M&Aの価格算定方法とは?相場や買収価格決定方法を紹介

2024年8月19日

M&Aの価格算定方法とは?相場や買収価格決定方法を紹介

このページのまとめ

  • M&Aの価格算定には、企業価値の算出やデューデリジェンスの実施などが必要
  • 企業価値の算出方法は3種類あり、それぞれメリットとデメリットがある
  • 企業の規模によって、企業価値算出に用いる手法が異なる
  • 従業員・取引先・ノウハウなどの無形資産によって、価格が左右されることもある

M&Aを進めるにあたって、「価格算定はどのようにする?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。M&Aの価格を算定するには、まず企業価値の算出が必要です。

本記事では、M&Aの価格算定方法や、企業価値算出に用いる3つのアプローチを詳しく解説しています。M&Aの価格算定事例3選も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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M&Aにおける企業の価格算定の流れ

一般的に、M&Aにおける企業の価格算定は以下の流れで進められます。

  1. 企業価値の算出
  2. デューデリジェンスの実施
  3. 売買金額の決定

各手順で具体的にすることを説明します。

企業価値の算出

M&Aの価格算定では、まず企業価値を算出しなければなりません。具体的には、売り手企業は自社の価値を、買い手企業は相手企業の価値をそれぞれ算出します。
企業価値は「事業価値」「株主価値」などと混同されやすいため、以下の表でそれぞれの意味を明確にしておきましょう。

概念意味
企業価値企業のトータルの経済的価値。「株式価値(時価総額)+負債価値(有利子負債)」もしくは「事業価値 + 非事業価値」の合計
事業価値企業が営む事業そのもの、そして事業用資産の経済的価値
株主価値企業価値の中で株主に帰属する経済的価値。「 企業価値 – 債権者へ 帰属する価値」で表される

事業価値 (Enterprise Value=EV)は、企業価値から非事業価値を取り除いた部分です。企業は、事業に関係した資産だけでなく、投資信託・投資株式・生命保険・余剰資金など、事業には関係ない資産も保有しているのが一般的です。M&Aなどの際に登場する「のれん」も事業価値に含まれます。のれんとは買収した企業の純資産よりも、M&Aにおける支払額が上回った部分です。

株主価値(Shareholder’s Value=SV)は、企業価値の中で株主の取り分に該当する部分です。企業の財産から負債を払い終え、株主に還元されるべき価値を指します。

これらの事業価値と株主価値を合計したものが、企業価値です。

企業価値の評価方法には「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」「コストアプローチ」がありますが、これは後ほど詳しくご紹介します。

企業価値は自社のみで算出することも不可能ではありませんが、客観的な数値となるよう、税理士やM&Aの専門業者などの第三者に評価してもらうケースが少なくありません。 

デューデリジェンスの実施

企業価値を算出したら、一般的に買い手側がデューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとは、M&A対象会社の価値やリスクなどを各専門家が調査することです。

デューデリジェンスには、法務DD・財務DD・税務DD・事業DDなどがあります。デューデリジェンスの結果次第では、算出した企業価値が減額されることもあるでしょう。

売買金額の決定

算出した企業価値だけでなく、デューデリジェンスや交渉の結果も踏まえて、売買金額を決定します。売買金額は、最終契約を締結するタイミングで確定することが一般的です。

売り手側はできるだけ高く売却すること、買い手側はできるだけ安い価格で購入することを望むでしょう。そのため、両者にとっていかに価格交渉を進めていくかが重要です。売り手が相場より高く売却するコツ、買い手が相場より安く買収するコツは、後ほど解説します。

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M&Aにおける企業価値の算出方法

企業価値を算出する際の方法として、インカムアプローチ・マーケットアプローチ・コストアプローチがあります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを以下の表にまとめました。

インカムアプローチマーケットアプローチコストアプローチ
特徴企業の将来的な現金のフローを主軸とする類似する上場企業の情報などを基にする企業の純資産を主軸とする
メリット・将来性を盛り込める
・シナジー効果(相乗効果)を考慮できる
・不動産売買などにも活用できる
・客観的な評価を期待できる 
・情報を入手しやすい
・客観的な評価を下しやすい
デメリット・主観的な判断が入りやすい
・将来のリスクを反映させにくい
・会社の解散清算が決まっているケースなどでは利用できない 
・フリーキャッシュフローがマイナスだと利用できない
・計算が複雑
・類似する業者や取引が存在しないと使えない
・非上場企業では使えない可能性がある 
・インカムアプローチと比べると企業の将来性を反映しにくい
・帳簿が適正に作成されていないと、正確な企業価値の反映が困難
・企業の将来性を反映できない

