このページのまとめ
- 経営統合とは複数の会社で新しい会社を設立し、各会社が新会社の傘下に入ること
- 合併とは複数の会社が1つになることで、会社の経営や業務の流れが変わることもある
- 経営統合は業務上の混乱が少なく、会社の制度を残せるというメリットがある
- シナジー効果や事業拡大を期待したいときは合併が適している
事業継続のために、経営統合と合併のどちらを選べばいいか迷っている方もいるのではないでしょうか。正確な判断をするためには、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解することが大切です。本記事では、M&Aの方法として経営統合と合併の違いについて説明します。具体的な事例も紹介しますので、M&Aを成功させるためにぜひお役立てください。
目次
経営統合とは?
経営統合とは、複数の会社が新規の持株会社を設立し、各会社が新会社の傘下へ入ることを指します。会社ごと新会社の傘下に入るため、それぞれの会社の内部組織には影響を与えません。
ただし、新しく設立された会社が、傘下の会社の全株式を保有することになるため、経営形態自体は変わります。なお、経営統合によって誕生した持株会社は「ホールディングス」と呼ばれることが一般的です。ホールディングスの傘下には複数の会社があり、それぞれの株式はホールディングスが保有します。
経営統合は、傘下企業の法人格自体には影響を及ぼしません。そのため、傘下企業間の連携が強まることはあまりありません。
経営統合と似たものに以下の4つがあります。
定義 |
経営統合との違い |
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合併 |
複数の会社が1つになる |
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子会社化 |
特定の会社を株式の半数の取得により子会社にする |
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資本提携 |
株式を取得する対価として相手側に資本を投入すること |
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それぞれの違いを、具体的にみていきましょう。
合併との違い
合併とは、複数の会社が1つになることです。吸収合併と新設合併があり、吸収合併とは1つの会社(存続会社)を残し、他の会社(消滅会社)を吸収することを指します。吸収された会社は法人格を失います。
一方、新設合併とは、合併する会社は全て消滅会社として法人格を失い、それらの消滅会社の権利義務を設立する新会社に承継することです。経営統合とは異なり元の会社の形態を残さないため、組織はもちろんのこと業務フローも変わることがあります。
子会社化との違い
子会社化とは、特定の会社を株式の半数の取得により子会社にすることです。子会社化の場合は、親会社も子会社も消滅せずに存続します。
特定の会社を子会社にするためには、経営の意思決定機関(株主総会)の議決権の過半数を取得して経営権を手に入れ、取締役の専任・解任などの決定ができる状態にしておくことが必要です。さらに議決権を増やして3分の2以上とすると、組織再編や定款変更などの決定権も得られます。
また、完全子会社化とは、M&Aの対象となる会社の株式を100%取得することです。完全子会社化を実現すると、迅速な意思決定ができるため、一体的な経営が行えるようになります。
資本提携との違い
資本提携とは、経営権を取得するまでには至らない範囲で、お互いの株式を取得し合うことで安定株主となり、資本的な結びつきを得る手法です。独立性はそれぞれ維持しつつ、お互いの関係性を強化し、第三者が経営に関わるリスクを下げられます。
また、相手企業の株式を取得することで資本的な結びつきは強化されますが、経営統合と比べて経営や事業への影響はさほど大きくないため、ステークホルダーから受け入れられやすいといえます。
業務提携との違い
