M&Aのフロー・流れとは?手順や進め方を解説!手続きに必要な書類も紹介

2024年8月19日

M&Aのフロー・流れとは?手順や進め方を解説!手続きに必要な書類も紹介

このページのまとめ

  • M&Aの進め方は大きく「検討・準備」「マッチング・交渉」「最終契約」の3ステップ
  • 検討・準備のフローでは、M&A専門業者の選定や相手先候補の絞り込みなどを行う
  • マッチング・交渉のフローでは、情報収集から基本合意書の締結までを行う
  • 最終契約のフローでは、デューデリジェンス・最終交渉・最終契約・クロージングを行う
  • M&Aの各フローには専門的なノウハウが必要であり、支援機関を利用するのが一般的

初めてのM&Aを検討する際、進め方がわからないという方も多いのではないでしょうか。まずは、M&Aの大きな流れと細かい工程を知ることが、M&Aを考える第一歩となります。

本記事では、M&Aを3つのステップに分類し、それぞれの内容を詳しく解説します。また、M&A・クロージング後の流れやフローで押さえるべきポイント、必要書類一覧なども紹介するため、チェックしてください。

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M&Aのフロー・一般的な流れ

M&Aのフローは、大きく分けて以下の3つのステップがあります。

  • STEP1:検討・準備
  • STEE2:マッチング・交渉
  • STEP3:最終契約

この3つのステップは、さらに買い手・売り手それぞれが行う合計で20のフローに分けられます。

検討・準備(アドバイザーへの相談)
1.ニーズの発生・M&Aの検討
2.M&A業者の選定・契約
3.機密保持契約書の締結
4.アドバイザリーとの面談
5.企業価値評価(売り手側)
マッチング・交渉(マッチング)
6.ロングリストの作成
7.ショートリストの作成
8.ノンネームシートの作成(売り手側)
9.ネームクリアの検討(買い手側)

(トップ階段・条件交渉)
10.機密保持契約書の締結
11.企業概要書の提示(売り手側)
12.企業価値評価・スキームの絞り込み(買い手側)
13.トップ面談
14.条件の交渉
15.意向表明書の提出(買い手側)
16.基本合意書の締結
最終契約(最終契約の締結)
17.デューデリジェンスの実施
18.最終条件交渉
19.最終契約書の締結
20.クロージング

このあとは、各ステップのフローを詳しくみていきましょう。

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【M&Aのフロー】STEP1「検討・準備」

M&Aの「検討・準備」ステップにおけるフローは、以下の流れで進めます。

  • M&Aの目的・方向性の検討
  • M&A専門業者の選定・契約
  • 【売り手】企業価値評価の実施・ノンネームシートの作成
  • 【買い手】買収先候補の条件絞り込み

売り手・買い手で共通するM&Aのフローもあれば、同じタイミングでも内容が異なるフローもあります。上表で確認しながらフローの説明をご覧ください。

M&Aの目的・方向性を検討する

経営を中長期的に考えるとき、売り手・買い手ともに戦略としてM&Aという選択肢が浮かび上がるケースがあります。M&Aニーズの発生です。

過去には、M&Aは大企業が行うものというイメージでした。しかし、現在はM&Aが広く浸透し、中小企業や個人事業主が関わるM&Aも増えてきています。

まず最初に、売り手・買い手ともにM&Aでできることや注意点を整理しておきましょう。

実現できること注意点
売り手・事業の選択と集中
・後継者不在問題の解決
・従業員の雇用維持
・創業者利益の実現
・ M&A成立前の情報漏洩
・従業員・取引先の反発
買い手・事業規模の拡大
・関連事業領域の拡大
・新規事業への参入
・人材確保・技術力の向上
・シナジー効果
・必要になる費用
・中長期的な事業の成り行き

一般に、売り手側におけるM&Aの目的は以下のようなものです。

  • 後継者不在による事業承継のためのM&A
  • 大手企業の傘下になることで経営の安定化と発展を図る
  • 新規事業立ち上げ資金を得るため現事業を売却する
  • 事業の選択と集中を行う
  • 創業者利益を得る
  • 債務を買い手に引き継いでもらう
  • イグジット戦略を実行する

