このページのまとめ
- オリジネーション(Origination)とはM&Aの前半部分の過程全体を指す
- オリジネーションにはM&Aの戦略立案やスケジュール作成などが含まれる
- ソーシングはオリジネーションの前段階、エグゼキューションは後段階
- M&Aで実現したいことの優先順位をつけるとオリジネーションを成功させやすくなる
- オリジネーション力の高さに注目してM&A仲介会社を選ぶとM&Aが成功しやすくなる
M&Aにはさまざまな過程が含まれていますが、その中でも重要度が高いのが「オリジネーション」と呼ばれる前半部です。M&Aの交渉資料の作成や戦略立案などが含まれます。
本記事では、オリジネーションに含まれる業務や成功させるポイントについて詳しく解説します。また、混同されがちな「ソーシング」や「エグゼキューション」も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
M&Aにおけるオリジネーションとは?
オリジネーション(Origination)とは、マッチングやM&Aの提案、調査など、M&A全体の前半部分を指す言葉です。元々はM&Aアドバイザーにとっての業務分類の一つで、M&Aの業務全体をソーシングとオリジネーション、エグゼキューションに分けるケースがあります。それぞれの違いは以下をご覧ください。
ソーシング | M&Aの案件を発掘する業務(オリジネーションと同義の場合あり) |
オリジネーション | 交渉資料の作成やスケジュール作成などのM&A開始に必要な業務 |
エグゼキューション | デューデリジェンスや契約締結などのM&A成立に必要な業務 |
ソーシングから、オリジネーション、エグゼキューションと進みます。また、オリジネーションを担当するM&Aアドバイザーを、オリジネーター(Originator)と呼ぶこともあります。
ソーシングとの違い
ソーシング(Sourcing)とは、M&Aの案件を発掘する過程です。なお、各業務は明確に分かれているわけではないため、重複が生じることもあります。M&A仲介会社によっては、オリジネーションに含められることの多いマッチング業務をソーシングの範囲とするケースがあります。
いずれにしても、ソーシングはM&Aの初期段階を指すことが一般的です。区分や呼び方に迷ったときは、以下を参考にしてください。
ソーシングとオリジネーションを分ける場合 | オリジネーション前の行動をソーシングと呼ぶ |
ソーシングとオリジネーションを分けない場合 | ほぼ同義語。いずれもM&Aの前半部分を指す |
エグゼキューションとの違い
エグゼキューション(Execution)とは、基本合意締結後に実施する業務全体を示す言葉です。一般的には、M&Aの後半部分の業務を指します。たとえば、デューデリジェンスや最終契約書の締結、クロージングなどが含まれます。
ただし、他の用語と同様、明確な定義があるわけではないため、M&A仲介会社によって分け方が異なる点に注意が必要です。また、それぞれの業務内容に重複が生じることもあります。
オリジネーションの目的
オリジネーションは、次の目的で実施します。
- 売り手と買い手をマッチングさせる
- 売り手と買い手にメリットのあるM&Aを計画する
それぞれの目的について解説します。
売り手と買い手をマッチングさせる
そもそもM&Aは、売り手と買い手がいなくては成り立ちません。オリジネーションにより売り手と買い手をマッチングさせることは、M&A成立のための必要条件といえます。
会社や事業を売却したい企業と、会社・事業を買収したい企業は数多く存在します。しかし、条件や目的が合わない企業をマッチングさせても、M&Aは成立しません。オリジネーターには、各企業の条件やM&Aによって達成したい目的を精査し、適切な相手企業を紹介することが求められます。
売り手と買い手にメリットのあるM&Aを計画する
オリジネーターは、売り手と買い手の双方にとってメリットのあるM&Aをプランニングしなくてはいけません。
