事業承継の成功事例13選!失敗原因と成功に必要な対策をわかりやすく解説

2024年3月21日

事業承継の成功事例13選!失敗原因と成功に必要な対策をわかりやすく解説

このページのまとめ

  • 事業承継には、親族内・親族外・M&Aの3つパターンがある
  • どのパターンでも、事業承継の成功事例は多くある
  • 事業承継に失敗するケースの多くは、準備不足が原因となっている
  • 事業承継に成功するためには、入念な準備や適切な後継者選び・育成などが必要である
  • 適切な支援機関を利用することで、事業承継が成功する確率が高くなる

後継者が不在で、事業承継の方法に悩む経営者の方もいるのではないでしょうか?
事業承継を成功させるためには、他社の事例を踏まえて成功するポイントを理解することが大切です。

本記事では、国内の事業承継の成功事例について詳しく解説します。事業承継を成功させるためのポイントや失敗につながる原因についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

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事業承継の3つの方法

事業承継の形は大きく分けると、その承継先別に親族・親族以外の社内の人・社外の人の3パターンに分類することができます。

  • 親族内事業承継
  • 親族外事業承継
  • M&Aによる事業承継

ここでは、「親族内」「親族外」「M&A」の3つの事業承継の手法について詳しく解説します。

親族内事業承継

親族内事業承継は、配偶者や実子・兄弟姉妹などの親族へ会社や事業を引き継ぐ方法を指します。

親族内事業承継においては、比較的早い時期から事業承継が決まっていることが多いです。その場合、現社長が現役の間に後継者候補を側に置いて実務経験を積ませることができます。

特に中小規模の会社では、経営者と従業員間・経営者と取引先間との関係が強固であるケースが珍しくありません。そのため、自社の文化や理念、経営方針などを深く理解した人物が引き継いだほうが、承継後の経営がスムーズに進みやすい傾向にあります。

そういった点においても、親族に引き継ぐことは、現社長や従業員・取引先にとってもメリットが大きいと考えられます。

親族外事業承継

親族外事業承継は、親族以外の人物へ会社経営を引き継ぐ方法です。特に、自社の役員や従業員などの身近な人に引き継ぐケースが多いです。
自社のことをよく理解している人物が会社を引き継ぐことで、新体制が比較的受け入れられやすくなります。

すでに在籍している人物の中に適任者がいない場合は、あらかじめ後継者候補である旨を明示したうえで、取締役などのエグゼクティブ人材の採用を進めることもあります。
採用された後継者候補は、経営層の一員として現社長からさまざまなことを学び取ったあと、正式に経営者のポジションに就任します。

M&Aによる事業承継

M&Aによる事業承継は、外部から会社を引き継いでくれる買い手を探し、その第三者に引き継ぐ方法を指します。広い候補先から後継者を探せることがメリットです。
また、M&Aのスキームによっては、売却益を得られます。事業承継によって対価を得られることは、M&Aを利用した場合の大きなメリットです。

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国内における事業承継の成功事例13選

ここからは、国内における事業承継の成功事例を紹介します。

「親族内」「親族外」「M&A」のそれぞれのパターン別に紹介していくので、参考にしてください。

親族内事業承継の成功事例

まずは、親族内事業承継の成功事例を5つ紹介します。

近年は事業承継を機に、新規事業を立ち上げたり、新領域へと参入したりすることで経営の刷新を図る第二創業を行う企業が目立っています。

1.株式会社エーアイテック

長野県松本市内でFA(Factory Automation)機器の製造・販売を手がける株式会社エーアイテックは、先代社長の息子が会社を引き継ぐ、親族内事業承継を行いました。

元SEの息子への代変わりをきっかけに、業務改革や働き方改善に着手し、最新のCADシステムの導入や、子育て中の女性エンジニアを対象としたフレックスタイムの導入などに取り組みながら、新たな企業イメージの強化を図っています。