イグジット戦略とは、ベンチャー企業などが自社株式を売却して利益を得ることです。従来はIPO(Initial Public Offering=新規株式公開)が重視されていました。しかし近年は、IPOよりも成立させやすいM&Aが、イグジット戦略として選ばれるケースが増えています。

一方、買い手側の一般的なM&Aの目的には以下のようなものがあります。

  • 事業規模の拡大
  • 営業範囲の拡張
  • 事業の多角化
  • 新規事業への進出
  • 海外市場への進出
  • 人材獲得
  • 技術や知的財産の獲得

売り手・買い手は、これらのニーズが発生したとき、M&A実施検討のフローを行います。

M&A専門業者を選定し契約する

M&Aの各フローを進めるうえでは、専門的な知識や経験が欠かせません。そこで、ほとんどのケースで、M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼します。どのM&Aの専門家に業務を依頼するかを決める際は、複数社の無料相談を活用して比較するのが得策です。

M&Aのニーズが発生した段階で、社内だけで検討するのではなくM&A仲介会社などに相談するとよいでしょう。相談時には、ある程度の自社の経営情報を伝えなければなりません。したがって、秘密保持契約の締結は必須です。複数のM&A仲介会社などに相談し、自社に適する専門家を選んで業務委託契約を締結します。

M&Aをサポートする機関

機関メリットデメリット
M&A仲介会社・M&Aの専門業者
・安心して依頼できる
・多数の候補企業から交渉相手を探せる
・相談からクロージングまでの支援が受けられる
・費用がかかる
・希望よりも低い価格になる場合もある(売り手側)
認会計士、税理士などの士業・得意分野の専門性が高い
・顧問税理士・会計士等であれば相談しやすい
・必ずしもM&Aに精通しているわけではない
・サポート範囲が限定さる
金融機関・ネットワークによる金融機関独自のマッチングが期待できる
・資金調達の専門的なアドバイスを受けられる
・必ずしもM&Aに精通しているわけではない
・中小規模のM&Aに対応していないこともある
経営コンサルタント系の会社・経営面の相談ができる
・高い専門性によるサポートが期待できる
・費用が高くなる傾向にある
M&Aマッチングプラットフォーム・コストを抑えられる
・手軽に利用できる
・M&Aの専門知識が必要になることもある
・情報漏洩などリスク対策が必要
事業承継・引継ぎ支援センター・公的窓口であり無料で相談できる
・相談窓口が全国にあり利用しやすい
・スピード感のある支援が難しい
・支援範囲が限定される

最も代表的なM&Aの専門家は、M&A仲介会社です。M&Aの専門業者であり、安心して業務を任せられるでしょう。大規模なM&Aを得意とする会社から、個人事業を含めた小規模なM&Aも扱う会社、あるいは特定の業種のM&Aに特化した会社など、各社によりさまざまな特性があります。

近年は、公認会計士、税理士、弁護士などの士業もM&A仲介業を行うところが出てきました。それぞれの得意とする分野の専門性は高いですが、必ずしもM&Aに精通しているわけではない点には注意が必要です。

同様に、銀行、信用金庫、証券会社などの金融機関がM&Aサポートを行うケースも見られるようになりました。証券会社や大手銀行などは、大規模なM&Aに関わるケースが多いです。支店間のネットワークによる金融機関独自のマッチングには期待が持てますが、こちらもM&Aの専門家ではないことは踏まえておきましょう。

FA(ファイナンシャルアドバイザー)や経営コンサルタント系の会社が、M&Aの仲介をするケースもあります。M&A以外に経営面の相談もできる点はメリットですが、その分、費用が高めとなる傾向があるようです。

最近になって中小規模のM&Aでの活用が目立つものとして、M&Aマッチングプラットフォームがあります。インターネット上のサイトでM&Aのマッチングサービスが受けられます。また、情報収集の場としても役立つでしょう。ただし、実際に交渉を進める際は、当事者間で直接行わず、専門家に依頼する方が安心です。

