このページのまとめ
- 後継者がいない会社が廃業すると、経営者が負債や借金に悩まされるリスクがある
- 廃業は従業員の人生に影響を与えたり取引先に迷惑をかけたりする場合がある
- 廃業以外の選択肢には、身内や社員への事業承継、M&A、株式公開(IPO) がある
- 後継者がいない会社の相談先は、商工会や士業、金融機関、M&A仲介会社など
後継者がいない会社の経営者の中には、廃業するべきかどうか悩んでいる人もいるでしょう。廃業をすると経営者自身や関係者に悪影響が及ぶリスクがあるので、ほかの選択肢と併せて慎重に考えることが必要です。
本コラムでは、廃業をおすすめしない理由や廃業以外の選択肢を紹介します。後継者がいない会社経営者の相談先も紹介するため、事業承継の方法に迷うときは参考にしてください。
目次
後継者がいない会社が多い3つの理由
後継者がいない会社が増えている理由には、次のようなことが挙げられます。
- 会社を継いでくれる親族の不在
- 経営者の高齢化
- 事業承継の準備ができない・していない
3つのの理由について詳しく解説します。
1.会社を継いでくれる親族の不在
会社を継ぐ親族が不在であることが後継者問題が起こる要因のひとつです。
従来は、親族内から会社の後継者を選ぶのが一般的でした。これは親族内承継と呼ばれる方法で、従業員から理解を得やすかったり後継者教育の時間を確保できたりするメリットがあります。
しかし、現在は親族が会社を継ぐ事例は減少傾向にあるのが実情です。親族に会社を継ぐ意思がなかったり、子どもには自分の望む道を歩ませたいと考えたりすることから、親族内承継を選択しない経営者も増加しています。
2.経営者の高齢化
日本では、経営者の高齢化により平均年齢が上昇傾向にあります。中小企業庁が「第7節 経営資源の有効活用」で発表した経営者の平均年齢は、2013年が60.4歳であることに対し、2020年には62.5歳まで上がり、経営者の高齢化が進んでいることがわかりました。
また、2021年においては70代の経営者の割合がもっとも高く、70代以上が全体に占める割合は6割を超えています。経営者の高齢化が進んでいるのは、少子高齢化が急速に進行していたり、事業承継の機会を逃したりしたことが要因のひとつとして考えられています。
参照元:中小企業庁「第7節 経営資源の有効活用」
3.事業承継の準備ができない・していない
事業承継は後継者さえ見つかれば、すぐに会社を承継できるものではありません。中小企業庁が公表した「事業承継ガイドライン」によると、事業承継の準備期間は5年〜10年が必要です。円滑に事業を承継するには、後継者の育成も含め、計画的に準備していく必要があります。
しかし、日々の業務に追われて準備に対応できていない経営者が多いのが現状です。また、経営者自身が「まだまだ現役でやれる」と考えて、事業承継の準備の着手が遅れる場合もあります。会社を引き継ぐ後継者が困らないように、十分な準備期間を設けて計画的に進めていくことが重要です。
参照元:中小企業庁「事業承継ガイドライン」
後継者がいない会社に廃業をおすすめできない2つの理由
会社を引き継いでくれる後継者がいない場合、廃業を検討する経営者も少なくありません。しかし、会社の廃業には、さまざまなリスクが伴います。
後継者がいない会社でも廃業をおすすめできない理由には、主に以下の2つが挙げられます。
- 経営者本人が廃業に伴う損失を負う可能性がある
- 取引先や従業員などに迷惑をかけてしまう
それぞれの理由について詳しく解説します。
経営者本人が廃業に伴う損失を負う可能性がある
後継者がいない場合、最終手段として廃業の選択肢があります。しかし、経営者本人が廃棄に伴う損失を被る可能性があるため、廃業以外の選択肢はないのか慎重に検討することが重要です。
会社の資産から負債を引いた金額が手元に残る場合は、廃業を選んでもよいかもしれません。ただし、経営不振で資産よりも負債や借金が多い場合は、残った負債の返済に追われることが予想されます。負債や借金の問題を解決するまで、金銭的に余裕のある暮らしは実現できなくなります。
取引先や従業員などに迷惑をかけてしまう
資産から負債を引いた金額が手元に残る場合、経営者にとって廃業はあり得ない選択ではありません。しかし、廃業で会社がなくなると従業員や取引先に迷惑がかかる場合があります。
