アライアンスとM&Aの違いとは?それぞれの意味やメリットなども解説
2024年2月6日
このページのまとめ
- アライアンスは複数の企業が協力して事業を行う業務提携のこと
- アライアンスは経営権の移転はなく、コストを抑えて実行できる
- M&Aは買収などによって、複数の企業が一体になること
- M&Aは経営権の移転が行われ、結びつきが強くなりシナジー効果を生み出しやすい
自社の業容拡大を考えたときに、M&Aかアライアンスかで迷っている方も多いのではないでしょうか。M&Aとアライアンスのどちらを選ぶか決める際には、それぞれの特徴を理解して自社にあった方法を選ぶ必要があるでしょう。
本コラムではM&Aとアライアンス、それぞれのメリット・デメリットを含めて紹介するのでぜひ参考にしてください。
目次
アライアンスとM&Aの主な違い
アライアンスとM&Aは、どちらも複数の企業が同じ目的を持って事業を行っていくという意味では似ていますが、同じではありません。M&Aは「Merger and Acquisition」の頭文字をとったもので、企業が合併や買収を行うことをいいます。一方でアライアンスとは「同盟」や「提携」を表す言葉で、複数の企業が協力して事業を行う経営手法のことをいいます。
M&Aとアライアンスの違いは、下記のとおりです。
M&A | アライアンス | |
概要 | 複数企業(事業)が合併・買収をすること | 複数企業が協力して事業を行うこと |
経営権の移転 | 伴う | 伴わない |
スキーム | 株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割 | 業務提携・合弁企業の設立・第三者割当増資 |
M&Aは複数の企業・事業が合併や買収することを言い、経営権の移転が伴います。一方アライアンスは複数の企業が協力することで、経営権の移転は伴いません。経営権の移転の有無が、M&Aとアライアンスの一番の違いです。
アライアンスとは?
アライアンスとは複数の企業が提携して、事業拡大など同じ目標に向かって協力することをいいます。業務提携や戦略的提携とも呼ばれ、M&Aと違って経営権の移転は行われません。アライアンスは別々の企業が契約に基づいて協力する関係であり、M&Aに比べると会社同士の結びつきは強くないでしょう。
アライアンスのメリット
M&Aと比べた場合の、アライアンスのメリットには次のような点があります。
- 各社の独立性を維持できる
- M&Aに比べ、時間やコストが抑えられる
アライアンスでは経営権の移転を伴わないため、M&Aと比較してリスクが抑えられることがメリットです。お互いの企業が独立性を維持したうえで、協力関係を築きます。もし提携関係がうまくいかないのであれば、解消することも可能でしょう。あくまで互いの利益の獲得を目的に、必要な部分や自社に足りない部分を補完できるのがアライアンスのメリットです。
アライアンスは他企業と提携するだけなため、M&Aに比べるとコストも手間もかかりません。投資金額が少ないため、万が一提携事業がうまく行かなかったとしても、損失を最小限に抑えられる点もメリットです。
アライアンスのデメリット
アライアンスのデメリットには、下記があります。
- ノウハウや技術の流出リスクがある
- アライアンスの効果が出にくい場合がある
アライアンスによって他企業と提携すると、通常他社には開示しないようなノウハウを開示する場合があります。アライアンスは同業で組むことも多いため、その場合提携関係が解消されると自社の技術を利用されてしまうリスクもあるでしょう。
アライアンスではM&Aと違って経営権が移転しないため、各社とも自社の利益や都合を優先してしまう傾向にあります。そのため各社の意思疎通がうまく行われず、当初想定したとおりのアライアンス効果が出ないこともあるでしょう。
アライアンスのスキームの種類
アライアンスのスキームは、大きく次の4種類に分けられます。
- 業務提携
- 資本提携
- 技術提携
- 産学連携
それぞれのスキームについて、見ていきましょう。
1.業務提携
業務提携とは複数の企業が協力し合い、1社では解決できない課題に対応したり、より高い成長を目指して協力したりすることをいいます。具体的にはアライアンスの契約内容に基づき、それぞれが持っている技術や販売ルート、ノウハウや人員などを提供し合い、強みを出し合うことで目標達成へ向けて協力します。新規事業に参入したり、販売網を拡大したりとさまざまな場面で業務提携は行われているでしょう。
2.資本提携