業務提携とは、独立した企業同士が提携契約を結び、一定の業務を共同で進めていくことです。お互いの株式を取得するわけではないため、経営などに対して直接的な影響を及ぼすことはできませんが、開発・生産・販売など特定の業務に対してお互いに協力することで緩やかな協力関係を築けます。
また、相手企業の技術や販路なども活用でき、シナジー効果を得られることも特徴です。
関連記事:合併とは?実施目的やメリット、手続き方法などを解説
経営統合の種類と手続きの流れ
経営統合には、大きく分けて次のような3つの種類があります。
株式交換方式 | 発行する株式をすべて別の既存会社に取得させる方式 |
株式移転方式 | 1つまたは複数の会社の株式を、新たに設立する持株会社に移転させる方式 |
抜け殻方式 | 純粋持株会社を設立する際に用いられる方式 |
それぞれの方式の内容と手続きの流れをみていきましょう。
株式交換方式
買収する会社を完全子会社化する場合に、買収される会社が発行する株式をすべて完全親会社となる会社(買収企業)に取得させる方法です。
手続きは、次の流れで行います。
- 株式交換契約を締結する
- 事前開示書類を備える
- 株主総会の特別決議・反対株主の買取請求を受け付ける
- 既存会社での債権者保護手続きを行う
- 事後開示書類を備える
株式交換契約を締結するまでに、社員の処遇や価格などの諸条件について合意が必要です。
株式移転方式
会社が発行する株式の全部を新たに設立する会社に取得させる方式です。株式交換はすでに存在している会社を親会社とするのに対し、株式移転は新たに親会社を設立する点が異なります。
株式移転は、次の手順で行います。
- 株式移転計画書を作成する
- 株式移転契約を締結する
- 事前開示書類を備える
- 株主総会の特別決議・反対株主の買取請求を受け付ける
- 既存会社での債権者保護手続きを行う
- 新設会社の登記申請を行う
- 事後開示書類を備える
会社を新たに設立するため、定款作成や認証などの手続きも必要です。
抜け殻方式
純粋持株会社の設立を目的とする方式です。純粋持株会社とは、自ら事業は行わず、株式を所有する他社の事業活動を支配することのみを事業目的とする会社のことです。子会社からの配当を売上としています。
手続きは、新設分割もしくは吸収分割の方式で行います。手続きの流れは、以下のとおりです。
(新設分割)
- 新設分割計画を作成する
- 株主総会の承認を得る
- 債権者の異議を受け付ける
(吸収分割)
- 吸収分割契約を締結する
- 株主総会の承認を得る
- 契約に関する書面を備える
- 吸収分割株式会社・承継会社の債権者異議を受け付ける
経営統合のメリットとデメリット
M&Aの手法として経営統合を選択する前に、経営統合ならではのメリット、デメリットを知っておくことは重要です。一般的に経営統合のメリット・デメリットとされる事柄を紹介します。
経営統合のメリット
経営統合には、次のようなメリットがあります。
- 現場の混乱を回避しやすい
- それぞれの会社の制度をそのまま残せる
- グループ全体で合理的な運営ができる
- PMIの負担は比較的小さい
それぞれのメリットを説明します。
現場の混乱を回避しやすい
経営統合では、会社を新設し、それぞれの会社が新設会社の傘下に入る形で実施されます。社名も業務内容もそのまま変わらないため、各会社の社員にとっては特段の影響がありません。
また、経営統合後もそれぞれの会社は独立性を保つため、制度や社風にも影響が及びにくい傾向にあります。強制的に1社にする合併と比べて現場で混乱が起こることはあまりなく、スムーズなM&Aを実施できます。
それぞれの会社の制度をそのまま残せる
経営統合では、基本的に各会社の制度にも変化はありません。人事制度などが維持されることで、働く部署が変わったり、部署名が変更されたりといったことがないため、新しい企業グループ体制にスムーズに移行できます。
また、部署名・社名が変わらないことで、看板や名刺などの書き換えが不要になることが多いです。組織の変更によって発生するコストや手間を抑えられる点も、経営統合のメリットといえます。
グループ全体で合理的な運営ができる