たとえば、従業員は職を失います。収入源がなくなり、金銭的な不安を抱えることになるでしょう。また、今まで積んできた経験やキャリアを活かす場所がなくなり、各従業員の人生そのものに影響を及ぼすかもしれません。また、従業員だけでなく、今まで懇意にしていた取引先の経営にも影響が出る可能性があります。
後継者がいない会社がとれる廃業以外の3つの選択肢
廃業にはリスクが伴います。廃業以外の選択肢も検討しましょう。
後継者がいない経営者がとれる廃業以外の選択肢には、次の3つが挙げられます。
- 身内や社員への事業承継
- M&A
- 株式公開(IPO)
それぞれの選択肢について、メリット・デメリットも併せて詳しく解説します。
1.身内や社員への事業承継
後継者がいない場合、廃業以外の選択肢として身内や社員への事業承継があります。事業承継とは、次の後継者に会社を引き継いでもらう方法です。一般的には、子どもや親族に引き継がせる「親族内承継」が多いでしょう。しかし、子どもや親族に後継者になる意思がない場合があります。
身内に後継者がいない場合は、社内の従業員に引き継がせる「親族外承継」を検討しましょう。会社や事業内容のことを深く理解する従業員に引き継ぐ方法です。
メリット
身内や社員への事業承継を選択するメリットは、事業内容を理解する者に承継できることです。会社に勤めていた親族や社員であれば、事業内容だけでなく内部事情もよく理解しています。また、従業員や取引先も後継者候補のことを認知しており、社内外への影響を最小限に抑えられるのもメリットです。
特に身内である子どもに承継する場合に得られるメリットは、計画的に後継者を育てられることです。
子どもを経営者に育成するには、10年程度かかるといわれています。子ども自身が「経営者になる」と早い段階から意識していれば、教育と育成に十分な時間をかけられます。
デメリット
親族内承継は株式の相続が絡むため、後継者と後継者以外の人物の間で揉め事が起こる可能性があります。身内に複数の候補者がいる場合は、後継者争いが起こることもあるかもしれません。
また、親族外承継の場合は、経営者から株式を承継するための費用が必要です。事業承継の前に多くの資金が必要となり、後継者候補が資金調達できない場合は承継することが難しくなります。
さらに、後継者になると、経営権だけでなく、経営者の個人保証も引き継がなければいけません。負債を多く抱えている会社を引き継ぐ場合は、後継者にとって大きな負担になる可能性があります。
2.M&A
廃業以外の選択肢として、M&Aがあります。M&Aは「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」の略で、会社を売買することです。社外から後継者を招く「第三者承継」にあたります。
2つの会社が合体して1つの会社になるのは「合併」、1つの会社がもう一方の会社を買い取る場合は「買収」です。さらに、M&Aの手法には株式譲渡や事業譲渡、吸収合併、新設合併、新設分割、吸収分割などがあります。
M&Aは、後継者不在による事業承継問題を解決するために利用されることも増えています。
メリット
M&Aによって社外から新しい経営者を迎え入れることにより、廃業することなく会社を存続できます。会社が存続することで従業員の雇用を維持できるうえに、事業も継続できるため取引先にも迷惑はかかりません。
M&Aの手法によっては負債も買い手にすべて引き継がれるため、経営者は金銭的な負担から解放されます。
また、企業価値を高く評価してくれる買い手と巡り会えれば、会社を高額で売却することが可能です。売却により、経営者は老後資金を確保できる場合もあります。
デメリット
M&Aは、買い手がいなければ会社は売却できません。高く評価してくれる買い手に巡り会えればよいですが、すぐに見つからない場合があります。特に、経営難を抱える会社は、希望売却価格で契約が成立しない可能性もあるでしょう。
また、M&Aは契約成立までさまざまな準備や買い手との交渉が発生します。準備を始めてから売却が成立するまで、半年以上かかる場合もあります。多くのメリットがあるM&Aですが、売却成立まで時間を要することを理解しておきましょう。
3.株式公開(IPO)
株式公開(IPO) は、特定の関係者のみ保有していた株式を証券市場に流通させることです。証券市場に流通させて、誰でも自由に株式の売買ができる状態にします。自社の株式を証券市場に流通させるには、審査を通過して証券取引所に上場することが必要です。