業務提携よりも、踏み込んだアライアンスが資本提携です。資本提携では技術面や業務面の提携に加え、提携先の株式を取得したり、お互いの株式を持ち合ったりして提携関係を築きます。業務提携とは違って資本関係にまで踏み込んで提携するため、お互いの企業の結びつきが強いことが特徴といえるでしょう。
3.技術提携
技術提携とは名前の通り、技術面に特化して提携することをいいます。事業に必要な技術やノウハウを提携企業が持ち寄ることで、新製品の開発などを行います。技術提携では資本関係の移転は行われないため、技術面に特化した手法といえるでしょう。
4.産学連携
産学連携とは、企業同士ではなく大学などの研究機関とのアライアンスをいいます。企業は新製品や新しいサービスを開発する際、自社開発だけでは限界があるでしょう。そこで大学などと連携することで、これまでにない新しい商品・サービスを開発できます。大学側にとっても研究成果や技術を経済活動に結び付けられるため、研究成果をアピールする大きなチャンスといえるでしょう。
アライアンスの事例
実際に行われたアライアンスの事例を見ていきましょう。アライアンスは経済活動では多く行われており、代表的な2例を紹介します。
トヨタ社とNTT社の事例
大手企業同士のアライアンスの代表ともいえる事例がトヨタ自動車株式会社(以下トヨタ社)と日本電信電話株式会社(以下、NTT社)の提携事例です。トヨタ社が開発するスマートシティにおいて、両社の技術を持ち寄ることで2020年3月に合意、相互に2,000億円規模を出資する資本業務提携を結びました。トヨタ社は2020年1月に東富士向上の跡地に、さまざまなパートナー企業と連携してスマートシティを実現することを発表しています。
一方NTT社側は、福岡や札幌などの自治体と都市・まちづくりで協業しています。ほかにもNTT社が持つ技術を活かして、スマートシティ実現に向けた取組をしていました。トヨタ社としては自社で開発するスマートシティの実現に向けて、NTT社の持つノウハウを取り込むべく提携を行いました。業種の違う大手企業が、新規事業へ向けてアライアンスを提携した事例と言えるでしょう。
参照元:トヨタ自動車株式会社「NTTとトヨタ自動車、業務資本提携に合意」
幸楽苑社とアソビシステム社の事例
次に紹介する事例は、ラーメンチェーン店を運営する株式会社幸楽苑ホールディングス(以下幸楽苑社)と数々のエンターテイメントコンテンツを創作してきたアソビシステム株式会社の事例です。2015年からさまざまな企画で協業していた幸楽苑とアソビシステム社は、2021年6月にアライアンスパートナー契約を締結しました。
幸楽苑社は自ら掲げる「Ramen is Entertainment!〜お客様をワクワクさせ我々もワクワクする〜」というバリューのもと、らーめんカルチャーの普及を目的に、アソビシステム社との提携を決めました。まったく業種の違う企業が連携することで、新しいシナジーを生み出すアライアンスの事例といえます。
参照元:アソビシステム株式会社「幸楽苑とのアライアンス契約を締結。『らーめん×エンターテイメント』で新しい社会的価値の創造へ!」
M&Aとは?
M&Aとは、企業が合併や買収をすることをいいます。アライアンスとの大きな違いは、売却側の経営権が買収企業に移転する点にあるでしょう。M&Aでは買い手企業側は経営権を握るため、アライアンスとは違ってお互いの企業の結びつきは強いです。
M&Aのメリット
M&Aのメリットには、次のような内容があります。
- ノウハウや技術の流出リスクが低い
- シナジー効果が出しやすい
- スムーズに事業承継ができる
M&Aでは相手企業を丸ごと自社内に取り込むことになるため、自社の技術が社外流出することはありません。買い手企業からすると、買収した企業の経営権を握れるため技術流出に対するけん制もかけやすいでしょう。買い手企業中心に一体となって事業を進められるため、シナジー効果が出やすいこともM&Aのメリットといえるでしょう。
またM&Aでは、買い手だけでなく売り手にもメリットがあります。経営者の高齢化や後継者不足に悩んでいる企業は多く、解決策の一つとしてM&Aが注目されています。ほかにも経営者は売却によって、資金を得ることができます。M&Aを活用することで、事業承継問題を解決できたり、創業者としての利益を得られる点も、メリットといえるでしょう。
M&Aのデメリット
メリットに続いて、M&Aのデメリットを見ていきましょう。
- 手続きに手間と時間がかかる
- コストがかかる
M&Aは会社を買収するため、従業員や債権者・両社の株主など多くのステークホルダーを巻き込みます。また、2つまたは複数の会社が一緒になるため、多くの手続きが必要になります。よい取引相手(売り手、買い手)を見つけることも、簡単ではないでしょう。長い場合はM&Aに1年以上かかることもあるため、時間と手間がかかることがM&Aのデメリットです。