経営統合後は、各会社はグループとして業務を続けることになります。
グループ全体を見渡して、合理的な運営を行えるようになることも経営統合のメリットです。個々の会社が専門分野の業務に集中することができ、全体を統括する持株会社が大局的な視点から経営判断を下すことができます。
PMIの負担は比較的小さい
経営統合は、PMIを早急に進める必要がなく、比較的負担が少ない点がメリットです。
PMIとは、M&Aが成立した後、統合による効果の最大化を目的として行われる作業です。M&Aの成功には、このPMIをいかにうまく進めるかが重要とされています。M&Aによるシナジー効果を発揮するためには、経営統合をスムーズに進め、PMIを早急に完了させることが大切です。
合体して1つの会社となる合併の場合はPMIに時間がかかるため、できるだけ早く進めなければなりません。しかし、経営統合では合併ほどに急ぐ必要はなく、統合作業に対する現場の負担も小さめです。
経営統合のデメリット
メリットの多い経営統合ですが、デメリットもあります。よくあるデメリットとしては、次のものが挙げられます。
- シナジー効果が生まれにくい
- 無駄なコストが発生しやすい
- 業務効率が低下する
それぞれのデメリットについて説明します。
シナジー効果が生まれにくい
経営統合では、基本的には各会社は別々で運営するため、意識的に情報やノウハウなどを共有する仕組みを作らない限りは、会社間が連携して業務を行うといったことはあまりありません。そのためシナジー効果(相乗効果)を発揮しにくくなります。
無駄なコストが発生しやすい
経営統合では、各会社内の組織や制度には大きな影響が及びません。そのためグループ全体で見ると、同じ業務を行う部署が複数存在することになり、無駄なコストが発生する可能性があります。
たとえば総務や人事などのバックオフィス業務は、大規模に実施することで効率化を図りやすいと考えられます。しかし経営統合では会社ごとに総務部や人事部などが存在するため、効率化は図れず、人件費やシステム利用料などの無駄が生じるかもしれません。
業務効率が低下する
経営統合をした場合、各会社の業務に大きな変化はありません。会社によっては業務効率が悪い部署なども存在すると考えられます。経営統合によりこれらの部署・業務が整理されるわけではないため、業務効率の向上は見込めません。また、持株会社がグループ全体の多くの部門や部署を統括することになるため、組織が複雑化して管理負荷が増える可能性もあります。全体の効率性を改善することは、統合後の課題となります。
合併のメリットとデメリット
合併によって生じることが多いメリット、デメリットについて紹介します。経営統合か合併かを選ぶ際の参考にしてください。
合併のメリット
合併のメリットとしては、次のものが挙げられます。
- シナジー効果を発揮しやすい
- 経営効率が向上する
- 事業規模が拡大する
- 新規事業の開拓がしやすい
それぞれのメリットを説明します。
シナジー効果を発揮しやすい
合併では、吸収合併・新設合併にかかわらず複数の会社が1つの会社になります。元々の会社の枠が取り払われて連携するようになるため、開発・生産・販売・ブランディングなどさまざまな面で情報やノウハウを共有しやすくなり、シナジー効果が生じやすくなります。
経営効率が向上する
合併すると、重複する部署や業務などを整理できるようになります。たとえば総務部や人事部などのバックオフィス業務だけでなく、営業部や企画部も業務内容に関連性があれば1つにまとまり、業務を進めていくことが可能です。
重複する業務や効率性に問題のある業務が整理されると、経営効率が向上します。ただし、合併直後は社名変更や体制・制度の変更などの作業や調整に多大な労力が必要となり、一時的に経営効率が低下することがあるため注意が必要です。
事業規模が拡大する
合併により、複数の法人が1つの法人となり存続するため、事業規模や会社規模が拡大します。
社員や予算、利用できる販路・工場などが同一企業内に集約されることで、事業規模拡大によるスケールメリットが得られます。事業規模が大きくなると各部門の効率性を改善できる可能性も高められるため、利益率の向上も期待できます。