ここから、各手法の違いについて詳しく解説します。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、企業の将来的なキャッシュフローや収益を主軸に企業価値を算出する方法を指します。

将来性を考慮して企業価値を算出できる点や、M&Aにおけるシナジー効果を考慮できる点が、インカムアプローチを用いるメリットです。一方で、計算が複雑な点や算出する人の主観に左右される可能性がある点がデメリットとして挙げられます。

インカムアプローチの主な手法は、DCF法と収益還元法です。それぞれの特徴を簡単に比較しました。

インカムアプローチDCF法収益還元法
特徴企業の将来のキャッシュフローを予測した上で、現在の価値に置き換える毎年同等の収入を得られると仮定した場合の収益を、現在の価値に置き換える
メリット事業の特殊性を加味できるDCF法より計算が簡単
デメリット手間がかかるDCF法より精度が劣る

それぞれ確認していきましょう。

DCF法

DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)は、1980年代から使われ始めた手法です。

企業の将来のキャッシュフロー( 企業が自由に使えるお金)を予測した上で、現在の価値に置き換えて、企業価値を算出します。事業の特殊性が加味できる点が大きな特徴です。高い成長性が期待できるベンチャー企業、あるいは大手企業・上場企業などのM&A にも用いられるケースが少なくありません。

DCF法の具体的な計算手順は以下の通りです。

  1. 各会計年度のフリーキャッシュフローを算出する
  2. 割引率を求める。WACC(加重平均資本コスト)の利用が一般的
  3. 「各会計年度のフリーキャッシュフロー÷割引率」で企業価値を算出する 

フリーキャッシュフローは、簡易的な計算(営業キャッシュフロー + 投資キャッシュフロー)でも算出可能ですが、DCF法の計算には利用できないため注意してください。 

収益還元法

収益還元法では、毎年同等の収入と仮定した場合の収益を、現在の価値に置き換える(割り戻す)ことで企業価値を算出します。DCF法より精度は落ちますが、計算が簡単な点がメリットです。

収益還元法の具体的な計算手順は以下の通りです。

  1. 平均収益を求める 
  2. 資本還元率を求める
  3. 平均収益÷資本還元率で企業価値を算出する

収益還元法は利益を年度毎に予測しないため、業績の変化が生じやすいケースには不向きです。つまり、平均収益が安定しない企業の場合、正しい企業価値の算定が期待できない可能性があります。 

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、市場取引を参考にして企業価値を算出する方法を指します。

株価や他社の財務諸表を利用するため、客観的な評価をしやすい点がメリットです。また、上場会社の財務データは公開されているため、情報を入手しやすい点もメリットとして挙げられます。

一方で、比較する業者や取引がなければ使うことが困難な点がデメリットです。また、非上場企業には使えないことがある点もデメリットとして挙げられます。

マーケットアプローチの具体的な手法は、市場株価法や類似上場会社法などです。

マーケットアプローチ市場株価法類似上場会社法
特徴自社の一定期間の株価の平均値を割り出し、価値を評価する特徴が似ている企業の売上や営業利益などを参考に、価値を評価する
メリット短期的な市場の影響を受けにくい非上場企業も利用できる
デメリット上場企業にしか適用できない参考にできる企業が見つからなければ適用できない

ここから、それぞれのやり方について詳しく解説します。

市場株価法

市場株価法は、株式市場の株価を参考に、自社の企業価値を評価する方法です。一定期間の株価からその平均値を割り出します。

市場株価法の具体的な計算手順は以下の通りです。

  1. 一定期間における株価の終値×出来高株数の加重平均を求める
  2. 一定期間における取引株数(出来高)の加重平均を求める
  3. 「一定期間における株価の終値×出来高株数の加重平均」を「​​一定期間における取引株数(出来高)の加重平均」で割る

市場株価法は、市場評価のない非上場企業で用いることはできません。また、上場企業でも流動性が高くない(取引が少ない)ケースでは使えませんので、注意してください。 

類似上場会社法

類似上場会社法とは、特徴が似ている企業の売り上げや営業利益などを参考に、自社の価値を算定していく方法です。非上場企業も利用することができます。一方、自社の独自色が強いなど、参考にできる適切な類似企業がない場合は、使うことができません。

