このページのまとめ
- 後継者のいない会社を買う事例は増加傾向にある
- 新規事業の立ち上げに比べると、後継者のいない会社を買い取る方法はリスクが少ない
- 後継者のいない会社を買い取ると、会社の債務なども引き継がれるため注意が必要
会社や個人が後継者のいない会社を買う事例は、年々増えています。後継者のいない会社を買うことには、多くのメリットがあるためです。
この記事では、後継者のいない会社を買う際のメリットやデメリット、買うべき会社の選び方、ポイントなどについて解説しています。後継者のいない会社を買った具体的な事例もあわせて紹介しているので、参考にしてください。
目次
後継者のいない会社を買うことはできる?
そもそも、後継者のいない会社を買えるかどうか疑問に思う方も多いかもしれません。
結論からいうと、後継者のいない会社を買うことは可能です。実際、現代では後継者のいない会社を購入し、事業を継承したり、自社の一部として大きく育てたりすることが多く行われています。
後継者のいない会社は増えている
現実として、後継者のいない会社を買う形式での事業継承は徐々に増えつつあります。
2021年に帝国データバンクが行った『全国企業「後継者不在率」動向調査(2023年)』によれば、調査対象となった全国・全業種約27万社のうち、後継者を「いない」または「未定」と答えた企業は53.9%と改善傾向にありますが、未だ過半数は後継者不足となっています。
後継者不在率は下がっているものの、いまだ50%以上が後継者不足であることは事実です。後継者不足の理由としては、会社経営者の高齢化が進んでいる一方で、親族間に適任の後継者がいないことなどが挙げられるでしょう。
また、2018年から2023年における後継者の動向変化については、全国14万社を対象として調査した結果を見ると、2018年から継続的に後継者不在となっている割合が34.1%となっています。つまり、後継者不在となっている企業の3割超は、5年間もの間、課題が解決されないままとなっているということです。
今後も、コロナ禍を原因として業績が悪化し、新たに事業の継承、もしくは廃業を考える会社も増えており、今後は血縁関係によらない事業継承がますます増えると予想されます。
参照:株式会社帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2023年)」
後継者のいない会社を買う方法
後継者のいない会社を買う方法には、以下のようなものがあります。
メリット |
デメリット |
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M&A仲介業者 |
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事業承継・引継ぎ支援センター |
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M&Aマッチングプラットフォーム |
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M&A仲介業者を利用する
M&A仲介業者は、M&Aで企業を売却したい人と、企業を買い取りたい人とをマッチングさせる専門業者です。
仲介業者のもとには買い取ってほしい企業がたくさん集まります。そのため、企業を買い取りたい人も集まる仕組みとなっています。仲介業者はこうした膨大な情報を整理し、それぞれの希望を活かして最適な形でM&Aのできる売り手と買い手とをマッチングさせるのです。
仲介業者はM&Aの専門的な知識を持っているため、マッチングがうまくいきやすいのがメリットです。一方、継続的な顧客の確保という視点から、会社を手放す売り手よりも、再度サービスを利用する可能性のある買い手にとって有利な交渉を行う企業も見受けられ、買い手にとってはメリットですが、売り手にとってはデメリットになり得ます。
事業承継・引継ぎ支援センターを利用する
事業承継・引継ぎ支援センターは、事業の引き継ぎを補助してくれる、公的な事業引き継ぎ支援サービスです。中小企業庁が管轄しているという点で、安心感が大きいと感じる人が多いでしょう。後継者がいない場合の第三者への引き継ぎだけではなく、親族内での事業引継ぎを含めたさまざまな相談に応じています。
事業承継・引継ぎ支援センターの相談窓口は全国に設置されており、どこからでも利用しやすいのがメリットです。活動に地域性があり、地元での引き継ぎを考えている場合に強みがあります。また公的サービスであることから相談費用が無料で、引き継ぎにかかる経費を抑えられるでしょう。
一方、民間企業のサービスに比べて対応がゆっくりになるのは致し方ありません。また継承の事例も民間企業サービスより少ないのがデメリットです。
M&Aマッチングプラットフォームを利用する
