このページのまとめ
- 銀行にも事業承継の相談が可能で、経営や自社株、承継先の相談ができる
- 銀行に事業承継の相談をする主なメリットは、自社の状況を把握していること
- 銀行に事業承継を依頼する際は、選択肢が狭まることや買い手に有利になり得ることに注意
- 事業承継を相談する前には、後継者の有無や承継の方向性を整理しておく必要がある
- 銀行以外にも、公的な機関やM&A仲介会社などの相談先がある
「銀行でも事業承継の相談はできるの?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?銀行に事業承継の相談をすることは可能です。現在では、事業承継をサポートする部門を設けている銀行も存在します。
本記事では、事業承継における銀行の役割や相談をするメリット・デメリットなどを解説。また、相談する前の確認事項や銀行以外の相談先についても紹介します。
目次
事業承継における銀行の役割
事業承継の相談といえばM&A仲介会社や弁護士が思い浮かぶかもしれませんが、銀行でも可能です。ここでは、事業承継における銀行の立ち位置や相談できる内容について解説します。
事業承継での銀行の立ち位置
日本では多くの企業が事業承継の問題を抱えています。中小企業庁が公開している資料「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」によると、2025年度には 中小企業や小規模事業者の70歳以上の経営者は約245万人に達するとされており、そのうちの半数が後継者が未定だとされています。事業承継の推進は喫緊の課題といえるでしょう。そのため、多くの機関が事業承継のサポートを行うことが求められています。
その中でも銀行は企業と日々接しており、融資や資金繰りの支援を行っています。そのため事業承継の相談役としても期待されています。銀行としても低金利で収益環境が厳しいなか、ビジネスチャンスと捉えて事業承継ビジネスに力を入れています。
参照元:中小企業庁「中小企業・小規模事業者における M&Aの現状と課題」
事業承継で銀行に相談できること
事業承継に関して、銀行に相談できる内容としては下記の3点があります。
- 経営に関する相談
- 自社株に関する相談
- M&Aの相手先選びに関する相談
それぞれの内容について見ていきましょう。
経営に関する相談
銀行は企業の経営に日々接しているため、経営に関するノウハウを持っています。普段から融資業務を通じて企業の決算書や経営に関する相談を受けることも多く、経営に関する知見が広いです。
融資取引のある銀行であれば、決算書や日々のコミュニケーションを通じて企業の内情を把握している場合も多いでしょう。そのため経営に関する相談も、スムーズに行える利点があります。
また、近年では事業承継ビジネスに力を入れている銀行も多いので、後継者問題などにも対応してくれるでしょう。銀行のネットワークを活かしてさまざまな機能を提供している場合も多く、後継者不在のため事業を断念する場合の廃業手続きや相続の税金対策などの相談も可能です。
自社株に関する相談
事業承継ビジネスに力を入れている銀行は多いため、自社株に関する相談にも対応してもらえます。株価算定のほか、株式評価を下げる方法や節税方法なども提案してくれるでしょう。
株価の算定などはサービスの一環で行っている銀行も多いです。また、納税や事業承継に関して資金が足りない場合は、資金繰りの相談もできます。
M&Aの相手先選びに関する相談
銀行ではM&Aの相手先選びに関する相談もすることができます。銀行では多くの企業と取引があり、多数のネットワークを蓄積しています。また、企業分析するノウハウに長けているため、優良企業を知っています。M&Aの相手企業をマッチングすることが可能です。
事業承継に関して銀行へ相談する3つのメリット
事業承継に関する相談を銀行に行うメリットには、下記の3点があります。
- 銀行側で会社の経営状態を理解している
- 事業承継に精通した行員に対応してもらえる
- 相談料がかからない場合がある
経営状況を把握してくれているなど、他の相談窓口にはないメリットが銀行にはあります。それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