その結果、社内の業務効率向上と同時に従業員のモチベーションも高まったことで、事業承継前と比較して売り上げを2倍、営業利益を4倍まで伸長することに成功しています。

参照元:中小企業庁「中小企業白書 2021Ⅱ-349」

2.株式会社三益

東京都北区桐ヶ丘で3代にわたり地域の住民に親しまれている地酒専門店「三益酒店」は、先代社長である父親から3姉妹の娘たちに事業承継を行いました。

コンビニや大手ディスカウントストアの波に押されていた地域密着型の酒問屋でしたが、事業承継を機に3姉妹それぞれの特技や社会経験を活かしたファンマーケティングを展開。オリジナルグッズの制作やECサイトの開設、SNSでの発信により、全国から地酒好きが集まるお店として生まれ変わりました。

長男をはじめとする男性が引き継ぐというイメージが根強く残る親族内事業承継ですが、近年は三益酒店のように女性後継者が会社を引き継ぐケースが増えています。

参照元:中小企業庁「中小企業白書 2021Ⅱ-339」

3.藤安醸造株式会社

鹿児島県鹿児島市にて1870年から続くみそ・しょうゆメーカーの藤安醸造株式会社は、現社長の息子である3人兄弟の次男を後継者とすることを予定し、早い段階から後継者育成に取り組んでいる会社です。

後継者である次男は2020年時点で同社の専務というポジションに就き、父親である現社長の側で経営を学びながら、新たな視点を取り入れた成長戦略を発案。大手メーカーとの価格競争から脱却した付加価値のある商品作りとブランディングを推し進め、すでに大きな成果を生み出しています。

参照元:中小企業庁「中小企業白書 2021Ⅱ-348」

4.株式会社ジャパネットたかた

長崎県佐世保市に本社を置き、独特のセールストークにより1代でテレビ通信販売のトップランナーにまで成長した株式会社ジャパネットたかたは、カリスマ創業者の高田明氏から2015年に息子の旭人氏へと親族内事業承継を行いました。

旭人氏が社長に就任後、同社は増収を続け、2021年の売り上げは過去最高の2,506億円に達し、2022年も2,487億円という高い水準での売り上げを維持しています。

先代社長が作り上げたブランドイメージや社内体制などの多くのレガシーを引き継ぎながらも、カリスマ経営者頼りの体制からの脱却を敢行。新しい視点を取り入れた経営戦略によって徐々に自分のカラーを打ち出しています。着実に成果をあげている旭人氏の経営手腕にも、大きな注目が集まっている事例です。

参照元:賢者の選択 サクセッション「『ジャパネットたかた』と『西松屋』の事例に学ぶ事業承継成功のポイント

5.株式会社西松屋チェーン

大手子供服小売チェーンの株式会社西松屋チェーンは、2020年に先代社長の息子へと親族内事業承継を行いました。

当時32歳という若さで3代目社長に就任した大村浩一氏は、少子化や新型コロナウイルスの感染拡大による小売業へのダメージに直面しながらも売り上げを伸ばし続け、2023年2月期に減収に転じるまで28期連続で増収を達成する偉業を成し遂げています。

社長就任にあたっては約1年半にわたって、社長の側で社長業を徹底して身につける育成プロジェクトを実施。時には浩一氏が先代社長に変わって経営判断を行うなどの実践を重ねながら、後継者としてのスキルや姿勢を身につけていったそうです。

就任後はこれまでのベビー服専門店のイメージを払拭し、小学校高学年を新たなターゲット層とした商品の拡充とプロモーション強化を図った戦略や、仕入れと在庫管理体制の抜本的改革を実行。厳しい事業環境下にあっても利益が生み出せる体質改善に成功しています。

