株式取得価額(取得価格)を算出する計算式や不明時の確認方法を紹介

2023年11月15日

株式取得価額(取得価格)を算出する計算式や不明時の確認方法を紹介

このページのまとめ

  • 株式の取得価額とは、手数料などを含めて株式を取得するためにかかった費用の総額
  • 株式の取得方法によって、取得価額の算出方法は異なる
  • 株式取得価額は取引報告書や顧客勘定元帳などで確認することができる
  • 株式取得価額が不明な場合は、売却額の5%を「概算取得費」として計算する

「株式取得価額がわからない…」とお悩みの方も多いのではないでしょうか?

株式取得価額が不明なままだと課税対象額がわからず、損をする場合もあるので、正しく算出することが大切です。
本記事では、株式取得価額の計算方法についてケース別に解説します。また、取得価額の確認手順や、わからない場合の対処方法にも触れるので、参考にしてください。

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株式の取得価額とは

株式の取得価額とは、株式を取得した際にかかった費用の総額を指します。

株式の取得価額の内訳は、株式そのものの時価、手数料、消費税などです。手数料には、売買手数料のほか名義書換手数料なども含まれます。

正確な株式の取得価額は、正しく納税を行うために把握しておかなくてはならないものです。株式の取得価額が誤って認識されていると確定申告が正確に行われず、後で修正を求められたり、追徴課税されたりすることもあります。
株式の取得価額を正確に把握しましょう。

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【ケース別】株式の取得価額 

株式は購入によって取得されることも多いですが、購入以外の方法で株式を取得するケースもよくあります。
ここでは、ケース別に取得価額の考え方やポイントを解説します。

1.相続や贈与で取得した場合

相続や贈与・遺贈で株式を取得した場合、株式取得価額は、相続前あるいは贈与・遺贈前の持ち主が、当該の株式を取得した際にかかった金額となります。
株式取得価額の算出方法は、株式を購入した場合の算出方法と同じです。

未上場の中小企業が事業承継をおこなう場合、多くのケースが相続あるいは贈与・遺贈のいずれかに該当します。
ただし限定承認に関わるものは除外されるので注意しましょう。

2.発行法人の権利によって取得した場合

発行法人の権利とは、株式を発行している法人から、株式の所有者が与えられたいくつかの権利のことを指しています。
発行法人の権利と、それぞれに対する株式取得価額の考え方について、以下の表にまとめました。

発行法人の権利株式取得価額
2001年法律第79号による改正前の商法に規定する株式譲渡請求権権利を行使し、実際に株式取得を行った日の価額(時価)
2001年法律第128号による改正前の商法に規定する新株引受権
2005年法律第87号による改正前の商法に規定する新株予約権
会社法第238条第2項の決議などに基づいて交付された新株予約権
株式と引換えに払い込むべき金額が有利な場合において当該株式を取得する権利その権利に基づく払い込みあるいはは給付の期日における価額

株式取得価額の判断には、商法や会社法といった法律が関わります。それぞれの規定に基づいて株式取得価額を判断しなければなりません。

参照元:国税庁『No.1464 譲渡した株式等の取得費

3.当日に株式を買い戻した場合

保有している株式を売却し、売却当日に買い戻した場合は、もともと株式を購入した時の金額と、買い戻した際の金額との平均値を取得価額とします。

たとえば、最初に1,000円で購入した株式を、ある日1,200円で売却し、当日中に1,100円で買い戻した場合、取得価額と課税対象額は以下のとおりです。

元々の株式の金額1,000円
売却時の金額1,200円
買い戻した時の金額1,100円
株式取得価額1,050円
(1,000円と1,100円の平均値)
課税対象額150円
(売却価格1,200円と株式取得価額1,050円との差額)

当日中の売買では、買い戻した時の金額が株式取得価額になるわけではないので注意しましょう。

4.その他の方法で取得した場合

上記いずれにも該当しない方法で株式を取得した場合の株式取得価額は、国税庁によって「その取得の時におけるその株式等の取得のために通常要する価額」と規定されています。

実際には、「通常要する価額」がいくらであるのかは、専門的な時価の計算方法によって算出されます。

「通常要する価額」による取得価額の算出が必要な場合は、会計士、税理士などの専門家に相談することがおすすめです。

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株式の取得価額の計算式

株式の取得価額は、計算式にあてはめると算出できます。
ここでは株式の取得価額の計算式を紹介します。

1.1株当たりの取得価額の計算式

1株当たりの取得価額の基本的な計算式は、以下のとおりです。

(取得単価×取得株数+購入時の委託手数料+消費税)÷取得株数

また、以下のケースでは1株当たりの取得費の調整が必要です。

(1) 株式等の分割または併合が行われた場合
(2) 同一種類の株式を株主割当てにより取得した場合
(3) 課税の繰延べの対象となる合併により合併法人の株式等を取得した場合
(4) 課税の繰延べの対象となる分割型分割により分割承継法人の株式等を取得した場合
(5) 株式分配により完全子法人の株式等を取得した場合
(6) 課税の繰延べの対象となる株式交換または株式移転により株式交換完全親法人または株式移転完全親法人の株式等を取得した場合
(7) 課税の繰延べの対象となる株式交付により株式交付親会社の株式を取得した場合

