エグゼキューションとは?M&Aでの意味や手順、成功のポイントを解説

2023年8月21日

エグゼキューションとは?M&Aでの意味や手順、成功のポイントを解説

このページのまとめ

  • M&Aのエグゼキューションとは、交渉相手決定からクロージングまでの過程を指す
  • 一方でオリジネーションとは、交渉相手決定前までの過程のこと
  • エグゼキューションは、M&Aの成否を大きく左右する重要なプロセスである
  • エグゼキューションを成功させるためには、入念な事前準備が必要
  • エグゼキューションを円滑に進めるために、専門家の支援を受けることがおすすめ

M&Aを検討する中で、エグゼキューションという耳慣れない言葉が出てきて戸惑っている方もいるのではないでしょうか。エグゼキューションとは、M&A仲介会社などが用いる言葉で、策定した戦略を実行するフェーズを意味します。

本コラムでは、エグゼキューションの意味やオリジネーションとの違いを紹介。また、エグゼキューションに含まれる9つのM&Aプロセスに加え、その後に行われるPMI(経営統合プロセス)も含めて解説しています。

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M&Aでのエグゼキューションとは

M&A仲介会社やM&Aアドバイザーが用いるエグゼキューションという言葉は、複数のM&Aプロセスをくくって表現したものです。具体的には、M&Aの交渉相手が決まった後からクロージングまでのプロセスをさします。
エグゼキューションと対で使われる言葉が、オリジネーションです。エグゼキューションとオリジネーションの違いも、併せて説明します。

エグゼキューションの意味

エグゼキューション(execution)は英語です。直訳では「実行、遂行、達成、執行」などの意味を持ちます。エグゼキューションがM&Aの場で使用される際は、策定したM&Aの戦略を実行するフェーズという意味合いです。

エグゼキューションは、M&Aの交渉相手決定後からクロージングまでのプロセスを指すことが一般的です。
しかし厳密な定義はありません。本コラムでは、後述するエグゼキューションの各プロセス説明に、M&Aスキーム(手法)の決定や売り手側の譲渡価額決定のための企業価値評価(バリュエーション)を含めていますが、これをオリジネーションに含ませる解釈もあります。

オリジネーションとの違い

M&A業界で用いられるオリジネーション(origination)とは、M&Aの初期のフェーズのことです。なお、オリジネーションの直訳は「発祥」です。
具体的には、M&Aの検討・戦略策定・M&A仲介会社との業務委託契約締結・交渉相手探し・交渉相手の決定までの一連のプロセスを意味します。
前述のとおり、オリジネーションの中に、M&Aスキームの決定とバリュエーションを含める解釈もあります。

M&Aのフェーズとしては、まずオリジネーションがあり、それに続くのがエグゼキューションです。そして、買い手の場合は、エグゼキューションの後にPMI(Post Merger Integration=経営統合プロセス)があります。

エグゼキューションが重要な理由

オリジネーションは、M&Aの戦略を練り、それに合わせた交渉相手を探すことが主眼です。一方、エグゼキューションでは、定まった交渉相手を目の前にして、策定した戦略を実現すべく交渉し、成約を目指すフェーズになります。交渉をうまく進められなければ、M&Aは破談になってしまうかもしれません。エグゼキューションはM&Aの成功を左右する重要なフェーズです。

なお、M&A仲介会社と業務委託契約を結んでいる場合は、交渉は全てアドバイザーが代行します。エグゼキューションを成功させるためには、M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼するのが得策です。

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エグゼキューションでの手続き内容・流れ

エグゼキューションの各プロセスは、以下の順で進行します。

  1. M&Aスキームの選定
  2. バリュエーション
  3. 交渉の開始
  4. トップ面談の実施
  5. 基本合意書の締結
  6. デューデリジェンス
  7. 最終交渉
  8. 最終契約書の締結
  9. クロージング
  10. PMI

本コラムでは、エグゼキューション後、買い手が行うPMIも含めて各プロセスの概要を説明します。

1.M&Aスキームを選定する

まずは、M&Aスキームの選定です。M&Aでは主に以下のスキームがあります。

  • 株式譲渡:対象企業の過半数の株式を売買し経営権を移転
  • 事業譲渡:対象企業の事業および関連資産を選別して売買
  • 吸収分割:対象企業の事業部門を丸ごと買い手(既存企業)に移転
  • 新設分割:対象企業の事業部門を丸ごと新設企業に移転
  • 吸収合併:複数の既存企業を1社に統合する
  • 新設合併:1社以上の既存企業が新設企業に統合される
  • 株式交換:完全親子会社関係になる前提で買い手が対象企業の全株式を取得する
  • 株式移転:完全親子会社関係になる前提で新設企業が既存企業の全株式を取得する
  • 第三者割当増資:特定の第三者に株式を発行し増資する

