収・M&A事例
それぞれの買収・M&Aの事例について、詳しく解説します。
小野写真館と桐のかほり咲楽の買収・M&A事例
2020年10月、株式会社小野写真館(以下「小野写真館」)は静岡県にある「桐のかほり 咲楽」を事業譲受により取得しました。
買収企業 | 被・買収企業 |
株式会社小野写真館 | 桐のかほり 咲楽 |
「桐のかほり 咲楽」は客室が4部屋の小規模な高級温泉旅館です。
ゆったりとくつろぐことができる空間や、オーシャンビューが一望できる露天風呂などが大きな魅力です。
小野写真館は、人生の節目となる瞬間を写真を通じて価値提供をする会社です。
今回のM&Aにより、宿泊と写真を掛け合わせたシナジー効果を創出できるとしています。
通常の宿泊サービスに加え、ロケーションフォトやフォトウエディングなど、お祝いの日をさらに特別なものにするサービスも展開しています。
参照元:
株式会社小野写真館『伊豆河津の隠れ宿「桐のかほり 咲楽」をM&Aで取得』
株式会社小野写真館『M&A戦略 2. シナジー効果[咲楽編]』
桐のかほり 咲楽『咲楽の祝い』
ゴーゴーカレーGとスニタトレーディングの買収・M&A事例
2019年10月、株式会社ゴーゴーカレーグループ(以下「ゴーゴーカレーG」)は、有限会社スニタトレーディング(以下「スニタトレーディング」)の製造部門を買収しました。
国内に7店舗ある「本場インド料理店サムラート」の工場を譲り受けています。
買収企業 | 被・買収企業 |
株式会社ゴーゴーカレーグループ | 有限会社スニタトレーディング |
工場は思うように利益を生み出すことができておらず、スニタトレーディングは工場閉鎖を考えていました。
しかしゴーゴーカレーGは、この工場がイスラム法で食べることが許可されているハラール料理を製造できることに価値を見出しました。
イスラム教徒の訪日客が今後増加していくことを見込んで、今回の事業譲受を決断しています。
参照元:株式会社ゴーゴーカレーグループ『老舗インド料理「SAMRAT(サムラート)」製造部門をM&A。イスラム教徒(ムスリム)の訪日客増加に「ハラールカレー」の提供可能に!』
丸井織物とミチの買収・M&A事例
2019年7月、丸井織物株式会社(以下「丸井織物」)は株式会社ミチ(以下「ミチ社」)が運営するネイルチップ販売サイト「ミチネイル」の事業を買収しました。
買収企業 | 被・買収企業 |
丸井織物株式会社 | 株式会社ミチ |
ミチ社の「ミチネイル」は、ネイルチップを販売するサイトとして高い人気を誇るサイトです。
既製デザインのネイル販売のほか、オリジナルオーダーデザインのネイル販売も請けています。
丸井織物は合繊織物メーカーであり、Tシャツをはじめとするオリジナル商品のプラットフォーム事業を行っている企業です。
丸井織物はこのオリジナル商品のプラットフォーム事業が「ミチネイル」におけるパーソナルオーダーの需要を満たし、大きなシナジー効果を生み出せるとして、今回の事業譲受を決断しました。
事業譲受後には新たな取り組みとして、丸井織物が持つWeb上で使用可能なデザインツールとデジタルネイルプリンターを活用し、「ミチネイル」において顧客がオリジナルデザインでネイルを作れるサービスを展開しています。
参照元:
丸井織物株式会社 『丸井織物株式会社、ネイルチップ販売サイト「ミチネイル」を事業譲受』
ミチネイル『オリジナルネイルチップ』
まとめ
日本における買収・M&Aの件数は年々増加しています。
日本の大企業による大型M&A案件のほか、中小企業間でのM&Aも増加傾向にあります。
また、海外M&Aでも日本企業は存在感を示しており、日本企業が買収される案件だけでなく、日本企業が譲り受け側となって進めるM&A案件も増えています。
日本企業が携わる買収・M&Aは、今後ますます活発化していくでしょう。
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ご相談も無料です。M&Aをご検討の際には、ぜひお気軽にお問い合わせください。