減価償却にはどんなメリットがある?計算方法や効果をわかりやすく解説

2023年10月17日

減価償却にはどんなメリットがある?計算方法や効果をわかりやすく解説

このページのまとめ

  • 減価償却とは、資産を一定期間にわたって分割して経費計上するための方法である
  • 減価償却のメリットとして、適切な損益計算・節税・自己金融効果がある
  • 減価償却する資産には、使用可能期間が1年以上、金額が10万円以上などの基準がある
  • 時間の経過で価値が減らない資産は、減価償却の対象にならない
  • 減価償却の仕訳方法には、直接法と間接法があり、間接法をとることが一般的

特定の資産を購入した際、減価償却を行う必要があることは理解していても、なぜ行わなければならないのか疑問に思う経営者の方もいるでしょう。減価償却にはどのようなメリットがあり、その効果とはどのようなものかを理解している人はあまり多くありません。

本記事では、減価償却のメリットについて解説します。また、基本的な考え方や計算方法、効果についても紹介するので、参考にしてください。

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減価償却とは

減価償却とは、事業主が事業活動において使用する固定資産の価値が、時間の経過や使用によって減少することを考慮して、その資産の取得価額を一定の期間(耐用年数)にわたって経費として計上する会計処理のことを言います。

簡単にいうと、大きな買い物をしたとき、その費用を一度に全て計上するのではなく、使う期間に合わせて少しずつ経費として計上するイメージです。

例として、40万円で購入した事業用のPCについて考えます。一般的に使用するPCの耐用年数(利用可能な法定期間)は4年とされているため、40万円を4年間均等に分割して経費計上することになります。つまり、毎年10万円ずつの減価償却費を計上しなければなりません。

40万円という費用を一括で経費計上するのではなく、耐用年数にわたって分割して費用計上して、適切な損益計算ができるようにするのが、減価償却という手続きの本質となります。

なお、耐用年数は、会計上は事業主の判断で決めることができるものの、税務上は国税庁が定めているルールに従わなければならないので、会計上も税務上のルールに従うのが一般的です。

減価償却を行う必要がある理由は、特定の年度に費用が集中し、赤字となってしまうことを防ぐためです。利益が出ているかどうかは株価への影響も大きくなるため、赤字を防ぐために減価償却を実施し、年度ごとの費用の平準化を行います。

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減価償却のメリット

減価償却には会計・税務上多くのメリットがあります。以下、その主要なメリットについて詳しく解説します。

節税につながる

減価償却の経済的なメリットの一つは節税効果です。固定資産の購入費用を分割して償却することで、毎年の利益額を抑制することができます。

費用を分けて計上することで、毎年の収益を少なくすることが可能です。そのため、その年の課税所得が減少し、結果的に法人税や所得税の課税額を減少させることができます。

もちろん、恣意的に減価償却をすることは認められていませんし、一度適用した減価償却の方法は継続して適用しなければなりません。

現金が社内に残る

減価償却のもう1つのメリットは、実際に固定資産の購入費用を支払った年以外は、キャッシュアウトを伴わないため、実際の現金の支出は発生しないということです。そのため、減価償却を行うことで、結果として現金が会社内に留保されます。

費用が計上されるにもかかわらず現金が社内に残るこの効果は、一般的に、自己金融効果と呼ばれます。減価償却の結果として残った現金は、他の投資や運転資金として利用することができ、企業の成長や安定した経営に寄与します。

特にキャッシュフローが厳しいスタートアップ企業や中小企業にとって、このメリットは非常に大きいといえるでしょう。

会社の財政状況を正しく把握できる

減価償却のそもそもの目的ともいえますが、会社の財政状況を正しく把握できることもメリットといえます。

たとえば、減価償却を行わずに高額な固定資産を特定の年に一括計上してしまうと、特定の年だけ過剰に損金が発生し、財政が悪化しているように見えてしまいます。翌年は、高額な出費は行えないはずなので、利益が増大することになります。

こうなると、その会社の財政が健全なのかが分かりにくくなってしまうため、減価償却で分散して経費計上することで、大きな出費を伴う費用が発生しても、全体的に企業の財政がどのようになっているのか把握することが可能になるのです。

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減価償却の対象になる資産の条件

減価償却は、すべての資産においてできるわけではありません。ここでは、減価償却の対象となる具体的な条件や対象資産、非対象資産について解説します。

減価償却できる資産

減価償却の適用対象となる減価償却が可能な資産は、特定の条件を満たす必要があります。以下では、減価償却が適用可能な資産の条件について詳しく解説します。

使用可能期間が1年以上

使用可能期間とは、その資産が経済的に有用である期間を指します。減価償却の対象となるのは、数年にわたって利用できる資産です。たとえば、消耗品や日用品などといった短期間で使い切るものはこの条件を満たさないので、減価償却の対象資産とはなりません。