また、相手企業を買収するためには、多額のコストが必要です。仲介を依頼した場合は、買収資金だけでなくM&Aアドバイザリーの手数料などの費用も必要になるでしょう。アライアンスであれば買収資金は不要なため、コストの負担はM&Aのデメリットです。
M&Aのスキームの種類
M&Aのスキームには、次の3つがあります。
- 買収
- 合併
- 会社分割
それぞれのスキームについて、説明していきます。
1.買収
買収とは、名前の通り相手企業を買い取る手法です。買収は「企業ごと買収する場合」と「事業だけを買収する場合」があります。どちらも新規事業への参入や、規模の拡大などを目的に行われることが多いでしょう。企業ごと買収する場合は相手企業の株式を取得することで経営権を取得します。株式取得の方法には、株式譲渡や新株引受、株式交換などがあります。
事業だけを買収する場合は、一部の事業だけを切り出して買収する事業買収や、株式を取得する方法が一般的です。
2.合併
合併は複数の会社を一つに統合する手法です。経費などコスト引き下げや、経営を合理化したい場合に選択されることが多いでしょう。合併には吸収合併と新設合併があり、一方の会社を消滅させてもう一方の会社に権利を承継する吸収合併が使われるケースが多いです。新設法人を作って、すべての権利を承継させる新設合併は、上場や許認可などの手続きが煩雑なため、あまり使われません。
3.分割
会社分割は会社の中の一部の事業を切り離し、別会社に承継させることをいいます。会社分割には、次の2種類の方法があります。
- 吸収分割
- 新設分割
吸収分割は事業の一部を切り出して、他の会社に吸収させる手法のことです。不採算事業の切り離しなど、業務の効率化で使われる場合が多いでしょう。新設分割は、事業の一部を切り出して新たに設立した会社に承継させる手法です。こちらも事業の見直しなど、グループ内再編で使われることが一般的です。
M&Aの事例
ここでは、実際に行われたM&Aの事例を紹介します。
DeNA社とアルム社の事例
ITやエンターテイメント企業である株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA社)が、2022年5月医療系ベンチャーの株式会社アルムを買収した事例です。DeNA社ではエンターテイメント分野のほか、社会課題分野を中長期的な成長分野と位置づけ、M&Aなどを活用しながら事業拡大を行っていました。
今回、アプリを使った遠隔診療を手がけるアルム社を買収することで、DeNA社がこれまで培ってきたノウハウとパートナー企業との協力により、アルム社の成長を加速させています。業種の違う会社が合併することで、急成長したM&Aの事例です。
参照元:株式会社ディー・エヌ・エー「株式会社アルムの子会社化に向けた基本契約書を締結」
クスリのアオキ社とフクヤ社の事例
2020年10月ドラッグストアの運営を手がける株式会社クスリのアオキホールディングス(以下、薬のアオキ社)が、京都で8店舗のスーパーを運営している株式会社フクヤを買収した事例です。クスリのアオキ社は近畿地区でも店舗展開を行っているため、フクヤ社を買収することでドミナント(集中出店)を高めることを狙いとしています。またクスリのアオキ社の店舗では食品の販売を強化しており、生鮮食品を扱うフクヤ社とはシナジー効果が高いといえるでしょう。
参照元:株式会社クスリのアオキホールディングス「株式会社フクヤの株式取得に関するお知らせ」
まとめ
アライアンスとM&Aは、どちらも成長・拡大を目的とした企業の戦略です。アライアンスは契約に基づいて複数の企業が協力することで、経営権は移転しません。コストを抑えて実行できますが、企業同士の結びつきが弱く、技術流出などのリスクもあるでしょう。
M&Aは複数企業が買収などによって1つの企業グループになるため、アライアンスと違って経営権の移転が行われます。シナジー効果が生まれやすいですが、実施にあたっては手間やコストがかかります。それぞれの特徴を見極めたうえで最適な手法を選ぶことが重要ですが、迷う場合は専門家へ相談するのが良いでしょう。
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レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、M&Aに長けたコンサルタントが在籍しています。 M&Aだけでなく、アライアンスの特徴も踏まえたうえで、成約まで一貫したサポートを提供することが可能です。
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