企業価値とは?計算方法や企業価値を高める6つの方法を解説

2024年5月24日

企業価値とは?計算方法や企業価値を高める6つの方法を解説

このページのまとめ

  • 企業価値とは企業全体の経済的価値を意味し、投資やM&Aの判断などで活用される
  • 企業価値を構成する要素には、一般的・業界・企業・株主・目的要因の5つの要因がある
  • コストアプローチ・マーケットアプローチ・インカムアプローチが企業価値の計算法
  • M&Aで有利になるなど、企業価値の向上には様々なメリットがある
  • 企業価値を高めるには、企業の財務状況の向上に加えてガバナンスや非財務価値の強化も有効

M&Aなどで会社の買収判断にも活用されている指標「企業価値」。企業価値を構成する要素は複数あり、企業価値のアプローチ方法(計算方法)も多様であるため、M&Aを検討している方はぜひ理解しておきましょう。
今回は、企業価値の構成要因、計算方法、企業価値向上で期待できる効果、企業価値を高めるための方法も解説。「時価総額」「株式価値」「事業価値」との違いについてもご紹介します。

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企業価値とは

まずはじめに、企業価値の意味や類似する用語との違いなどの前提を確認しておきましょう。

企業価値の役割

企業価値とは「企業全体の経済的価値」を意味します。
投資やM&Aの判断などで活用されており、株主や取引先など、外部からの評価・信頼を得る際に重要となる指標です。

企業の経済的価値を示す指標としてその役割は多岐にわたりますが、重要なものとして主に次の3点が挙げられるでしょう。

  1. M&AやTOBなどの投資交渉の場において優位に立つ
  2. 将来性や信頼性を反映した資金調達を行う
  3. 会社の社会的価値や倫理的側面なども含めて社会的な位置付けを明確化する

企業価値が高ければ、融資が受けやすくなるほか、倒産リスクを下げる効果も期待できるため、企業経営において大きな意味を持っています。また、社会からの信頼や倫理的価値などを包含していることも重要なポイントです。

類似する用語との違い

「時価総額」「株式価値」「事業価値」などの言葉は、企業価値をはかる指標の1つと言えますが、厳密には企業価値そのものとは意味が異なります。
これらの言葉と「企業価値」は混同されやすいため、はじめに違いを確認しておきましょう。 

時価総額との違い

時価総額とは「ある時点の株価の総額」を意味します。
ただし、これは企業価値とイコールではなく、「ある時点の株価の総額」に「有利子負債」を足すことで、はじめて企業価値となります。

なお、時価総額が分かるのは、株式公開している上場企業のみであり、中小企業や未公開企業で利用することはできません。
そのため、中小企業や未公開企業の企業価値を求めるためには、後述するいくつかのアプローチ(計算方法)を用いることとなります。

株式価値(株主価値)との違い

株式価値とは「企業価値の中の、株主に帰属する部分の価値」を意味します。
つまり株主価値は、企業価値の一部を指します。 

株主価値は、時価総額から「優先株式」「非支配株主持分」を差し引くことで求めることができます。

厳密には、企業価値と株式価値(株主価値)は使い分けられるものの、しばしば同じ意味で用いられることもあります。

事業価値との違い

事業価値とは「事業活動によって生み出される価値」を意味します。
具体的には、企業価値から「非事業用資産」(事業外の資産)を差し引いたものが、事業価値となります。 

また、「将来的に事業が創出する価値」(キャッシュフロー)に「事業で保有する資産・負債」を足すことでも、事業価値を求めることが可能です。
事業で保有する資産・非事業用資産(事業外の資産)には、それぞれ以下のようなものが含まれます。

事業で保有する資産
  • 「のれん」の価値(​​ブランド、ノウハウ、人的資源など)
  • 無形資産
  • 知的財産
非事業用資産(事業外の資産)
  • 現預金
  • 投資が目的の有価証券
  • 遊休地

継続価値と清算価値

企業価値自体は、大きく継続価値と清算価値の2つに分けられます。

継続価値とは、その企業や事業が将来的に続くことを前提とし、成長分も加味した価値のことを指しています。後で解説する、企業価値の計算手法であるマーケットアプローチやインカムアプローチはこの継続価値の考え方に基づいています。

一方の清算価値とは、企業の活動が停止した状態を前提として、過去の実績を重視した価値のことを意味します。企業価値の計算方法としては、コストアプローチという手法が清算価値の考え方を採っています。