どちらか片方、たとえば、繰り返しM&Aを実施する可能性がある買い手にとってのみメリットのあるM&Aを提案するなら、売り手の満足度は低くなってしまいます。徐々に売り手企業が減り、買い手に適切な相手企業を紹介できない状態になるかもしれません。
売り手・買い手の双方から「依頼してよかった」と評価されるためにも、オリジネーションの段階で双方にメリットのあるM&Aを計画することが大切です。
オリジネーションに含まれる業務
オリジネーションに含まれることが多い業務の内容について解説します。
オリジネーションに含まれることが多い業務 | ・売り手・買い手の情報収集 ・交渉資料の作成 ・M&A戦略の立案 ・M&Aのスケジュール作成 |
オリジネーションに含まれないことが多い業務 | ・デューデリジェンス ・M&Aの最終交渉 ・最終契約書の締結 ・クロージング |
売り手・買い手の情報収集
売り手と買い手をマッチングし、双方にとってメリットのあるM&Aを実現するには、売り手と買い手について詳しく理解しておくことが必要です。資本金や業種といった表面的な情報だけでなく、業態や経営状況、どのような経緯でM&Aを希望しているのかなども、時間をかけて調査します。
交渉資料の作成
売り手と買い手をマッチングしても、実際にM&Aを行う売り手・買い手が納得しなくてはM&Aは成立しません。オリジネーターには、オリジネーションの段階で、売り手・買い手の双方に相手企業を深く理解してもらうための資料を作成することが求められます。
M&A戦略の立案
M&Aの目的はさまざまです。また目的が異なると、適切な手法や相手企業も変わります。オリジネーションの過程では、売り手・買い手の双方の目的を正確に把握し、M&Aの戦略を立案することも必要です。
M&Aのスケジュール作成
売り手・買い手の双方が交渉に同意をした後で、具体的なM&Aのスケジュールを作成します。各経営者の都合を反映させるのは当然のことですが、急に変更が必要になった場合に備えて、以下のように時間的に余裕を持たせたスケジュールを組むことが大切です。
秘密保持契約の締結 | 20XX年5月20日~31日 |
M&Aの手法選定、企業価値算定 | 20XX年6月1日~30日 |
基本合意書の締結 | 20XX年7月1日~10日 |
デューデリジェンスの実施 | 20XX年7月11日~8月10日 |
最終交渉、最終契約書の締結 | 20XX年8月11日~31日 |
クロージング | 20XX年9月1日~30日 |
オリジネーションの手順
オリジネーションは以下の手順で進みます。
- M&Aの目標と戦略を立てる
- M&A仲介会社を選ぶ
- M&Aの相手を選定する(マッチング)
- M&Aの手法を提案する(ピッキング)
- M&Aの相手企業を調査・分析する
本来、オリジネーションはアドバイザー目線の言葉ですが、ここでは依頼する企業目線で流れを紹介します。
1.M&Aの目標と戦略を立てる
オリジネーターに相談する前に、M&Aによって実現したい目標とM&Aの戦略を決めておきます。
会社や事業を売却できても、「時間がかかりすぎた」「価格が低かった」「社内での力が予想以上に弱まった」などの不満があっては、M&Aに成功したとはいえません。M&Aの開始前に目標と戦略を明確にすることで、成功しやすい土壌を作りましょう。
2.M&A仲介会社を選ぶ
目標と戦略を明確にした後で、M&A仲介会社を選定します。
M&A仲介会社によって、得意とする分野や規模が異なります。過去の実績を参考に、企業規模や業種、業態が自社と合っているかチェックしてください。また、料金体系や利用会社による評判なども、わかる範囲で調べておきましょう。
3.M&Aの相手を選定する(マッチング)
M&A仲介会社に相談すると、相手候補となる企業を紹介してもらえます。M&Aの目標・戦略に合う企業を選び、より具体的な交渉を進めていきましょう。
マッチングの過程で重要な点として、自社の要求だけを主張しないことが挙げられます。おおよその目標・戦略に合致すると思われる相手に対して、丁寧に交渉を進め、妥協点を見つけていくことが大切です。
4.M&Aの手法を提案する(ピッキング)