M&Aマッチングプラットフォームとは、インターネット上で会社を売りたい人と、買いたい人とをマッチングするサイトです。
M&Aマッチングプラットフォームには、売り手と買い手の双方が数多く登録されています。売り手も買い手も地域を問われないため、自分の希望にあった相手を全国、あるいは全世界から探せるのがメリットです。実際にどの程度の選択肢があるかは、プラットフォームの規模にもよります。世界的なM&Aを考えているなら、規模の大きなM&Aマッチングプラットフォームを利用すると良いでしょう。
M&Aマッチングプラットフォームでは、仲介業者にかかる手数料を省き、経費を抑えられるのもメリットといえます。そもそも希望にあった相手が見つかりやすいうえに交渉が当事者同士で進められるため、早期に話がまとまるのも良いところです。
ただし、専門家が介入しないため、プラットフォームによってはサポートが不十分なケースがあります。また仲介手数料を抑えられると思っても、外部の弁護士やFAなどの介入が必要な場合はかえって費用が高額になる可能性もあるでしょう。
後継者のいない会社を買うメリット
後継者のいない会社を買うメリットには、以下のようなものがあります。
- リスクが低い
- コストを抑えられる
- 会社の資産を引き継げる
それぞれについて解説します。
リスクが低い
後継者のいない企業を買う場合、1から事業を立ち上げるのに比べれば、失敗のリスクや資産を失うリスクが低いといえます。
1から事業を立ち上げるとなると、事業の内容を考えて自分自身で構築し、費用をかけて設備などを整えなくてはなりません。事業を作っても顧客の開拓等の問題が残っており、利益を上げられるようになるためには時間もかかります。どこかでつまずいてしまい、損失が積み重なる可能性もあるので、新規事業の立ち上げはリスクが大きい方法です。
後継者のいない会社を買うと、事業内容も顧客もすでに存在する状態から営業できるため、すぐに利益を上げられます。M&Aそのものに手間がかかっても、その後のリスクを大幅に縮小することができるでしょう。
コストを抑えられる
事業を開始するまでの費用という観点から考えた場合、1から事業を立ち上げるのに比べて、後継者のいない会社を買うほうが、一般的にコストを抑えられます。
事業を立ち上げるには、登記費用、オフィスや店舗を用意する費用など、一定の費用が必ずかかるものです。事業に必要なものを揃えると総額はどうしても大きくなります。これに比較すれば、後継者のいない会社を買い取るのにかかる費用のほうが安価におさまることがほとんどでしょう。
会社の資産を引き継げる
営業実績のある会社には、すでにたくさんの資産があります。会社を買い取るということは、会社の資産をまるごと引き継げるということです。
会社の資産とは、土地や建物、工場といった物理的なものばかりではありません。従業員、取引先、事業におけるノウハウ、技術といったものも含まれます。こうした資産は収益に直結しますが、新規事業を立ち上げた場合、すぐに手に入るものではありません。後継者のいない会社の買取ならではのメリットです。
後継者のいない会社を買うデメリット
後継者のいない会社を買うことには、以下のようなデメリットもあります。
- 従業員や取引先との関係性の低下
- 債務がある場合、返済義務が発生する
それぞれについて解説します。
従業員や取引先との関係性の低下
経営者が変わることによって、これまで企業が従業員や取引先との間に築いてきた関係性が変化してしまうかもしれません。新しい経営者を、従業員やこれまでの取引先が信頼し、認めることができるかどうかで、その後の会社経営が大きく左右されます。
とりわけ業界未経験者が企業を買い取る場合や、既存の従業員の年齢層よりも経営者の年齢が若い場合などは注意を必要とすることが多いでしょう。「何もわかっていない人がいきなり来て、会社が奪われた」と思われるのを防ぐためには、会社の買い取りが済む前に足を運んで従業員とコミュニケーションをとったり、あらかじめ経営方針について説明の機会を設けたりすることが大切です。
債務がある場合、返済義務が発生する
後継者がいない企業に買い取り前の債務がある場合は、買い取った側に債務の返済義務が発生します。簿外債務、つまり帳簿に記載されていない債務であっても同様です。また、会社が他社あるいは他人の連帯保証人になっている場合も、買い取り後は保証人の立場を引き継ぐことになります。
債務や連帯保証の有無などが買い取り前に隠されていたとしても、会社の買い手が返済義務を逃れることはできません。そこで、買い取りを実施する前にはデューデリジェンスを実施するのがおすすめです。
デューデリジェンスは会社の経営状況やリスクを詳細に調査するもので、弁護士や税理士などの専門家に依頼します。委託費用がかかりますが、M&Aの際は実施しておくほうが安心でしょう。