購入金額が10万円以上

小額の資産は、会計上の取り扱いを簡素化するため、一度に全額計上するのが一般的です。減価償却の対象となった資産は、税務上届出を行わなければならないなど手間がかかります。すべての資産を減価償却対象資産としてしまうと手間が増えることから、購入金額が10万円以下の少額資産は減価償却の適用対象にはしません。

時間の経過とともに価値が下がるもの

減価償却の適用対象となるのは、資産が使用されることや、経年劣化によりその価値が減少するものだけです。たとえば、機械や設備は使用に伴い摩耗し、その機能や性能が低下するため、この条件を満たします。一方、土地は使用によってその価値が減少するわけではありません。そのため、減価償却の適用対象とはなりません。

業務で使用するための資産

減価償却の対象となる資産は業務遂行のために使用されるものに限定されます。資産が個人的な目的で使用される場合や、業務と関係のない資産については減価償却の対象外となります。

具体的な減価償却できる資産の具体例としては、以下のようなものが考えられます。

建物

事務所や工場、店舗などの建築物は、建築後も一定の期間、その機能を維持するものの、経年劣化によって価値が減少するため、減価償却の適用対象となります。

車やバイク、自転車(車両運搬具)

移動手段は事業活動に欠かせないものであるものの、使用に伴い摩耗し、また技術の進歩により古くなるため、価値が減少します。そのため、減価償却の適用対象となります。

電気設備や冷暖房設備

業務に必要な設備は、業務の効率化や快適な環境作りに不可欠ですが、使用に伴い劣化します。そのため、減価償却の適用対象となります。

パソコンやソフトウェア

IT関連の資産は、技術の進歩が早いため、短期間で旧式となり、価値が減少します。機能的に減価する場合も、減価償却の適用対象となります。

家畜や植物

農業や園芸業で使用される生物資産も、成長や収穫に伴い価値が変動すると考えます。したがって、減価償却の適用対象となります。

商標権や特許権

無形の権利資産は、一定の期間、独占的な権利を有するものの、その期間が経過すると価値が減少します。そのため、減価償却の適用対象となります。

これらの資産は上記の条件を満たすため減価償却の適用対象となります。

減価償却できない資産

時間の経過によって価値が下がらない、または価値が変動しない資産は減価償却の対象外になります。減価償却の対象とならない資産は、経年劣化や使用による消耗の影響を受けにくい、または全く受けない資産です。

以下に、減価償却できない資産の具体的な例とその理由を詳しく解説します。

土地

土地は自然のものであり、経年劣化することがありません。また、土地の価値は地域や経済状況によって変動することはあっても、時間の経過だけで価値が減少することは基本的にありません。そのため、減価償却の適用対象とはなりません。

借地権

借地権は土地を一定期間借りる権利を指します。この権利自体は時間の経過とともに価値が減少するものではないため、減価償却の対象外とされます。

骨董品や美術品

アート関連の資産は、時代や流行、または歴史的価値によって、価値が上昇することも考えられます。そのため、一律に価値が減少するとは言えず、減価償却の対象とはなりません。

電話加入権

電話加入権は、特定の電話サービスを利用する権利を指します。この権利自体は、時間の経過とともに価値が減少するものではないため、減価償却の対象外とされます。

稼働休止中の固定資産

これは、一時的に使用を停止している資産を指します。これらの資産は、使用されていない期間中は価値の減少が認められないため、その期間中は減価償却の対象外となります。

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減価償却の計算方法

原価償却の計算方法にはいくつかの方法が存在しますが、以下ではその代表的な方法を説明します。

資産の取得原価を計算する

まず、資産の取得原価を計算します。資産の取得原価は、固定資産を取得する際の購入代金だけでなく、それに付随する運賃や荷役費、手数料などの費用も含めて計算される価格のことを指します。

資産の原価配分方法

減価償却の手続きを行う場合、取得原価を何らかの基準を使って配分して経費の計算を行います。これを、資産の原価配分と呼びます。

原価配分の方法は、固定資産の価値が経時的に減少することを考慮して、その減少分をどのように経費として計上するかによって適切に選択しなければなりません。

以下では、主な原価配分方法を詳しく解説します。

定額法

定額法は、固定資産の取得原価をその耐用年数で均等に分割し、毎年同額の償却費を計上する方法です。具体的な計算式は以下のとおりです。

定額法の減価償却費=(取得価額-残存価額)÷耐用年数
※一般に購入時は残存価格は0で計算します。

定額法のメリットとしては以下のようになります。

  • 計算が簡単である
  • 毎年の償却費が一定であるため、予算の立てやすさや経費の予測が容易である
  • 会計処理がシンプルであり、誤差の発生が少ない

一方、デメリットとしては以下のようになります。

  • 実際の資産の価値の減少と計上額が一致しない場合がある
  • 資産の実際の使用状況や劣化状況に応じて償却費を調整することが難しい
  • 経済的な状況や技術の進歩により、資産の実際の価値が急激に変動する場合、その変動を反映するのが難しい

