M&A人材とは?業界の特徴や必要な知識・スキルなどを中心に解説
2023年8月10日
このページのまとめ
- M&A人材は、M&Aの現況やM&A業者に対する知識をもっておくと良い
- M&A人材には、M&Aそのものの知識のほかに、会計や法律などの知識が求められる
- M&Aでは交渉も多くなるため、交渉スキルやビジネススキルも必要
- M&A人材は、育てるのも中途採用するのも、難度が高い
M&Aの担当者を立てるために、どのような人材が適切なのか知りたい経営者の方も多いでしょう。M&Aの実施にあたっては、M&Aそのものの知識のほかに、財務や法務などの周辺知識から交渉力などのビジネススキル、対象企業の業界知識まで、幅広い能力が求められます。
本記事では、M&A人材に必要な知識・スキルを詳しく解説するとともに、M&A人材を立てるのが難しい理由についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
M&A人材とは
M&A人材とは、M&Aの業務・実務を担う人材のことを指します。通常はM&Aを実行する企業や、M&A仲介会社などの専門会社に勤めていることが多いです。
M&Aは「ビジネスの総合格闘技」と例えられることもあり、M&A人材には幅広い知識やスキルが求められます。具体的には、M&Aの知識、財務・法務・税務の知識、ビジネススキルなどが挙げられるでしょう。また、M&A人材にはオリジネーションからエグゼキューション、PMIまで担当した経験や実績も欠かせません。
M&A人材が知っておくべき業界の特徴
ここでは、M&A業界の歴史や業態などについて説明します。
国内M&Aの歴史と件数
まずは、近年の国内M&Aの歴史と件数について確認しましょう。日本企業がM&Aを行うようになったのは、バブル期の1980年代といわれています。当時の日本は非常に景気がよく、主に日本企業がアメリカの企業やホテルを買収していました。しかし、バブル崩壊後に日本経済は低迷し、M&Aは企業の身売りとして批判の対象になります。
M&Aへの世間の見方が変わったのは、数多くのIT企業が台頭し始める2000年代に入ってからです。2000年代中盤には敵対的買収も目立ちますが、後半頃から事業承継の選択肢として認識されるようになりました。そして現在まで、年間の実施件数は拡大を続けています。
M&A業界の業態・事業者
M&A業界の代表的な業態・事業者には、以下の3種類があります。
- M&A仲介会社:売り手企業または買い手企業の間に入り、M&Aの成立をサポートする事業者
- FA:売り手企業または買い手企業の一方の立場について、M&Aの成立をサポートする事業者
- M&Aマッチングサイト:オンライン上にM&A仲介プラットフォームを提供している事業者
このうちM&A仲介会社とFAは混同しがちですが、主に業務内容や企業との関わり方が異なります。仲介会社は企業同士の間に入って、M&Aのマッチングからクロージングまで一貫して対応します。他方で、FAは企業のどちらか一方につき、その企業の利益が最大化するよう努めるのが仕事です。
M&A人材の需要
近年、経営戦略上、M&Aの重要性はますます増してきています。それに伴い、企業によるM&A人材の採用・確保も活発化している傾向があります。また、後継者不足問題は深刻化すると予想されるため、M&A人材の需要は増えると考えられます。
M&A人材に求められる知識やスキル
M&A人材に必要な知識やスキルには、以下のようなものが挙げられます。
- M&Aに関する専門知識や経験
- 会計・法律・税金・経営の専門知識
- 買収対象業界に関する専門知識
- 渉外能力
- その他一般的なビジネススキル
ここでは、それぞれについて詳しく確認しましょう。
1.M&Aに関する専門知識や経験
M&A人材には、M&Aに関する専門知識や経験が求められます。たとえば、M&Aの一般的なプロセスごとに見ると、以下のような知識や経験が必要になります。
- 準備フェーズ:目標設定、仲介会社選定、マッチングなど
- 交渉フェーズ:バリュエーション、交渉、デューデリジェンスなど
- クロージングフェーズ:クロージングの準備・実行・事後処理など
- PMI(経営統合)フェーズ:短期プラン実行、中長期プラン実行など
M&A人材は、上記のようなM&Aに関する幅広い知識を身に付けなければなりません。また、それぞれのフェーズにおいて複数の選択肢が考えられます。その中から最善の方法を選択するために、蓄積されたノウハウ・経験も欠かせないでしょう。
2.会計・法律・税金・経営の専門知識
M&A人材には、以下のような会計・法律・税金・経営に関する専門知識も求められます。
- 会計:財務諸表や原価計算に関する知識
- 法律:会社法や労働法などに関する知識
