このページのまとめ
- 経営資源集約化税制は、中小企業のM&Aを促進するための制度
- 経営資源集約化税制を用いることで、税控除を受けながらM&Aを行える
- 経営資源集約化税制を利用できるのは、条件を満たした中小企業のみである
- さまざまな相談窓口があるため、自社に適した相談窓口を選ぶことが大切
「経営資源集約化税制を利用してM&Aを行いたいけれど、どのような制度だろうか?」と疑問に思う方もいることでしょう。経営資源集約化税制は、中小企業のM&Aを後押しする国の制度です。
本記事では、経営資源集約化税制とはどのような制度なのか、またその目的、得られるメリット、対象となる条件、さまざまな相談先を詳しくお伝えします。経営資源集約化税制の利用を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
経営資源集約化税制とは
経営資源集約化税制とは、中小企業の経営資源の集約化を後押しするために2021年(令和3年)8月2日からスタートした制度です。
正式名称は「中小企業の経営資源の集約化に資する税制」です。
具体的な税制措置としては、設備投資減税(中小企業経営強化税制)と、損金として充てられる準備金の積立(中小企業事業再編投資損失準備金)を2本柱としています。
経営資源集約化税制によって税控除を行うことで、中小企業のM&Aを促進させる狙いがあります。
参照:中小企業庁「中小企業の経営資源の集約化に資する税制 概要・手引き」
経営資源集約化税制の主な3つの目的
経営資源集約化税制は、ポストコロナ・ウィズコロナの時代に、中小企業を支援するために創設されました。主な目的は、次の3つです。
- M&Aに伴う費用リスクを低減
- M&A後の企業成長促進
- 新型コロナウイルスや2025年問題への対応
それぞれの目的について詳しく見ていきましょう。
1.M&Aに伴う費用リスクを低減
経営資源集約化税制の目的は、M&Aに伴う費用リスクを低減することによりM&A促進を図ることです。買収側はこの制度を用いることにより、投資額の一部を損金算入できたり設備投資のための費用を控除できたりと、税負担を軽減しながらM&Aを進められます。税負担を軽くできれば、M&A実施後の経営を早い段階で安定させられます。
2.M&A後の企業成長促進
経営資源集約化税制は、M&A後の企業成長の促進も目的の一つとしています。買収側にとってM&Aはリスクを伴うため、事業内容や雇用などを考え、実行に踏み出せない企業は少なくありません。
しかし経営資源集約化税制を活用すれば、費用リスクの回避だけではなく、M&A後の企業の成長も期待できます。なぜなら、M&A後の設備投資減税の対象が幅広く設定されているためです。この制度はM&A後も引き続き支援を行い、企業の設備投資や雇用拡大を促します。
この設備投資減税については、対象設備と要件が細かく設定されているため、後ほど詳しく解説します。
3.新型コロナウイルスや2025年問題への対応
経営資源集約化税制の目的の一つは、M&Aにより、新型コロナウイルスで打撃を受けた企業の存続や後継者不足に悩む企業の事業承継を推し進めることです。
経営資源集約化税制が導入された背景には、新型コロナウイルスや2025年問題が挙げられます。新型コロナウイルスは、日本だけでなく世界中で猛威をふるい、経済に大打撃を与えました。とくに中小企業への影響は大きく、経営を断念する会社が少なからずありました。
また、2025年問題も差し迫った課題です。2025年問題とは、超高齢化社会を迎えるにあたり、社会保障費の急増などが見込まれる問題のことです。2022年から団塊世代が75歳に到達し始め、2025年には団塊世代のすべてが後期高齢者となります。2025年には、国民の5人に1人が後期高齢者という超高齢化社会へ突入します。
団塊世代に属する経営者は多く、事業承継に迅速に取りかかる必要があるものの、後継者が決まっていない企業が少なくありません。そのような企業は、黒字にもかかわらず経営を断念せざるを得ない場合もあります。
M&Aによる中小企業の統合や再編は、このような課題解決の足かがりとなるでしょう。
経営資源集約化税制を活用するメリット
経営資源集約化税制を活用するメリットは、次の3つです。
- 設備投資の税控除
- 従業員給与の増額による税控除
