このページのまとめ
- 近年の廃業率は減少傾向だったが、2023年には増加に転じた
- 株式会社の廃業では、関係者への通知や解散・清算結了の登記などが必要
- 廃業には、登記費用や専門家の報酬・設備の処分や原状回復のための費用がかかる
- 会社が事業を終了する場合には、廃業以外にもM&A・倒産・破産などの方法がある
会社の経営の見通しが立たず、廃業を検討している方もいるのではないでしょうか。廃業は、法人や会社が事業を終了する方法の一つであり、多くのステップを経なければなりません。かかる費用やメリット・デメリットを踏まえて、廃業がベストな方法であるかの検討も必要です。
本記事では、廃業手続きの流れやかかる費用の目安などを解説し、廃業以外の選択肢も紹介します。ぜひ参考にして、自社に適した方法を考えましょう。
目次
法人の廃業とは
法人の廃業とは、法的な手続きを行なったうえで、企業が自らの意思により事業の継続を終了することです。廃業した場合は、会社の従業員や取引先にも多大な影響を与えることになるでしょう。
ただし、廃業手続きを行わずに事業を停止した場合は休業扱いとなるため、廃業とはみなされません。廃業手続きには企業の解散と清算があり、企業の解散後に清算を行う流れです。企業の資産をすべて処分し終わった時点で、初めて廃業が認められます。
国内の会社の廃業率
帝国データバンクの「全国企業「休廃業・解散」動向調査(2023)」によると、2023年に発生した休業・廃業の件数は5万9,105件であり、前年に比べて約10%の増加となりました。2010年度以降続いた減少傾向が増加に転じた形です。
このうち、資産が負債を上回る状態で廃業した「資産超過型休廃業」は約60%で、なおかつ直前期の当期純利益が黒字であった企業は約16%でした。同様に、2023年の倒産件数も増加しています。
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
休廃業・解散件数 | 59,225件 | 56,103件 | 54,709件 | 53,426件 | 59,105件 |
倒産件数 | 8,354件 | 7,809件 | 6,015件 | 6,376件 | 8,497件 |
参照元:株式会社帝国データバンク「全国企業「休廃業・解散」動向調査(2023)」
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廃業が増えている背景
2023年に廃業が増加した背景には、コロナ禍の経営における手厚い支援が徐々に縮小されていることに加えて、電気やエネルギーなどをはじめとする物価高や人手不足、それに伴う人件費の増加などがあります。
こうした問題は深刻化しており、現時点では資産超過や黒字であっても先行きが不透明であるために、ダメージが少ないうちに事業をたたむ「前向きな廃業」を行う企業が多かったと考えられます。
廃業と倒産・解散・破産の違い
企業が事業を終了することに関する言葉には、廃業のほかに倒産・解散・破産があります。それぞれの意味は以下の通りです。
種類 | 特徴 | 会社の存続 |
廃業 | 企業が自ら事業の継続を終了すること。解散・清算を経ることで廃業したとみなされる。 | 存続しない |
倒産 | 債務を弁済できなくなり、事業の終了を余儀なくされること。 | 存続する場合(再建型)と存続しない場合の破産(清算型)がある |
解散 | 法的に会社を消滅させること。廃業手続きの一部。 | 存続しない |
破産 | 財産や事業の清算、債務の免除を受けるために裁判所に申し立てること。 倒産した場合の選択肢の一つ。 | 存続しない |
それぞれの意味と違いについて、さらに詳しく見ていきましょう。
倒産とは
倒産とは、資金繰りが困難になり、経営が立ち行かなくなった状態を指すことが一般的です。倒産した場合には、裁判所に申し立てることで整理を行う法的整理や、倒産会社と債権者の話し合いによって整理を進める私的整理などを行います。