上記いずれのM&Aスキームでも、資本が移動し権利が移転します(第三者割当増資では過半数の株式を発行した場合)。また、資本は移動するものの権利は移転しない広義のM&Aが、資本提携です。具体的な資本提携としては、少額の出資、少数の株式持ち合い、合弁会社設立などがあります。どのM&Aスキームを選択するべきなのかは、契約したM&A仲介会社に相談して決めるのがよいでしょう。

2.バリュエーション(企業価値評価)を実施する

M&Aの売買額交渉のために、売り手に対するバリュエーションが行われます。特に売り手が非上場企業の場合、上場企業のように株価を基にした算定ができないため、バリュエーションは欠かせません。バリュエーションは、買い手側が行うのはもちろんですが、売り手側も交渉における売買額の根拠とするため、自社のバリュエーションを実施します。

バリュエーションにはさまざまな手法が確立されていますが、大別すると以下の3系統に分かれます。

  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ
  • コストアプローチ

バリュエーションの各アプローチの概要を説明します。

インカムアプローチ

インカムアプローチは、事業計画の数値をベースに、将来の収益力に着目して企業価値を算定します。代表的な手法は、DCF(Discounted Cash Flow)法です。DCF法は、M&Aの現場でもよく用いられています。将来の収益力が反映されることがメリットです。ただし、事業計画は策定者の恣意性が疑われるというデメリットがあります。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、売り手企業と類似する事業を行っている上場企業の株価や、類似するM&A取引の価額を参照して企業価値を算定します。代表的な手法は、類似企業比較法や類似取引比較法などです。客観性に優れる点がメリットですが、類似する企業が見つからなければ算定自体ができません。

コストアプローチ

コストアプローチは、貸借対照表の純資産額をベースに企業価値を算定します。代表的な手法は、簿価純資産法や時価純資産法などです。計算が容易であり客観性も高い点がメリットになります。しかし、デメリットとして、将来の収益性などを加味していないため、M&Aでのバリュエーションには向きません。

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3.交渉を開始する

M&Aの交渉相手が決まった段階で必ず実施されるのが、売り手・買い手間の秘密保持契約締結です。この締結をもって、両者とも経営情報などを開示します。買い手は開示された情報を基にバリュエーションを実施し、売買額その他の条件交渉を行うのです。
なお、M&A仲介会社と業務委託契約を結んでいる場合、交渉は仲介会社が代行します。

4.トップ面談を行う

トップ面談とは、売り手・買い手の経営トップが直接会って話をすることです。近年では、オンライン上でのトップ面談が実施されることもあります。
トップ面談はM&Aの交渉過程で必ず行われます。トップ面談の目的は以下の項目です。

  • 経営ビジョンの共有
  • M&Aを決意した理由の確認
  • M&A後の方針の確認
  • 社風・会社の特徴の確認
  • 人物像の見極め

トップ面談で意気投合できれば、M&Aが円滑に進みやすくなるでしょう。

5.基本合意書を締結する

条件が大筋で合意できたなら、基本合意書を締結します。基本合意書は、現時点での合意内容確認書という位置付けです。法的拘束力はなく、M&Aが成立したわけではありません。ただし、心理的な拘束性は期待できるでしょう。なお、以下の事項は例外的に法的拘束力を持たせます。

  • 買い手の独占交渉権(一定期間)
  • デューデリジェンスへの売り手の協力義務
  • 秘密保持

買い手としては独占交渉権の有効期間内にM&A成約を目指すことになります。

6.デューデリジェンス(買収監査)を実施する

デューデリジェンスとは、売り手企業に対して行う経営状態のリスクに対する精微な調査のことです。財務・会計・法務・労務・IT・事業などの分野ごとに士業などの専門家を起用して、買い手側が実施します。デューデリジェンスの主な目的は以下の3点です。

  • 最終交渉時に提示する買収額決定のためのバリュエーションに必要な情報収集
  • 偶発債務などの簿外債務が隠されていないかどうかの調査
  • PMI計画策定に必要となる各種情報の収集