また、会社としての規模が大きくなることで、知名度やブランド力の向上も期待できるでしょう。業界内での競争力も高まり、さらに利益率の向上と影響力の増強を見込めます。
新規事業の開拓がしやすい
子会社の独立性が維持される経営統合と比べ、合併はそれぞれの弱点が補完されやすく、新たな販路や新規事業の開拓がしやすい点がメリットです。
多角経営をしたくても、自社のみで新規事業を開拓するのは容易ではありません。特に専門分野以外の新規事業に進出するには、時間と資金が必要です。
新たに進出したい事業で既に実績のある会社と合併することで、労力とコストを削減できます。
吸収合併では消滅会社に与えられた許認可や免許をそのまま引き継ぐこともでき、それらを必要とする事業への新規参入も可能です。
合併のデメリット
合併にはメリットが多くありますが、少なからぬデメリットもあります。合併実現前に対策を検討しておきたいデメリットとしては、次のものが挙げられます。
- 合併実現までに手間がかかる
- 人件費が割高になる可能性がある
- 従業員や顧客から反発を受ける可能性がある
- PMIに時間や手間がかかる
それぞれのデメリットを説明します。
合併実現までに手間がかかる
ホールディングスの設立と株式取得だけでほぼ統合業務を完成できる経営統合とは異なり、合併には多大な手続きや業務が伴います。業務の整理や統合、人員整理などに多くの時間が必要となり、経営統合よりも実現に時間がかかりがちです。
また、時間だけでなく手続きなどの手間もかかるため、合併実現に専任するスタッフも必要になります。社内外から専門家を招集し、多大な人件費をかけて実現する運びとなるため、経営統合よりもコストがかかる傾向にあります。
人件費が割高になる可能性がある
業務は統合できても、すぐに人員を減らすのが難しいケースは少なくありません。思うように人員整理が進まないときは、当面の間は人件費が割高になる可能性があります。
また、希望退職者を募っても、応募者があまり現れない可能性もあります。希望退職者を募るときには、退職手当に相応の割増金をつけることが一般的です。そのため、合併により長期的に見れば人件費削減が実現できても、短期的にみればコスト増になることも少なくありません。
従業員や顧客から反発を受ける可能性がある
制度の変更や大規模なリストラなどにより、社内から反発を受ける可能性があります。また、社内での反発がニュースなどに取り上げられ、社会的なイメージダウンとなるかもしれません。
合併により顧客にも影響が及びます。担当者が変わった、社名が変わった、営業手法が変わったなどの変化により、顧客から反発を受け、顧客が離れる可能性も想定されるでしょう。
PMIに時間や手間がかかる
合体して1つの会社になる合併では、シナジー効果を最大化させるため、PMIをより早急に進める必要があります。経営統合に比べて時間や手間がかかり、統合作業の負担が大きくなりやすい点がデメリットです。
現場の負担が大きくなり、本来の業務に支障をきたす可能性もあるでしょう。早い段階から統合に向けた計画を準備することが必要です。
売り手企業が経営統合と合併のどちらを選ぶかの視点
売り手企業として、経営統合と合併のどちらを選ぶべきでしょうか。ここでは、売り手企業が判断するための視点を解説します。
売り手企業にとってメリットが多いのはどちらか
売り手企業にとって経営統合と合併のどちらを選ぶかを考える前提として、売り手企業が得られるM&Aのメリットをみていきましょう。主なメリットは、次のとおりです。
- 事業承継における後継者不在を解決できる
- 社長の地位を維持しやすい
- 従業員の雇用や取引先を維持できる
- 事業の成長・拡大が期待できる
これらのメリットをより多く得られる手法を選ぶことが、M&Aを成功させるポイントです。
後継者不在の問題は、経営統合・合併のどちらでも解決が可能です。
社長の地位や従業員の雇用・取引先の維持という点では、それぞれの会社の独立性が保たれる経営統合が適しています。また、事業の成長・拡大を目指す場合、複数の法人が1つの法人となって事業や会社の規模が拡大する合併を選ぶ方がよいといえるでしょう。
