合併時の登記手続きとは?必要書類や登録免許税などの費用を解説

2023年9月7日

合併時の登記手続きとは?必要書類や登録免許税などの費用を解説

このページのまとめ

  • 会社の合併は煩雑な手続きを要し、登記申請はそのプロセスの1つ
  • 吸収合併と新設合併では、登記の手続きや必要書類が異なる
  • 必要な書類は、登記申請書や合併契約書、株主総会議事録など多岐にわたる
  • 合併時の登記申請には、登録免許税や合併契約書の収入印紙代がかかる
  • 登記申請は複雑で専門知識を要するため、専門家に依頼することがおすすめ

合併時の登記の手続きに手間がかかると知り、不安を覚えている経営者の方もいるのではないでしょうか。合併時の登記申請には、登記申請書や合併契約書、株主総会議事録をはじめとして数多くの書類を準備する必要があります。

本コラムでは、合併時の手続きの流れや登記のタイミング、登記申請に必要な書類などをまとめました。登記申請時にかかる費用や注意点などもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

合併時の登記手続きとは?

合併とは、複数の会社を1つの法人格に統一するM&Aの代表的な手法です。合併は煩雑な手続きを多岐にわたって行う必要があり、登記申請はそのプロセスの1つです。

ここでは、合併の種類によって登記手続きが異なること、登記手続きが必要なタイミングについて解説します。

合併の種類によって登記手続きは異なる

合併は、大きく分けると「吸収合併」と「新設合併」の2つです。合併の種類によって、登記の手続きの内容が異なります。

吸収合併とは

吸収合併とは、既存の2社以上の会社が合併して1つの法人格になる手法のことです。吸収合併では、吸収される側の会社を消滅会社、吸収する側で合併後も残る会社を存続会社と呼びます。存続会社は法人格を残したまま、消滅会社の権利義務のすべてを引き継ぐことが特徴です。

一般的に、規模の大きな会社が存続会社になることが多く、消滅会社は吸収合併によって、存続会社のブランド力や知名度を活用した商品やサービスの展開が可能になります。消滅会社は、自社の資産と負債を存続会社に譲り渡す対価として、存続会社の株式や社債、現金などを受け取ります。

新設合併とは

新設合併とは新たに設立した会社に既存の会社を吸収させる合併手法です。吸収合併はすでに存在する会社のみで行うのに対し、新設合併は新たに設立した会社が吸収する側の会社となって合併を行います。

新設合併は新たに会社を設立するため、吸収合併よりも手続きが煩雑です。吸収合併と比べて登録免許税も高額になるため、登記手続きの手間や費用面から、合併の手法として新設合併を選択する企業は少ない傾向にあります。

また、新設合併では、消滅会社が自社の資産と負債を移転する際の対価として受け取るのは株式もしくは社債に限定されているため、現金は得られません。そのため、経営者が引退に際して今後の生活資金などを得ることを目的にする場合、新設合併は適さないといえるでしょう。

いつ登記手続きが必要?

吸収合併、新設合併のいずれにおいても、登記申請は合併の手続きの終盤で行います。契約書に書かれている効力発生日から2週間以内に、法務局で登記申請手続きを行いましょう。なお、新設合併の場合は、合併会社の設立の日から効力が発生します。そのため、合併会社の設立の登記申請日が効力発生日となります。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

合併時の手続きの流れと登記のタイミング

一般的な合併時の登記手続きの流れは、以下のとおりです。ここでは、吸収合併のケースを例に挙げています。

  1. 存続会社と消滅会社間で交渉を行い、契約締結する
  2. 両社における株主総会の特別決議で合併契約を承認する
  3. 主に債権者保護を目的として官報公告を行う
  4. 合併契約書などの事前開示書類などの備置および反対株主保護の手続きを行う
  5. 合併契約の効力が発生、消滅会社の資産や負債などの権利義務承継の手続きを行う
  6. 存続会社は合併登記、消滅会社は解散登記をそれぞれ行う
  7. 事後開示書類を備置する

複数の会社を1つに統一させる合併では、上記のようにさまざまな手続きを行うことが求められます。会社同士の交渉や契約にはじまり、株主総会の特別決議での承認や債権者と合併に反対する株主への対応も必須です。
登記手続きは合併契約の効力発生後に行います。登記手続きでは複数の書類を用意する必要があるため、専門家に相談しておくと安心です。

関連記事:合併とは?実施目的やメリット、手続き方法などを解説

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

合併時の登記手続きに必要な書類

合併時の登記手続きでは、存続会社はケースによっては約10種類の添付書類を用意しなければなりません。それに対して、消滅会社については解散登記申請書のみを提出すれば事足ります。
ここからは、吸収合併と新設合併において必要な書類について解説します。