それぞれ、事業を継続して債務の弁済を継続する再建型と、会社を消滅させる清算型があります。倒産は廃業とは異なり、事業者の意志にかかわらず事業を停止しなければなりません。
解散とは
解散とは、法的に会社の事業を停止して消滅させることであり、廃業に必要な手続きの一つです。理由もなく解散することはできず、会社法によって認められる事由が定められています。
主な事由には、株主総会で解散の決議がされている、破産手続きの開始が決定されているなどがあります。解散を決めたら、法務局にて解散登記をしなければなりません。
破産とは
破産とは、倒産状態にある会社が裁判所の関与のもとで、財産を債権者に配当し清算する手続きです。
倒産会社自らが申し立てる自己破産のほか、倒産会社の役員の申し立てによる準自己破産、債権者などの第三者が申し立てる第三者破産があります。申し立て後は破産法に基づき、債権者の優先順位と債権額に応じて公平な配当が行われます。
法人が廃業するタイミング
法人が廃業手続きを検討するタイミングは以下のとおりです。
- 債務超過に陥ったとき
- 現経営者による事業が存続困難となったとき
- 運転資金が尽きたとき
それぞれのタイミングについて詳しく説明します。
1.債務超過に陥ったとき
債務超過に陥った場合は、廃業のタイミングと言えるでしょう。債務超過は資産よりも負債が上回り、いわゆる借金を抱えている状況を表します。経営状態が悪化し、債務が積み重なる状態に陥ってしまった場合は、事業を元の軌道に戻すことは大変困難です。
また、債務を抱え込んでしまった場合は、いずれにせよ廃業を迫られることにつながり、廃業後も債務を抱えてしまう可能性があるでしょう。負債が膨らまないうちに廃業を選択することも、大切な判断です。
2.現経営者による事業が存続困難となったとき
現経営者による事業が存続困難となった場合も、廃業を検討する機会です。経営者の高齢化などに加え、後継者が定まっていない場合は、事業を引き継いでいくのは困難と言えるでしょう。
3.運転資金が尽きたとき
運転資金が尽きてしまったとき、会社は廃業を検討します。会社を廃業するためには費用がかかります。運転資金以上に出資すると廃業にかかる費用が支払えなくなり、経営者自身の生活が困難に陥ります。そのため、運転資金が尽きたタイミングで見切りをつけて廃業することで負債の増額を防ぎ、金銭面での負荷を最低限に抑えることが可能です。
株式会社の廃業手続き
廃業を行うのが株式会社であった場合は、株主への対応に追われることになるため手続きの工程が多く複雑になる傾向にあります。ここで解説する一連の流れを頭に入れておくことで、実際の手続きがスムーズになるでしょう。株式会社の廃業を検討している方は、参考にしてみてください。
- 営業終了日を決める
- 顧客や取引先、従業員などに廃業を伝える
- 株主総会の解散決議と清算人選任を行う
- 法務局で解散登記と清算人選任登記を行う
- 官報での公告または書面による個別通知を行う
- 解散時の決算書類を作成する
- 解散確定申告をする
- 資産と負債を清算する
- 残余財産を株主に分配する
- 決算報告書の承認手続きを行う
- 法務局で清算結了登記の手続きを行う
それぞれのステップごとに詳しく説明していきます。
1.営業終了日を決める
初めに、廃業する会社の営業終了日を決めます。在庫をある程度処分できる目処がついたときなどタイミングは自由ですが、取引先に迷惑がかからないよう配慮することも重要です。
2.顧客や取引先、従業員などに廃業を伝える
顧客や取引先、従業員など事業に関わっている人に廃業を通知しましょう。会社の廃業が決まった時点で、早めに通知することが大切です。
従業員には書面で伝える以外に直接口頭で通知することも可能ですが、顧客や取引先などには挨拶状で廃業の旨を通知する方法がより丁寧です。
3.株主総会の解散決議と清算人選任を行う
廃業の前段階である株式会社の解散にあたり、株主総会の特別議決が必要です。議決権をもつ株主の3分の2以上から承認を受けなければなりません。また解散決議を行うと同時に、資産の清算時に必要な清算人を選任しておきましょう。