後継者不在の中小企業がM&Aによる事業承継を目指す場合は、公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターに相談する手段もあります。事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業庁からの委託事業として各都道府県に設置されました。ただし、事業承継・引継ぎ支援センター自体は、M&A仲介業務は行いません。あくまでも相談に乗り、必要に応じて提携している民間のM&A仲介会社などを紹介するまでの業務です。

M&A専門業者に支払う手数料

M&A仲介会社などの専門家に業務を委託した場合、発生する可能性のある手数料は複数種類あります。

  • 相談料:業務委託前の相談フロー時に発生する費用。無料の会社が多い。
  • 着手金:業務委託契約の締結フロー時に発生する費用。発生しない会社が多い。
  • 月額報酬:業務委託契約の締結フロー後、M&Aが成約するまでの間、毎月発生する顧問料。「リテイナーフィー」ともいう。発生しない会社が多い。
  • 中間金:基本合意書の締結フロー時に発生する費用。成功報酬の一部を前払いする形式。
  • デューデリジェンス費用:基本合意書の締結フロー後に行われるデューデリジェンス(売り手企業の精密監査)フロー時に発生する費用。買い手側が支払う。
  • 成功報酬:M&A成約フロー時に発生する費用。

昨今は、完全成功報酬制のM&A仲介会社が増えてきています。その場合、成功報酬以外の手数料の請求は受けません。

なお、成功報酬以外の手数料が発生する場合、仮にM&Aが破談になってもそれらは返金されないことも覚えておきましょう。

業務委託契約のタイプは仲介契約とアドバイザリー契約の2種類

M&A仲介会社との業務委託契約には、以下の2種類のタイプがあります。

  • 仲介契約
  • アドバイザリー契約

仲介契約では、M&A仲介会社が売り手・買い手の双方と契約します。「両者の間に入って取り持つ」=「仲介する」立場となるため、比較的、短期間でM&Aが成立しやすい点が特徴です。ただし、そのために条件面の妥協を求められることが多くなるでしょう。

アドバイザリー契約とは、M&A仲介会社が売り手・買い手のどちらかとのみ契約するものです。クライアントが最大限の利益を得られるよう支援業務を行います。成約内容に期待は持てますが、交渉には時間を要するでしょう。条件面で折り合いがつかなければ破談となるケースもあります。

【売り手】企業価値評価の実施・ノンネームシートの作成

M&A仲介会社などとの契約フロー後、売り手では自社の企業価値評価(バリュエーション)を行います。特に非上場企業の場合、株式市場での株価のような算定の目安となるものがありません。そこで企業価値評価を行い、自社の売却額について目星をつけます。算定は、M&A仲介会社などに任せておけば安心です。

企業価値評価フローと同時進行で、ノンネームシートを作成します。ノンネームシートとは、売り手の法人名や詳細住所などは伏せて、具体的な特定ができない状態にした企業概要書のことです。必要な情報を提示すれば、作成はM&A仲介会社が行います。

【買い手】買収先候補の条件絞り込み

M&A仲介会社などとの契約フロー後、買い手においては売り手探しの準備として、どのような企業を買収先とするかの条件を検討します。条件を検討するにあたっては、M&Aを実施する目的が明確となっていることが必須です。M&A仲介会社などの専門家と相談することで、M&Aの目的は定まり条件も絞り込みやすくなるでしょう。

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【M&Aのフロー】STEP2「マッチング・交渉」

M&Aの「マッチング・交渉」ステップにおけるフローは、以下の流れで進めます。
M&A交渉先の選定(売り手によるノンネームシートの提示)

  • 秘密保持契約書の締結(交渉の開始)
  • 【売り手】IMおよびプロセスレターの提示
  • 【買い手】企業価値評価、M&Aスキームの絞り込み
  • トップ面談の実施
  • 基本合意書の締結

IMおよびプロセスレターの詳細は後述します。

M&A交渉先を選定する

売り手・買い手それぞれの条件に合わせて、M&A仲介会社が交渉相手候補を探します。多い場合は、数十社の候補から絞り込むケースもあるほどです。候補をどんどん絞っていきますが、この段階では、相手の具体的な法人名などはお互いわからない状態で選定を進めていきます。