また清算価値は、対象企業の状態によってさらに細分化され、倒産などで売却が急務な企業の場合は強制処分価値を採用し、倒産などの危機ではないものの将来性の評価が困難な場合に非強制処分価値を採用します。

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企業価値を形成する5つの要素 

自社の企業価値を正しく評価するためには「企業価値を構成する要素」を理解しておく必要があります。

日本公認会計士協会による「企業価値評価ガイドライン」では、企業価値を形成する要素として、以下の5つを挙げています。

企業価値は、これらの5つの要素によって日々変動しているため、どういった要因が影響を与えているか具体的な項目を含めて押さえておきましょう。

5つの要素概要具体例
1. 一般的要因外的なマクロ環境の変化による要因・社会的要因
・政治状況
・経済政策・景気対策
・法令
・景気動向 
2. 業界要因業界全体での変化による要因・業界の組織再編の動向
・類似上場会社の株価動向
・同業他社の経営戦略転換
・同業他社の業績変化 
3. 企業要因自社の変化や動向による要因・業種、業態及び取引規模
・評価対象会社のライフサイクルにおけるライフステージ(創成期、成長期、安定期又は衰退期)
・経営戦略や経営計画と達成状況
・収益性
・財政状態
・配当政策
・経営、営業、技術、研究等の特異性 
4. 株主要因株主との関係性による要因・株主構成(株主の集中、分散の状況)
・株主関係(同族関係、支配株主関係、一定の株主グループの形成状況)
・株式の種類と発行状況(普通株式、種類株式)
・取引後の株主構成の変化
・取引数量(全量、大量、中量又は少量)
・過去における売買の事例(株式の流動性の状況)
・株式譲渡制限の有無 
5. 目的要因企業価値を評価する目的による要因・取引目的
・裁判目的
・その他(処分目的、課税目的、PPA目的他) 

それぞれの要素を1つずつ見ていきましょう。

一般的要因

一般的要因とは、企業価値に対してマクロ的な影響を与える部分です。自社ではコントロールが難しい「外的要因」とほぼ同じ意味と言えるでしょう。

一般的要因には以下のようなものがあります。

  • 社会的要因
  • 政治状況
  • 経済政策・景気対策
  • 法令
  • 景気動向

企業だけでなく業界のほかのプレイヤーにも影響をおよぼすような政治や経済、法規制、パンデミックのような社会的要因などが挙げられます。

業界要因

業界要因とは、企業価値に対して、企業が属する業界の動きが影響を与える部分です。一般的要因と同様、こちらも自社ではコントロールが難しい要因です。

業界要因には以下のようなものがあります。

  • 業界の組織再編の動向
  • 類似上場会社の株価動向
  • 同業他社の経営戦略転換
  • 同業他社の業績変化

業界要因は、基本的に同じ業界の競合他社の動きによってもたらされます。

企業要因

企業要因とは、企業価値に対して自社の状況や体制そのものが影響を与える部分です。
企業要因には以下のようなものがあります。

  • 業種、業態及び取引規模
  • 評価対象会社のライフサイクルにおけるライフステージ(創成期、成長期、安定期又は衰退期)
  • 経営戦略や経営計画と達成状況
  • 収益性
  • 財政状態
  • 配当政策 
  • 経営、営業、技術、研究等の特異性 

一般的要因や業界要因とは異なり、自社でコントロール可能なため、企業努力による改善が期待できます。

株主要因

株主要因とは、企業価値に対して、株主・株式の状況が影響を与える部分です。

株主要因には以下のようなものがあります。

  • 株主構成(株主の集中、分散の状況)
  • 株主関係(同族関係、支配株主関係、一定の株主グループの形成状況)
  • 株式の種類と発行状況(普通株式、種類株式) 
  • 取引後の株主構成の変化
  • 取引数量(全量、大量、中量又は少量)
  • 過去における売買の事例(株式の流動性の状況) 
  • 株式譲渡制限の有無

主に既存の株主との関係性や発行している株式の動向が含まれ、場合によってはストックオプションを保有する従業員もこの対象となります。

目的要因

目的要因とは「企業価値をどのような目的で評価するのか」を意味します。

目的要因には以下のようなものがあります。

  • 取引目的
  • 裁判目的
  • その他(処分目的、課税目的、PPA目的他)

M&Aなどの取引を目的とするか、または司法関係で必要としているかに大別されます。

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企業価値の計算方法 

企業価値の計算は、株式公開しているかどうかで大きく変わります。株式公開している企業は、市場の株価から企業価値を割り出すことができます。一方、株式を公表していない企業は、以下のようなアプローチで、企業価値を計算する必要があります。

