このページのまとめ
- ソーシングとは、M&Aのニーズ発見から候補先との交渉までの一連の流れのこと
- ソーシングにおいてM&Aの方針が決まるため、重要性が高い
- M&Aのソーシングを進める前に、自社情報を整理しておくとよい
- M&Aでソーシングを行うときは、情報漏洩の防止を徹底する
- M&Aのソーシングを依頼する際は、支援機関の情報をよく確認する
「M&Aにおけるソーシングとは何を意味する?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
ソーシングとは、M&Aの工程の前半部分にあたる「ニーズの掘り下げから、候補先企業との交渉まで」を指します。
本コラムでは、M&Aにおけるソーシングの意味や方法・種類、手順などを解説します。
また、M&Aのソーシングを成功させるポイントも紹介するため、ぜひ参考にしてソーシングを進めてください。
目次
M&Aにおけるソーシングとは
M&Aにおけるソーシングの意味とは、M&Aのプロセスの前半部分のことです。
ソーシングは英語で「Sourcing」と表記します。
ソーシングという用語は、M&A仲介会社などのアドバイザーが支援業務を行うにあたって、工程を示すために使用するケースが多いです。
ソーシングは主に、M&Aのニーズ発見から相手との交渉までの一連の流れを指します。
アドバイザーによっては、ソーシングに交渉の工程を含めないこともあります。
M&Aの全体の流れ
M&Aの全体の流れは、下記の3つのフェーズに分けることができます。
- 検討・準備フェーズ
- マッチング・交渉フェーズ
- 最終契約フェーズ
ソーシングは、上記のプロセスを前半・後半に分けたときに前半部分を示す言葉です。
M&Aのプロセスにおいて、ソーシングは「検討・準備フェーズ」から「マッチング・交渉フェーズ」までの工程に該当します。
また、フェーズを示す用語には「ソーシング」のほか、「オリジネーション」や「エグゼキューション」があります。
M&Aにおけるオリジネーションとは
オリジネーション(Origination)とは、M&Aのプロセスの前半部分を指す用語です。
ソーシングと同義で使用されることがほとんどです。
ソーシングと同じく、オリジネーションは「検討・準備フェーズ」から「マッチング・交渉フェーズ」までの工程を指します。
M&Aにおけるエグゼキューションとは
エグゼキューション(Execution)とは、M&Aのプロセスの後半部分を指す用語です。
エグゼキューションは主に「最終契約フェーズ」を指します。
デューデリジェンスの実施からクロージングまでの過程がエグゼキューションです。
なお、基本合意書の締結をエグゼキューションに含めるパターンもあります。
M&Aにおけるソーシングの重要性
M&Aを進めるにあたって、ソーシングのプロセスは高い重要性を持ちます。
なぜなら、ソーシングにはM&Aの方向性を決める初期段階が含まれるからです。
もしニーズを正しく捉えることができず、最初の段階で定めるM&Aの目的にズレが生じた場合、そのあとのM&Aの工程もすべて的外れなものになるおそれがあります。
マッチング度が低い候補企業を紹介されたり、十分なシナジー効果が得られない相手と成約したりする危険性が高まるでしょう。
ソーシングの過程を疎かにすると、マッチング・交渉において貴重な時間を浪費するリスクやM&Aが失敗に終わるリスクが高いです。
ソーシングの重要性を理解し、M&Aの戦略を適切に立てられるようにしましょう。
M&Aにおけるソーシングの手順
M&Aにおけるソーシングは、大別すると次の5ステップに分けられます。
- M&Aの戦略を策定する
- ロングリスト・ショートリストを作成する
- 候補企業を選定する
- トップ面談を行う
- 条件交渉を行う
以下、それぞれの手順の詳細について解説します。
1.M&Aの戦略を策定する
M&Aのニーズが発生したら、支援機関のアドバイザーに相談を行います。
秘密保持契約(NDA)を締結し、支援機関のアドバイザーとともに戦略策定を進めましょう。
まずはニーズをもとに、M&Aの目的を明確化しましょう。
M&Aの主な目的には、以下のようなものが挙げられます。
譲渡企業(売り手側)のM&Aの目的 |
譲受企業(買い手側)のM&Aの目的 |
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また、譲渡企業側は企業価値評価を行います。
M&Aでかなえたい目的や企業価値評価の結果なども参考にして、M&Aの戦略を具体的に立てていきましょう。
2.ロングリスト・ショートリストを作成する
マッチングに向けて、M&Aの候補企業をリストアップします。