書類の準備に時間を要する可能性が高いため、必要な書類を確認しておき、取得できるものは早めに取得しておくと、スムーズに手続きできるでしょう。

吸収合併の場合

吸収合併では、存続会社は会社情報の変更のみであるため変更登記を、法人格がなくなる消滅会社は解散登記を行います。

消滅会社が不動産を所有する場合、存続会社に引き継がれるため、所有権移転登記の手続きも別途しなければなりません。

存続会社の必要書類

存続会社では、以下の書類を用意しましょう。変更登記申請書をほかの添付書類と一緒に提出します。すべての添付書類が必須というわけではなく、状況に応じて必要とされる書類もあります。

添付書類の数が多く、10種類以上用意しなければならないケースも多いでしょう。書類の取得や作成に時間を要するため、はじめから専門家に依頼するのも手です。

必要書類概要
変更登記申請書以下のような事項を記載
・会社法人等番号
・商号
・本店
・登記の事由
・許可書到達年月日
・発行済株式の総数や種類および数
・資本金の額
吸収合併契約書以下のような法的記載事項を記載
・存続会社と消滅会社の会社の商号および住所
・消滅会社の株主や社員に株式を発行する場合の内容
吸収合併契約の承認に関する株主総会議事録(もしくは取締役会議事録)契約を承認した株主総会の議事録や承認を証明する書面
債権者保護の手続きに関する書面合併公告が載っている官報、個別に対応したことを証明する書面
株主リスト株主の氏名・住所、議決権数などを証明する書面
消滅会社の登記事項証明書消滅会社と存続会社の本店を管轄する登記所が異なる場合に用意する
株券提供公告を行ったことを証明する書面消滅会社が株券を発行する会社である場合に用意する
新株予約権証券提供公告を行ったことを証明する書面消滅会社が新株予約券を発行している場合に用意する
資本金の額の計上に関する書面吸収合併に伴い、存続会社の資本金の額が増える場合に用意する
登録免許税に関する証明書変更登記に対応した登録免許税を納付した証明書
委任状司法書士などに手続きを委託する場合に用意する

登記事項証明書とは、これまで登記簿謄本や登記簿抄本と呼ばれていた書類のことで、登記簿がオンライン化されたことから名称が変更されました。
登記事項証明書は合計で4種類あり、消滅会社に関する情報は、そのうちの閉鎖事項証明書に履歴が残ります。

登記事項証明書は、管轄法務局の窓口で直接請求する方法のほか、郵送やオンラインでも請求が可能です。オンライン請求の場合、窓口や郵送での請求に比べて手数料が安く、お得です。

登記事項は、スムーズに申請手続きを行うために、期限前にオンラインで提出しておくことをおすすめします。登記すべき事項を、CD-Rなどの電磁記録媒体に記録して提出する方法もあります。

消滅会社の必要書類

消滅会社は、基本的には解散登記申請書のみを提出すればよく、添付書類を用意する必要はありません。存続会社と消滅会社は、それぞれの登記を同じ法務局で行うためです。解散登記申請書には、登記の事由や解散の日付などを記載して、決められた期限内に法務局に提出する必要があります。

そのほか、必要に応じて法務局で清算人選任の登記も行いましょう。清算人は、取締役に代わり会社が消滅した後の業務執行を担います。消滅後の会社は、清算を行う目的でのみ存続するため、清算人は主に清算事務を行います。

新設合併の場合

新設合併では、存続会社は設立登記申請書と添付書類を揃える必要があります。

存続会社の必要書類

存続する新設会社が提出する書類については、以下をご参照ください。

必要書類概要
設立登記申請書以下のような事項を記載
・商号
・本店
・手続き完了日
新設合併契約書以下のような法的記載事項を記載
・消滅会社の商号および住所
・新設会社(存続会社)の定款で定める事項
新設合併契約に関する株主総会議事録(もしくは取締役会議事録)新設合併契約を承認した株主総会の議事録や承認を証明する書面
債権者保護手続きに関する書面合併公告が掲載された官報、個別に対応したことを証明する書面
株券提供公告を行ったことを証明する書面新設会社の株式発行に伴い、消滅会社の株主が持つ株式数に応じた対価を渡すことを証明する書面
株主リスト株主の氏名・住所、議決権の数などを証明する書面
消滅会社の登記事項証明書存続会社と消滅会社の本店を管轄する登記所が異なる場合に用意する
新株予約権証券提供公告を行ったことを証明できる書面消滅会社が新株予約券を発行している場合に用意する
資本金の額の計上に関する書面新設会社の資本金の額を証明する書面
登録免許税に関する証明書登録免許税を納付した証明書
委任状司法書士などに手続きを委託する場合に用意する

新設合併では、設立登記申請書とともに、新設合併契約書や債権者保護手続きに関する書面、資本金の額の計上に関する書面などを添付して提出します。

消滅会社の必要書類

吸収合併と同様に、消滅会社が提出する書類は基本的に解散登記申請書のみであり、添付書類は不要です。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