【売り手】ノンネームシートを提示する

M&Aの交渉先選定フローでは、売り手は、M&A仲介会社を介して、作成しておいたノンネームシートを提示します。一般的なノンネームシートの記載内容は以下のようなものです。

  • 法人名:記載しません
  • 住所:会社の特定ができないレベルの記載
  • 事業内容
  • 直近3~5年の業績(売上高、営業利益、経常利益)
  • 従業員数
  • 営業拠点:会社の特定ができないレベルの記載
  • 会社の特徴:大まかに記載
  • 売却理由:大まかに記載
  • 売却形式(希望するM&Aスキーム)
  • 大まかな売却希望額
  • 売却希望時期
  • 売却希望条件:従業員の処遇など

買い手候補が早く決まるように、いろいろとアピールをしたいところですが、この時点で法人名が特定されてしまうと、情報が外部に漏れてしまう危険があります。ノンネームシートの記載内容には十分、注意しましょう。

【買い手】買収先の情報を集める

M&Aの買い手側における交渉相手探しフローでは、条件に合う売り手候補のノンネームシートを見て、検討・判断することになります。交渉相手の選定にあたっては、できるだけ詳細な情報がほしいところですが、秘密保持契約締結フロー前の状況では、得られる情報に限りがあるのはやむを得ません。M&A仲介会社のアドバイスを受けながら絞り込み・選定を進めましょう。

秘密保持契約書を締結する(交渉の開始)

売り手候補・買い手候補が定まったら、M&A仲介会社を介して交渉の開始を打診します。打診に対し合意が得られたら、売り手・買い手間で秘密保持契約書を締結するフローです。

秘密保持契約書の英語表記は「Non-Disclosure Agreement」であるため、その略であるNDAとも呼ばれます。一般的な秘密保持契約書の記載内容は、以下のとおりです。

  • 相手方に開示する秘密情報の範囲(定義)
  • 秘密情報の漏えい禁止(保持義務)
  • 秘密情報の目的外使用の禁止
  • 秘密情報の破棄・返還
  • 契約違反した場合の損害賠償請求の内容
  • 秘密情報契約の有効期限
  • 存続条項(有効期限の延長規定)

秘密保持契約書は売り手・買い手が相互に結ぶものです。自社における相手方の秘密情報の取り扱いにも留意する必要があります。

【売り手】IMおよびプロセスレターを提示する

秘密保持契約書の締結を受け、売り手は自社情報を開示するフローとなります。このとき買い手に対し提示する資料は、一般的にIM(Information Memorandum:企業概要書)と呼ばれています。
買い手がM&Aの是非を判断するために必要となる経営情報の開示であり、その分量はノンネームシートの比ではありません。ノンネームシートはA4用紙1枚程度の内容ですが、IMの場合は数十ページの内容となるでしょう。
プロセスレターとは、買い手候補が複数いて、入札形式で買い手を決める際に用いられる書類です。売り手は、入札ルール・手順・日程などを記載したプロセスレターを買い手候補それぞれに送付し、入札を行って買い手を決めます。

【買い手】企業価値評価を実施しスキームを絞り込む

売り手から開示されたIMの情報を基にして、買い手側では売り手の企業価値評価フローを進めます。企業価値評価の内容から、交渉で提示する買収額を決定しましょう。
企業価値評価の内容は、買収で用いるM&Aスキームの選定にも反映されます。M&Aスキームには以下のような種類があります。決定する際には、自社にとって適するスキームはどれか、M&A仲介会社のアドバイスを受けましょう。

  • 株式譲渡
  • 事業譲渡
  • 吸収合併
  • 新設合併
  • 吸収分割
  • 新設分割
  • 株式交換
  • 株式移転
  • 第三者割当増資

