M&Aで重要な部署とは?担当部署の役割や体制構築のポイントなどを解説
2023年9月26日
このページのまとめ
- M&Aを行うには重要部署の体制構築が必要
- 買い手企業と売り手企業は体制構築の際にそれぞれ押さえておくべきポイントがある
- M&Aは専門家を通すのがおすすめ
- 自分の目的に合わせて相談先の専門家を選ぶ
M&Aを進める中で、「社内での体制構築のポイントを知りたい」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本コラムでは、M&Aの重要な部署、体制構築のポイント、M&Aで専門家を利用する理由について解説します。また、相談先の専門家の特徴やメリットもご紹介しています。M&Aの部署でお悩みの際は、ぜひ参考にしてください。
目次
M&Aで重要な役割を持つ部署
M&Aを成功させるには、売り手企業も買い手企業も幅広い分野の知識と対応が必要となります。適切な対応をするためには、まず専門部署を設立し、体制構築を行うことが重要です。特に構築すべき部署は、以下の5つです。
- 経営企画部署
- M&A担当部署
- 法務部署
- 経理(財務)部署
- 事業推進部署
それぞれどんな役割を担うのか解説していきます。
なお、それぞれの役割はあくまで一例であり、具体的な業務の分担は企業ごとに異なる場合があります。
M&A統括部署
M&A担当部署はM&Aを専門としている部署で、多くの場合M&Aを行う際に設置されます。M&A担当部署が行う作業は、以下のとおりです。
- ほか部署と連携しながらM&Aのにおける目的の明確化、戦略策定
- 対象企業の選定や交渉
- PMI(M&A成立後の統合プロセス)の取りまとめ
M&Aは機密情報が多く、情報漏洩厳禁のため、限られた人数で構成されることが多いです。よほど大きな案件でなければ、10名程度で構成されるのが一般的といえます。
経営企画部署
経営企画部署は会社全体を軸として経営戦略を立てる部署であり、全社的な経営戦略に基づき、M&Aの実行可否判断や戦略策定を行います。この経営企画部署が、前述したM&A統括部署を兼ねているケースもあり、その場合はM&Aの候補企業選定から交渉、成立まで一連の業務を担います。
法務部署
法務部署は、M&Aにおける必須部署といえます。なぜなら、M&Aを行う際には労働契約や会社法など、さまざまな場面で法律が関係するからです。法務部署が行う作業は、以下のとおりです。
- 契約書の作成
- 契約書のチェック
- 法務デューデリジェンスの実施
契約書の内容やデューデリジェンスに不備があった場合、M&A取引に影響が出る可能性もあるため、特に留意して進めていく必要があります。
経理(財務)部署
経理(財務)部署は財務状況の調査や税務関連を担当します。経理(財務)部署が行う作業は、以下のとおりです。
- 財務デューデリジェンス
- 税務面からのM&Aスキームの検討
M&Aでは、相手企業の実績が自社に影響を及ぼします。正しく企業価値を評価するために、事前に対象企業の財務状況を把握することが重要です。
また、M&Aのスキームにより税金の負担額が異なるため、自社に適したスキームを検討する必要があります。
PMI担当(事業推進)部署
PMIとはM&A実施後の企業間の統合作業のことを指します。PMI担当部署は、その名の通りPMIを実行してM&A成立後の事業計画に責任を持つ部署です。主に経営方針や企業風土などの統合を推進します。
円滑にPMIを進め、できるだけ早く事業を推進できれば、買い手側は買収に要したコストの早期回収が望めるでしょう。
M&Aで部署・体制構築を行うポイント
M&Aの部署を設立する際に、買い手企業、売り手企業それぞれが押さえておくべきポイントがあります。
- 買い手企業はPMIの体制を整える
- 売り手企業はM&A後の引き継ぎに注意する
では、それぞれ解説していきます。
買い手企業はPMIの体制を整える
買い手企業は、PMIの体制を整えることがポイントです。PMIとは、M&A成立後に行われる統合プロセスのことです。M&A成立後、それまで別々の組織であった企業が統合され、社内には混乱が生じやすくなります。混乱が起きやすい状態でも円滑にM&Aを行えるように、PMIの体制を整えておきましょう。