- 早期の損金計算による資金繰りの改善
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
設備投資の税控除
経営資源集約化税制を活用する一つのメリットは、設備投資の税控除を受けられる点です。M&Aにかかわる設備投資を行った場合、即時償却または取得価格の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を受けられます。
たとえば即時償却を選択した場合、500万円の設備を購入したとすると、その年度に500万円の費用計上が可能です。同じ条件で税額控除を選んだ場合は、その年度の税金から50万円を減額できます。
設備投資減税については、さらに詳しく後述していますので、そちらも参考にしてください。
従業員給与の増額による税控除
M&Aを実施後に、支給給与の総額が上がるケースは少なくありません。企業にとって経費が上がることはデメリットであり、M&Aをためらう理由の一つです。
しかし経営資源集約化税制には、雇用確保を促進するための税制が設けられており、安心してM&Aに取り組めます。具体的には、M&A後に支給給与の総額が前年比で2.5%以上上昇した場合には、増加分の25%を、対前年比で1.5%以上上がった場合は増加分の15%を控除することが可能です。
M&Aは企業だけでなく、そこで働く従業員にとっても大きな変化であり不安になる場合が多いものです。この税制を活用すれば、従業員が快適に働ける環境を維持できるでしょう。
早期の損金計算による資金繰りの改善
早期に損金計算することにより、資金繰りの改善を見込めることもメリットの一つです。従来は認められていなかった株式取得のための費用計上が可能となり、支払う税金を減額できます。このことにより、早い段階で資金繰りの改善を期待できます。
税制対象になる中小企業の3つの条件・準備
経営資源集約化税制の対象となる中小企業の条件は以下の3点です。
- 中小企業等経営強化法で定められた「特定事業者等」である
- 租税特別措置法で定められた「中小事業者等」である
- 経営力向上計画の認定を受けている
これらの条件を満たした企業が、この税制を受けられます。3番目の経営力向上計画の認定を受けるためには、事前準備が欠かせないため、内容をきちんとおさえておきましょう。
1.中小企業等経営強化法で定められた「特定事業者等」である
「特定事業者」とは、常時使用する従業員数が2,000人以下の法人または個人のことです。
協同組合などの組合も対象ではありますが、制度によって対象に含まれる組合が異なるので事前に確認する必要があります。
参照:令和4年4月 中小企業庁 財務課「中小企業の経営資源の集約化に資する税制 概要・手引き」
2.租税特別措置法で定められた「中小企業者等」である
「中小企業者等」とは、具体的には以下のいずれかの条件を満たす企業のことを指します。
- 資本金又は出資金の額が1億円以下の法人
- 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人または個人
ただし「大企業の子会社は対象外とする」などの細かい条件もあります。
また、組合の場合も「特定事業者等」同様、制度次第で対象に含まれる組合が違うため確認しましょう。
経営資源集約化税制を受けたい場合「特定事業者等」と「中小事業者等」の両条件を満たす必要があります。いずれかの項目を満たさない場合は、この制度を受けられません。
参照:中小企業庁「中小企業の経営資源の集約化に資する税制 概要・手引き」
3.経営力向上計画の認定を受けている
対象となるためには、経営力向上計画の認定を受ける必要があります。経営力向上計画認定の手順は以下の通りです。
まず、自社の経営力を向上するために実施する計画を策定します。つぎに、各事業分野(業種)を所管する大臣、または地方支分部局長に向けて申請書を提出します。主務大臣から計画認定書・計画申請書の写しが交付されると認定完了です。
申請受理から認定までの標準期間は30日程度かかるため、前もって準備が必要です。
参照:中小企業庁「経営力向上計画策定の手引き」
設備投資減税(中小企業経営強化税制)とは
設備投資減税は、設備の目的に応じて下記のA類からD類までに分けられます。とくに、D類の「経営資源集約化設備」は、M&Aによる経営資源の集約化を対象としている分類です。