まとめると、下記のようになります。

計算の容易さ
予算の立てやすさ
会計処理の容易さ
実際の資産の価値と一致するか
償却費の調整しやすさ

これらのメリット・デメリットを考慮し、企業や個人は自身の経営状況や資産の特性に応じて、最も適切な減価償却方法を選択する必要があります。

定率法

定率法は、固定資産の未償却残高に対して一定の償却率を掛けることで、毎年の減価償却費を計算する方法です。具体的な計算式は以下のとおりです。

定率法の減価償却費=未償却残高×定率法の償却率

この方法のメリットは次のとおりです。

  • 資産の価値の減少と計上額がより一致する(特に、高価な資産の初期の価値減少が大きい場合に適している)
  • 資産の劣化や技術の進歩による価値の減少を反映しやすい

一方、デメリットとしては次のようなものがあります。

  • 計算が複雑になる(毎年の未償却残高を基に計算を行う必要があるため、計算ミスが生じやすい)
  • 初年度の償却費が大きくなるため、初期の経費負担が重くなる
  • 未償却残高が変動するため、未来の償却費が予測しにくくなる

まとめると、下記のようになります。

計算の容易さ
予算の立てやすさ
会計処理の容易さ
実際の資産の価値と一致するか
償却費の調整しやすさ

定率法は、特定の業界や資産の特性、企業の経営状況に応じて適切に選択されるべき方法です。

生産高比例法

生産高比例法は、減価償却方法の一つで、固定資産の使用度合いに基づいて減価償却費を計上する方法です。

具体的には、固定資産の取得価額を、当該事業年度での使用量や生産量の割合に応じて減価償却費として計上します。計算式は下記のとおりです。

生産高比例法の減価償却費=(取得原価-残存価額)×1年間の生産高(使用度合い)÷総生産高(使用度合いの合計)

計算手順としては、資産の総生産高を予想し、当期の生産高が総生産高に占める割合を出し、固定資産の取得価額に乗じることで減価償却費を算出します。

メリットとしては次のとおりです。

  • 当該資産の使用により計上される収益と減価償却費が対応するため、「費用収益対応の原則」の観点から非常に合理的な計算方法といえる
  • 資産の使用や生産の実態に応じた正確な減価償却が可能である

一方、デメリットとしては次のようなものがあります。

  • 適用できる資産が限定される
  • 総生産高を正確に積算しなければならない
  • 毎期の生産高を正確に集計する必要があるため管理が難しい

まとめると、下記のようになります。

計算の容易さ
予算の立てやすさ
会計処理の容易さ
実際の資産の価値と一致するか
償却費の調整しやすさ

生産高比例法は、総生産量を正確に予想することができる資産、たとえば航空機や自動車、鉱業用設備などに限定されることが多いです。

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減価償却費の仕訳方法

減価償却費の仕訳方法には、貸借対照表上での表示方法として「直接法」と「間接法」の2つの主要な手法が存在します。

これらの方法は、どのように固定資産の価値の減少を会計上で表示するかという点で異なります。それぞれについて解説します。

直接法

直接法は、固定資産の取得価額から直接的に減価償却費を控除する方法です。具体的には、固定資産の帳簿価額を直接減少させることで、事業年度末の資産の価値を示します。

例として、100万円(耐用年数5年)の備品を取得した場合、初年度の減価償却費は、1,000,000円 ÷ 5年で200,000円となります。

この場合の仕訳は以下のようになります。

借方貸方
減価償却費200,000備品200,000

この方法の特徴として、固定資産の現在の帳簿価格が一目で確認できる点が挙げられます。しかし、取得原価を知るためには、これまでの減価償却費の累計額を加算する必要があります。

間接法

間接法は、減価償却費を「減価償却累計額」という資産控除科目に集計する方法です。

この方法では、固定資産の取得価額そのものは変動せず、減価償却累計額として減価償却費の合計額が貸借対照表に表示されます。仕訳としては、以下のようになります。

借方貸方
減価償却費200,000減価償却累計額200,000

間接法の特徴として、固定資産の取得原価がそのまま貸借対照表に表示される点が挙げられます。しかし、現在の帳簿価格を知るためには、取得原価から減価償却累計額を差し引く計算が必要となります。

一般に、減価償却を行った場合、貸借対照表に間接法で表示するケースが多く、直接法での表示は多くありません。

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まとめ

減価償却は資産の価値の経時的な減少を適切に反映するための方法です。減価償却を行うことで、企業や事業者は正確な期間損益の計算が可能となり、また節税効果を得られるメリットがあります。さらに、減価償却費を計上しても社外に現金は流出しないので、その分だけ、社内に現金が留保される効果もあります。

ただし、全ての資産が減価償却の対象となるわけではなく、適用できる資産とそうでない資産が存在します。また、減価償却の仕訳方法には「直接法」と「間接法」の2つがあり、それぞれの特徴や適用のポイントを理解することが重要です。

また、M&Aにおいても、減価償却の費用が企業価値に影響を与える場合もあります。そのため、M&Aを行う際は、専門家に会計処理について相談することをおすすめします。

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