引用元:国税庁『No.1464 譲渡した株式等の取得費

2.同一銘柄を2回以上取得して譲渡した場合の計算式

同一銘柄を2回以上取得し、取得した株式の一部を譲渡した場合、取得価額は総平均法に準じた計算方法で算出します。
株式の種類や銘柄ごとに計算してください。

1単位当たりの金額を算出する計算式は、以下のとおりです。

(初回購入時の株式等購入価額総額+2回目以降の購入価額総額)÷(初回購入時の株式総数+2回目以降に購入した株式総数)

株式の購入にあてた費用は、手数料や税金等も含めて、購入回数分すべての合計を株式取得価額とみなします。

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株式の取得価額を確認する手順4ステップ

株式の取得価額は、株式を取得した履歴をさかのぼって確認する必要があります。
ここでは、具体的な確認の手順を紹介します。

  1. 取引報告書を確認する
  2. 顧客勘定元帳を確認する
  3. 自身が所有する控えを確認する
  4. 名義書き換え日から調べる

それぞれのステップについて詳しく説明します。

1.取引報告書を確認する

株式の取得価額は、取引報告書で確認できます。

取引報告書とは、株式の売買が行われる際に、取引内容を詳細に記載した報告書です。取引の成立後に証券会社から書面で送られてくるか、契約内容によっては電子交付されることもあります。

取引報告書に書かれている内容には、以下のようなものがあります。

  • 約定日(売買が成立した日)
  • 売ったのか、買ったのか
  • 取引した銘柄名
  • 取引した株数
  • 1株当たりの売買単価
  • 委託手数料
  • 受渡代金

上記の「売買単価」は、手数料などを含まない金額のため株式取得価額とは違いますが、取引報告書を見れば手数料などもすべて記載されているため、株式取得価額を算出できます。

また取引報告書以外に、月次報告書や受渡計算書などの書類でも株式の売買記録を確認することが可能です。

2.顧客勘定元帳を確認する

株式取引の記録は、顧客勘定元帳でも確認できます。

顧客勘定元帳とは、株式取引の履歴や入出金履歴などが記載された書類です。
取引報告書と似ている部分もありますが、損益は記載されていません。
顧客勘定元帳は証券会社に請求することにより、有料で取り寄せることができます。
法定帳簿である顧客勘定元帳には10年の保存義務があるため、10年以内に購入した株式取得価額であれば顧客勘定元帳から確認が可能です。
10年以上前の取引に関しては、任意で証券会社が保存しているケースもあるため確認してみるとよいでしょう。

3.自身が所有する控えを確認する

取引報告書や、顧客勘定元帳で調べられない場合、自身でとっておいた控えを確認することで株式取得価額がわかることがあります。

控えとして利用できるのは、自分でつけていた日記帳や、過去の預金通帳、私的なメモなどです。

また、日記帳に株式を取得したことだけが記載されていた場合、上場株式であれば取得時期の新聞などで株価を参照し、取得価額を算出できます。

4.名義書き換え日から調べる

株式の所有者名義は、株式を発行している会社や証券会社の資料で確認できます。
名義書き換え日がわかる資料としては、株主名簿や複本、株式異動証明書などがあります。
また、株券電子化前の株券が手元に残っている場合、裏面に名義書き換え日が記載されていれば資料として有効です。
名義書き換えが行われた時期は、すなわち株式の取得時期と重なるため、上場株式であれば名義書き換え日の株価から株式取得価額を算出可能です。

参照元:国税庁『上場株式等の取得価額の確認方法

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株式の取得価額がわからない場合の対処法

取引報告書、顧客勘定元帳、日記や通帳といった記録が不明瞭で、調べても株式取得価額がわからない場合、売却額の5%を「概算取得費」として、取得価額とみなす方法があります。

この方法を用いると、たとえば株式の売却価格が100万円だった場合、取得価額は5万円として計算されるため、課税対象となるのは95万円です。

概算取得費で取得価額を算出すれば、以前の記録をさかのぼる必要がなく楽だと感じるかもしれません。
しかし、実際の株式取得価額が売却額の5%に留まることはほとんどなく、概算取得費の計算では課税額が実際よりも大きくなるため、損失になる可能性が高いでしょう。

無用な損失を出さないためにも、株式取得価額は可能なかぎりしっかりと調べることが大切です。
なお、調べた結果として株式取得価額が売却額の5%に満たなかった場合は、取得価額を5%で計算することが認められています。

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まとめ

株式を売却した場合は、株式取得価額が把握できていないと確定申告で手間取ってしまいます。
株式を取得した方法によって取得価額の算出方法が違うため、取得の経緯をさかのぼって正確な株式取得価額を把握しておきましょう。

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