参照元:賢者の選択 サクセッション「『ジャパネットたかた』と『西松屋』の事例に学ぶ事業承継成功のポイント

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親族外事業承継の成功事例

次に、親族以外の人物へ事業承継を行い成功した事例を3つ紹介します。

6.株式会社ユニックス

大阪府東大阪市にて先代社長が1984年に創業した株式会社ユニックスは、ポリウレタンなどの表面処理加工において高い技術力を誇る同社の経営を、2020年に同社の従業員に承継しています。

親族内に後継者候補としての適任者がおらず、後継者不在に悩んでいた先代社長は、従業員アンケートによって後継者としての適任者を選出しました。従業員アンケートを実施した結果、全従業員が現社長の町田泰久氏の名前をあげました。

町田氏は「プレッシャーが大きい」という理由で当初は社長への就任を断っていましたが、先代社長の1年間におよぶ説得により、就任を承諾しました。
その後、社長就任に向けて3年間しっかりと準備期間を用意し、中小企業大学校にも通った町田氏。育成期間を経て代表取締役社長となった町田氏による新体制下では、全従業員が一丸となって会社を新たなフェーズへと推し進めているというムードが醸成されています。

参照元:中小企業庁「中小企業白書 2021Ⅱ-336」

7.有限会社ショッピング

徳島県海陽町で地域密着型スーパーマーケットを運営する有限会社ショッピングは、2020年に先代社長から同地区への移住者に親族外事業承継を行っています。

海陽町の過疎化と自身の健康面での不安をきっかけに、今後の事業存続の可能性を探っていた先代社長は、海陽町の豊かな自然に惚れ込み山奥で自給自足生活を送る移住者である岩崎致弘氏と出会います。「この地域の繁栄に貢献したい」という理念の一致により、現社長の岩崎氏を後継者に抜擢しました。

社長就任後、岩崎氏は海陽町を訪れる観光客や移住者向けに高付加価値商品の取扱を充実させました。今後は地域の高齢者に優しい店を目指すとともに、直営の自然栽培ファームやカフェの設立や、自社ブランドの加工品の製造販売、ECサイトの開設を進め、海陽町の魅力を発信するキーマンとして地域振興に貢献しています。

参照元:中小企業庁「中小企業白書 2021Ⅱ-397」

8.文本酒造株式会社

高知県四万十町で120年の歴史を誇る酒蔵・文本酒造は、後継者不在による廃業の危機に直面するなか、四万十町の魅力発信に興味を持った有志たちに事業承継が行われました。

文本酒造は日本酒離れやコロナ禍による不況の煽りを受けて、廃業の準備を進めていました。廃業に待ったをかけたのが、商店街の衰退が進行してしまうことを危惧した現・専務取締役の阿部達也氏です。
前オーナーはすでに廃業を決断していたため、説得には時間がかかりましたが、最終的には事業承継に納得してくれました。
当時大手航空会社に勤務し、高知県の観光団体へ出向中だった安倍氏は、文本酒造の専務取締役に抜擢。海外輸出による販路拡大や観光客に自社の日本酒を楽しんでもらうためのバーの開設などに次々と着手し、新生文本酒造は新たな酒蔵経営のあり方を示すベンチマーク的存在となっています。

ストーリー性のある商品づくりと同時に、新鋭アーティストによるデザインボトルを採用するなど、革新的な販売方法やプロモーションにより、若い人が集まる、地域に愛される酒蔵として成長を続けています。

参照元:公益財団法人 四万十川財団「清流通信318章~創業120年を迎える老舗酒蔵が再始動!新生文本酒造~

M&Aによる事業承継の成功事例

最後にM&Aにより第三者への事業承継に成功した事例を5つ紹介します。

9.株式会社恵比須堂

創業100年を超える福井県の老舗和菓子メーカー・株式会社恵比寿堂は、60歳を機に事業承継を決断した先代社長から2018年に、当時障害者就労支援サービスを運営していた33歳の若手経営者へと同社の事業を譲渡しています。