4.法務局で解散登記と清算人選任登記を行う
法務局で、解散登記と解散決議で選任した清算人の選任登記を行います。登記の期限は会社が解散した日から2週間以内となっているため、解散決議が終わったら早めに登記を行いましょう。また、税務署への解散の届出も必要です。
5.官報での公告または書面による個別通知を行う
官報での公告、または書面による個別通知で、廃業の旨を周知しておきましょう。官報での公告は2か月以上継続して行う必要があります。
個別通知は個人の判断で行うかどうか決められますが、できれば個別通知も併せて行うのが望ましいでしょう。
6.解散時の決算書類を作成する
解散時に必要となる決算書類を作成しておきましょう。決算書類は貸借対照表と財産目録の2つで、解散後の清算手続きで必要です。
決算書類の作成ができたら、再度株主総会を行なって賛同を得なければなりません。
7.解散確定申告をする
決算書類の承認が完了したら、解散確定申告を行います。解散確定申告は通常の確定申告と記載方法などが異なるため、自分で作成することが難しい場合は専門家に任せましょう。
また、解散確定申告が終了した段階で、法人の解散が完了します。
8.資産と負債を清算する
株主総会で選任された清算人が、会社の資産と負債を清算します。売掛金などの債権の回収や未払金などの債務の弁済を行い、会社の廃業時点での資産を明確にすることが目的です。
9.残余財産を株主に分配する
すべての清算が終わった時点で会社の資産が余った場合は、残余財産として株主に分配することが可能です。逆に負債が残ってしまった場合は、裁判所で特別清算や破産手続きを行うことになるでしょう。
10.決算報告書の承認手続きを行う
会社の法人格を消滅させるためには、決算報告書の承認手続きを行わなければなりません。再度株主総会を開催し、決算報告書の承認を得ましょう。株主の過半数の承認が得られて初めて、会社の法人格が消滅します。
11.法務局で清算結了登記の手続きを行う
法務局で清算結了登記の手続きを行いましょう。登記を完了させるまでの期日は、株主総会で決算報告書の承認が得られてから2週間以内となっています。
承認が得られ次第、速やかに登記の手続きを行なってください。この手続きの完了をもって、登記上でも会社が消滅します。
株式会社以外の廃業手続き
株式会社以外の廃業手続きの場合も、流れ自体はあまり変わりません。ただし、要件が異なる場合もあるため、内容をよく理解しておく必要があるでしょう。以下では、株式会社以外の廃業手続きについて解説します。
有限会社の場合
有限会社の場合は株式会社と異なる点が多いため、廃業手続きを行う場合は有限会社の特性を知っておくことが大切です。以下では、特に注意すべき点を3つ紹介します。
- 特別決議の要件が違う
- 清算人会を設置できない
- 登記事項がやや異なる
それぞれの注意点について詳しく解説します。
特別決議の要件が違う
有限会社が株主総会で特別決議を行う場合、株式会社よりも可決要件が厳しくなります。また、有限会社の特別決議では議決権をもつ株主が半数以上参加することに加え、4分の3以上の賛同を得なければなりません。
株式会社では3分の2以上の賛成で可決となるため、有限会社のほうが決議で承認を得られにくいことがわかります。
清算人会を設置できない
清算人会を設置できないことも、株式会社と異なる点です。清算人会とは、会社の清算にかかわる業務を取り締まる機関のことで、設置することで清算が不正なく行われるよう監督できるメリットがあります。
株式会社では株主総会の解散決議の際に、任意で清算人会を設置できますが、有限会社の場合は清算人会を設置できません。
登記事項がやや異なる
有限会社は、登記の際にも株式会社と異なる特性をもっています。有限会社の場合は清算人が会社を代表することから氏名と住所を登記しますが、単独で登記した場合は代表清算人とはなりません。
会社を代表しない者を置いて初めて代表清算人の名が登記されるため、株式会社のように常に代表清算人と清算人の組み合わせで登記が行われるわけではありません。