中小企業対象のM&Aでは、株式譲渡が最も多く用いられ、次いで事業譲渡が採用されています。

トップ面談を行う

トップ面談では、売り手・買い手双方の経営トップが直接会って話をします。M&A仲介会社に業務委託をしている場合、交渉は全てM&A仲介会社が行いますので、トップ面談以外で売り手・買い手が直接会う機会は基本的にありません。
ただし、トップ面談の目的は交渉ではありません。トップ面談で確認する内容は以下の事項です。

  • 経営ビジョン
  • M&Aを決意した理由
  • M&A後の方針
  • 会社の特徴や社風
  • 相手トップの人物像の見極め

トップ同士が意気投合した場合、その後のM&Aフローはスムーズに進む傾向があります。

基本合意書を取り交わす

M&Aの条件交渉が大筋で合意できたら、基本合意書締結のフローとなります。「マッチング・交渉」ステップにおける最後のフローです。基本合意書は、その時点で合意した内容を確認する書類という位置付けで作成されます。

売り手・買い手が署名・捺印を行いますが、法的拘束力はありません。ただし、一定の心理的な拘束力は期待できるでしょう。また、以下の事項については、基本合意書であっても例外的に法的拘束力を持たせることになっています。

  • 買い手の独占交渉権(特定期間)
  • 売り手のデューデリジェンスへの協力義務
  • 秘密保持

買い手は基本合意書で定められた独占交渉権の期間内にM&Aが成約することを目指します。秘密保持は、すでに交渉開始時に秘密保持契約を締結していますが、それ以降で新たな秘密情報が開示された場合に備えて、基本合意書でも定めます。

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【M&Aのフロー】STEP3「最終契約」

M&Aの「最終契約」ステップにおけるフローは、以下の流れで進めます。

  • デューデリジェンスの実施
  • 最終条件の交渉
  • 最終契約書の締結
  • クロージングの実行

いずれのフローも、M&Aの成立に向けて重要なフローとなります。

デューデリジェンスを実施する

デューデリジェンスとは、買い手が売り手に対して行う経営状態の精微な調査です。会計・財務・法務・労務・IT・事業などの分野ごとに士業などの専門家を起用して実施されます。デューデリジェンスのフローにおける主要な目的は以下の3点です。

  • 買収額決定のための、最終企業価値評価に必要となる情報の収集・確認
  • 偶発債務などの簿外債務の調査および簿外債務が存在する場合の内容精査
  • PMI計画策定のために必要となる情報の収集

PMIは、買い手がクロージング後に実施する経営統合フローのことです。詳細は後述します。

デューデリジェンスで行われる調査は、次のように多岐にわたります。

財務

企業価値の算定や財務的なリスクなどを確認するため、財務諸表を精査するものです。一般的に、公認会計士に委託します。

財務デューデリジェンスにより、買収企業の収益力や過去の設備投資、運転資本や負債の状況、簿外債務などを把握でき、企業価値評価や契約交渉での主要な論点を事前に洗い出すことができます。

財務デューデリジェンスについては、以下の記事で詳しく解説しておりますのであわせてご確認くえださい。

関連記事:財務デューデリジェンスとは?目的や調査・分析のポイントを詳しく解説

法務

法務デューデリジェンスは、株式・契約・労務などに関する幅広い法律上の問題を対象に行います。弁護士に委託するのが一般的です。

各種契約ではM&Aに影響のある条項がないかを確認し、労使関係や労働法関連のコンプライアンス、未払い残業代などの偶発債務もチェックします。

事業遂行に不可欠な許認可の取得・更新状況や、M&A実行後に必要となる申請・届出がないかなども調査の対象です。

また、係属中の訴訟・紛争がないかも調査されます。

法務デューデリジェンスについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、ご参考ください。

関連記事:法務DD(デューデリジェンス)とは?目的や費用感、チェックリストも紹介

人事

人事戦略や人事制度など、人事全般に関する調査を行います。財務面では給与のほか、福利厚生や退職金の妥当性なども含めた総合的な報酬の調査を行い、非財政面では人事方針や人事制度、組織の状態などをチェックします。

どのような人材がどこに配置されているかの把握も必要であり、特に幹部クラスの社員の情報が重要です。

人事デューデリジェンスについては、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:人事DD(人事デューデリジェンス)の意味や目的、注意点を解説

