会社の相続方法を解説!自社株式の相続税の節税対策や相続放棄する場合は?

2023年7月12日

会社の相続方法を解説!自社株式の相続税の節税対策や相続放棄する場合は?

このページのまとめ

  • 会社相続は「株式の相続」を意味しており、会社の財産は相続対象にならない
  • 株主相続には、自社株の取得・株式名義変更・株式総会での決議などが必要
  • 株式評価額を下げたり、事業承継税制の利用で相続税を抑えたりできる
  • 「経営権が得られない」「負債まで相続する」などのトラブルに注意する 
  • 遺言書作成や生前贈与などで、会社相続を円滑に進めることが期待できる

経営者が亡くなり、子供などが会社を受け継ぐ「会社相続」。会社相続にはいくつかのステップがあるほか、相続税についての知識も必要です。 

この記事では、会社相続の概要や流れ、相続税対策についてご紹介します。トラブル事例や会社相続を円滑に進めるためのポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてください。

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会社の相続とは

親などの親族が会社を経営しており、その人物が亡くなった場合、株式などの資産を相続しなければなりません。
会社の相続の仕組みは、相続の対象が法人か個人事業かによって大きく異なります。

法人を相続する場合

法人の場合、相続されるのは株式であり、財産そのもの自体は相続の対象になりません。法人の財産は、経営者など個人ではなく法人に帰属するためです。これに対し、個人事業の場合、会社の資産全体が相続され、相続人が複数いる場合は財産分割の対象となります。

株式会社や合同会社などの法人は、経営者の個人的な所有物ではなく、法人格のある実体として扱われます。つまり、経営者が亡くなっても法人は存続するわけです。そのため、法人の相続は、経営者が保有していた株式の相続によって行われます。株式を相続することで、議決権や配当権などを得られ、議決権を多く持てば会社の経営権を握ることも可能です。

個人事業を相続する場合

一方、個人事業は、個人が自ら事業を行う事業形態です。個人事業では、事業に関する資産は事業主の所有物とされます。したがって、事業主が亡くなった場合、事業に関連する資産自体が相続の対象となるのです。例えば、店舗や商品在庫、債権や債務などが挙げられます。個人事業を相続する場合は、まずこれらの資産を遺産分割協議によって分け合います。その後、前経営者の廃業届を提出し、後継者が開業届を出すことで相続手続きが完了する流れです。

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会社(法人)を相続する際の流れ

株式会社や有限会社などの法人を相続する主な流れは、以下の4ステップです。

  1. 自社株(経営権)の取得
  2. 株式の名義の変更
  3. 株主総会での代表取締役の地位の取得
  4. 金融機関等での代表者変更の手続き

1.自社株(経営権)の取得

自社株の相続では、会社の経営権を確保することが重要です。会社の経営権とは、役員を選任したり、定款を変更したりするなどの権限を意味します。

会社の経営権を得るためには、少なくとも過半数の議決権を持つ必要があります。できれば特別決議を単独で可決できる3分の2以上の議決権を取得することが望ましいでしょう。経営者以外の者が多くの議決権を持つと、会社の経営方針に反対したり、経営者を解任したりと、経営者が思うように経営できなくなるような行為をされる可能性があるためです。

最後に、自社株の相続にあたっては、遺産分割協議で事業を引き継ぐ者が発行株式の議決権の過半数以上を保有できるよう調整する必要があります。複数の相続人が共同で経営する場合は、役割分担や意思決定方法などを明確にすることが大切です。

2.株式の名義の変更

株式の名義変更とは、株式の所有者が変わることを株主名簿に反映させる手続きのことです。株式の名義変更は、相続や贈与などで株式を引き継ぐ場合に必要です。株式を取得しても、名義を変更しなければ株主としての権利は発生しません。

株式の名義変更の方法は、上場株式と非上場株式によって異なるため、注意が必要です。上場株式の名義変更は証券会社を通じて行いますが、非上場株式の名義変更は発行会社に直接申し出て行います。具体的な手続き方法は発行会社によって異なるので、事前に確認してください。

3.株主総会での代表取締役の地位の取得

会社相続の際には、株式を相続するだけではなく、代表取締役の役職に就任するためのステップを踏まなければなりません。そのためには、株主総会の決議を経て、代表取締役の地位を取得する必要があります。

代表取締役の地位の取得とは、株主総会で株主の多数決によって自分が代表取締役に選任されることです。これによって、会社の経営方針や重要な契約などを決める権限が与えられます。また、会社の財産や債務に対しても責任を負うことになります。

株主総会に際しては、開催日や場所、議題などを事前に株主に通知しなければなりません。なお、後継者が全ての株を保有する小規模企業などの場合は、簡略的な株主総会による「みなし決議」も可能です。

4.金融機関等での代表者変更の手続き

会社相続の最後のステップは、金融機関等での代表者変更の手続きです。法人名義の銀行口座の代表者を変更するためには、金融機関での手続きが必要となります。

また、許認可が必要な事業であれば、許認可の代表の変更手続きも行わなければなりません。事業の妨げとならないよう、これらの手続きはできるだけ早く済ませることが望ましいです。