合同会社の場合
合同会社を廃業する場合には、以下の理由で解散することが可能です。
- 総従業員の同意
- 従業員が欠けた
- 合併により会社が消滅する
- 定款で定められた期間が満了した
- 裁判によって解散を命じられた
- 破産が決定した
株式会社の場合、議決権のある株主の3分の2以上の賛成による特別決議で解散が承認されますが、合同会社では総従業員の同意が必要です。
一見困難にも捉えられますが、逆に総従業員の同意さえ得られればどのような理由であれ、解散が可能と言えるでしょう。
休眠会社の場合
休眠会社とは、最後の登記から12年経過している会社を指します。休眠会社の場合は、独自の制度として「みなし解散」が適用される場合もあるため、注意が必要です。
12年間事業活動が認められない会社には、法務大臣から廃業していない旨の届出を2か月以内に事業所管轄の登記所に出すよう通知が送られます。この通知を無視して届出を行わなかった場合は廃業したとみなされ、「みなし解散」となる流れです。
一人会社の場合
1人で経営している会社を廃業する場合でも、通常の廃業手続きはほぼ同じです。廃業手続きの大まかな流れは、次の通りです。
- 事業終了日を決める
- 取引先などに廃業の旨を通知する
- 廃業手続きに必要な書類の提出
- 資産・負債の整理
ただし、個人事業主の場合は株主総会での承認や登記などが必要なく、通知する範囲も限られているため、比較的手続きが簡単と言えるでしょう。
会社を廃業する際に必要な準備
会社の廃業手続きを行う前には、廃業の必要性を見直したうえで手続きを円滑に進めるための準備を行いましょう。
- 廃業以外の選択肢はないか再検討する
- 廃業支援サービスを確認する
- 必要な書類を揃える
ここからは、会社の廃業に必要な準備を解説します。
1.廃業以外の選択肢はないか再検討する
廃業以外に本当に選択肢がないかどうか再検討することも大切です。M&Aもその一つの選択肢として有効で、M&Aを利用して会社の売却を行うことによって利益を得られる可能性があります。
2.廃業支援サービスを確認する
廃業することを決めた場合は、利用できる廃業支援サービスを事前に調べておきましょう。廃業支援サービスを提供している金融機関も多く、主なサービス内容は以下の通りです。
- 持株を買い取って転売してくれるサービス
- 廃業にかかる事業費を融資してくれるサービス
- 手続きの支援や代行を行なってくれるサービス
各廃業支援サービスを受けるためにはいくつかの条件があるので、詳細は金融機関のホームページなどで確認してください。
3.必要な書類を揃える
次に、廃業手続きに必要な書類を揃えましょう。ここでは、個人事業主が廃業する場合の必要書類を一例として紹介します。
- 廃業届
- 事業廃止届出書
- 本人確認書類
- マイナンバー
- 各都道府県の税務署へ提出する廃業の届出書類
- 所得税の青色申告の取りやめ届出書
- 給与支払事務所などの開設・移転・廃止の届出書
- 所得税および復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
株式会社などの法人の場合は、さらに書類が増えて手続きも複雑になります。難しい場合は、専門家に相談してみましょう。
会社を廃業する際にかかる費用
会社を廃業する際に、どの程度の費用が必要になるか知りたい方もいるのではないでしょうか。ここでは、会社を廃業する際にかかる費用の目安を紹介します。
- 登記に関係する費用
- 専門家に支払う報酬費用
- 設備を処分する際の費用
- 原状回復費用
どれくらいの費用が必要か確認し、会社の資産を確保しておくようにしましょう。
登記に関係する費用
廃業手続きにはさまざまな登記が必要です。費用のおおよその内訳は、以下の通りです。
内訳 | 費用 |
解散登記 | 3万円 |
清算人登記 | 9千円 |
清算結了登記 | 2千円 |
官報公告掲載費用 | 約3万~4万円 |
登記事項証明書の郵送代 | 約1.5千円 |