売り手企業にとってデメリットが多いのはどちらか
売り手企業にとってデメリットが多いのは、経営統合と合併のどちらかという視点からもみてみましょう。
M&Aにおける売り手企業のデメリットは、以下のとおりです。
- 従業員の雇用条件が悪化する
- 取引条件の見直しで取引先との関係性が悪化する
- 従業員のモチベーションが低下する
- 優秀な人材が離職する
- 企業文化や社風などの不一致などにより、組織がうまく機能しない
合併は1つの会社に統合するため、制度の変更や社員の雇用維持が難しい場合があります。各会社の社風が相容れないという問題が起こる可能性もあるでしょう。これに対し、経営統合は基本的に各会社の制度に変化はなく、制度や社風にも影響が及びにくいと考えられます。従業員のモチベーション低下や離職も起こりにくいでしょう。
売り手企業として重視することに対し、メリット・デメリットの多いのはどちらかを考えて選ぶと、判断ミスを抑えられます。
判断ミスをする場合とは
売り手企業がM&Aの手法について判断ミスをしてしまう理由には、他の選択肢を吟味しなかったり、判断基準を明確にしていなかったりすることがあげられます。それぞれの手法について特徴やメリット・デメリットを理解していなければ、自社に合う手法を選べない可能性があるでしょう。
また、何を重視するか判断基準を明確にしていなければ、迷ったときに正しい判断ができないこともあります。
判断に迷うときは、M&A仲介会社や専門家に相談することもおすすめです。
経営統合の事例
国内の経営統合の事例をいくつか紹介します。また、経営統合によって生じたインパクト、統合後の見通しも紹介します。
マツモトキヨシ×ココカラファイン
ドラッグストアのチェーン店として知られるマツモトキヨシホールディングスとココカラファインは、資本業務提携から経営統合へと進んだ例として挙げられます。2020年に両社は資本業務提携を行い、2021年に経営統合を完成しました。新たに持株会社マツキヨココカラ&カンパニーが設立され、国内のドラッグストア業界でも圧倒的なシェアを占めています。
今後はデジタル戦略を推進し、オンライン注文と宅配に注力する予定とされています。また、国内だけでなくグローバル事業の展開も視野に入れているようです。
参照元:株式会社ココカラファイン「株式会社マツモトキヨシホールディングスとの経営統合に関するご案内」
ホンダ系部品会社×日立系部品会社
2021年、日立製作所の傘下企業である日立オートモティブシステムズと、ホンダの傘下企業であるケーヒン、ショーワ、日信工業の合計4社が経営統合し、日立Astemo株式会社の傘下企業になりました。なお、Astemoとは、新会社の意思でもある「Advanced Sustainable Technologies for Mobility」を略したものです。
この経営統合により、ホンダ系にとってはホンダ以外の販路拡大、日立系にとっては自動車関連のノウハウ獲得などのメリットが得られると期待されています。なお、統合会社の売上高は約1兆7,000億円、社員数は約75,000人と大規模です。自動運転やシェアリング分野における競争力が強化されることで、デンソーやボッシュなどのグローバルメガサプライヤーに対抗できるようになるでしょう。
参照元:日立製作所「日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワおよび日信工業は経営統合を完了し、日立Astemoとして営業開始」
伊藤ハム×米久
大手食品加工メーカーの伊藤ハムと米久は2016年4月に経営統合し、持株会社「伊藤ハム米久ホールディングス株式会社」を設立して傘下に入りました。伊藤ハム、米久それぞれ独自のブランド力をそのままに、両者が培ってきた技術やノウハウを融合させてシナジー効果を発揮し、社会や市場の変化にも対応できる強い企業を目指す試みです。
統合にあたり「私たちは事業を通じて、健やかで豊かな社会の実現に貢献します」をグループ理念として、事業活動を継続しています。