取引先に代表取締役が変わったことを通知し、主要な取引先なら直接出向いて挨拶するケースも少なくありません。これらの手続き等は、代表取締役に就任してから徐々に行っていくことになります。

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会社の株式の相続税を抑える税金対策

会社の株式を相続する際、大きな問題となるのが相続税です。会社の規模や引き継ぐ株数によっては多額の相続税が発生する可能性があります。相続税を抑えるために以下のような方法がありますので、利用を検討すると良いでしょう。 

  • 事業承継税制を利用する
  • 株式の評価額を下げる

事業承継税制を利用する

事業承継税制は、相続税や贈与税を猶予することができる制度です。この制度には法人版と個人事業版の2種類が用意されており、どちらの事業承継にも活用できます。 
特定の要件を満たす経営者が対象となり、後継者からさらに3代目にまで事業承継が行われた場合に、猶予されていた税額が免除されます。

事業承継税制を利用して、後継者が中小企業の株式を相続や生前贈与で引き継いだ場合、本来支払うべき相続税や贈与税の納税が猶予されます。そして、国から認可を受けて条件を満たした場合、最終的に贈与税・相続税の支払いが100%免除される仕組みです。2018年度の制度改正により、後継者の人数が1人から「最大3人」まで引き上げられた点も大きなメリットと言えるでしょう。

一方、要件が複雑な点はデメリットです。また、制度の対象から外れるなどして猶予が取り消される可能性がある点に注意してください。猶予が取り消された場合、利子も含めた相続税・贈与税を支払わなければなりません。自ら制度の利用をやめてしまった場合も同様です。

上記の特徴から、事業承継税制は「事業を3代続ける見通しがある程度立っている事業者」に向いている制度だと言えるでしょう。 

自社株の評価額を下げる

評価額とは、株式などの時価を意味します。非上場株式は上場企業の株式のような取引相場がありません。そのため、会社の規模に応じて適切な計算方法を選択し、評価額を算出します。

自社株の評価が高いと、相続税が多額となるのが一般的です。そのため、事業承継税制を利用しない場合は、可能な範囲で自社株の評価額を下げることが望ましいでしょう。 

株式の評価額を下げる方法は、以下の通りです。

  • 決算配当額を減少させる 
  • 先代の経営者へ退職金を払う
  • 分社化する
  • 土地や建物の購入 

例えば、「土地や建物の購入」は、原則的に小会社の評価方法である純資産価額を下げることに役立ちます。それ以外の方法は、原則的に中大会社の評価方法である類似業種比準価額を下げる際に有効です。 

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会社の相続に関するよくあるトラブル

会社の相続に際しては何らかのトラブルが発生する可能性もあります。よくあるトラブルは、主に以下の3つです。

  • 後継者が経営権を得られない
  • 会社の負債まで相続してしまう
  • 他の相続人とのトラブルが生じる

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

後継者が経営権を得られない

株式が複数人に相続されるケースでは、株式の散逸などが発生し、株式の集中が困難となる可能性が考えられます。場合によっては株式の過半数が確保できず、経営権が得られない可能性も否定できません。 

このようなトラブルに対しては、先代の経営者があらかじめ後継者を指名し、関係者に把握してもらうことが有効な対策です。

会社の負債まで相続してしまう

会社を引き継ぐ際に、個人保証や担保といった負債も相続の対象となる可能性がある点に注意が必要です。

例えば、金融機関からの融資に対して、先代の経営者が連帯保証人になっているケースもありますが、そのような債務も相続対象となり得ます。後継者が会社を順調に経営し、債務を返済できれば問題ありませんが、経営に失敗した場合などは、相続人である後継者が責任を負わなければなりません。

相続の際に債務の状況をきちんと整理しておくことが重要です。場合によっては相続放棄を視野に入れることも検討しましょう。

他の相続人とのトラブルが生じる

株式の相続人が複数いて、特定の1人に株式を集中することが難しい場合、従業員や取引先の信頼を失って経営危機に発展したり、親族間の紛争に至ったりする可能性もあります。他の相続人に対する配慮を欠かさず、不満が出ないように心がけてください。

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会社の相続を円滑に進めるための対策

会社の円滑な相続のためには、経営者が存命中のうちに必要な準備を行うことが重要です。 具体的な準備・対策として、以下のようなものが挙げられます。

  • 現経営者が遺言書を作成する
  • 生前贈与で株式を引き継ぐ
  • 家族信託で後継者を指定する
  • 経営承継円滑化法を活用する

それぞれについて、以下にて詳しく解説します。

現経営者が遺言書を作成する

会社の経営を後継者に引き継ぐためのポイントの1つとして、遺言書の作成が挙げられます。遺言書を作成することで、先代経営者の意向を明確にし、十分な自社株が後継者に相続されるようにしつつ、遺産分割の争いを回避する効果も期待できます。