M&Aの提案を「ピッキング」と呼ぶことがあります。オリジネーターから、どのような戦略や手法でM&Aを実施するかを提案してもらい、自社の目標・戦略に合っているか吟味してください。
なお、M&Aでは株式譲渡の手法が選択されることが多いですが、すべてのケースにおいて適切とは限りません。オリジネーターに手法ごとの特徴やメリット・デメリットを説明してもらい、適切なものを選択しましょう。
5.M&Aの相手企業を調査・分析する
適切な手法を選択しても、相手企業の目的や戦略と合っていないならば、M&Aが成功しない可能性があります。相手企業を詳しく調査・分析し、本当に相手として適切なのか判断しましょう。
オリジネーションの時点で相手企業について深く理解しておくことは、その後の最終交渉や最終契約にも大きく影響を及ぼします。オリジネーターとこまめに連携をとり、相手企業の理解に努めてください。
オリジネーションを成功させるためのポイント
オリジネーションを実施するのはオリジネーターの役割ですが、オリジネーターに依頼する企業の姿勢もオリジネーションの成功を左右します。オリジネーション、ひいてはM&A全体を成功させるためにも、M&A仲介会社に依頼する企業は次のポイントに注意してください。
- M&Aの目的を明確にする
- M&Aに必要な資料を準備する
- M&Aで重視することの優先順位を決める
- オリジネーション力の高いM&A仲介会社に依頼する
それぞれのポイントについて解説します。
M&Aの目的を明確にする
M&A仲介会社に依頼する前に、M&Aの目的を明確に決めておくことが大切です。たとえば、「後継者を見つける」「会社売却によって利益を得たい」「短期間で事業を成長させたい」など、企業によってM&Aの目的は異なります。
目的を正確にオリジネーターに伝えることで、より適切な相手企業候補を紹介してもらえます。M&Aをスムーズに進めるためにも、目的を明確に決めておきましょう。
M&Aに必要な資料を準備する
適切な相手企業を紹介してもらうためには、相手企業だけでなく自社も詳しい情報を提供することが必要です。
必要以上に情報を隠したままM&Aを進めても、適切な相手企業を紹介してもらえないだけでなく、目的を達成できません。自社の業態や活動内容、経営状況がわかる資料を準備し、オリジネーターに提出しましょう。
M&Aで重視することの優先順位を決める
M&Aにおいて明確な目的を決めることは重要ですが、すべて実現できるとは限りません。相手企業と交渉を進めていく中で、いくつか妥協する点も必要になります。
M&Aをスムーズに進めるためにも、あらかじめ重視するポイントの優先順位を決めておきましょう。たとえば、次のポイントなどにおいて優先順位を決めておき、オリジネーターに伝えておくと、相手企業との交渉を進めやすくなります。
- M&A成立の時期
- 売却価格、買収価格
- M&A完了後の経営に関する権利
- M&A完了後の従業員の扱い
オリジネーション力の高いM&A仲介会社に依頼する
オリジネーションではM&A成功の礎となる過程が含まれます。M&Aを成功させるためにも、次のポイントに注目してオリジネーション力の高いM&A仲介会社を見分けてください。
- 自社の希望を丁寧に汲み取ってくれるか
- M&Aの進行状況をこまめに連絡してくれるか
- 自社と相手企業の双方が納得できる妥協点を提案してくれるか
まとめ
M&Aの成功は、丁寧なオリジネーションにかかっているといっても過言ではありません。M&Aの目的と優先順位を明確にし、必要な資料を準備したうえで、オリジネーション力の高いM&A仲介会社に相談しましょう。
M&Aの成功のためにも、ぜひレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社にご相談ください。レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社では、丁寧な企業分析と目的を反映した相手企業のご紹介により、M&Aを成功に導くオリジネーションをご提供いたします。
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