登記関連の手続きだけでも、10万円近い費用が必要になるでしょう。
専門家に支払う報酬費用
専門家に支払う報酬費用も、あらかじめ用意しておく必要があるでしょう。
廃業手続きは、法的な手続きも多く、複雑です。ほとんどの方が弁護士・司法書士・税理士などの士業に依頼して手続きを行うため、専門家に支払う報酬も視野に入れて資金計画を立てておかなければなりません。費用は依頼する士業や事務所の料金体系などにもよりますが、おおよそ60~70万円ほどが目安です。
設備を処分する際の費用
会社の業務で使用していた設備などを処分する費用も、廃業の際には必要です。トラック1台分で数万円ほどとされていますが、処分するものの大きさや材質などによって処分費用が異なります。
また、設備を処分する際には売却も視野に入れて検討することがおすすめです。買い手がついた場合、利益につながる可能性があるでしょう。
原状回復費用
事業を行なっていた場所が貸店舗などの賃貸物件であった場合は、原状回復費用が必要です。ほとんどの場合、賃貸契約内容に原状回復が義務付けられているため、借りた当時の状態に戻す工事が必要になります。
賃貸している物件の広さなどによって費用が変動しますが、坪単価あたりの目安は数万〜10万円ほどとされています。
廃業手続きを選ぶメリット・デメリット
廃業手続きを選ぶ際には、メリットとデメリットがあります。それぞれの内容を踏まえたうえで、廃業を選択するかどうか検討してみてください。
廃業手続きを選ぶ3つのメリット
会社の廃業手続きを選択することによって得られるメリットがあります。
- 不名誉なイメージを抱かれにくい
- 経営の重圧から解放される
- 失われていく可能性のある資産を守れる
ここでは、具体的なメリットを3つ紹介します。
1.不名誉なイメージを抱かれにくい
まず挙げられるのが、不名誉なイメージを抱かれにくいことです。廃業は自らの意思で事業の経営を終えるため、「事業が失敗した」というネガティブな印象を受けにくいでしょう。
倒産の場合は、事業に失敗して追い込まれたと見なされることが多い傾向にあるため、周囲からあまり良いイメージをもたれないことがほとんどです。
事業が傾き始めたタイミングで廃業を決断した場合は、経営難であったことを周囲に気付かれる前に事業を終えることが可能と言えるでしょう。
2.経営の重圧から解放される
経営の重圧から解放されることも、廃業の大きなメリットと言えるでしょう。経営者はプレッシャーやストレスに晒されることが多く、心身ともに疲れが溜まりやすい傾向にあります。
一つひとつの判断が大きな失敗につながる恐れもあるため、気が休まらないことも多いでしょう。たとえM&Aで経営権を他社に譲ったとしても、会社が残っている以上は気がかりになるケースもあります。
どうしても経営の重圧が大きく精神的につらい場合は、廃業によって会社自体を消滅させることで、責任や重圧から逃れることが可能です。
3.失われていく可能性のある資産を守れる
会社の廃業を早めに決断することで、失われていく可能性のある資産を守ることにつながります。廃業した場合は資産と負債の清算を行い、資産が余った場合は残余財産として株主に配当することが可能です。
負債が増え過ぎないうちに廃業手続きを行うことによって、残せる資産を増やせるでしょう。
廃業手続きを選ぶ3つのデメリット
廃業手続きを選ぶ際のデメリットには、以下の3つが挙げられます。
- 従業員を解雇しなければならない
- 就職先を探さなければならない
- 資産売却の金額を低く見積もられる可能性がある
以下で詳しく解説します。
1.従業員を解雇しなければならない
会社を廃業するデメリットとしてまず挙げられるのが、従業員を解雇する必要があることです。M&Aの場合は子会社となることで事業を継続できますが、廃業の場合は会社自体がなくなるため、従業員を雇うことができなくなります。
従業員は新たな雇用先を探す必要があるため、早めに廃業を通知するなど再就職先を見つけやすくなるようサポートする必要があるでしょう。
2.就職先を探さなければならない