特に、他の相続人の遺留分(最低限の相続分)を下回らず、不満が噴出しないよう配慮することが大切です。

また、自社株については除外合意(相続人が、自社株を遺留分から除外することの合意)を取っておくことも、トラブル防止のために有効です。 

生前贈与で株式を引き継ぐ

後継者へ確実に自社株(経営権)を与えたい場合には、生前贈与が有効です。生前贈与なら、経営者の死後に親族間で遺産争いが発生する恐れがなくなります。また、後継者が経営者と共に経営に参加する機会が得られる点もメリットといえるでしょう。

ただし、相続税と比較して贈与税の方が控除額が少なくなる点には注意してください。条件を満たす場合は、前述したした事業承継税制の活用を検討すると良いでしょう。 

家族信託で後継者を指定する

家族信託とは、後見人制度を発展させたような制度です。

家族信託を利用すると、 財産管理処分を親族(後継者)に任せることができ、経営者が利益を受け取ることができます。経営者が亡くなった後は、財産である自己株が親族(後継者)に渡る仕組みです。 

委託者と受益者が同じ人物(経営者)であれば、贈与税がかからない点が大きなメリットです。株式の生前贈与では贈与税がかかりますが、家族信託なら贈与税がかからずに経営権を親族(後継者)に与えられます。

また、親族(後継者)に経営権を与えた後で「やはり後継者にふさわしくない」と判断した場合、信託契約の解除が可能です。遺言や贈与では簡単に事業承継をやめられませんので、この点もメリットと言えるでしょう。 

経営承継円滑化法を活用する

「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)は、中小企業の事業承継をトータルにサポートする法律です。具体的には、以下4点の支援措置が定められています。

1.税制支援(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)の前提となる認定

すでにご紹介した事業承継税制です。株式の贈与・相続を受けた後継者が要件を満たし、都道府県知事の認定を受けることで、贈与税・相続税の納税の猶予・免除が受けられます。

2.金融支援(中小企業信用保険法の特例、日本政策金融公庫法等の特例による金融支援措置)の前提となる認定

事業承継における資金融資の支援措置です。信用保証協会の保証の通常枠とは別の枠が提供されます。 

3.遺留分に関する民法の特例

相続人全員の合意や諸手続きによって、遺留分についての民法の特例が適用されます。

4.所在不明株主に関する会社法の特例

5年以上通知が届かず、剰余金の配当の受領がない所在不明の株主の保有株式を、競売もしくは売却できる特例です。 

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会社を相続する意思がない場合の選択肢

後継者として相続の対象になったものの、会社を相続する意思がない場合は、以下2つの方法について検討すると良いでしょう。

  • 相続放棄する
  • M&Aで会社を売却する

これら2つの方法には、それぞれメリット・デメリットがあるため、それを理解した上で検討してください。

相続放棄する

相続放棄とは、相続する権利のある資産・負債・権利・義務などの全てを放棄することを意味します。つまり、相続放棄を通じて株式を相続せず、会社を引き継がないことも可能です。 

企業や被相続人に多額の負債がある場合、あるいは株式以外の相続財産が存在しない場合などに、相続放棄を検討すると良いでしょう。
相続放棄をすれば、負債に対する返済義務が発生せず、遺産分割協議などでのトラブルに巻き込まれる心配もなくなります。

ただし、相続放棄をする場合、後継者は全ての権利・義務について相続しないことになるため、土地や建物だけ相続するということもできなくなってしまいます。相続放棄は原則的に撤回できないため、慎重に考慮した上で判断してください。

M&Aで会社を売却する

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、企業の合併・買収を意味します。例えば、「親族や従業員などにも後継者が見つからない」「会社を相続したもののやはり経営が難しい」といった場合には、M&Aを検討することになるでしょう。 

M&Aによる会社売却で得た資金は、生活資金とするほか新事業や投資などに活かせます。M&Aによる会社売却は廃業とは異なり、企業あるいは事業を残せる点も大きなメリットです。

第三者に対して企業を売却することになるため、M&Aでは買い手企業とのマッチングがカギを握ります。そのため、豊富な経験とノウハウを持ち、納得できるマッチングを実現してくれるM&Aコンサルティング会社のサポートを得ることが重要です。 

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まとめ

会社の相続とは、株式を相続することです。株式相続で経営権は継承できますが、法人の財産は法人自体に帰属するため、相続はできません。ただし、株式を相続しただけで経営権が継承されるわけではなく、株式名義変更、株式総会での承認、金融機関等における代表者変更手続きが必要です。会社相続を円滑に進めるためには、遺言書の作成・生前贈与・家族信託の他、経営承継円滑化法を活用する方法もあります。

会社相続の意志がない場合は、相続放棄やM&Aによる会社売却を検討すると良いでしょう。M&Aによる会社売却のシチュエーションとして、後継者がいない場合に経営者が生前に検討したり、相続後の会社経営に難しさを感じた後継者が検討したりすることが挙げられます。

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