MBOとは?メリット・デメリットとTOBとの違いをわかりやすく解説

2023年10月27日

MBOとは?メリット・デメリットとTOBとの違いをわかりやすく解説

このページのまとめ

  • MBOとは「マネジメント・バイアウト」の略称で、経営陣による自社企業買収を指す
  • MBOのメリットは「経営権の強化」「敵対的TOBへの対抗」「子会社の独立」など
  • MBOのデメリットは「資金調達手段の喪失」「経営陣への監視機能の減少」など
  • 自己資金のみでMBOを行えない場合が多く、SPCを利用するのが一般的

M&Aの手法の1つに「MBO」と呼ばれるものがあります。MBOとは「マネジメント・バイアウト」の略称です。簡単にいうと、経営陣が自社株式を買い集め、経営権を取得することですが、何のために行うのか、具体的には何をするのかをご存じでない方もいるのではないでしょうか。

本記事では、M&AにおけるMBOの意味と目的、デメリット、そのスキームなどを詳しく解説します。

WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

MBOとは?

MBOとは「Management BuyOut(マネジメント・バイアウト)」の略称で「経営陣買収」と和訳されます。買収対象となる企業の経営陣が資金調達を行い、自ら事業や自社株式を既存の株主から買収して、オーナー経営者になる手法です。

MBOを実施する目的

MBOを行う背景や目的は企業によってさまざまです。
近年では、短期的な株価の変動にとらわれずに中長期的な経営を行うために、非上場化を目指してMBOを行う会社も増えています。

また、少子高齢化の影響によって企業における後継者不足が深刻化しており、親族間での後継ぎが困難となっているケースも少なくありません。このような場合に、現在の経営陣に会社を売却して、事業を継承させることもあります。

「目標管理制度」のMBOとは異なる用語

組織マネジメントの手法のひとつに、同じく「MBO」と表記する用語があります。
表記が同じなので、混同しないように気を付けましょう。

簡単に説明すると、組織マネジメントの手法であるMBOとは、経営学者のピーター F. ドラッカーが唱えた目標達成のためのフレームワークです。
MBOは「Management By Objectives(マネジメント・バイ・オブジェクティブズ)」の略で、日本語では主に「目標管理制度」と呼ばれています。

本記事では、目標管理制度のMBOではなく、企業買収の手法を指す「MBO(マネジメント・バイアウト)」について分かりやすく解説します。

MBOとTOBの違い

MBOと混同しやすい手法にTOBがあります。TOBは「Take Over Bid(テイク・オーバー・ビッド)」の略称で、日本語では「株式公開買付」と訳されます。

これは、第三者が対象企業の株式を期間・価格・買付予定数などを公開して、証券取引所を通さずに既存株主から株式を買い付ける手法です。株式取得を目指す者は、対象企業とは関係のない第三者にあたります。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

MBOに類似した4つの企業買収方法

MBOに類似した買収方法は他にもあります。MBOは、企業の「経営陣(Management)」が自社株式を取得することを指しますが、どの立場で株式取得を目指すのかによって手法が分類されているのが特徴です。

ここからは、MBOに類似した企業の買収方法を4つ解説します。
解説する買収方法は「EBO」「MEBO」「MBI」「LBO」の4つです。

1.EBO(従業員による買収)

EBOは「Employee BuyOut(エンプロイー・バイアウト)」の略称で、「従業員による買収」を指します。株式取得を目指す人物は、対象企業の従業員となります。

自社の内情を知る従業員が買収することになるため、事業承継をスムーズに行いやすいといったメリットがあります。また、親族内承継が難しい場合において、後継者の選択肢を従業員にまで広げることで、より適切な人材を後継者として選任できます。

EBOで株式を買収する際は、金融機関やファンドから支援を受けることが一般的です。ただし、その支援を受けるための審査が厳しい点についてはデメリットといえます。

また、事業承継では前経営者が受けていた個人保証も引き継ぐこととなるため、資金や信頼不足によって承継が困難となる場合があります。

2.MEBO(経営陣と従業員による買収)