- 税金:法人税や譲渡所得税などに関する知識
- 経営:経営戦略やマーケティングなどに関する知識
M&Aのプロセスは、公認会計士、弁護士、税理士などの専門家に依頼することも多くあります。しかし、これらのプロセスを専門家任せにすると、提案の総合的な妥当性などの判断ができなくなります。M&A人材もある程度の知識を身に付けて、各専門家の提案内容を深く理解し、適切に妥当性を判断できるようになることが肝心です。
3.買収対象業界に関する専門知識
M&A人材(買い手企業)には、買収対象業界に関する専門知識も求められます。
通常、買い手企業がM&Aを行う目的は「売上拡大」「新事業展開」などであることが多いです。これを達成するには買収対象業界を正しく理解し、成長性のある企業を買収する必要があります。業界理解に優れているM&A人材がサポートすることで、M&Aの成功確率を高められるでしょう。
また、M&A人材が業界に詳しくなると、既存事業とのシナジー効果をより正確に測定できます。さらに、業界特有の手続きやリスクを正しく把握できて、失敗する確率も下げられるでしょう。
4.渉外能力
M&A人材には、交渉力、提案力、営業力、コミュニケーション能力などの渉外能力が求められます。
M&Aは、企業にとって将来を決める重大な岐路だといえます。企業の未来を左右するM&Aの交渉においては、売り手企業も買い手企業も自社にとって最善の選択になるように交渉を進めようとします。そのため、ときには激しく意見が対立することもあるでしょう。そこで重要になるのが、M&A人材の渉外能力です。M&A人材が交渉力・提案力・営業力・コミュニケーション能力を総動員させて、両社が納得したうえでM&Aの契約に進めるように調整をします。
また、株主や取引先、金融機関、労働組合、従業員などに対しても説得力のある説明が必要になります。関係者が反対すればM&Aが白紙になってしまったり、想定していたシナジー効果を得られず失敗に終わったりするリスクがあるため、高い渉外能力が求められます。
5.その他一般的なビジネススキル
前述した知識やスキルのほかにも、M&A人材には以下のようなスキルが必要になります。
- 目標達成能力
- マネジメント能力
- スケジュール管理能力
- 積極性・自発性・人間力 など
M&Aには通常、数ヶ月~1年以上の期間を要するため、目標達成に向けて計画的に行動する能力が必要です。また、基本的にチームで活動するため、マネジメント能力やスケジュール管理能力も欠かせません。そのほか自分で知識を身に付けたり、行動できたりする積極性や自発性などもあるとよいでしょう。
M&A担当者を社内で立てるのが難しい理由
ここでは、M&A担当者を立てるにあたって、育成したり、外部から獲得したりするのが難しい理由について説明します。
M&A実務を経験できる機会が少ない
社内でM&A人材を育てるためには、M&Aの実務を経験させることが大切です。しかし、国内でM&Aの実務を経験してもらうには、まだまだ難しい環境であるといえます。
2022年に過去最多を記録しているものの、国内M&Aは年4,000件程度しかありません。2021年の国内の企業数は約368万社であることから、ほとんどの企業はM&Aと無縁であり、経験者はまだまだ少ないといえるのです。担当者にM&A実務を経験させたくても、そもそも機会が少なく育てるのが難しい問題があります。
参照元:
レコフデータ「2022年のM&A回顧(2022年1-12月の日本企業のM&A動向)」
総務省「令和3年経済センサス‐活動調査 産業横断的集計『事業所に関する集計・企業等に関する集計』結果の要約」
M&A経験のある中途人材が少ない
M&A担当者を外部から獲得するのも、ハードルが高いといえるでしょう。
前述したとおりM&A実務を経験している人はまだまだ少ないです。経験者がいたとしても、このようなハイスキル人材は、転職市場に出てくることは稀であることがほとんどです。
M&A人材の中途採用も見込めないため、M&A担当者を社内で立てるのは難しくなっています。
参照元:中小企業庁「登録機関データベース | M&A支援機関登録制度」
まとめ
M&Aの業務・実務を担うM&A人材は、M&Aそのものの知識が求められるだけでなく、会計や法律などの知識も必要です。また、相手企業との交渉スキルや、M&Aを成功させるための遂行能力やマネジメント能力など、多岐にわたるスキルが求められます。そのような人材を育てるのは難度が高く、また中途採用市場にも出てくることが少ないため、M&A人材を立てるのは容易なことではありません。そのため、M&A仲介会社などへの相談を検討してみることをおすすめします。
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