- A類型:生産性向上設備
- B類型:収益性強化設備
- C類型:デジタル化設備
- D類型:経営資源集約化設備
この内容と申請方法について解説します。
設備投資減税の内容
設備投資減税とは、企業が経営力向上計画に基づいた事業承継を行った後に取得・製作・建築した設備の費用を即時償却、または税額控除できる制度です。
即時償却を選んだ場合、設備費用の全額について、設備を取得した年度の経費として計上が可能です。
税額控除を選んだ場合は、取得価格の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)を税額の対象から控除可能です。
設備投資減税を受ける条件・準備
設備投資減税の要件は、類型によって異なります。それぞれが満たすべき条件は以下のとおりです。さらに設備投資減税を受けるためには、さまざまな書類を準備しなければなりません。早めに準備に取りかかることが大切です。
A類型(生産性向上設備)
A類型の対象設備は、機械装置(導入時の価格が160万円以上/10年以内)、測定工具および検査工具(30万円以上/5年以内)、器具・備品(30万円以上/6年以内)、建物付属設備(60万円以上/14年以内)、ソフトウェア(70万円以上/5年以内)です。
そのうえで、一定期間内に販売されたモデルであり、経営力の向上に資するものの指標が旧モデルと比べて年平均1%以上上がっている設備である必要があります。
B類型(収益性強化設備)
B類型の対象設備は、機械装置(160万円以上)、工具(30万円以上)、器具製品(30万円以上)、建物付属設備(60万円以上)、ソフトウェア(70万円以上)です。
さらに、年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれる設備であることが必要です。
C類型(デジタル化設備)
C類型の対象設備は、機械装置(導入時の価格が160万円以上)、工具(30万円以上)、器具設備(30万円以上)、建物付属設備(60万円以上)、ソフトウェア(70万円以上)です。
上記に加えて、事業を進める過程において「遠隔操作」「可視化」「自動制御化」のいずれかを実現するための設備である必要があります。
D類型(経営資源集約化設備)
D類型の対象設備は、修正ROA(総資産利益率)または有形固定資産回転率を一定以上向上させる設備である必要があります。
A類型は、要件を満たしているかどうかについて工業会などが確認します。また、B類型・C類型・D類型は、それぞれの事前確認機関を通したうえで、経済産業局(経済産業大臣)が確認する仕組みです。
分類ごとに要件や事前の確認機関が異なるため、自社が当てはまる分類の要件を満たす必要があります。
設備投資減税の申請方法
設備投資減税の申請方法は以下のとおりです。
- 証明書の発行あるいは経済産業局による認定
- 経営力向上計画の申請
- 設備の取得
- 必要書類を準備し、税務署に申請
必要な書類には発行までに時間がかかるものもあるので、早めに準備をしましょう。
参照:中小企業庁「中小企業の経営資源の集約化に資する税制 概要・手引き」
準備金の積立(中小企業事業再編投資損失準備金)とは
中小企業事業再編投資損失準備金とは、要件を満たした企業がM&Aを行う際に、株式取得にかかる費用のうち最大70%までを損金算入できる制度です。ここでは、この中小企業事業再編投資損失準備金について詳しく説明します。なお、「中小企業事業再編投資損失準備金」を「準備金」と省略して説明しています。
参照:中小企業庁「中小企業の経営資源の集約化に資する税制 概要・手引き」
準備金の積立の内容
準備金の積立は、M&A後に不安定になりがちな買収側の経営をサポートするのが目的です。M&Aでは多くの場合、株式取得を現金で行うため、買収企業は一時的に経営状態が不安的になりやすくなります。加えて、デューデリジェンスにより経営上のリスクや簿外債務が見つかる可能性もあり、想定外のリスクにもさらされます。
そこで、買収企業のリスクを軽減するために設けられたのが準備金の積立です。買収側は、株式取得額の最大70%を準備金として積み立て、同額を損金算入することにより、一時的な節税効果を得られます。準備金は5年間の据置期間の後、5年間に渡り均等に取り崩すと同時に同額を益金に算入します。