税務

過去の税務申告書や税務調査に関連する資料を分析し、税申告の正確性や納税状況の確認、税務リスクの把握などを目的に行われます。税理士に委託するのが一般的です。

追徴課税の可能性の有無や繰越欠損金の発生状況などを確認したり、想定されるM&Aスキームごとに租税コストを算定したりします。

税の申告漏れのようなリスクが発覚した場合、買収価額から追徴課税額を差し引くなどの対策が必要です。

ビジネス

ビジネスデューデリジェンスは、売り手側企業の将来性やシナジー効果を調査する項目です。事業概要や事業計画、競合会社などの分析を行います。買収先の競争優位性や強み・弱みなどを分析して将来の成長を予測し、シナジー効果が十分発揮されるかを確認します。

また、事業に内包するリスクを明らかにして、M&A後のトラブルや業績悪化が起こらないかを見極めます。

主に、経営コンサルティング会社に依頼するのが一般的です。

ビジネスデューデリジェンスについては、以下の記事でも紹介しています。

関連記事:ビジネスDD(ビジネスデューデリジェンス)とは?目的や項目を紹介

IT

ITデューデリジェンスは、情報システムの構成と活用状況を確認し、IT統合の可能性を分析する調査です。

多くの企業でITシステムの導入が進んでおり、業務と密接な関係を持つことから、 M&A後にシステムをうまく活用できるか、自社のシステムや業務と統合できるかを事前にチェックしなければなりません。

調査対象には、ITシステム・インフラの構成やITシステムを支える組織の体制、運用コストなどがあげられます。

最終の条件交渉をする

買い手のデューデリジェンス終了後、最終の条件交渉フローに入ります。買い手が提示する最終条件は、以下のいずれかとなるでしょう。

  • デューデリジェンスで特に問題が出なかった場合、基本合意書どおりの条件提示
  • デューデリジェンスで良い点が判明した場合、基本合意書よりも条件が向上
  • デューデリジェンスで何らかの問題が判明した場合、買収額の減額やM&Aスキームの変更など
  • デューデリジェンスで大きな問題が発覚した場合、M&A交渉の取り止め(破談)

M&Aスキームを変更する一例としては、簿外債務が発覚し、それを買い手は引き継ぎたくないため、「株式譲渡から事業譲渡にスキームを変更する」などがあります。

最終契約書の締結を行う

最終条件交渉フローで売り手・買い手間の合意が形成されれば、最終契約書の締結フローです。なお、最終契約書とは便宜上の呼称であり、実際には以下の例のようにM&Aスキーム名を冠した契約書名となります。

  • 株式譲渡契約書
  • 事業譲渡契約書
  • 合併契約書
  • 吸収分割契約書

最終契約書の締結が完了すると、それ以降には条件変更ができません。法的拘束力もあるので、最終契約書の作成・チェックは専門家に依頼しましょう。

クロージングを実行する

M&A成立における最終フローがクロージングです。クロージングとは、最終契約書に記載された内容の履行を指します。売り手の場合、以下がクロージングの例です。

  • 株式や資産、実印などの引き渡し
  • 株主名簿の書き換え(株式譲渡の場合)
  • 一方、買い手のクロージングの例は以下のとおりです。
  • 対価の支払い
  • 不動産登記の変更
  • 取引先との契約締結(事業譲渡の場合)
  • 従業員との労働契約締結(事業譲渡の場合)
  • 許認可の取得(事業譲渡の場合)

クロージングのフローが無事に済んで効力を発揮し、M&Aが完了します。

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M&A・クロージング後の流れ

M&A後のフローとして、財務諸表の確定や所有権・契約関係の移転などの手続きが行われます。

その後、「PMI(Post Merger Integration=経営統合フロー)」と「社内外への情報開示(ディスクロージャー)」を行うという流れです。PMIは買い手が行い、ディスクロージャーは売り手・買い手ともに行います。