PMIが有効に機能しないと、新会社のビジョンや労働条件などの必要な情報が入手できないため、従業員同士の連携が取れず、不安やストレスが募り、従業員の離職につながる可能性があります。また、想定したシナジー効果が得られず、さらなる業務拡大のためにM&Aを行ったにも関わらず、業績が悪化し、逆効果になる事態も考えられます。
売り手企業はM&A後の引き継ぎに注意する
売り手企業はM&A後の引き継ぎに注意する必要があります。売り手企業は経営陣が変わっても事業に支障を出さずに継続できるように、相応しい引き継ぎを行わなければなりません。
交渉の段階から、買い手企業と連携を取って、次期リーダーとなる人材にノウハウを継承し、将来的な成長を促しましょう。
M&Aを進める上で専門家に相談する重要性
M&Aを実施する際に社内での体制構築を進めることはもちろん重要ですが、それだけでなく、必要に応じて専門家に相談するのがおすすめです。なぜなら、M&Aを行うには、財務・法務・税務などの幅広い知識が必要となり、社内で全てに精通している人材を探すのは難しいからです。
他にも専門家に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 適正な売買価格で取引しやすくなる
- マッチングやM&Aの交渉などを円滑に進めやすい
- 不利な条件のM&Aを避けやすくなる
- 情報漏洩の危険性を抑えやすくなる
それぞれ解説していきます。
適正な売買価格で取引しやすくなる
M&Aを進める上で専門家に相談することで、適正な売買価格で取引しやすくなります。買い手企業と売り手企業が納得できる売買価格でM&Aを行うことが重要ですが、ここで妥当な金額がいくらなのかが問題になります。
M&Aにおける売却価格は自由に設定することができるので、自社が期待する売却金額より低い金額を提示されるなど、売り手企業が不利になる可能性が考えられます。そのため、M&A専門家に適正な売買金額を算出してもらい、その金額に基づいてM&Aの交渉を行うことが重要です。
マッチングやM&Aの交渉などを円滑に進めやすい
M&A専門家に相談することで、マッチングやM&Aの交渉などを円滑に進めやすくなります。M&Aを行うには売買金額だけでなく、自社のニーズに合う企業なのかなど、さまざまなポイントがあります。
しかし、売り手企業と買い手企業のみでM&A交渉を進めていると、細かい論点に辿り着かず、交渉が決裂する可能性もあるでしょう。そのため、M&A専門家に仲介してもらい、決裂のリスクを防ぐことが重要です。
また、M&Aはスケジュールを明確にした上で行わないと、成立しないまま時間だけが過ぎていきます。専門家がいる場合には、交渉を進める上でのポイント整理、スケジュール管理、TODO整理を実施してもらえるので、円滑に進めやすくなります。
不利な条件のM&Aを避けやすくなる
専門家を通すことで不利な条件のM&Aを避けやすくなります。M&Aでは、最終契約書に書かれている事柄が契約内容の全てです。話し合いの段階では、聞いていなかった事柄が最終契約書に書かれているという可能性もあるでしょう。
最終契約書に自社に不利な条件が記載されていた場合、M&Aから数年後に損害を受けることも考えられます。例えば、以下のような事柄に注意が必要です。
- アーンアウト条項
- 価格調整条項
- 実行の前提条件
- キーマン条項
- クロージング前後の誓約事項
- 競業避止義務
- 表明保証
- 損害賠償
- 解約事項
しかし、M&A未経験者であれば、不利な条件かどうかを見分けるのも難しい場合があるでしょう。M&Aに精通した専門家に相談することで、不利な条件を指摘してもらい、不当なM&Aを避けることができます。
情報漏洩の危険性を抑えやすくなる
M&Aを行う上で専門家に依頼すると、情報漏洩の危険性を抑えやすくなります。M&Aにおいて情報漏洩は厳禁です。社内で関わる人数が増えれば増えるほど、情報漏洩のリスクが高まります。もし外部に情報が漏れてしまった場合、株価や従業員に悪影響を与える恐れがあります。
そのため、当事会社が直接やり取りをするのではなく、外部の専門家を介在させ、情報漏洩の危険性をできるだけ抑えましょう。
M&Aについての相談先・専門家