統合から5年目を迎えた2020年には、売上の拡大や生産の最適化、物流の効率化などで一定のシナジー効果を創出できたということです。
Zホールディングス×LINE
2021年3月、Zホールディングス(ZHD)はLINEとの経営統合を行い「新生・Zホールディングス」が誕生しました。
統合により新たに誕生したZHDグループは、国内で200以上のサービスを提供し、国内総クライアント数は約1,500万、自治体との総連携案件数は3,000以上となっています。
統合後の国内サービス利用者数は延べ3億人で、グループ従業員は2.3万人を擁する国内最大規模のインターネットサービス企業グループとなりました。
さらにZホールディングスは2023年10月、中核子会社のLINEとヤフーの3社を中心に合併しています。存続会社をZホールディングスとして、新商号は「LINEヤフー株式会社」として新たなスタートを切りました。
参照元:Zホールディングス株式会社「新生Zホールディングス、始動」
参照元:Zホールディングス株式会社「完全子会社との合併方針に基づく再編内容の詳細決定ならびに 当社の商号変更および定款の一部変更(商号・事業目的の変更)のお知らせ」
合併の事例
合併の国内事例をいくつか紹介します。成功あるいは失敗の過程から、合併を成功させるためのヒントをつかんでください。
三越×伊勢丹
国内大手百貨店である三越と伊勢丹は、最初は経営統合により関係を強化しました。本社機能の統合や物流、人材、関連事業などをシェアし、2010年にはシステムとカードの統合を完了しています。
その後、三越を存続会社として吸収合併を実施し、三越伊勢丹として再スタートしました。三越伊勢丹グループに属する国内百貨店に対してセントラル支援機能を果たし、グループ全体の利益の最大化を目指します。また、各部門の効率化や人員配置、営業の一本化により、効率的な運営体制の構築も実現します。
なお、三越伊勢丹では、今までの三越ブランド、伊勢丹ブランドを残したままの形で吸収合併を実施しました。これはそれぞれのブランドに固定顧客がついていることに配慮した結果で、合併による顧客離れを回避する役割も果たしています。
山之内製薬×藤沢薬品工業
2005年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併し、アステラス製薬が誕生しました。業界第二位の製薬会社として確固たる地位を築いただけでなく、合併当初から新薬開発などに積極的に取り組み、さまざまな企業合併事例の中でも成功した事例といわれています。
たとえば、製薬領域ではがんの治療薬がトレンドとなっています。しかし、がんの治療薬の開発はコストがかかり、取り掛かることすら難しい会社も少なくありません。実際に合併前の山之内製薬、藤沢薬品工業の規模では、がんの研究開発から販売までをトータルに行うには体力的に難しいともいわれていました。
しかし合併することで研究開発にかけられる資金規模が増えただけでなく、他社との協力関係も強化しやすくなり、スムーズな開発が実現できています。実際に2012年に販売を開始した前立腺がん治療薬は年商1,000億円超の規模に育ち、グローバルな競争力も獲得しています。
三菱UFJリース×日立キャピタル
大手総合リース会社の三菱UFJリース株式会社は、2021年4月、大手総合ファイナンス会社である日立キャピタルと吸収合併を行いました。三菱UFJリースを存続会社、日立キャピタルを消滅会社とする合併で、2021年3月期の総資産ではオリックスに次ぐ業界2位の企業となっています。
合併後の新会社の商号は「三菱 HCキャピタル株式会社」で、リース業界トップクラスの規模となっています。
合併の狙いは、相互補完です。航空機・エンジンリースなどアセットビジネスに強い三菱UFJリースと、販売金融に強い日立キャピタルが、それぞれの得意分野を活かしてシナジー効果を期待したものとされています。
参照元:三菱UFJリース株式会社・日立キャピタル株式会社「経営統合後の主要株主に関するお知らせ」
新日鉄×住友金属
大手鉄鋼メーカーの新日鉄と住友金属は、2012年10月に合併し、新日鐵住金株式会社が誕生しました。社名は2019年4月に「日本製鉄株式会社」に変更されています。