それぞれの概要を説明します。

クロージング後に必要な手続きの実施

クロージング後は、主に次の手続きを行います。

  • 財務諸表の確定
  • 所有権・契約関係の移転
  • 許認可と届出

まず、クロージング時点での貸借対照表などを含む財務諸表を確定します。最終契約書に譲渡対価の「価格調整条項」が盛り込まれている場合、このときの貸借対照表を使って調整します。

所有権・契約関係の移転手続きは、事業譲渡とそれ以外で異なります。事業譲渡では、所有権や契約関係を個別に承継する手続きが必要です。

事業譲渡以外で合併・会社分割の場合は、権利義務は包括的に承継されるため、登記と知的財産権の登録手続き以外に個別の対応は必要ありません。

株式譲渡・株式移転・株式交換の場合、会社の資産は移転しないため、所有権・契約関係の移転手続きは原則として不要です。

許認可と届出について、事業承継では新たな申請手続きが必要です。それ以外で、合併・会社分割の場合は、業種によって監督官庁による承認や新たな申請が必要になる場合があります。

一方、株式譲渡など会社の支配権だけが変わるM&Aの場合、新たな許認可・届出は基本的に問題になりません。

PMIの実施

PMIで具体的に実行される統合には、以下のようなものがあります。

  • 管理システム(経理、総務など)
  • 業務システム(営業、製造など事業に関わるもの)
  • ITシステム
  • 組織の再編
  • 従業員の再配置
  • 社内規程
  • 人事評価制度
  • 給与制度
  • 社風

買い手にとって、PMIはM&Aの成否を決める重要なフローとなります。したがって、入念な計画が必要です。デューデリジェンスと同時期にPMI計画策定のためのプロジェクトを立ち上げ、準備に入ります。計画策定では、専門家のアドバイスを受けながら進めましょう。

社内外への情報開示(ディスクロージャー)

M&Aの情報を開示する対象は、主に以下のとおりです。

  • 従業員
  • 取引先企業
  • 取引金融機関
  • 証券取引所(上場企業の場合)
  • メディア(必要な場合)

この中でも注意が必要なのは、売り手側の従業員と取引先企業です。仮に、M&Aに反発して従業員が大量離職したり、反感を持った取引先が取引停止処置を取ったりしたら、買い手にとってM&Aの目的が果たせなくなります。最悪の場合、売り手は賠償請求されかねません。

したがって、丁寧な説明が求められます。実施するタイミングとしては、最終契約書の締結後すぐが適切です。まず従業員、次に取引先企業に告知するのがよいでしょう。売り手側経営者だけでなく、買い手側経営陣も同席するのがポイントです。

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M&Aのフローで押さえるべき6つのポイント

M&Aのフローを進めるうえでポイントとなるのは以下の6点です。

  • M&Aの目的や条件の明確化
  • M&Aの目的に応じた専門業者の選定
  • 情報管理の徹底
  • デューデリジェンスの徹底(買い手側)
  • PMIを丁寧に実施(買い手側)
  • ポストPMIも考慮(買い手側)

それぞれのポイントについて詳しく解説します。

1.M&Aの目的や条件を明確化する

M&Aの目的・戦略を明確にしていないと、シナジー効果が得られない相手と交渉を進めてしまう危険があります。特に、なかなか交渉相手が見つからないようなケースでは、いつしかM&Aを実施することが目的化してしまい、必ずしも望ましいとは思えない相手でも交渉したり、不利な条件でも妥協してしまったりする可能性があります。

最初にしっかりとしたM&Aの目的・戦略を立て、軸を持ってフローを進行しましょう。

2.M&Aの目的に応じた専門業者を選定する

自社が行おうとするM&Aを進めるにあたって、最適なM&Aの専門家を選定することが大事です。M&Aの仲介に携わる機関は、M&A仲介会社、士業、金融機関、FAなどさまざまあります。

M&A仲介会社の場合、大規模なM&Aを専門とする会社もあれば、中小企業のM&Aに特化している会社、さらに特定の業種のM&Aのみ取り扱う会社など、多種多様です。各社の実績などを確認し、自社に適するM&Aの専門家を選びましょう。