なお、5年間の据え置き期間中に、簿外債務などが発覚し減損処理を行ったり取得した株式を売却したりした場合は、同額を益金に算入しなければなりません。
準備金の積立を活用すれば、M&A後の一時的なキャッシュフローの悪化を回避しながらM&Aを実施することが可能です。
準備金の積立対象の3つの条件・準備
準備金積立対象の条件は以下の3つです。申請のためには、余裕を持った準備が大切です。
- 経営資源集約化税制の対象企業である
- 経営力向上計画にデューデリジェンスの内容を含む事業承継等事前調査に関する事項が記載されていること
- 取得価額10億円以下の株式取得によるM&Aであること
準備金として認められる金額は取得対価の70%までとされており、任意の金額が積み立て可能です。
認定時には、事前調査を実施するかどうか「事業承継等事前調査チェックシート」を元に確認します。
参照:中小企業庁「中小企業の経営資源の集約化に資する税制 概要・手引き」
準備金の積立の申請方法
申請時に必要な手順は、以下のとおりです。
- 経営力向上計画について策定し認定を受ける
- 「事業承継等事前調査チェックシート」を添付する
- 事業承継等の実施及び事業承継等事前調査の内容について報告する
- 確認書の交付を受ける
その後、税務署にて税務申告をして完了です。申請には、必要書類の写しを添付します。
経営資源集約化税制の適用期間
経営資源集約化税制の適用期間は、それぞれの措置によって適用期間が異なります。
申請期間としては、設備投資減税に関する経営力向上計画の認定は、2025年(令和7年)3月31日までです。
また、準備金の積立に関する経営力向上計画の認定は2024年(令和6年)3月31日までに申請した事業者が対象として扱われます。
申請から認定までにかかる標準期間は30日間程度であるため、どれだけ遅くとも前月末までには申請しておく必要があります。
参照:中小企業庁「中小企業の経営資源の集約化に資する税制 概要・手引き」
経営資源集約化税制を利用する際3つのポイント
経営資源集約化税制を利用する際には、以下の3つのポイントを押さえて活用しましょう。
要項や期限をよく確認して申請することで、リスクを低減してM&Aを実施できます。
1.準備金の積立の申請締め切りが間近である
準備金の積立は、2024年(令和6年)3月31日までに経営力向上計画の認定を受けたものが対象です。締め切りが間近であるため、M&Aを検討している企業や個人は早めの準備が必須です。経営資源集約化税制の活用を迷っている方は、M&Aの専門家への相談がおすすめです。
2.準備金については課税の繰り延べであり、免税ではない
準備金は、課税を繰り延べる制度であり、免税制度ではありません。
中小企業事業再編投資損失準備金を適用すると、任意の金額を積み立て可能です。限度は、株式の取得価額の70%までであれば、自由な金額が設定できます。積立金を取得した年は法人税の負担を減らすことが可能です。
しかし、取り崩し時には収益として計算されます。
積立金は、あくまでも税金を支払うタイミングについて調整できる制度です。M&A時に支払う義務がなくなったとしても、いずれは支払うタイミングが来ます。
現金の流出をコントロールできるため、資金の調達に悩まれている方は活用することがおすすめです。
3.M&A前後の多忙な時期に煩雑な書類作成が必要になる
M&A前後は、多くの手続きや書類準備が必要です。相手企業との打ち合わせもタイトなスケジュールで組まれます。
その忙しいタイミングで、さらに経営力向上計画や事業承継等事前調査チェックシートなどの書類作成が必要です。また、書類によって申請期限が異なるため、よく確認してください。どの書類も期限が切れないように前もって準備します。
タイトなスケジュール管理になることを覚悟して用意をしましょう。
経営資源集約化税制を利用したM&Aに関する相談先
経営資源集約化税制を利用したM&Aを行う場合は、いくつかの相談先が候補として挙げられます。それぞれの相談先の強みや特徴は異なるため、自社にあった相談先を選ぶことが大切です。各相談先の主なメリットやデメリットは、次のとおりです。
相談先 | メリット | デメリット | |