職を失うのは従業員だけでなく、経営者も同じです。完全にリタイアする場合を除き、経営者も新たな就職先を探さなければなりません。
3.資産売却の金額を低く見積もられる可能性がある
会社を廃業した場合は、会社の知名度や地位などが資産の価値に反映されることで、資産売却で得られる金額が低くなるかもしれません。
その点、M&Aで事業を譲渡した場合は、事業の将来性などが資産価値に付加されるため、高値で買取ってもらえる可能性があるでしょう。
廃業以外で会社を清算する3つの方法
廃業以外の方法でも、会社を清算できる方法は複数あります。選ぶ方法によっては、通常の廃業手続きを行なった場合よりも得られる利益を増やせる可能性があるため、廃業以外の方法も知っておきましょう。
- M&A
- 倒産
- 破産
順に解説します。
1.M&A
M&Aは、廃業を検討している場合におすすめの方法です。廃業した場合は事業を継続しないため会社自体が消滅しますが、M&Aでは事業買収となるため会社自体はなくならず、事業は買収先に引き継がれます。従業員の雇用も守ることが可能です。
売却する形で経営権を譲ることが可能なため、企業を高く評価してもらえた場合は、高値で売却できる可能性があるでしょう。廃業を選択する前に、まずはM&Aを検討してみることをおすすめします。
2.倒産
倒産は、会社の負債が増えすぎてしまって経営できなくなってしまった状態です。たとえ本人に事業を継続する意思があったとしても、継続不能なほどの負債を抱えています。
廃業は、負債をそれほど抱えていない場合でも、年齢などの事情で経営者が自ら事業を終了させられるため、倒産よりポジティブな意味合いが強いと言えるでしょう。
3.破産
破産は倒産とほぼ同じ意味合いをもち、負債により業務不能となった状態です。債務の弁済が不能になることで、業務を終了せざるを得なくなります。
倒産は、一般的に「会社が潰れる」というイメージで使用される言葉であるのに対して、破産は法的な意味合いが強く、専門的な場面でもよく用いられる表現です。
廃業を検討している場合の相談先
廃業するには、自社の資産状況の把握やさまざまな手続きが必要です。スムーズに廃業を進めるための相談先には、以下のものがあります。
商工会・商工会議所 | ・地域の事業者が会員となり、地域や事業の発展を目指す活動を行う団体 ・廃業に関する相談窓口である「経営安定相談室」が設けられており、商工調停士や弁護士、税理士など各分野の専門家からサポートを受けられる ・会員となるには加入金や年会費がかかる。ただし非会員でも相談できる場合もある |
よろず支援拠点 | ・国が中小企業・小規模事業者に向けて全国に設置している無料の相談所 ・専任スタッフや各分野の専門家のサポートのもと、地域の支援機関と連携した支援を受けられる ・相談内容の実績には売上拡大や事業再生が多く、廃業に関する相談の実績は少ない |
金融機関 | ・銀行、信用金庫など ・廃業にかかる費用の融資を受けたい場合や、廃業をサポートしてくれる事業者を紹介してほしい場合などに有効 ・廃業の手続きなどに関する支援はしていない。専門家を紹介してもらえる場合はある |
事業承継・引継ぎ支援センター | ・中小企業の事業継承の相談ができる、国が設置する機関 ・廃業に加えて、会社や経験を引き継げる事業承継を選択肢に入れて検討できる ・廃業する意思が固い場合には適しない |
M&A仲介会社 | ・会社を売りたい人と買いたい人を仲介し、M&Aの成立をサポートする会社 ・廃業ではなくM&Aによって会社を存続させることを視野に入れられる。相談からマッチング、契約まで一貫したサポートを受けられる ・公的な支援機関に比べると報酬が高額になりやすい |
それぞれの特徴を踏まえて、どこに相談するか検討しましょう。
商工会・商工会議所
地域の事業者が多く所属する商工会や商工会議所には、「経営安定特別相談室」が設けられており、破産や倒産を回避するための相談が無料でできます。責任者である商工調停士をはじめ、弁護士や税理士・公認会計士、中小企業診断士や企業再建コンサルタントなど、各分野の専門家によって構成されています。