売買が可能になると、会社の株式は複数の投資家に配分されて取引がおこなわれます。近年は、株式公開の準備と並行して、M&Aを検討する経営者が増えています。それぞれの条件を比較したうえで、自社にメリットのある選択肢を選ぶことが可能です。
メリット
株式を売却することで、売却益を受け取れるメリットがあります。証券市場を通じて資金調達が可能になるため、資金調達力を高められます。また、証券取引所に上場することで会社の知名度が上がり、社会的な信用が高まる効果も期待できるでしょう。
知名度の向上により、販路を拡大したり新規顧客を獲得できたりする可能性もあります。近年は、少子高齢化による労働人口の減少で人材不足の問題を抱える会社も少なくありません。販路拡大や新規顧客獲得などで会社が成長できれば、優秀な人材を獲得しやすくなります。
デメリット
証券取引所の上場には厳しい条件が設けられており、誰でも簡単にできるものではありません。厳しい条件が設けられているのは、投資家が安心して取引できるようにするためです。上場の審査はかなり厳しく、手続きも複雑であるため、準備に膨大な時間がかかることも少なくありません。
また、膨大な時間をかけて準備しても上場にふさわしい会社ではないと判断される場合もあります。株式上場への条件は証券取引所で異なるため、内容を確認したうえで準備を進めることが必要です。
後継者がいない会社経営者の4つの相談先
廃業以外の選択肢を検討するにあたって、どのように進めればよいか迷う経営者もいるでしょう。このような場合は、豊富な知識と経験がある専門家に相談するのが得策です。
後継者がいない会社経営者の相談先には、次の4つがあります。
- 商工会・商工会議所
- 税理士や公認会計士などの士業
- 金融機関
- M&A仲介会社
それぞれの概要やメリットについて詳しく解説します。
1.商工会・商工会議所
後継者問題の相談先として、商工会や商工会議所があります。商工会とは、事業や地域の発展のために総合的な活動をおこなう団体のことです。商工会法に基づいて主に町村部に設立されており、後継者問題を含む専門的な相談を受け付けています。
商工会議所は、商工会議所法に基づいて市部に設立された特別認可法人です。中小企業の活力強化や地域経済の活性化の実現することを目的としています。どちらも経営に関する相談を受けており、無料で専門家からアドバイスをもらえるのがメリットです。
2.税理士や公認会計士などの士業
何から始めればよいのかわからないときは、普段からお付き合いのある税理士や公認会計士などの士業に相談しましょう。税理士や公認会計士は会社のことを理解しており、経営者の立場に寄り添ったアドバイスをしてくれます。
ただし、すべての税理士や公認会計士が事業承継の知識があるわけではないので、対応可能かどうか確認しましょう。
3.金融機関
取引先の金融機関も相談先としておすすめです。金融機関は多くの取引先を抱えており、経営に関する相談だけでなく、自社に合う事業承継先を紹介してくれる可能性があります。
また、身内や従業員への事業承継を選ぶ場合は、事前に金融機関に伝えることが必要です。金融機関に事前に話しておけば、早い段階で事業承継のことを伝えられるのも相談するメリットといえます。
4.M&A仲介会社
M&Aを検討している場合は、M&A仲介会社に相談するのがおすすめです。近年は、M&Aに関する支援業務を専門的におこなう事業者が増えています。専門家として知識や最新情報を持っており、合併や買収に関する経験も豊富です。
M&A仲介会社に相談するメリットは、トラブルが起こりやすい事例を把握していることが挙げられます。大きな問題が起こらないように、リスクを回避しながら準備を進められます。M&A仲介会社は数多く存在するため、自社に合った会社を見つけることが重要です。
まとめ
経営者の高齢化や事業承継の準備不足などの理由で、後継者問題に直面する会社が増えています。後継者がいない場合は、最終手段として廃業を検討する経営者も少なくありません。しかし、廃業すると従業員や取引先に迷惑をかけたり、経営者自身が廃業に伴う損失を負ったりする場合があります。
後継者がいない場合、廃業以外にも親族内継承や親族外承継、M&A、株式公開(IPO)などの選択肢があります。 それぞれのメリットとデメリットを踏まえたうえで、自社に合う廃業以外の選択肢を検討してみましょう。
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