MEBOは「Management Employee BuyOut(マネジメント・エンプロイー・バイアウト)」の略称で、対象企業の経営陣と一部の従業員が一体となって株式取得を目指す手法です。

MEBOを行うと、その後の経営に従業員が加わることとなるため、従業員のモチベーションを高められます。従業員は業務や経営に関する当事者意識を強く持って働くようになるでしょう。

3.MBI(外部の人物による買収)

MBIは「Management BuyIn(マネジメント・バイイン)」の略称で、外部の人物による買収を指します。対象企業の株式取得を目指す人物は、ファンドや投資家、出資した金融機関などです。

外部の者が経営権を取得した後に、対象企業に経営の専門家を送り、経営の立て直しを図ります。なかでも、自社において優れた技術やブランド力はあるものの、経営に精通する人材が不足している会社において特に有効な手段とされています。

MBIの主な目的は、キャピタルゲインの獲得です。
経営の専門家の指導によって経営が上向きになると、企業の資産価値が高まります。その結果、株式を取得したファンドや投資者たちは、株式を売却した際に利益を得ることが可能です。

このMBIは、企業に関係ない第三者が株式を買収するという点ではTOBと共通していますが、目的が異なります。
TOBでは、対象企業の「経営に干渉する」ことが目的です。一方、MBIの目的は、いずれ株式を売却した際に「利益を得る」こととなっており、経営に関わることはあくまでプロセスの一つとされています。

4.LBO(譲渡企業による買収)

LBOとは「Leveraged Buyout(レバレッジド・バイアウト)」の略称で、譲受企業が譲渡企業の資産などを担保として、金融機関などから融資を受ける企業買収方法です。

LBOは譲渡企業の資産や、今後期待されるキャッシュフローなどを担保として資金調達を行う手法のため、少ない自己資金でも買収ができる点が特徴です。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

MBOの5つのメリット

ここでは、MBOのメリットについて解説します。
MBOを実施することによって得られるメリットは、主に以下の45つです。

1.経営権の強化

経営陣に株式が集中することで、ほかの株主や親会社の意向を汲まずに、自由な意思決定ができます。また、大きな判断においても、株主や親会社を通さず経営陣のみで行えるため、意思決定のスピード化が見込めます。変化の激しい市場において、柔軟でスピード感のある意思決定は非常に重要といえます。

さらに、非上場化することで、株価変動に縛られた短期的な利益を求める必要がなくなり、中長期的視点で経営計画を組めるようになります。

2.敵対的TOBへの対抗手段

MBOによって経営陣が自社株を保有すれば、敵対的TOBへの対抗策になります。
つまり、他社に同意なしで買収されることを防止することが可能です。

非上場株式の場合、株式の譲渡には株主の同意が必要とされているケースが一般的です。MBOを成立させて非上場企業となれば、敵対的TOBによる会社の乗っ取りや、意図しない人物に株式を取得されるリスクを回避できるようになります。

3.子会社の独立

前項では、意図しない買収の対抗策としてのMBOを解説しましたが、親会社からの円満な独立手段としてもMBOは用いられます。

MBOでは、事業の継続を前提として、子会社の社長や非中核の事業部の事業部長などが株式を取得することで、親会社から独立することが可能です。

いわば「のれん分け」に近い行為とされ、親会社としても子会社の切り離しによって経営資源を集中できるメリットがあります。

4.後継者問題の解決

中小企業で多くみられる親族経営は、子が親の跡を継がない、そもそも継ぐ子どもがいないなどの理由で、後継者不足に陥るケースも多数発生します。

このようなケースでは、MBOによって経営者親族から現経営陣に株式を売却して、経営権を移動させる手段を取ることがあります。

面識がない第三者に事業を売却するより、共に働いてきた経営陣に承継する方が、経営者親族にとっても従業員にとっても不安要素が少なくなると考えられます。

5.上場維持コストの削減

上場維持のためのコストを削減できることも、MBOのメリットの1つです。上場企業は毎年、監査法人への報酬や証券代行費用など、上場維持のための一定額のコストが発生します。しかし、MBOで非上場化することで、これらのコストを削減することが可能です。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