銀行側で会社の経営状態を理解している
銀行へ相談する大きなメリットが、会社の経営状態を把握している点です。普段から融資取引のある銀行であれば、決算書や日々のコミュニケーションを通じて会社の内情をわかってくれています。会社だけでなく代表者個人の経歴や家族構成、資産背景なども共有している場合が多いでしょう。
そのため、事業承継に関する相談もスムーズに行うことができます。特にメインバンクであれば他の取引銀行よりも関係が深いため、相談先としておすすめです。
事業承継に精通した行員に対応してもらえる
事業承継に精通した行員に相談できる点も、銀行に相談するメリットです。
事業承継ビジネスに力を入れている銀行は増えています。M&Aの専門部署を設置している銀行も多く、事業承継アドバイザーの資格を保有している行員も増えているでしょう。
銀行には多くの事業承継に関する相談があるため、ノウハウを蓄積しています。事業承継に詳しい行員がこれまでのノウハウを活かして対応してくれるので、事業承継に関する的確なアドバイスを受けられるでしょう。
相談料がかからない場合がある
相談料や着手金がかからない場合があるのも、銀行に相談するメリットの一つです。特に地方銀行でその傾向が強く、相談の初期段階では手数料は発生しません。実際に事業承継が進み始めた場合に、銀行は税理士やM&A仲介会社から紹介料をもらうため、最初は手数料がかからない仕組みになっています。最初に気軽に相談がしやすいことも、銀行に相談するメリットです。
事業承継に関して銀行へ相談する2つのデメリット
事業承継に関する相談を銀行にするメリットは多いですが、デメリットもあります。銀行に相談するデメリットとしては、下記の2つがあります。
- 銀行の紹介だけでは選択肢が狭くなる場合がある
- 買い手側に有利に交渉が進む可能性がある
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
銀行の紹介だけでは選択肢が狭くなる場合がある
銀行の紹介だけでは、選択肢が狭くなってしまうデメリットがあります。事業承継でM&Aを行う際に、銀行へ相談するとどうしても銀行の取引先の中でのマッチングを優先します。そのため買い手にしても売り手にしても、候補先の企業は少なくなってしまうでしょう。
買い手側に有利に交渉が進む可能性がある
銀行に相談した場合、買い手側を優先する場合があることもデメリットです。
銀行で紹介するM&Aの相手企業は、主に銀行が融資している取引先企業です。M&Aが成立した際に融資を行うのは売り手側ではなく買い手側であるため、買い手企業の意向を優先する傾向があります。
事業承継を相談する前に確認しておく4つのこと
事業承継は代表者にとっても従業員にとっても、とても大きな問題です。スムーズに承継を行うためにも、相談する前に問題を整理しておく必要があります。相談する前に確認しておくポイントとしては、下記の4つがあります。
- 後継者の有無
- 承継の方向性
- 会社の資産と負債の整理
- 自社株式の価格と株主構成
後継者の有無は、事業承継を相談する際に重要な情報です。親族の中に後継者がいるのか、従業員から選ぶつもりなのか、将来に備えて育成している候補者がいるかどうかなどを確認しておきましょう。
後継者の有無と合わせて確認しておくべきことが、承継の方向性です。後継者が決まっているのであれば、承継方法や時期を相談していくことになります。後継者がいないのであれば、M&Aでの売却を検討することになるでしょう。
会社の資産と負債の整理も重要な情報なので、整理しておきましょう。事業承継の際に行う株式価値の算定において、資産と負債を使って計算します。決算書には記載されない簿外の負債などがあると正しい価値が算定できないので、徹底的に調査・整理してください。
また、株式の価値や株主構成も重要な確認事項です。企業によっては株主構成が複雑で、承継の大きな障壁になる場合もあります。事前に確認をしておくことで、スムーズな承継が可能になります。
事業承継について相談できる銀行以外の4つの窓口
事業承継に関する相談先は、銀行だけではありません。下記のようにたくさんの相談窓口があります。
- M&A仲介会社