M&Aについての相談先・専門家は、以下の4つが挙げられます。
- M&A仲介会社
- M&Aアドバイザリー会社
- 公認会計士・弁護士などの専門家
- 金融機関
それぞれ得意とする作業や利点が異なります。では、それぞれの相談先の特徴やメリットを解説していきます。
1.M&A仲介会社
M&A仲介会社は、M&A戦略の策定からクロージングまで一連の流れをサポートします。具体的には、以下のような作業を行います。
- 対象企業の選定
- 企業価値の算定
- 交渉
- 契約書の作成
M&A仲介会社は、売り手企業と買い手企業の中立の立場で、双方の条件をすり合わせ、M&A成功を目指します。双方の代理となるため早期成約しやすく、双方から手数料を受け取るため、片方の金銭的な負担も軽減される場合があります。
2.M&Aアドバイザリー会社
M&Aアドバイザリー会社は、M&A仲介会社と同じくM&A戦略の策定からクロージングまで一連の流れをサポートします。具体的な業務内容は、以下のとおりです。
- M&A全体のスケジューリング
- 企業価値の算定
- 買収資金の調達支援
- デューデリジェンスの支援
- 交渉に関する助言
M&A仲介会社とM&Aアドバイザリー会社の違いは、契約相手です。M&A仲介会社は、売り手企業と買い手企業の双方と契約を結び、中立な立場に立ってM&Aを行います。
一方で、M&Aアドバイザリー会社は、売り手企業と買い手企業の片方と契約を結び、依頼者の利益を優先します。そのため、依頼者の目的が達成しやすいというメリットがあります。
3.公認会計士・弁護士などの専門家
M&Aを行うには、対象企業の財務状況を知るのが大前提です。公認会計士は会計・税務・財務の専門家なので、決算書の数字が正しいかどうか、どのように事業を成長させてきたか、簿外負債はないか、リスクの高い資産を保有していないかなどの財務調査を実施できます。具体的に行う作業は、以下のとおりです。
- 財務デューデリジェンス
- 株価算定
- 業務計画のレビュー
- PMIサポート
これらの作業によって、適切な企業価値を算出したり、適切な統合を実施したりすることが可能です。
また、M&Aにおける最終決定は最終契約書に書かれた事項に基づきます。M&Aは進捗に応じて契約書を結ぶため、その都度チェックが必要となりますが、弁護士がいれば、契約書のチェックを任せることが可能です。具体的に行う作業は、以下のとおりです。
- 契約書の作成
- 契約書のチェック
- 法務デューデリジェンス
法務デューデリジェンスとは、対象企業の法的または労務的なリスクの有無を調査することで、M&Aが実行できるかどうかや金額交渉に関わる重要な作業です。具体的には、設立からの株主関係、企業の現状、取引先との契約関係、資産や負債、従業員の労働環境などの調査を行います。これらの作業をしたうえで、最終契約の段階では最終契約書を作成・チェックし、M&Aを成功へと導く役割を担います。
4.金融機関
金融機関はM&Aを行う前から実行まで幅広い業務を提供しています。具体的には、以下のような業務を行っています。
- 案件の紹介
- FA業務
- 全体スキームの策定
- 資金調達支援
買収資金の融資を希望する場合、金融機関へ相談するのがおすすめです。また、対象企業の財務状況の確認も行えるため、スムーズに交渉が進むでしょう。
ただし、全ての金融機関がM&Aに関わる業務を行っているわけではないため、相談に行く際には事前に確認しましょう。
まとめ
M&Aを成功させるには、経営企画部署・M&A担当部署・法務部署・経理(財務)部署・事業推進部署などの体制構築を行う必要があります。
体制構築を行うポイントは、買い手企業はPMIの体制を整えること、売り手企業はM&A後の引き継ぎに注意することです。
また、M&Aは売り手企業と買い手企業だけで行わず、M&A仲介会社・M&Aアドバイザリー会社・公認会計士・弁護士などの専門家・関連会社やグループ内の専門部署・金融機関といった専門家を通すことで、適正価格で売買できたり、マッチングやM&A交渉がスムーズに行えたり、不利な条件のM&Aを避けられるなどのメリットがあります。
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