MBOに伴う4つのデメリット

前項で解説したように、MBOはさまざまなメリットがありますが、その一方で経営権の集中や負債を背負うデメリットなども伴います。

MBOに伴うデメリットとして、以下の4つが考えられます。

1.資金調達の手段を失う

非上場化によるデメリットとして、資金調達の手段を失うことが挙げられます。

MBOによって非上場化すると、株式公開による外部からの資金調達ができなくなるため、金融機関からの借入や、オーナー経営者による増資など、別の手段を模索しなくてはなりません。MBOを行う前には、今後の業務展開の見通しをしっかりと立てることが重要です。

また、親会社からの独立を目的としたMBOの場合、独立した子会社の売上が不安定になることも考えられます。MBO成立後の資金繰りには、金融機関からの借入に頼るケースも多数ありますが、親会社から独立すると金融機関からの評価が下がる恐れがあることも年頭に置いておきましょう。

2.経営陣への監視機能が減少する

MBOによって経営陣が株主となると、第三者による経営陣に対するチェックが行われなくなり、経営状況の監視機能が減少するデメリットがあります。

また、社風や方針を変えずに事業を承継できるメリットがある一方、裏を返せば経営体質の変化が起こりにくいといったデメリットもあります。

元の経営陣が従業員を顧みないような経営を行っていた場合、その体制を変える機会を著しく減少させてしまう恐れもあるので注意が必要です。

3.少数の株主による反対で買収が不成立になる

MBOの一般的なゴールは、各株主が保有する株式を経営陣が全て取得して、非上場化することです。先に挙げたように、社風や経営方針が変化しにくいため、従業員からの反発はあまり多くはないと考えられます。しかし、株式売却を拒む株主がいる場合には、うまく話がまとまらないことがあります。

また、買い手の経営陣はできるだけ安値で買い取りたい、売り手の既存株主はできるだけ高値で売りたいと考えるため、利益相反関係が生じます。現在の経営陣が既存株主の納得する価格を提示できず、MBOが成立しない可能性もあるでしょう。

4.買収資金の調達時に負債を背負う

MBOを行う際、現在の経営陣の自己資金のみで株式を買収することは不可能な場合が多く、金融機関やファンドから支援を受けることも少なくありません。その結果、買収後は、会社の負債を背負っての経営を余儀なくされるデメリットがあります。

また、現行の経営方針を継続するだけでは、背負った負債の支払いに充てるに足る利益を捻出できずに、資金繰りが悪化するケースも考えられます。

買収に必要な資金をファンドから調達した場合は、ファンド側から経営に干渉されたり、制約を掛けられたりして、本来の目的である経営権の強化が達成できない可能性がある点にも注意しましょう。

なお、近年では、資金が潤沢な投資ファンドと組んで大型MBOを行う企業も増えています。

関連記事:バイアウトのすべて〜目的からメリット・デメリット、事例まで解説〜

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

MBOのスキーム

経営陣の自己資金のみで株式買収が行える場合、手続きはシンプルです。しかし、このケースは少数で、多くの場合は資金調達にファンドや金融機関からの融資を受けます。

ファンドや金融機関の融資を受けて、買収資金を調達するにあたっては、SPC(特別目的会社)を設立するケースが一般的です。

ここからは、SPC(特別目的会社)を設置する場合のMBOのスキームについて解説します。

1.企業価値の算定

まず、対象企業の価値の算定を行います。算定した企業価値を踏まえて株式の取得金額を決定するため、買収に必要な資金に大きな影響を及ぼすといえるでしょう。企業価値の算出には「DCF法(ディスカウントキャッシュフロー方式)」「純資産価額法」、「類似会社比準法」などを用います。

DCF法は、企業が生み出すキャッシュフローに着目して企業価値を算出する方法であり、純資産価格法は、対象企業の資産から負債を引いた純資産の額に注目する株式価値の評価方法です。また、類似会社比準法とは、市場価格が存在しない非上場会社の評価について、類似した上場会社の株価を基に企業価値を算定する方法を指します。

企業の状況などを考慮して算出法などを決めるため、専門的な知識を必要とするでしょう。さらに、極端に安い金額で取得したケースでは、税務上の課税リスクが発生する可能性がある点に注意が必要です。