3.情報管理を徹底する

M&Aを進める場合、最終契約締結フローまでは、社内でも公表はしないものです(上場企業の場合、基本合意書締結時に公表するケースもある)。M&Aの途中で従業員や取引先に情報が漏れて動揺が生じたりすると、M&Aの交渉に影響が出てしまうおそれがあります。
また、M&Aでは秘密保持契約を交わし、自社の情報が交渉相手から漏れないようにします。また、自社内から相手方の情報が外部に漏えいしないよう、徹底した情報管理をしてください。

4.デューデリジェンスを徹底する(買い手側)

買い手が包括承継となるM&Aを実施する場合、デューデリジェンスのフローを徹底実施し、簿外債務の有無および内容を把握することは必須です。

後日になって簿外債務が発覚した場合、経営上の大ダメージを被るかもしれません。事業譲渡、第三者割当増資(50%未満の出資)以外のM&Aスキームは包括承継です。費用や期間を惜しまず、デューデリジェンスを実施しましょう。

5.PMIを丁寧に行う(買い手側)

買い手側にとってM&Aはクロージングで終わりではありません。M&Aの最終契約を締結しても、PMIがスムーズに行わなければ、シナジー効果が発揮されないでしょう。むしろ、クロージング後のPMIこそがM&Aの本番ともいえます。

買い手企業は、M&A後の従業員がスムーズに業務を開始できるよう、できる限り丁寧にPMIを行うことが大切です。

経験と実績を持つPMIコンサルティング会社など、専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。

6.PMI後の事業展開としてポストPMIも考える

PMIは、基本的にM&A成立後の全体的なプロセスを指します。その一方で、PMIをM&A成立後の1年程度の期間に限定し、それ以降のプロセスをポストPMIと捉える考え方もあります。

M&A成立後すぐは対応が急がれる項目について集中的に取り組み、その後は中長期的な視点から、ポストPMIとして腰を据えた経営統合作業を行うという考え方です。

長期的な視野で継続的にPMIを行うことにより、M&Aの目的をより確実に実現できるでしょう。

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M&Aのフローにおける必要書類・契約書の一覧

ここでは、M&Aの各フローで必要となる書類を紹介します。まず、契約書は以下の4種類です。基本合意書は厳密には契約書ではありませんが、一部の条項には法的拘束力があるため、ここに含めます。

  • 秘密保持契約書
  • 専門家とのM&A業務委託契約書
  • 基本合意書
  • 最終契約書

デューデリジェンスで必要となる資料・書類は以下のとおりです。

  • 登記簿謄本
  • 確定申告書(3期分)
  • 決算書(3期分)
  • 経営計画書
  • 月次試算表
  • 許認可に関する書類
  • 固定資産台帳
  • 不動産登記簿謄本
  • 固定資産税納税通知
  • 定款
  • 株主名簿
  • 株主総会議事録
  • 取締役会議事録
  • 組織図
  • 従業員名簿
  • 雇用契約書
  • 各種契約書一式
  • 就業規則
  • 退職金規定
  • その他の規程類

M&Aの相手先選定の過程で必要となる資料は以下のとおりです。

  • ロングリスト(多数の交渉候補が記載されているリスト)
  • ショートリスト(ロングリストから絞り込んだ交渉候補のリスト)
  • ノンネームシート
  • IM(企業概要書)

なお、M&Aの交渉過程で買い手から意向表明書が提示される場合があります。これは買収条件などの買い手の意向を記した書類ですが、M&Aのフローで必須の手続きではありません。あくまでも買い手の任意になります。

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まとめ

M&Aの進め方は、大きく「検討・準備」「マッチング・交渉」「最終契約」の3ステップに分けられます。フローはさらに細かく分けられ、どのプロセスでもM&Aに関する専門知識や経験が求められるでしょう。できるだけ希望条件を満たすM&Aを実現するためには、目的に合ったサポート機関の選定が欠かせません。

M&Aの進め方がよくわからないという方は、レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社のご利用をご検討ください。各領域で実績を積み重ねたコンサルタントが在籍し、相談から成約まで一貫してサポートを行います。

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