規模が大きなM&AほどPMIが重要になるため、デューデリジェンスは欠かせないプロセスです。

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7.最終交渉を行う

デューデリジェンスの結果を踏まえて最終交渉が行われます。特に問題が出ていなければ、基本合意書の内容で交渉を終えられるでしょう。ただし、何らかの問題が明るみになった場合は、減額交渉は避けられません。また、致命的な問題が見つかった場合は、M&Aの破談もあり得ます。

8.最終契約書を締結する

最終交渉での合意を経て最終契約書を締結します。ここでいう最終契約書とは便宜上の言葉です。実際には採用されたM&Aスキームが記載された契約書名になります。以下はその一例です。

  • 株式譲渡契約書
  • 事業譲渡契約書
  • 合併契約書
  • 会社分割契約書
  • 株式交換契約書など

最終契約書の締結以降、条件変更などは一切できません。締結前の契約書のチェックは、M&Aの仲介会社や弁護士などの専門家を交えて行いましょう。

9.クロージングを行う

最終契約書に定められた内容を履行することをクロージングと呼びます。たとえば売り手であれば、株式や資産の引き渡し、株主名簿の書き換えなどです。買い手であれば、対価の支払い、各種名義の書き換え、登記変更手続きなどがクロージングに該当します。

M&Aのエグゼキューションは、クロージングをもって完了です。

10.PMIを実施する

PMIは、クロージング後、買い手において実施される経営統合プロセスです。PMIでは、以下の事項などが統合対象になります。

  • 管理部門・事業部門の再編
  • ITシステム
  • 人事制度
  • 給与制度
  • 社内規程
  • 業務システム

これらの統合をうまく進めてシナジー効果が創出されることで、M&Aが成功したといえます。PMIを成功させるためには、入念な計画策定が欠かせません。デューデリジェンスで収集した情報を活かすためにも、M&A仲介会社などの専門家のアドバイスを受けましょう。

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エグゼキューションを成功させるポイント

ここでは、エグゼキューションを成功させるポイントとして以下の3点を紹介します。

  • 専門家と相談する
  • あらかじめ準備を行う
  • 通常業務と業務量のバランスを調整する

それぞれの内容を説明します。

専門家と相談する

M&Aでエグゼキューションの各プロセスを円滑に進めるには、専門的な知識や経験がないと難しいものがあります。特にデューデリジェンスでは、財務・税務・法務。労務・ITなど各専門家の起用は必須です。また、バリュエーションも未経験者が行うのは難しいでしょう。
M&Aのエグゼキューションでは、M&A仲介会社をはじめとする専門家に相談するのが得策です。

あらかじめ準備を行う

エグゼキューションのプロセスでは、会計資料を中心にさまざまな資料の提出が求められます。その中には、新たに作成しなければならない資料などもあるため、事前に準備しておかないとすぐには渡せず、場合によっては相手に不信感を与えてしまうかもしれません。
エグゼキューションに入る前から、M&A仲介会社などに話を聞いて、必要な準備は事前に行っておきましょう。

通常業務と業務量のバランスを調整する

M&Aのエグゼキューションを進めていても、経営者は通常業務もこなさなければなりません。エグゼキューションにばかりに集中してしまうと、通常業務がおろそかになるおそれがあります。通常業務に支障が出ないようにエグゼキューションへ対応するようにしましょう。その点でも、交渉の代行などを委託できるM&A仲介会社は心強い存在です。

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まとめ

M&Aのエグゼキューションとは、その前段階であるオリジネーションで策定したM&A戦略を実現するためのフェーズのことです。具体的には、M&Aの交渉相手決定後の以下のプロセスが含まれます。

  1. M&Aスキーム選定
  2. バリュエーション
  3. 交渉開始
  4. トップ面談
  5. 基本合意書締結
  6. デューデリジェンス
  7. 最終交渉
  8. 最終契約書締結
  9. クロージング

そして、エグゼキューションを成功裏に終わらせるためには、M&A仲介会社などの専門家の起用が肝要です。

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レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、M&A全般をサポートする仲介会社です。各コンサルタントは、オリジネーション・エグゼキューションのいずれのプロセスに対しても、適切なサポートを提供しています。
料金体系は、M&Aご成約時にのみ料金が発生する完全成功報酬型であるため、M&Aご成約まで費用は発生しません(買手企業様のみ中間金が発生します)。
随時、無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際には、ぜひお気軽にお問い合わせください。