2.SPC(特別目的会社)の設立

SPCは「Special Purpose Company」の略称で、「特別目的会社」と呼ばれます。MBOを行ううえでは、資金調達という重要な役割を果たします。

金融機関から融資を受ける際、事業実体のない買収用の会社となるSPCを設立することで、経営陣が直接借り入れを行うことがなくなり、個人負債を負うリスクを回避できます。

3.SPCが必要な資金を調達

資金調達には主に2つの方法があります。

1つ目はSPCが株式を発行し、ファンドがその株式を買い取る方法です。この方法においてはデメリットの項目でも述べたように、MBOが成立した後、支援を受けたファンドから経営方針に干渉されることが予想されます。

2つ目は、先述したSPCが金融機関からローンで借入をする方法です。個人名義ではく、SPC名義で審査を受けて借入をします。

4.SPCが自社企業を買収

SPCが資金を調達できたら、既存株主から自社企業の株式を買い取ります。100%の株式を取得できたら、M&Aを実行します。

こちらのステップでの注意点は、既存株主との株式買い取りの交渉が難航して、MBOの実行を断念せざるを得ないケースがあることです。

5.SPCと買収対象企業が合併

SPCが株式を取得しただけでは、現行の経営陣はまだ経営権の取得はできていません。最終的に、子会社になった自社企業とSPCを合併させる必要があります。
合併手続きの完了後、MBOが成立して、経営陣=オーナーの形式が成り立ちます。

ファンドを利用する場合は、出資したファンドが自社企業の株主になります。
金融機関から借入した場合は、返済義務が自社企業に移ります。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

MBOを成功させるポイント

MBOを成功させるためには、実行前から経営改革の計画を立案したり、既存株主との対立を避けたりする必要があるでしょう。ここからは、MBOを成功させる3つのポイントを解説します。

1.MBO実行前から経営改革の計画を立案する

MBOを成功させるためには、MBOを実行する前から具体的な経営改革の立案に着手することが望ましいでしょう。MBOはあくまでも手段であり、本来の目的は企業のさらなる成長と存続です。MBOを実行した後の施策や、株式取得によって調達した資金を利息を含めて確実に返済する方法などを、事前に計画しておくことが大切です。

2.既存株主とトラブルを避ける

MBOは、本来は株主のために業務を執行する経営陣が、自ら既存の株主から株式を買収するため、構造的に利益相反取引となります。経営陣が安い金額で株式を取得する場合、本来は株主の利益を最優先しなければならない経営陣によって、既存株主の利益を損ねてしまうためです。

取締役が利益相反取引を行う場合は、会社法により、株主総会で重要な事実を開示したうえで、その承認を受けなければならないことが定められています。株主とのトラブルを避けるためには、価格決定を公正に行うことと、価格決定のプロセスをきちんと開示することが大切です。

3.専門家に意見を求める

株式取得に関する交渉や取得価格の決定、MBOを実施した後の資金繰りの計画などについては、専門知識が求められます。そのため、社内で対応することが困難な内容に関しては、専門家に意見やアドバイスを求めることをおすすめします。

参照元:e-Gov法令検索「会社法」

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

まとめ

MBOには、経営権の強化や敵対的TOBへの対抗措置、親会社から独立、事業継承などの多くのメリットがあります。有効活用することで、膠着状態だった経営を改善することが可能になるでしょう。

ただし、資金調達の審査が厳しくなったり、経営陣への監視機能が減少したりといったリスクも潜んでいます。株式の買い取りを拒否する株主がいる場合には、そもそもMBOを成立できないケースも考えられます。

MBOを成功させるためには、ノウハウを持った専門家に相談することも一つの方法です。

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、M&A全般をトータルに支援する仲介会社です。

専門性を備えたコンサルタントが在籍しており、M&Aのあらゆる過程において的確なアドバイスを提供いたします。

料金体系はM&Aご成約時に料金が発生する完全成功報酬型です。M&Aご成約まで無料でご利用いただけます(譲受会社のみ中間金あり)。

ご相談も無料! M&Aをご検討の際にはぜひお気軽にご相談ください。