異例のマッチングは、福井県事業引継ぎ支援センターのサポートを介して成立しており、当センターから有限会社ワークハウスの嶋田氏が紹介されてから恵比寿堂の経営を引き継ぐまでの期間はわずか3ヶ月というスピードで事業承継が完了しました。
譲受会社の嶋田氏と譲渡会社の中道氏は当初から腹を割って話し合い、信頼関係を築いていきました。信頼関係が築けていたため交渉もスムーズに進み、トラブルなく合意に至りました。

伝統和菓子の技術承継と障害者の就労促進という新しい組み合わせにより、承継後の恵比寿堂ではさまざまなシナジー効果が生まれています。

参照元:事業承継・引継ぎ支援センター「〈事例6〉株式会社恵比須堂|第三者承継の事例紹介

10.株式会社雲仙湯元ホテル

長崎県雲仙市にて創業300年を誇る老舗温泉旅館・株式会社雲仙湯元ホテルは、長崎県内に本社を置き冠婚葬祭やホテル事業により全国に多数の自社施設を展開する株式会社メモリードへ事業承継を行いました。後継者不在に悩んでいた13代目社長が長崎県事業承継・引継ぎ支援センターに相談し、当センターのサポートにより実現した事業承継になります。

ホテルの老朽化が進むなか、先代社長の高齢化と後継者不在により新規借入ができず、廃業も視野に入れていました。
しかし、雲仙湯元ホテルの長い歴史とそのなかで受け継いできた財産を守らなければならないという強い気持ちから、事業承継を決意しました。
雲仙湯元ホテルは「雲仙湯元ホテル」の名前を残すこと、全従業員の雇用・全取引先との取引を継続すること、地域経済に貢献することを強く希望しました。
オーナー側の意向を丁寧に聞き取った事業引継ぎ支援センターのマッチングコーディネーターが、譲受会社候補にメモリード社を打診。雲仙湯元ホテルが培ってきた伝統と経営ノウハウをメモリード社が引継ぎ、老朽化したホテルを立て直すことができています。
また、メモリード社は長崎県内に7ヶ所のリゾートホテルなどを経営しており、ホテル間で人員を融通できるようになり、人手不足の解消も可能になっています。

参照元:事業承継・引継ぎ支援センター「〈事例3〉雲仙湯元ホテル|第三者承継の事例紹介

11.FCNT株式会社

2023年5月に民事再生法の手続きを申請したスマートフォン開発会社のFCNT株式会社は、同年9月に大手パソコンメーカーの中国レノボ・グループに事業承継を行いました。

NTTドコモのシニア向けスマートフォン「らくらくホン」を手がけてきたFCNTが持つ日本の大手携帯キャリアとのコネクションとシニア向け需要を取り込むことで、日本市場参入への足がかりとすることが当M&Aの目的です。

10月、レノボの出資によって新会社「FCNT合同会社」を設立し、FCNT株式会社が持つスマートフォンの開発・販売・修理に関連する主要事業を移転し、順次サービスの再開を進めています。

参照元:FCNT株式会社「事業開始のお知らせ

12.株式会社アペックス

食品包装資材の専門商社・株式会社アペックスは2023年8月に食品トレー製造の最大手・株式会社エフピコに株式を譲渡し、連結子会社となりました。連結子会社になることで、経営権の承継をかなえています。

アペックス社はエフピコ社の盤石なインフラを活用することにより、さらなる成長を目指します。
一方エフピコ社は、九州エリアにおける食品包装資材のシェア第2位を誇るアペックス社のネットワークを活用することで、九州全域の食品製造業者や量販店への販路拡大が期待できるとしています。

参照元:株式会社エフピコ「持分法適用関連会社の株式追加取得(連結子会社化)に関するお知らせ

13.キャド・キャム株式会社

山形県鶴岡市にて建設設計業を展開するキャド・キャム株式会社は2023年8月に、ファンドを通して七十七パートナーズ株式会社に全株式を譲渡しました。投資期間中に同ファンドによるバリューアップを図り、事業承継を行うことを発表しています。投資額は非公表です。