計算方法概要計算方法計算式
コスト
アプローチ
現在の純資産に基づき、将来性よりも企業の現状を重視した方法時価純資産法純資産額(株式価値)=
企業の保有資産の時価総額−
負債の時価総額
簿価純資産法純資産額(株式価値)=
会計上の資産額−負債額
マーケットアプローチ類似する企業の価値を参考にした、客観性や株式市場との比較を重視した方法類似会社比較法(マルチプル法)企業価値 =
当期純利益 ×
PER(株価 ÷ 1株当たり利益) +
有利子負債
類似業種比準法企業価値 =
類似業種の平均株価 ×
{(配当額比 + 利益比 +純資産比)/3 } × 係数
市場株価法企業価値 =
(終値×出来高株数)/出来高(取引株数)
インカム
アプローチ
企業の成長性を予測し現在価値に割り引く、将来性を重視した方法DCF法企業価値 =
事業価値 + 非事業資産
収益還元法企業価値 =
平均収益 / 資本還元率
配当還元法評価額(1株当たりの配当還元価額)=
(1株当たりの年間配当額/10%)×
(1株当たりの資本金などの金額/50円)

コストアプローチは「企業の現状」、マーケットアプローチは「株式市場」、インカムアプローチは 「企業の将来性」と、重視するポイントが異なります。

重視するポイントに合わせて、計算方法を選択してください。 

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コストアプローチ

コストアプローチは「会社の現在の純資産」を基準に企業価値を算定する方法です。
決算書をもとに企業価値を算出するため、客観的な結果となりやすく、当事者の理解を得る目的でも利用しやすいでしょう。
ただし、企業の将来性は盛り込まれないため、成長性のある企業の価値選定には適さないケースがあります。

コストアプローチの具体的な種類には「時価純資産法」「簿価純資産法」などがあります。

時価純資産法

時価が大きく変動する資産を保有する、中小企業の価値算定に利用されるケースがあります。具体的な計算式は以下の通りです。

純資産額(株式価値)=企業の保有資産の時価総額−負債の時価総額

簿価純資産法

資産の種類が現金だけの、中小企業の価値算定に利用されるケースがあります。具体的な計算式は以下の通りです。

純資産額(株式価値)=会計上の資産額−負債額

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは「類似する会社や業種の株価」を参考に企業価値を導く計算方法です。
市場の取引環境を反映した、客観的な企業価値が算出できるため、やはり当事者の理解を得る目的でも利用しやすいです。
一方、類似事例・類似業種がない場合には、利用が難しいケースがあります。

マーケットアプローチの具体的な種類には「類似会社比準法」「類似業種比準法」「市場株価法」などがあります。 

類似会社比較法(マルチプル法)

同業他社を参考に、非上場企業の価値算定に利用されます。以下、類似会社比較法の1つである「PER法」の計算式をご紹介します。 

*PER法

企業価値 = 当期純利益 × PER(株価 ÷ 1株当たり利益) + 有利子負債

類似業種比準法

類似業種の平均株価などを参考に、非上場企業の価値算定に利用されます。具体的な計算式は以下の通りです。

企業価値 = 類似業種の平均株価 × {(①/A + ②/B + ③/C)/3 } × 係数

①:企業の1株当たりの配当額
②:企業の1株当たりの年利益額
③:企業の1株当たりの純資産価額
A:類似業種の1株当たりの配当額
B:類似業種の1株当たりの年利益額
C:類似業種の1株当たりの純資産価額
係数:大会社・0.7、中会社・0.6、小会社・0.5

市場株価法

市場株価を参考に、上場企業の価値算定に利用されます。具体的な計算式は以下の通りです。

企業価値 = (終値×出来高株数)/出来高(取引株数)

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インカムアプローチ

インカムアプローチとは「企業の将来性」を反映して企業価値を導く計算方法です。
将来的な収益獲得能力や、企業固有の特徴が反映されるため、今後の成長が見込まれる企業の価値算定の目的で利用しやすいです。
一方、算定結果が恣意的・楽観的になることや、将来的なリスクを全て反映させることが困難な面もあります。

インカムアプローチの具体的な種類には「DCF法」「収益還元法」「配当還元法」などがあります。

DCF法

将来の企業のフリーキャッシュフロー (会社が自由に使えるお金)を参考に、企業の現在価値を算定します。 計算では、まず事業価値を求めてから、非事業資産を足し合わせます。具体的な計算式は以下の通りです。