- M&Aマッチングサイト
- 公的機関
- 税理士・公認会計士・弁護士
それぞれの相談先の特徴について、紹介します。
1.M&A仲介会社
M&A仲介会社は、M&A仲介や事業承継支援を専門に行っている支援機関です。相談からM&A成約までトータルでサポートを受けられるのが特徴です。また、専門会社のネットワークがあるので、売り手についても買い手ついても情報量が豊富です。
中小企業のM&Aでは、相性の良い相手を見つけて、信頼関係を築くことが重要です。M&A仲介会社の中には、良い候補先を探せる営業力や、信頼関係を築ける交渉力に強みがある会社も多く、専門会社ならではの的確なアドバイスとノウハウを持っている点が、強みといえるでしょう。
手数料は仲介会社によってさまざまです。着手金・中間金・成功報酬とそれぞれ発生するケースや、完全成功報酬型をとっているケースなどがあります。
2.M&Aマッチングサイト
売り手と買い手をマッチングさせる、M&Aマッチングサイトもおすすめです。銀行や仲介会社では取り扱わないような小規模な案件を見つけられたり、赤字企業であっても登録ができたりするメリットがあります。売り手と買い手が直接交渉することも可能ですが、専門家にサポートを頼めるサイトもあるでしょう。
手数料はサイトによってさまざまですが、譲渡金額の数%をサイトに支払う場合が一般的です。ただ最近では売り手が無料であったり、売り手も買い手も無料の場合もあります。しかし別途紹介された専門家には、手数料が必要になるので注意しましょう。
3.公的機関
公的機関が行っている窓口でも、事業承継の相談が可能です。下記のような場所が公的な機関として相談窓口を開設しており、専門家の紹介を行ってくれます。
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- よろず支援拠点
事業承継・引継ぎ支援センターは国が設置している機関で、事業承継・引き継ぎの支援をワンストップで行ってくれます。
事業承継・引継ぎ支援センターは、親族内・第三者を問わず事業承継・引継ぎに関する相談を受けたり、事業承継診断によって課題の抽出を行ったりします。他にも事業承継を進めるための計画の策定や、買い手企業・売り手企業とのマッチング支援を行います。全国47都道府県に窓口があるので、相談しやすいことも特徴といえるでしょう。
よろず支援拠点は中小企業庁が設置している機関で、中小企業や小規模事業の経営相談を行っています。事業承継だけでなく、売上の拡大や経営改善・事業再生などの経営にあたってのさまざまな相談が可能です。
事業承継・引き継ぎ支援センターと同じく全国に窓口があるほか、時には出張相談会も行ってくれます。公的な機関ということもあり、銀行では対応してくれないような小規模な案件でも、対応してくれるのが特徴です。
4.税理士・公認会計士・弁護士
事業承継ニーズが高まっていることから、税理士や公認会計士、弁護士などでも事業承継の相談に対応しているケースが増えてきました。自社株式の譲渡に伴う税務面のサポートだけでなく、株価の算定や、承継先の紹介なども対応してくれるでしょう。
また、必要に応じてほかの専門家や提携しているM&A仲介会社も紹介してくれます。紹介先を利用する場合、税理士・公認会計士・弁護士とは別に、仲介会社への手数料も必要になる点には注意しましょう。
まとめ
事業承継に関する相談は、銀行でも対応してくれます。銀行では、経営に関する相談、自社株に関する相談、M&Aの相手先選びに関する相談が可能です。銀行によっては相談料がかからないケースもあります。
銀行には事業承継に関する専門家がいる場合もあります。普段から取引のある銀行であれば、会社の経営状態や会社の内情を理解してもらえていることが多いため、状況を踏まえたアドバイスがもらえる可能性が高いでしょう。
しかし、基本的に銀行の取引先の中でのマッチングになり、承継先の選択肢が狭くなる傾向にあるため、銀行以外に相談した方がよいケースもあります。M&Aによる事業承継をご検討中の方は、仲介会社など、M&Aの支援を専門的に行っている機関に相談することもおすすめです。
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