資金繰りの不安や受注量の減少、融資が受けられないなど、経営に関する悩みから将来的な見通しが立たない場合には、早めに相談してみましょう。
一方で、会員となるため絵には費用がかかります。ただし、会員・非会員を問わず相談を受け付けている場合もあるため、一度問い合わせてみるとよいでしょう。
よろず支援拠点
よろず支援拠点とは、国が中小企業・小規模事業者に向けて全国に設置している無料の相談所です。専任スタッフを中心に、経営コンサルティングやIT、デザインといった幅広い分野の専門家が、さまざまな角度からアドバイスしてくれます。
経営に関することならどのような内容でも相談でき、廃業のほかにも売上の拡大や販路の開拓などの相談も可能です。そのため、廃業以外の方法が見つかるかもしれません。地域の支援機関との連携も可能で、相談者の課題解決のためのサポートを受けられます。
ただし、よろず支援拠点にこれまで多く寄せられている相談は、事業の拡大や再建などが多く、廃業に関する対応の実績は少ないのが現状です。
金融機関
銀行や信用金庫などの金融機関が、廃業にかかる費用を支援する自主廃業支援保証を行っている場合もあります。多額の廃業費用がかかりそうな場合は、相談してみるとよいでしょう。
廃業までの運転資金や従業員の退職金などの融資を受けられる可能性もあります。金融機関の取引先に廃業に関するコンサルタント会社などがいれば、紹介してもらえる可能性もあります。
なお、金融機関の支援の範囲はあくまでも融資が中心です。手続きなどのサポートはしていない点を念頭に置いておきましょう。
事業承継・引継ぎ支援センター
廃業を考えているものの、事業承継できればベストという場合には、事業承継・引継ぎ支援センターに相談することも一案です。事業者の後継者問題を解消するために国が設置している機関であり、よろず支援拠点よりもさらに踏み込んだ細やかな対応が期待できます。廃業するしかないと思っていても、引継ぎ先が見つかればよりよい形で事業から退ける可能性があります。
事業承継・引継ぎ支援センターは、事業や会社を継続する意思があることを前提とした支援期間です。廃業する意志が固い場合は、他の機関に相談する方がよいでしょう。
M&A仲介会社
廃業を考えている場合は、M&A仲介会社に相談してみることも1つの方法です。M&Aによって会社や事業を引き継ぐことで、廃業を避けられる可能性があります。経営者が魅力と感じていない点が外部から高く評価されることで、M&Aが成立するかもしれません。
M&A仲介会社は、会社や事業を譲り受けたい会社の情報を持っているため、マッチングに成功する可能性もあります。相談からM&A先のマッチング、契約に至るまで、一貫したサポートを受けられることも魅力です。廃業以外の方法を選びたいという場合は、M&A仲介会社に相談してみましょう。
ただし、他の公的な支援機関と比べると報酬が高額になる傾向にあります。M&A仲介会社への依頼を考えている場合は、自社の方向性やコストなどを踏まえて判断しましょう。
まとめ
廃業するための手続きは多く複雑であるため、一連の流れを知っておくことでスムーズに進められます。しかしその前に、自社にとって本当に廃業がベストな方法なのかを検討するために、外部機関に相談してみることも大切です。本記事を参考に、今後の自社の方向性をあらためて考えてみましょう。
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、独自の顧客データベースを活用してM&Aの成功をサポートします。これまでの実績とノウハウを駆使して、経営に行き詰まった事業や会社の選択肢を提案します。「廃業するしかないと思っていたため、M&Aは考えたことがなかった」という方も、ご相談からご成約まで一貫したサポートをするため安心です。廃業以外の道を少しでも考えている場合は、ぜひレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社のご利用をご検討ください。