ロングリストを作成するときは、大まかな条件を設定して候補企業をリストアップします。
候補企業の数の目安は20〜30社です。
M&Aの規模によっては100社ほどリストアップすることもあります。
ショートリストではより細かい条件を設定して、ロングリストをもとに候補企業を絞り込んでいって作成します。
候補企業の数の目安は5〜10社です。
3.候補企業を選定する
リストアップが完了したら、M&Aの相手となる候補企業を選定していきましょう。
候補企業を選定する工程において、譲渡企業はノンネームシートという資料を使用して匿名で自社の魅力を伝えます。
譲受企業はノンネームシートの内容を確認し、魅力を感じた企業に対してネームクリア(詳細情報の開示請求)を打診します。
4.トップ面談を行う
お互いの企業情報やM&Aに関する情報を知ったうえでM&Aの実施の意向が強まったら、トップ面談に進みます。
トップ面談では基本的に双方の経営者同士が顔を合わせて話し合いを行います。
トップ面談の段階ではまだ具体的な条件交渉は行いません。
相互理解を深めたり、M&Aの相性を確かめたり、経営者の人柄に触れたりする機会として活用しましょう。
5.条件交渉を行う
トップ面談を終えて相手企業とのM&Aを行う意向が固まったら、条件交渉に移ります。
M&Aの取引価額やM&Aの手法、譲渡対象の範囲、実施時期などの詳細条件について、譲渡企業・譲受企業で話し合って決めていきましょう。
そしてM&Aの基本条件がまとまったら、基本合意書を締結します。
ここまでが、M&Aにおけるソーシングの一連の流れです。
M&Aにおけるソーシングの方法・種類
M&Aにおけるソーシングの方法には、「プル型ソーシング」と「プッシュ型ソーシング」の2種類があります。
プル型ソーシング・プッシュ型ソーシングの特徴は、下記の表のとおりです。
プル型ソーシング |
プッシュ型ソーシング |
|
サポートの有無 |
あり(支援機関のサポートを受ける) |
なし(自力で進める) |
メリット |
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デメリット |
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ここではプル型ソーシングとプッシュ型ソーシングについて、それぞれ詳しく解説します。
プル型ソーシングとは
M&Aにおけるプル型ソーシングとは、仲介会社などの支援機関のサポートを受けてM&Aのソーシングを進行させる方法です。
プル型ソーシングであれば、支援機関から企業に対してはたらきかけて、M&Aの相手探しやM&Aの業務を積極的に進めてくれます。
プル型ソーシングのメリット
プル型ソーシングのメリットは、支援機関が保有する豊富なデータベースから候補先を紹介してもらえることです。
候補先企業を数多く用意しているため、希望条件に合った相手に出会える可能性が高まります。
また、M&Aのあらゆるプロセスにおいて、専門家による的確なアドバイスをもらえることも大きなメリットです。
M&Aに関連する資料作成や相手へのアプローチ方法などについても、心強いサポートを受けられるでしょう。
プル型ソーシングのデメリット
一方で、支援機関を利用するための費用がかかってしまうことはデメリットです。
M&A支援機関によって料金体系や金額が異なるため、まずはサイトの料金表や無料相談での問い合わせなどを利用し、かかる依頼料を確かめましょう。
また、依頼先の支援機関を選定するプロセスが増える点に留意してください。
頼れる支援機関・相性の良い支援機関を見極めることは、M&Aの成功につながります。
複数の支援機関に問い合わせて、比較検討しましょう。
プッシュ型ソーシングとは
M&Aにおけるプッシュ型ソーシングとは、支援機関のサポートを利用せず、自力でM&Aのソーシングを行う方法です。
プッシュ型ソーシングの場合、M&Aの当事会社が主体となってM&Aを進行させます。
プッシュ型ソーシングのメリット
プッシュ型ソーシングのメリットは、既知の企業がM&Aの候補先になることです。
すでにお互いのことをよく知っているため、相互理解を深めるのに要する時間が短縮できます。M&Aの交渉もスムーズに進みやすいでしょう。
また、仲介会社などの支援機関に頼らないため、依頼のためのコストをかけずに済みます。
依頼料が発生しない点は、プッシュ型ソーシングの大きなメリットだといえるでしょう。
プッシュ型ソーシングのデメリット
プッシュ型ソーシングのデメリットは、多大な時間と労力が必要であることです。
M&Aを進めるにあたって発生する業務は膨大であるうえ、多岐にわたります。