後継者のいない会社の選び方
後継者のいない会社を買い取りたいとき、買い取る会社はどのようにして選ぶと良いのでしょうか。後継者のいない会社の選び方を解説します。
業務内容で選ぶ
買い取る会社の業務内容は、自分がその会社を運営できるかどうかを大きく左右します。したがってまずは業務内容をみて会社を選ばなければなりません。
例えば、これまでのキャリアで経験している業界、あるいは買い取る側の企業が属している業界であれば、業界の事情が把握できているため買い取った企業も経営しやすいでしょう。買い取る側の興味がある業界ということも考えられます。興味があればさまざまな好奇心から知識やノウハウを深めることも可能です。
業界は関係ないけれど、事業に将来性を感じているため買い取りを通して新規参入するケースもあります。自社の既存事業と共存させることで、新しい技術を生み出すことを目的とした買い取りもあるでしょう。
予算で選ぶ
後継者のいない会社を買い取るには、買収のための資産が必要です。したがって予算を考慮し、自社で用意できる資産に応じて買い取る企業を選ばなければなりません。
買い取り時はM&Aの専門業者や、M&Aのマッチングサイトを通して買い取り金額を話し合うことになりますが、希望とかけ離れた金額では、売り手も買い手も満足できません。M&A仲介会社やマッチングサイトを利用した場合、売り手の希望金額を交渉前に知ることができるため、予算に合った買収先を検討することができます。
経営状況で選ぶ
先ほど触れたとおり、後継者のいない会社を買い取る際は企業の資産とともに、債務の返済義務も承継します。したがって経営状況の良い企業を買い取りの対象に選ぶことは非常に重要です。
後継者がいないことを理由に会社を売却したいケースでは、会社の経営自体はそれほど傾いていないこともよくあります。しかし表面上、見ただけではわからない債務がある可能性は否定できません。専門家に依頼し、事前にデューデリジェンスを行って、経営状況が良好かどうかを必ず確認しましょう。
後継者のいない会社を買う際のポイント
後継者のいない会社を買う際、買収を成功に導くポイントは、買い取りを検討する企業の財務状況をしっかりと把握しておくことです。
たとえ債務のある会社でも、債務の金額が把握できており、買い取り後の経営によって返済できる見通しがあれば問題はありません。しかし債務が隠されていれば、その後の経営が悪化するリスクもあります。
ただしこうした調査は素人では不可能です。したがって早期にM&Aの専門家に買い取りについて相談し、詳細に財務調査を行ったうえでリスクをあらかじめ把握することが、成功のための大きなポイントといえるのです。
後継者のいない会社を買う事例
ここでは、後継者のいない会社を買った事例を具体的に紹介します。買い取りの参考にしてください。
事例①
盛岡市内にある豚汁専門店「とんfe 麦多朗」の創業者である大村さんは、体力的な不安もあり事業継承を考えていましたが、後継者がいない状況でした。
そんな時、盛岡市内で小中高校生向け学習塾を経営している合同会社We are the Best代表・舘石氏の目に止まり、買収を決意。
事業の多角化を考え、学習塾に集まる子供に食事を提供できれば、親御さんの負担も少なからず減らすことができると考えて、学習塾と飲食業のコラボも積極的に進めています。
参照元:事業承継・引継ぎ支援センター「〈事例18〉とんfe 麦多朗|第三者承継の事例紹介」
事例②
福井県にある創業100年以上の老舗和菓子メーカー「恵比寿堂」の代表中道直氏は、60歳を超えて守りの経営になってしまう不安を抱えていました。
先代から第三者継承という形で、会社を引き継いでから35年働き続けてきたが、人口減少や趣味嗜好の変化などから和菓子メーカーは厳しい状況が続いていたといいます。
そこで若い世代に事業継承したいと考え、M&A仲介業者に相談したところ、障害者就労支援サービスを手掛ける、有限会社ワークハウスとの縁に行きついたとのこと。
有限会社ワークハウスの代表嶋田氏は、33歳という若さでありながら、従業員数88名を抱え、障害を持つ方々の活躍の場を提供したいと考え、恵比寿堂の事業継承を進めることを決意した。
事業継承後は、恵比寿堂の製造から出荷を障害のある方々にお任せし、活躍の場を広げている。
参照元:事業承継・引継ぎ支援センター「〈事例6〉株式会社恵比須堂|第三者承継の事例紹介」
まとめ
後継者のいない会社を買い取ることは、全く新しい事業を立ち上げることに比べてリスクが少なく、メリットの大きな方法です。今後も、事業主の高齢化にともない後継者のいない会社は数多く生じる見通しで、M&Aの仲介やプラットフォームが普及するにしたがい買い取りの事例も大きく増加しています。
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