キャド・キャム社は1972年創業の歴史ある会社です。建物床構造の設計業務や鉄骨部材関連の設計製図に対する豊富なノウハウ・経験を保有しています。また、ワークライフバランスの実践にも積極的な企業であり、地域経済に大きく寄与している会社です。
今回のM&A後、同ファンドはキャド・キャム社が持つ技術や経営体制のハンズオン支援に取り組み、さらなる発展・企業価値向上に貢献するとしています。

参照元:株式会社七十七銀行「『七十七パートナーズ第1号投資事業有限責任組合』によるキャド・キャム株式会社の株式取得について

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事業承継が失敗する6つの原因

ここからは、事業承継が失敗してしまう原因として考えられる下記の6つのポイントについて解説します。

  1. 前社長と後継者の経営方針に大きな違いがある
  2. 後継者の育成ができていない
  3. 相続問題が発生している
  4. 資金不足によって事業承継ができない
  5. 前社長が過剰に経営に干渉する
  6. 当事者意識が欠けている

よくある失敗要因を知り、同じような事態に陥ることがないようにしましょう。

1.前社長と後継者の経営方針に大きな違いがある

社長交代により会社の経営方針が大きく変わってしまうことは、事業承継の失敗につながります。

事業を引き継いだ後継者が、前社長とあまりにも異なる経営方針を打ち出してしまうと、従業員や株主、取引先といったステークホルダーの間で混乱や不満の種となる可能性があります。

従業員においては、不満が蓄積されていくと結果的に社内分裂や人材の流出が生じてしまい、会社にとって大きな損害につながってしまいます。
また、経営方針の大幅な切り替えによって、経営状態の悪化が懸念されることにつながり、株主や取引先の離反が起こることも考えられます。

大きく方向転換する場合は、ステークホルダーにしっかり説明をして理解を深めてもらうことが必要です。独裁的な経営にならないよう注意しましょう。

2.後継者の育成ができていない

後継者育成をしっかりと行うことは、事業承継の成功に直結する重要なポイントです。

経営を行うためには、経営に関する専門的な知識・ノウハウが必要です。
後継者候補を他社に出向させたり、現社長のそばにおいて経営者業務に携わらせたりして、学ぶ機会をつくりましょう。

承継する会社の文化や事業の特性などを理解しないまま世代交代をした場合、的外れな経営戦略を進めてしまったり、従業員との間に軋轢が生じたりするなど、問題が起こる可能性が高くなります。
現社長が急病・急逝となった場合、後継者育成が不十分なまま引き継ぐことになります。そうならないために、経営者が健在なうちに後継者の育成に取り組んでください。

3.相続問題が発生している

相続問題は、スムーズな事業承継を妨げ、経営悪化を招く要因となります。

現社長の急逝などに際し、遺産の相続先が明確に指定されていない場合、後継者が会社経営に必要な資産を引き継ぐことができないおそれがあります。後継者のもとに株式が3分の2以上承継されず親族間で分散されてしまうと、会社の支配権・経営権も分散してしまい、後継者による会社運営に支障をきたすことになってしまいます。

現社長が健在なうちに、後継者候補と親族を集めて話し合い、相続について明確に決めておきましょう。また、法律に詳しい専門家のアドバイスを受けながら、有効な書類を作成してください。

4.資金不足によって事業承継できない

事業承継を行う際は、一般的に後継者が先代経営者の保有している株式をキャッシュで買い取ることになります。しかし、買い取るにあたって後継者の資金が不足している場合、株式が買い取れず承継を進めることができなくなってしまいます。
また、相続や贈与によって事業承継を行う場合も、後継者は相続税および贈与税の納付に備えることが必要です。