類似上場会社法の具体的な計算手順は以下の通りです。

  1. 類似した会社の株式時価の総額を求める
  2. 類似した会社の株式時価を、売上・営業利益・EBITDA倍率などの任意の指標で割って、係数を算出する
  3. 評価したい企業の任意の指標に、係数を掛け合わせて、企業価値を算出する

類似上場会社法の算出において用いられる指標の1つに 「EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)倍率」があります。EBITDA倍率には目的に応じた様々な算定方法がありますが、よく用いられるのは「営業利益+減価償却費」で算定する方法です。

コストアプローチ

コストアプローチ(ネットアセットアプローチ)とは、自社の現在の純資産を元に、企業価値を算出する方法を指します。

自社の財務データを参考にするため、客観的な評価を期待できる点がメリットです。一方で、帳簿が適正に作成されていない場合は適切な評価が困難なこと、将来性を反映しにくいことなどがデメリットとして挙げられます。

コストアプローチの具体的な手法は、簿価純資産法や時価純資産法などです。

コストアプローチ簿価純資産法時価純資産法
特徴帳簿を確認して会社の全資産-負債で価値を算定する簿価純資産法を用いる際に、全資産と負債を時価に修正して算定する
メリット評価しやすい簿価純資産法と比べると、実態に近づけやすい
デメリット実態を反映できない場合がある評価には一定の作業が必要

ここから、それぞれの計算方法について解説します。

簿価純資産法

簿価純資産法とは、帳簿資産の足し合わせたものを企業価値として算出します。

簿価純資産法の具体的な計算手順は以下の通りです。

  • 会社の全資産と負債を確認する
  • 会社の全資産-負債で企業価値を算出する 

現金資産のみの中小企業価値の算出に利用される場合がある一方、正確な資産価値を帳簿上の数値が反映しているとは限らず、スタンダードとは言えない手法です。

時価純資産法

時価純資産法は、簿価純資産法と同じ算定方法です。ただし、計算の際は、算定に必要な全資産と負債を時価に修正することが必要です。中小企業の中でも時価変動が大きな資産を保有するケースで用いられることが少なくありません。

時価純資産法の具体的な計算方法は以下の通りです。 

  • 会社の全資産と負債を時価に修正する 
  • 会社の全資産-負債で企業価値を算出する。

時価による評価が可能なため、M&A においては簿価純資産法よりも適正な金額を導くことが期待できるでしょう。

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会社規模に応じた算定方法の違い

同じ企業でも、どのアプローチを用いるかによって価格が大きく異なることがあります。そのため、会社規模や成長フェーズなどに応じて算定方法を使い分けることが一般的です。

以下に、会社規模と対応する企業価値算定方法をまとめました。

規模(対象会社の資本金目安)企業価値算定の主な手法
ベンチャー企業・スタートアップ(数百万円〜数千万円)・DCF法を中心とするインカムアプローチ
大企業(5億円以上)・DCF法
・類似上場会社法
中小企業(数千万円〜数億円)・類似上場会社法
・年買法

たとえば、ベンチャー企業やスタートアップなどでは、一般的にインカムアプローチ(DCF法など)を用います。設立したばかりの頃は資産が少ないため、コストアプローチを用いると企業価値が低く算定されるでしょう。

一方、大企業はDCF法や類似上場会社法などを用いることが一般的です。また、中小企業はマーケットアプローチの類似上場会社法やコストアプローチの時価純資産法を応用した年買法などの手法などを用います。中小企業の算定については、後ほど詳しく解説します。

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M&Aにおける中小企業の売買価格の相場

M&Aにおける企業の譲渡価格には、絶対的な相場は存在しません。企業の規模・業態・業績に応じて売買価格は大きく変化しますので、価格の決定は交渉次第と言えるでしょう。売り手企業と買い手企業は交渉を重ね、互いの希望額をすり合わせていくことになります。 

ただし、中小企業庁による「経営者のための事業承継マニュアル」では、中小企業のM&Aで一般的に用いられる評価として、時価純資産にのれん代(年間利益に一定年数分を乗じたもの)を加味した評価方法を紹介しており、これが交渉時における1つの相場と考えることもできます。これは「年買法(年倍法)」と呼ばれる企業価値の算出方法であり、具体的な計算例は以下の通りです。