「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」を目指した合併で、供給体制の構築や世界をリードする技術先進性の発揮、競争力の強化などを目的に実施されました。
2020年4月には日鉄日新製鋼株式会社と合併し、製鉄所組織を一部統合・再編成するなど、さらに組織としての体制を強化しています。
参照元:日本製鉄株式会社「沿革」
経営統合・合併のプロセス
経営統合や合併はM&Aの手法の1つです。M&Aは以下のプロセスで進めていきます。
- 基本的な方針と目標を決定する
- プロジェクトチームを設立する
- 課題と対策を洗い出す
- 経営統合・合併後の事業計画を立てる
それぞれのプロセスについて説明します。
1.基本的な方針と目標を決定する
方針がはっきりしないまま、経営統合ありき、合併ありきでは、M&Aの成功は難しいでしょう。まずはM&Aにより何を実現したいのか方針を明確にし、そのためにはどのような方法を選択できるのか関連する会社や社内で話し合うことが必要です。
たとえば、事業規模を大きくしたいのであれば、経営統合よりも会社間のシナジー効果を得られる合併を検討できます。対象となる会社の規模に違いがあるときは吸収合併なども検討できますが、社名をどうするのか、事業所などや業務分野をどのように整理するのかなどの課題が残ります。
2.プロジェクトチームを設立する
経営統合・合併に向けたチームを設立します。社内で専門的に担当するスタッフを決めるだけでなく、M&A仲介会社にも相談し、具体的なスケジュールを組んでいきます。
なお、M&A仲介会社はM&Aをスムーズに進めるだけでなく、M&Aの相手企業を探す役割も果たす会社です。経営統合や合併などを検討しているものの相手が決まっていない場合も、M&A仲介会社に相談してみましょう。
3.課題と対策を洗い出す
経営統合と合併により、現在抱えている問題の解決を期待できます。しかし、経営統合・合併をすることで新たな課題が生じることもあるため注意が必要です。
たとえば合併する場合であれば、部署ごとの選別が必要になります。残せないと考える場合も、それらの消滅部署が担当していた顧客へのフォローは残ります。経営統合・合併を実施する前に解決すべき課題を洗い出し、適切な対策を練っておきましょう。
また、具体的な手法も選択します。新たに持株会社を設立する株式移転方式を用いるのか、既存の会社が株式を交換する株式交換方式を用いるのか決定します。
4.経営統合・合併後の事業計画を立てる
経営統合・合併後の事業計画を立てておくことも必要です。たとえば経営統合は比較的会社の組織に影響が及びにくいM&Aの手法ですが、新規に設立されたホールディングスの傘下企業になることで、取引先との関係が変わることもあります。事業をどのように進めていくのか明確に計画を立て、社内で共有することはもちろんのこと、取引先や顧客にも周知することが重要です。
まとめ
業績の回復や後継者不在の解消などでM&Aを検討する際、経営統合や合併の選択肢があります。経営統合はそれぞれの会社が独立性を保ち、現場の混乱が起こりにくい点がメリットです。合併は、事業拡大やシナジー効果を目的にする場合に適しています。
どちらを選べばいいか迷うときはそれぞれの違いやメリット・デメリットを確認し、自社にとってベストな方法を見極めましょう。他の選択肢を吟味して、何を重視するか判断基準を明確にすることも大切です。
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合併や経営統合などM&Aを成功させるためには、M&A仲介会社の利用がおすすめです。レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、各領域に特化したM&Aサービスを提供しています。幅広い領域において高い専門性と実績を持つコンサルタントが在籍し、相談から成約まで一貫してサポートを行っています。
売り手企業として合併や経営統合のどちらを選ぶかなどの相談にも無料で対応していますので、お気軽にお問い合わせください。