資金不足が原因で事業承継を断念することにならないように後継者が株式を適切に買い取りできるように、事前に資金を準備しておきましょう。

5.前社長が過剰に経営に干渉する

後継者への事業承継が完了した後も、前社長が経営に過剰に干渉することは、新体制への円滑な移行を妨げてしまいます。

前社長の発言権や影響力が衰えないままの状態でいると、後継者のリーダーシップが発揮できないだけでなく、従業員間での分断や対立を助長してしまうリスクが増大することも考えられます。

6.当事者意識が欠けている

第三者への事業承継に際し、地域の事業承継・引継ぎ支援センターやM&A仲介会社、事業承継ファンドなどにサポートを依頼するケースは多いですが、支援機関に丸投げしてしまうことは失敗のリスクを高めます。

事業承継においては承継相手との相性や信頼関係がとても重要になります。
譲渡側が当事者意識を持たずに、支援機関に任せっきりの状態で事業承継を進めてしまうと、不本意な相手へ会社を引き継ぐことになったり、承継後にさまざまなトラブルが生じてしまったりするリスクが増大してしまいます。
「自分の大事な会社や従業員を任せる相手を探す」ということを自覚し、当事者意識を持って事業承継に取り組みましょう。

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事業承継を成功させるための7つの対策

前項で挙げてきた事業承継が失敗する原因をふまえ、ここからは事業承継を成功させるために取るべき下記の7つの対策を紹介します。

  1. 綿密な事業承継計画を策定する
  2. 引退後の生活設計を行う
  3. 経営を可視化する
  4. 企業価値を高める
  5. 後継者を育成する
  6. 良い承継先を見つける
  7. 適切な支援を受ける

それぞれ解説します。

1.綿密な事業承継計画を策定する

事業承継は一朝一夕で実現できるものではないため、念入りに準備を進めておくことが成功の鍵となります。

事業承継を行うことが決まったら、承継完了までのスケジュールを立てて、時系列に必要書類や手続き、交渉事項などを洗い出しておきましょう。

事業承継にかかる補助金や税制優遇措置などの支援策を利用する場合は、事前に対象範囲や必要な手続きを確認してください。

2.引退後の生活設計を行う

後継者に事業承継を行ったあとの生活設計についても、あらかじめ計画をしっかり立てておくことで、より良い形で事業承継を実現することができます。

たとえば、老後の生活資金を調達したい場合であれば、売却益を得られるM&Aを利用した事業承継が適しています。また、後継者に社長の座を譲った後も経営に関与していきたい場合は、株式の譲渡割合を調整する必要があります。

事業承継後に現社長がどのように過ごしたいかによって、適した形や必要な手続きが異なります。しっかりと計画したうえで事業承継の方法を検討しましょう。

3.経営を可視化する

M&Aによる事業承継や外部の人材を後継者に登用する場合、引き継ぐ会社がブラックボックス状態となっていると、優秀な後継者の獲得や承継先とのマッチングは難しくなります。

また、現状の経営課題や財務状況や経営資源をリスト化・明文化して見える化しておくことは、事業承継後の安定的な経営の維持につながります。

後継者が一目で会社のことが理解できる透明性の高さは、事業承継を成功させる重要なポイントとなるため、情報をしっかりと整理しておくようにしましょう。

4.企業価値を高める

企業価値の高い会社は、優秀な後継者や承継先が見つかりやすい傾向にあります。

多額の債務を抱えていたり、経営基盤の脆弱性があったりする場合、事業承継ファンドを挟むなどしてバリューアップを図ってから承継先を探す方が得策といえます。

ファンドを利用しない場合であっても、早い段階から自社の企業価値を客観的に評価し、コストカットによる利益率向上など、価値向上につながる施策を進めておくと良いでしょう。