年買法(年倍法)の計算例

「時価純資産3,000万円、年間営業利益1,200万円(3年分)」の企業のM&Aにおける価格相場 
3,000万円+(1,200万円×3年分)= 6,600万円
M&Aにおける価格相場 =  6,600万円

参照元:中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル

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M&Aにおける企業の売買価格の決定方法

M&Aにおける企業の売買金額の決定方法は、以下2つに大別できます。

  • 個別交渉による価格決定
  • 入札方式による価格決定

価格交渉は買い手と売り手が個別に交渉し、契約を交わすことで売買金額が決定します。一方、オークションは複数の買収希望業者による入札で売買金額が決定されます。

最後に、M&Aにおける企業の売買価格の決定方法について詳しく見ていきましょう。 

個別交渉による価格決定

会社買収の価格交渉は、個別交渉が一般的です。

個別交渉の具体的な流れは、まず企業の価格算定を基本合意書締結前に行い、M&A取引の基準価格とします。基本合意書締結後、デューディリジェンスを実施し、結果次第で価格が増減します。最終契約書締結前に、デューディリジェンスの結果に基づいた価格交渉(最終交渉)が実施され、最終的な取引価格が決定する流れです。 

取引価格に対して当事者同士が納得すれば、半年程度とスピーディーなM&A成立が期待できる点がメリットです。一方、最終価格の調整が難航すると、交渉に1年以上の歳月がかかる可能性があります。契約しているM&Aコンサルティング会社が月額制の場合、M&Aが長期化するほど費用負担が増大する点もデメリットと言えるでしょう。 

入札方式による価格決定

オークション方式は、売却対象に複数の買収希望企業がある場合に使用される方法です。オークション方式では、通常、M&A取引額が高くなる傾向が見られることから、買収企業にとっては不利な方法と言えるでしょう。

ただし、現在ではオークション方式が採用されることはあまりありません。売り手側が複数の買い手候補と交渉しなければならず、交渉力のあるM&A専門家と長期間にわたる契約を締結する必要があるためです。さらに、会社売却が完了するまでに売り手側が多くの費用を負担する必要があるため、オークション方式があまり採用されなくなったと推測されます。

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会社の価格算定に影響を与える資産

M&A対象となる会社の資産の種類が価格算定に影響を与えることもあります。価格を左右しやすい主な資産とそのポイントは、以下のとおりです。

  • 従業員(スキル・賃金水準など)
  • 主要取引先(規模など)
  • 商材リスト(見込みのある顧客一覧が掲載されたリストなど)
  • 技術・ノウハウ(特許の有無など)
  • ブランド力(特定の層に浸透しているなど)
  • 市場シェア(確かな需要を期待できるなど)
  • 許認可(飲食店営業・美容業など)

とくに、競合他社にはない無形資産がある場合に、価格が高く算定されることがあります。

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M&Aの価格算定事例3選

M&Aの価格算定基準が公開されている事例として、以下が挙げられます。

  • ZホールディングスとZOZO
  • ニトリホールディングスと島忠
  • 博報堂DYホールディングスとソウルドアウト

各M&Aにおける価格算定について、詳しく説明します。

ZホールディングスとZOZO

2019年9月、ヤフー株式会社(以下、ヤフー*現LINEヤフー株式会社)が株式会社ZOZO(以下、ZOZO)の株式の公開買付けを始めました。あわせて、両社で資本業務提携契約も締結しています。

公開買付けにあたって、ヤフーは独立した第三者算定機関に株式価値算定を依頼しました。株式価値算定書によると、ZOZOの1株あたり株式価値の範囲は以下のとおりです。

  • 市場株価基準法:1,993 円〜2,166 円
  • 類似企業比較法:2,392 円〜3,037 円
  • DCF法:2,333 円〜3,077 円

最終的に、本公開買付価格は1株2,620円で実施されました。

参照元:株式会社ZOZO「ヤフー株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ

ニトリホールディングスと島忠

2020年10月、株式会社ニトリホールディングス(以下、ニトリHD)が株式会社島忠(以下、島忠)に対して経営統合を提案し、公開買付けを実施することを発表しました。

公開買付けにあたって、ニトリHDは独立した第三者算定機関に株式価値算定を依頼しています。株式価値算定書に基づく、島忠の1株あたりの株式価値の範囲は、以下のとおりです。