事業価値 =(1年目の将来キャッシュ・フロー)/(1+割引率)+(2年目の将来キャッシュ・フロー)/(1+割引率)²+(3年目の将来キャッシュ・フロー)/(1+割引率)³+…(n年目の将来キャッシュ・フロー)/(1+割引率)n

企業価値 = 事業価値 + 非事業資産

収益還元法

DCF法の「フリーキャッシュフロー」を「予想される平均収益」に置き換えることで、シンプルな計算を実現したインカムアプローチ手法です。具体的な計算式は以下の通りです。

企業価値 = 平均収益 / 資本還元率

配当還元法

将来の収益の予想ではなく、 実際の株価配当金(一株当たりの配当金額)から、企業価値を導きます。比較的、特例的な手法と言え、M&Aなどで利用されるケースもあまり多くありません。具体的な計算式は以下の通りです。

評価額(1株当たりの配当還元価額)=(1株当たりの年間配当額/10%)×(1株当たりの資本金などの金額/50円)

また、ここまでご紹介してきた各計算方法について、下記の記事にてより詳しく解説しているため、ぜひ併せてご一読ください。

関連記事:
M&Aの企業価値評価とは?価値算定方法や各メリット、計算手順を紹介
DCF法とは?企業価値の計算方法やメリット・デメリットを解説

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企業価値の向上で期待できる5つの効果

企業価値の向上は「企業全体の経済的価値の向上」を意味します。それによって企業は、様々な良い影響を享受することが期待できます。企業価値の向上で期待できる具体的な効果は、以下の通りです。

  1. M&Aを有利に進められる
  2. 融資が受けやすくなる
  3. 株価を上げられる
  4. 信頼性を高められる
  5. 倒産リスクを下げられる

それぞれ詳しく解説します。

1. M&Aを有利に進められる

M&Aでは、算出した企業価値を元に、売却価格を交渉します。
企業価値の高い売り手企業は、取引相手として魅力的なため、M&Aを有利に進め、高額な売却も期待できます。

また、買い手企業にとっても、企業価値の高さが、相手企業からの信頼を獲得する担保となります。
企業価値の高い買い手企業であれば、候補企業の幅も広がり、マッチングの可能性が高くなることも期待できます。 

2. 融資が受けやすくなる

金融機関は融資の際、企業の返済能力を考慮した上で、慎重に審査します。
企業価値の高い企業は、成長性・将来性が期待でき、なおかつ資金回収リスクが低いと判断できることから、融資が受けやすくなります。

3. 株価を上げられる

企業価値の高さは、投資家に対する大きなアピールポイントとなります。
具体的に、企業価値の高い企業は収益力が高く、安定的な配当が期待できるほか、今後さらに価値が上がることが期待できます。
そのため、投資家からの人気が高まり、結果的に株価上昇につながります。

なお、こちらは株式公開している企業のみに当てはまるメリットです。

4. 信頼性を高められる

企業価値の高い企業は、取引先からも魅力的な存在です。
企業価値の高い企業は、業務の質や財務状況などがトータルで安定していることが期待できるため、 共同事業・共同プロジェクトの相手としても安心です。

また、取引先のみならず、業界においても信頼性を高めることができるでしょう。

5. 倒産リスクを下げられる

企業価値が高くなると、金融機関などからの融資が受けやすくなることや、株主や取引先からの信頼が獲得しやすくなります。

これが安定的な資金調達や収益につながり、結果的に倒産リスクを下げることが期待できます。 

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企業価値を高めるための6つの方法 

企業価値の向上では様々なメリットが享受できますが、具体的にどのような方法があるのでしょうか。最後に、企業価値を高めるポイントとして、以下6つをご紹介します。

  1. 事業の収益性を向上させる
  2. 財務状況の見直しをする
  3. 無形資産を活用する
  4. 投資効率を良くする 
  5. コーポレートガバナンスを強化する
  6. サステナビリティを中心とした非財務価値を向上させる