5.後継者を育成する

早い段階から後継者候補を指名し、社内で丁寧に育成することで自社の事業や理念に対し深い理解がある人物に会社を引き継ぐことができます。

育成する際は、各部門にローテーションで仕事をし、事業に関する専門知識を身に付けることや、経営幹部として経営に参加し、経営の意思決定の現場を体感してもらうことなどが有効でしょう。社内教育の期間を十分に取れるよう、余裕のあるスケジュールで実施することが大切です。

6.良い承継先を見つける

経営手腕はもちろん、人柄や承継する事業に対する理解なども含めて、総合的に相性の良い相手に引き継ぐことは、事業承継の成功に直結します。

そのため、目先の買収価格や譲渡条件だけでなく、承継先として満足できる相手であるかどうかを検証・判断することが大切です。そのためには、後継者候補とミーティングを重ねて方針を確認したり、可能であれば仕事を任せてみてその動きを確認したり、といった対応をとると良いでしょう。

また、後継者候補と一緒に仕事をしている人物にヒアリングすることも有効です。どのような人物か見定め、納得したうえで事業承継することが大切です。

7.適切な支援を受ける

事業承継を支援する動きは全国に広がっており、官民さまざまな支援機関が円滑な事業承継の実現をサポートしてくれます。

支援機関を利用することで、煩雑で複雑な承継手続きの効率化や優良な承継先とのマッチングが期待できます。前向きに利用を検討してみてください。

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事業承継で活用できる4つの支援機関

事業承継で利用できる支援機関には、主に下記の4つがあります。

  • 事業承継・引継ぎ支援センター
  • 後継者人材バンク
  • M&A仲介会社
  • 後継者マッチングサイト

それぞれの詳細を紹介します。

事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、全国47都道府県に設置された、事業承継に関する公的な相談窓口です。

事業承継・引継ぎ支援センターでは、金融機関やM&A仲介会社で事業承継の実務経験があるアドバイザーや、公認会計士や税理士などの資格を持った専門家が、承継について親身に相談に乗ってくれます。
また、相談だけでなく、人材バンクや地域の金融機関と連携したマッチングやさまざまな書類作成などを幅広くサポートしてくれます。

後継者人材バンク

後継者人材バンクは、創業・起業を希望する人と、後継者不在に悩む事業者とを引き合わせて、円滑な事業承継を実現させるためにさまざまな支援を行います。

先述の事業承継・引継ぎ支援センターに紐づく形で利用できて、全国に広がるネットワークから適切な相手を見つけることが可能です。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、企業の合併や買収などのM&Aの支援を得意とする民間会社です。
仲介手数料などの料金を支払い、利用します。
有償譲渡での事業承継となるため、事業承継を行う現社長は会社の売却益を手にすることができます。

身近に後継者となる適任者が不在で、優秀な第三者による会社の存続・経営資源の有効活用を希望する場合、大きな助けとなってくれるでしょう。
承継先のマッチングから交渉・書類作成・契約締結まで、トータルでサポートしてくれます。

後継者マッチングサイト

後継者問題の深刻化を受け、後継者マッチングサイトをはじめとする民間の支援サービスも増加しています。

オンライン上で承継先や承継希望者を探せてマッチング成立までを完結できます。
気軽に相手探しができることがメリットですが、マッチング成立以降のサポートには対応していないことがほとんどです。
マッチング成立以降のサポートを受けたい場合は、別のサービスを追加で利用する必要があります。

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まとめ

事業承継は、日本における深刻な社会課題となっており、多くの中小企業経営者が会社の将来に頭を悩ませています。

そのような世情を受けて近年は事業承継を支援する動きが活発化しており、官民合わせてさまざまな支援サービスが誕生しているため、事業承継の形や方法も多様化が進んでいます。
自分がどのような事業承継を望んでいるかを整理し、自社に合った事業承継を選びましょう。

事業承継には企業経営に関する知見だけでなく、税務や財務、法務など幅広い領域に関する専門知識と煩雑な手続きが必要となるため、事業承継の専門家にサポート依頼することがおすすめです。

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