  • 市場株価法①:2,849 円~2,945 円
  • 市場株価法②:3,157 円~4,890 円
  • 類似会社比較法:2,239 円~4,114 円
  • DCF法:2,964 円~5,763 円

最終的に、本公開買付価格は1株あたり5,500円と決まりました。

参照元:株式会社ニトリホールディングス「「株式会社島忠(証券コード:8184)の株券等に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」及び「株式会社島忠への公開買付けを通じた経営統合及び完全子会社化のご提案に関する説明資料」についてのご案内

博報堂DYホールディングスとソウルドアウト

2022年9月、博報堂DYホールディングスがソウルドアウト株式会社(以下、ソウルドアウト)の普通株式・新株予約権のすべてを取得して完全子会社とするための取引の一環として、公開買付けを実施することを発表しました。

公開買付けに伴い、独立した第三者算定機関が発行した株式価値算定書によると、ソウルドアウトの1株あたりの株式価値の範囲は、以下のとおりです。

  • 市場株価基準法:885円〜1,390円
  • 類似企業比較法:570円〜1,789円
  • DCF法:1,263円〜1,592円

なお、最終的に本公開買付価格は、1,809円と決まりました。

参照元:株式会社博報堂DYホールディングス(日経会社情報DIGITAL掲載)「ソウルドアウト株式会社株券等(証券コード6553)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ

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売り手が相場以上の価格で売却するコツ

売り手がM&Aにおいて、相場以上の価格で売却するコツは以下のとおりです。

  • 強みをアピールする
  • 自社の良さを理解する相手と交渉する

それぞれ解説します。

強みをアピールする

売り手が自社の強みをアピールし、シナジー効果につながる可能性があることを伝えることも、相場以上の価格で売却するコツのひとつです。

うまく資料にまとめて競合他社にはない無形資産があることなどを買い手に伝えれば、算定価格の向上を期待できます。たとえば、自社にブランド力があることをアピールすれば、相手が売上シナジーを見込んで提示する買収価格を上げる可能性があるでしょう。

また、自社の強みをアピールしやすいタイミングを狙って、M&Aの交渉を始めることもポイントです。たとえば、売上・利益などの業績が良いときであれば、売却価格も高くなる可能性があります。

自社の良さを理解する相手と交渉する

交渉に入る前の候補先探しの段階で、自社の良さを理解する相手を見つけることも大切です。自社の良さを理解している会社であれば、シナジー効果を期待できると判断して高価格でM&Aを提案する可能性があるでしょう。自社をアピールしやすい会社を見つけるには、候補先にどのようなニーズがあるのかをあらかじめチェックしておくことがポイントです。

また、候補先探しにM&A仲介会社を利用することもポイントとして挙げられます。M&A仲介会社は買い手側の情報を多数保有しているため、自社を高く売却できる相手を見つけやすい。

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買い手側が相場より好条件で買収するコツ

買い手側が相場より好条件で買収するコツは、デューデリジェンスの実施を徹底することです。

交渉により、デューデリジェンスで見つかった事象を原因として、価格を減額できる可能性があります。たとえば、財務デューデリジェンスを実施して簿外債務が見つかり、リスクを自社で許容できる場合は、価格引き下げについて交渉の余地があるでしょう。

ただし、価格を下げようとして無理な交渉をすることは禁物です。強引な交渉を進めると、M&A自体が破談になったり、売り手側の従業員に広まりM&A実施後の統合作業がうまく進まなかったりする可能性があります。

なお、価格が高い場合、リスクがある場合などは、思い切ってM&Aを断念することも大切です。

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まとめ

M&Aの価格算定は、企業価値の算出・デューデリジェンスの実施・売買金額の決定の流れで進められます。

企業価値の算出に用いられるのは、インカムアプローチ・マーケットアプローチ・コストアプローチの3つです。企業の規模などによって、用いられる手法が異なります。

また、価格は交渉に左右される点もポイントです。売り手が相場以上の価格で売却するコツとして、自社の良さを理解する相手と交渉することが挙げられます。

自社の良さをわかってくれる相手を探す方法のひとつが、M&A仲介会社に依頼することです。M&A仲介会社には、買い手側の情報もあるため、自社に適した相手を見つけられる可能性があります。

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、各領域の専門性に長けたコンサルタントが在籍するM&A仲介会社です。デューデリジェンスにも対応しており、M&Aのご成約まで一貫したサポートを提供しています。

M&Aの価格算定や候補探しなどで悩んでいる方は、ぜひご相談ください。