M&A仲介会社 | ・相談からクロージングまでトータルな支援を受けられる ・多くの候補先から選べる | ・譲渡価格が希望よりも低く成立するケースがある ・仲介手数料が発生する | |
士業専門家 | 弁護士 | ・契約書作成など法的アドバイスを受けられる ・法的トラブルを解決できる | ・M&Aの実績が少ない傾向にある ・費用が高額である |
公認会計士や税理士 | ・M&Aに必要な財務面や税務面の専門的なアドバイスを受けられる | ・M&Aの実績が少ない傾向にある ・支援領域が限られる | |
金融機関 | ・資金調達の専門的なアドバイスを受けられる | ・小規模のM&Aに対応していない場合がある | |
商工会・商工会議所 | ・地域密着型で相談しやすい | ・商工会議所の会員になる必要がる | |
事業承継・引継ぎ支援センター | ・全国に相談窓口があり相談しやすい ・公平なアドバイスをもらえる | ・事業承継以外のM&Aには不向きである ・スピード感に欠ける |
次に、それぞれの相談先について詳しく見ていきましょう。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、名前のとおりM&Aの仲介をメインとするため、総合的な支援が特徴です。売却側と買収側の双方と契約し、中立的な立場で交渉をまとめます。両企業と契約することで、双方の希望条件を考慮した妥協点を提案できます。
相談からクロージングまで、ワンストップでトータルな支援を受けられる点も大きなメリットです。また、着手金が発生しない報酬形態の仲介会社であれば、初期費用を抑えられます。
今回のテーマである経営資源集約化税制は、事務手続きが煩雑なためスケジュール管理が重要です。本筋であるM&Aを進めながら、諸手続きをスピード感を持って行わなければなりません。トータルでのサポートが必要なため、経営資源集約化税制を利用する場合はM&A仲介会社が適しています。
以下に、M&A仲介会社の具体的なメリットとデメリットをわかりやすく表にまとめました。
メリット | デメリット |
・M&Aの知見やノウハウが豊富である ・相談からクロージングまでトータルな支援を受けられる ・独自のネットワークを持っているため、多くの候補先から選べる ・交渉がスムーズに進みやすい ・経営資源集約化税制について相談できる | ・着手金や中間手数料が発生する場合がある ・希望よりも低い売却額になる場合がある |
士業専門家
士業専門家に依頼する最も大きなメリットは、それぞれの分野における高度なサポートを受けられることです。ここでは、弁護士と公認会計士や税理士に依頼するメリットとデメリットを詳しく解説します。
弁護士
弁護士に依頼するメリットは、高度な法的なサポートが得られる点です。M&Aの際には、秘密保持契約などのさまざまな契約を締結しなければなりませんが、弁護士であれば安心して任せられます。万が一、訴訟に発展しそうなケースの場合も、法的な立場から対処してもらえます。
しかしながら、財務や税務面での知見が不足している点がデメリットです。M&Aに欠かせない企業価値の算定や収益性を分析するデューデリジェンスには、税務や財務、会計の知識が不可欠です。そのため弁護士に依頼する場合、ほかの相談先も併用する必要があるでしょう。
弁護士に依頼するメリットやデメリットをわかりやすく表にまとめています。
メリット | デメリット |
・高度な法的アドバイスを受けられる ・契約書作成を安心して任せられる ・トラブル発生時に法的解決を図れる | ・支援領域が限られる ・M&Aのノウハウが足りない場合がある ・費用が高額になりがちである |
公認会計士や税理士
公認会計士や税理士は、企業価値の算定や財務デューデリジェンス、税金対策などM&Aにおける必要な知識が豊富です。経営資源集約化税制についての相談先としても適しています。日頃から付き合いのある公認会計士や税理士であれば、内情をよく知っているため相談しやすいしょう。
しかし、M&A自体を扱う事務所はそれほど多くなく、場合によってはほかの相談窓口と併用して依頼する必要があります。とくに相手先企業を見つける場合、限られたネットワーク内から探すことになり、期待したような相手が見つからないケースもあります。
公認会計士や税理士に依頼するメリットとデメリットは、次のとおりです。
メリット | デメリット |