それぞれ詳しく解説します。

1. 事業の収益性を向上させる

事業の収益性の向上とは「事業活動によって得る利益を高める」ことを意味します。事業の収益性を向上させる方法には以下2つの軸があります。

戦略の見直し

事業戦略やビジネスモデルなどを見直し、営業力の強化や顧客満足度アップを通じて、売上向上を図ります。

業務効率化 

生産プロセスや管理の見直し、共同仕入れ、アウトソーシングなどを通じて、業務効率化とそれに伴うコスト削減を図ります。 

2. 財務状況の見直しをする

財務状況の見直しは、企業価値の向上につながります。

例えば、企業価値は「ある時点の株価の総額+有利子負債」で求めることができます。「負債」と聞くと減らした方がいいように思えますが、状況によっては有利子負債が多いほうが企業価値や収益性が高まるケースがあるのです。
もちろん、過剰な有利子負債は財務リスクを大きくするため、注意が必要です。

このように、専門家の視点から財務状況の見直し・最適化を実施することで、企業価値を高める糸口が見つかる可能性があります。 

3. 無形資産を活用する

無形資産とは、近年の企業経営において重視されている評価軸です。

会計上の無形資産としては、商標権・特許権・借地権・電話加入権などがありますが、以下のように会計上をカウントされない無形資産も多数あります。

  • 人材
  • 技術
  • 組織
  • 顧客データ
  • ブランド
  • ネットワーク
  • のれん
  • ノウハウ など

このような無形資産も立派な経営資源であるため、これらを活用することで、人材力・技術力・組織力などを向上し、企業価値を高める基盤を作ることが期待できます。

4. 投資効率を良くする

企業の内部には、活用されていない資産が多く隠されているケースも珍しくはありません。具体的には、以下のような資産がないか確認してみましょう。

  • 活用していない不動産
  • 活用していない在庫
  • 遊休設備

これらの資産は、収益力がない上に、管理コストや固定資産税がかかるため「ムダな資産」と言えます。
ムダな資産を売却し、有益な設備投資などに回すことで、さらなる企業価値の向上が期待できます。 

5. コーポレートガバナンスを強化する

コーポレートガバナンスとは、企業が企業自身を統治し管理することを意味します。すなわち、企業が健全な経営を行うために必要な組織としての管理・監督・評価のことを総合してコーポレートガバナンスと表現されます。

国内では、東京証券取引所が策定している「コーポレートガバナンス・コード」と呼ばれるガイドラインがあり、基本的に全ての上場企業は遵守することが求められています。

健全な経営を行い、またその内容を適切に外部に開示することで、既存の株主や投資家などステークホルダーからの評価が高まります。ステークホルダーはより安定的で成長を続けることを企業に期待するため、ガバナンスの強化によってこの期待に応えることになるためです。

結果、コーポレートガバナンスを推進することでさらなる資金の調達や株価の向上につながり、企業価値の向上に寄与することとなるでしょう。

6. サステナビリティを中心とした非財務価値を向上させる

収益性やバランスシートのような財務的な価値だけでなく、直接的に財務指標には現れない非財務価値の重要性が昨今高まっています。例えばPBR(株価純資産倍率)が1倍を優に上回っている企業は、非財務的な価値が高く、投資家らに高く評価されていることがその一因とも言われています。

投資家らは自身の資本が、社会や環境のために活用されることを期待していることから、非財務的なテーマへの取り組みとその情報の開示は、投資する企業を選択する重要な判断指標となります。したがって、非財務価値の向上は企業価値の向上へとつながります。

非財務価値の種類

非財務価値は大きく、以下に分けられます。

  • 森林や生物多様性などの自然資本
  • 従業員のモチベーションやダイバーシティに関わる人的資本
  • 地域との関わりなどの社会関係資本
  • ライセンスや特許などの知的資本

これらのうち特に、自然資本や人的資本、社会関係資本といったSDGsやサステナビリティに類するテーマは、グローバルおよび日本でも情報の開示が強く求められており、実際に上場企業には特定の項目が義務付けられています。

また、これらを可能な限り財務的または定量的な指標に置き換えようとする、社会的インパクト評価・インパクトモデルなども注目を浴びており、いくつかの先進的な企業で採用され始めています。

参照元:
金融庁「「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の公表について
金融庁「記述情報の開示の好事例集 2023
内閣府「社会的インパクト評価に関する調査研究 第3章 国内事例調査

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まとめ

企業価値とは、会社全体の経済的価値を数値化したものです。
その意味は非常に広く「時価総額」「株式価値」「事業価値」はそれぞれ、企業価値の1つの側面ということができるでしょう。
また、企業価値の計算方法にはコストアプローチ・マーケットアプローチ・インカムアプローチの3つがありますが、目的や企業の実情に合わせて使い分けます。
企業価値が向上すると、M&Aの際に有利になるなど多くのメリットが期待できるため、定期的に自社の見直しを行ってください。

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