自力でソーシングを行う場合、会社を経営しながら並行してM&Aの関連業務に取り組むことになります。かかる時間・労力が相当なものになることを覚悟しなければなりません。
また、M&Aの候補先が限られる点に注意する必要があります。
プッシュ型ソーシングでは、候補先を自社のネットワークから選定します。候補先となる企業が少ない場合は、プル型ソーシングを検討しましょう。
M&Aでソーシングを成功させる3つのポイント
M&Aでソーシングを成功させるために、以下の3つのポイントを押さえましょう。
- 自社の情報をあらかじめ整理しておく
- 情報漏洩が発生しないように徹底する
- M&A支援機関の情報を確認したうえで依頼する
3つのポイントについて、詳しく解説します。
1.自社の情報をあらかじめ整理しておく
M&Aでソーシングを成功させるポイントの一つ目は、自社の情報を前もって整理しておくことです。
あらかじめ自社に関する情報をまとめておけば、ソーシングの工程が円滑に進みます。
M&Aにおいてソーシングを進める場合、自社情報を提供する場面が発生します。
M&Aの戦略を策定する際は、まずは自社の現状分析を行うことが必要です。
また、M&Aの取引相手を探すときには、自社をアピールするための資料を作成する必要があります。
自社情報に関する項目・資料の例は以下のとおりです。
自社情報に関する項目・資料の例 |
【会社概要】
【組織】
【事業内容】
【財務状況】
|
上記にあるような情報はソーシングのプロセスにおいて必ず必要となるため、可能なかぎりまとめておきましょう。
2.情報漏洩が発生しないように徹底する
M&Aでソーシングを成功させるポイントの二つ目は、情報漏洩が起きないように徹底することです。
M&Aのソーシングでは、組織図や財務状況などの秘匿性が高い情報を取り扱います。
また、「M&Aを検討している」ということ自体も秘匿性を有する情報です。
もしこれらの情報が予期せぬタイミングで社内や世間に漏洩してしまった場合、混乱を招くおそれがあります。
その結果、従業員の大量離職や取引先からのクレーム、株価の暴落などが起こるかもしれません。
情報漏洩をしないよう、細心の注意を払いましょう。
M&Aの支援機関にサポートを依頼する場合は、まず初めに秘密保持契約(NDA)を必ず結びます。
また、ソーシングやエグゼキューションなどの過程において候補先に自社情報を提供する際も、相手企業との間で秘密保持契約を締結してください。
そのほか社内においても、M&Aをともに推進するメンバー以外に情報が漏れることがないように気を付けましょう。
3.M&A支援機関の情報を確認したうえで依頼する
M&Aでソーシングを成功させるポイントの三つ目は、依頼前にM&A支援機関についてしっかり調べることです。
M&A支援機関を選定するときの観点には以下のようなものが挙げられます。
項目 |
選び方のチェックポイント |
サポート形式 |
「仲介型(両社の間に立って中立な立場で支援)」か「アドバイザリー型(どちらか一方を支援)」かなど、サポートの形式をチェックする |
契約体系 |
「一般契約(複数の業者と契約できる)」か「専任契約(1社のみに絞って契約する)」かなど、契約体系をチェックする |
支援内容・範囲 |
「紹介サービスのみ」「ソーシングから成約までトータルサポート」など、支援内容・範囲をチェックする |
報酬体系・手数料 |
着手金の有無や成功報酬の出し方、料率など、サポートを依頼した場合にかかる手数料をチェックする |
取り扱っている案件 |
自社が希望するタイプの案件を取り扱っているか、得意としているかをチェックする
|
過去の実績 |
実績の数や過去の成約事例をチェックする |
プル型ソーシングを行う場合には、複数のM&A支援機関に関する情報を収集し、比較をしたうえで依頼先を決定してください。
まとめ
M&Aにおけるソーシング(Sourcing)とは、M&Aのプロセスの前半部分にあたる「M&Aのニーズの掘り下げから、相手企業との交渉まで」を指します。
ソーシングには、M&Aの支援機関のサポートを受けながら進める「プル型ソーシング」と、独力で進行させる「プッシュ型ソーシング」の2種類があります。
M&Aの支援機関に依頼する「プル型ソーシング」を選択する場合は、支援機関の特徴をよく確かめたうえでオファーしましょう。
ソーシングの工程は、M&Aの指針を決定する初期段階を内包するため、重要性が高いです。
まずはM&Aの目的を明確にし、方向性を定めてからソーシングを進めてください。
また、自社情報を事前にまとめたり、情報漏洩に注意したりすることも、ソーシングを円滑に進行させるためのポイントです。
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