・財務や税務などM&Aに必要なアドバイスを受けられる ・普段から付き合いがあれば相談しやすい ・経営資源集約化税制について相談できる | ・支援領域が限られる ・M&A自体の案件数が少ない場合がある ・期待したような相手先が見つからない場合がある |
金融機関
金融機関に依頼するメリットは、資金調達の相談ができることです。買収側の場合、買収資金の調達について金融機関への相談は欠かせません。取引している金融機関の支援が得られれば、M&Aを実行に移しやすいでしょう。
また金融機関は、M&Aの専門家や各士業との連携体制を構築しているため、必要に応じて専門家を紹介してもらえます。
ただし、大手の金融機関は大型案件のみを取り扱っている場合が多く、中小企業やスタートアップなど比較的小規模の案件を受けつけていないことがあります。ほかにもアドバイザリー形式を採用している金融機関は、費用が高額になるケースがあるため注意が必要です。
金融機関のメリットやデメリットは、次のとおりです。
メリット | デメリット |
・M&A専門の相談窓口があれば、知識や経験が豊富な専門家に相談できる ・資金調達や融資の相談ができる ・普段から取引があれば相談しやすい ・各相談窓口や士業と連携を図りやすい | ・中小規模の案件に対応していない場合がある ・アドバイザリー形式の場合は費用が高額 |
商工会・商工会議所
商工会や商工会議所などの公的機関は、地域の商工業の改善や発展をサポートするのが役目です。そのため売却側と買収側の双方が中小企業の場合、商工会などの公的機関は相談窓口としておすすめです。通常、相談は無料で、必要があれば各分野の専門家を紹介してもらえます。
一方、商工会や商工会議所に相談するデメリットは、商工会議所の会員になるために費用がかかることです。また公的機関のため、民間企業よりもスピード感やサービスが劣る場合があります。
商工会や商工会議所に依頼するメリットとデメリットをわかりやすく表にまとめています。
メリット | デメリット |
・中小企業のM&A案件について詳しい ・地域に密着した情報を得られる ・公的支援制度のアドバイスを受けられる ・会員であれば相談は無料である ・経営資源集約化税制について相談できる | ・会員でなければ依頼できない ・入会費や会費がかかる ・スピード感やサービスが民間企業よりも劣る場合がある |
事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターは、後継者問題を抱える中小企業や小規模事業者を対象とした事業承継をサポートする公的機関です。事業承継に関するアドバイスや情報提供、相手先企業の紹介などを行っています。
全国に窓口があるため、相談しやすいのがメリットです。相談は無料で、第三者目線による公平なアドバイスを得られます。小規模のM&Aにも対応可能です。
ただし、事業承継を目的とした機関のため、複雑なスキームを要するM&Aには対応出来ない点がデメリットです。
事業承継・引継ぎセンターのメリットやデメリットは、次のとおりです。
メリット | デメリット |
・事業承継の案件に強い ・全国に窓口があり相談しやすい ・公平なアドバイスを得られる ・経営資源集約化税制について相談できる | ・サポート内容が限られる ・スピード感のある支援が難しい ・複雑なスキームには対応できない |
まとめ
経営資源集約化税制は設備投資減税や準備金の積立などの税制措置が取られるため、資金不足を心配する中小企業もM&Aに取り組みやすくなります。またこの制度を活用すれば、費用リスクを軽減でき、M&A後の事業拡大や雇用確保を図りやすくなるでしょう。国が設けた税制措置を賢く活用するためにも、自社にあった相談窓口への相談が欠かせません。
M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、経営資源集約化税制をはじめとした公的制度にも精通しています。各領域における実績豊富なコンサルタントが相談にあたるため、安心して任せられます。
料金体系は、M&Aの成約時に料金が発生する完全成功報酬型です。M&A成約まで、費用を心配せずご相談いただけます(譲受側のみ中間金あり)。
相談に関しては無料で実施しているため、経営資源集約化税制についてもお気軽にお問い合わせください。