合併時の登記手続きにかかる費用

合併時の登記手続きには、登録免許税や収入印紙代がかかります。それぞれの内容を確認していきましょう。

登録免許税

合併時に課せられる登録免許税について、吸収合併と新設合併に分けて解説します。

吸収合併で課税対象となるのは合併によって増加した資本金の部分のみですが、新設合併では新設会社の資本金の全額に課税されます。そのため、新設合併のほうが多額の税金を納めることが多いといえるでしょう。

吸収合併時の登録免許税

合併登記では、登録免許税がかかります。存続会社と消滅会社の税額はそれぞれ以下のとおりです。

存続会社の登録免許税資本金の増額部分に対して0.15%
※増加した資本金の額が消滅会社の資本金を超える場合は、該当する額に対して0.7%
消滅会社の登録免許税一律で3万円

存続会社は増加した資本金の額に対して、基本的に定率で課税されるのに対し、消滅会社は一律3万円の定額で課税されます。
なお、存続会社についても、登録免許税が3万円未満のケースでは、1件の申請につき負担額は3万円です。

消滅会社が保有する不動産がある場合、存続会社に権利を移転させるための登記が必要です。上記の計算とは別に、「不動産価格に対して0.4%」の登録免許税を納めなければなりません。所有権移転登記の申請期限はないものの、会社の合併登記が終了したら、不動産についても速やかに名義変更登記をしておくとよいでしょう。

参照元:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」

新設合併時の登録免許税

新設合併における登録免許税は以下をご参照ください。

新設会社の登録免許税新設会社の資本金全額に対して0.15%
※合併直前の消滅会社の資本金額が一定額以上であった場合は、該当する額に対して0.7%
消滅会社の登録免許税一律で3万円

吸収合併では、存続会社の課税の対象となるのは、資本金のうち増加した金額のみでしたが、新設合併では新設会社の資本金全額に対して課税される点に注意しましょう。
なお、登録免許税が3万円未満の場合は、最低額の3万円が課税されます。

新設合併においても、消滅会社の登録免許税は一律で3万円です。

参照元:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」

合併契約書の収入印紙代

吸収合併・新設合併のいずれのケースでも、合併契約書を提出します。合併契約書に貼付する収入印紙代は、1通につき4万円です。
合併契約書には印紙税がかかるため、納税したことを証明する収入印紙を貼付しなければなりません。そのため、同じ契約書を複数枚作成するような場合は、収入印紙代がかからない電子契約の方式での締結がおすすめです。

参照元:国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

合併時の登記手続きの注意点

合併時の登記手続きは非常に煩雑で、M&Aの手法の中でも、手間がかかる部類に含まれます。

企業の合併では、株主総会による特別決議や債権者保護など、手間や時間を要する手続きを行わなければなりません。新設合併であれば、会社設立の手続きも必要です。これらの手続きとあわせて、複雑な登記の手続きを進める必要があります。

用意する書類は、登記申請書や合併契約書、株主総会議事録、登記事項証明書など多岐にわたります。いずれも専門的な書類のため、それぞれの書類の取得時期や書き方を理解するのにも時間を要するでしょう。また、申請内容に誤りがあると、合併取引が滞ったり無効になったりする可能性があるので慎重に作成しましょう。

手続きが煩雑なうえ、専門的な知識が必要とされるため、少しでも不明点があれば、専門家に相談すると安心です。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

まとめ

合併とは、複数の会社を1つの法人格に統合するM&Aの代表的な手法であり、その手続きは非常に煩雑です。登記申請はそのプロセスの1つで、合併の手続きの終盤に法務局で申請を行います。

合併は、吸収合併と新設合併に大別され、それぞれ登記の手続きが異なります。吸収合併とは、既存の2社以上の会社が合併して1つの法人格になる手法のことです。存続会社は法人格を残したまま、吸収される消滅会社の権利義務のすべてを引き継ぎます。
一方、新設合併とは新たに設立した会社に既存の会社を吸収させる合併手法です。吸収合併は既存の会社のみで行うのに対し、新設合併は新たに設立した会社が吸収する側の会社となって統合を実施します。

企業合併の登記手続きで必要になる書類は、登記申請書や合併契約書、株主総会議事録、登記事項証明書など多岐にわたります。合併時の登記手続きは非常に煩雑で、申請内容に誤りがあると、合併取引自体が無効になる可能性があるため、専門家に依頼することをおすすめします。

M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、M&A全般をサポートする仲介会社です。経験豊富なコンサルタントが貴社の状況や希望条件を丁寧にヒアリングし、適切なスキーム策定や交渉、契約書作成など、M&Aのあらゆるプロセスをご支援いたします。

料金体系はM&Aご成約時に料金が発生する完全成功報酬型です。M&Aのご成約まで、無料で利用できます(譲受会社のみ中間金あり)。ご相談も無料です。M&Aをご検討の際には、ぜひお気軽にご連絡ください。