投資ファンドのM&Aとは?メリット・デメリットや事例11選を紹介

2024年1月25日

投資ファンドのM&Aとは?メリット・デメリットや事例11選を紹介

このページのまとめ

  • 投資ファンドとは、投資家から集めた資金を投資先に共同投資して運用する基金のこと
  • 投資ファンドに買収されるメリットは、後継者問題の解消や資金調達できる点など
  • 投資ファンドに買収されるデメリットは、人員や事業がカットされる可能性がある点など
  • 投資ファンドに注目されやすい会社の特徴は、将来性がある・規模が大きいなど
  • 投資ファンドとのM&Aを成功させるには、自社の現状を把握することが大切

自社の売却を検討している方の中には、「ファンドに買収されても問題ない?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。ファンドから買収を提案された場合は、経営者や従業員の処遇について確認が必要です。

本記事では、ファンドに買収されるメリットとデメリットを解説します。ファンドが買収した11事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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投資ファンドとは

ファンドとは、日本語で「基金」という意味です。
投資ファンドとは、投資家から集めた資金を投資先に共同投資して運用する基金のことをいいます。
ただし、実際には投資ファンドを運用する組織体である「ビークル(Vehicle)」を投資ファンドと呼ぶことが多いです。

資金は、個人で活動をしている投資家や機関投資家から調達します。
機関投資家とは、大きな資金源を所有している投資家のことです。銀行や信用金庫、年金基金、保険会社などが機関投資家にあたります。

投資ファンドの目的

投資ファンドが企業買収を行う目的は、経営に関与してその企業の価値を高めて、株式売却などを通じて利益を上げることです。買収した企業の業績を向上させることができれば、買収した時点よりも株価が上がり、売却時に利益を獲得することができます。
利益の獲得後、投資家の持分に応じて運用収益を還元します。

投資ファンドの対象

投資する対象となるものは、主に以下の5つです。

  • 公開株式
  • 未公開株式
  • 短期金融資産
  • 債券
  • 不動産

投資信託に関する専門知識を持つプロフェッショナルである「ファンドマネージャー」が上記を取り扱い、投資・運用のディレクションを行います。

なお、企業買収を目的とした場合、投資ファンドが対象とするものは未公開株式です。
非上場の会社の株式を購入し、買収を実施します。

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投資ファンドの3つの種類

投資ファンドの種類には、主に下記の3つが挙げられます。

  1. アクティビストファンド
  2. ヘッジファンド
  3. PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)

以下でそれぞれどのようなファンドなのかを解説します。

1.アクティビストファンド

アクティビストファンドとは、投資先の企業に対して積極的にはたらきかける投資ファンド(投資家)のことです。アクティビストファンドは「物言う株主」と呼ばれています。
企業の株式を購入して株主としての権利を持ったうえで、投資先の価値向上を目的に意見・提案を行います。

2.ヘッジファンド

ヘッジファンドとは、さまざまな投資対象・方法を活用して資産の運用を行い、市場の変化による影響を避けつつ利益を追い求める投資ファンドです。確実に収益を上げられるような運営に徹します。
売りと買いの両方を駆使したり、先物取引やオプション取引などの将来的な取引を活用したりと、幅広い手法を用いて利益を追及します。

3.PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)

PEファンドとは、「プライベート・エクイティ・ファンド(Private Equity Fund)」の略称で、非上場企業に投資を行う投資ファンドです。
PEファンドは一定数の未公開株式を購入し、企業の経営に関与します。そうして企業価値を上げていき、十分に価値が上がったところでIPOや株式売却を実施して、利益を獲得します。

投資ファンドのM&Aで用いられるロールアップ戦略とは

紹介した投資ファンドのうち、とくにPEファンドがM&Aのひとつである企業買収を実施します。その中で、よく活用される戦略がロールアップ戦略です。

ロールアップ戦略とは、比較的規模の小さい同業種の会社をいくつか買収することで特定の業種における市場シェアを拡大し、高い利益を獲得することを目指す戦略を指します。経営資源(設備・ノウハウ・人材など)を共有できる点が、ロールアップ戦略により短期間での収益向上を期待できる理由です。

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PEファンドが企業を買収する流れ

PEファンドが企業を買収する流れは以下のとおりです。

  1. 買収する候補企業を選定する
  2. 候補企業とコンタクトをとる
  3. 候補企業に対して調査・分析を行う
  4. 企業価値算定を行う
  5. 買収スキームの策定をする
  6. 交渉をする
  7. 基本合意書を締結する
  8. デューデリジェンス(DD)を実施する
  9. 最終契約書を締結する
  10. クロージングを実行する

各プロセスについて解説します。

1.買収する候補企業を選定する

まず最初に、買収する候補の企業を選定します。
経営に介入することによって利益を生み出せる余地がある企業なのかどうか、しっかり見極めます。
合意に至らなかったり、交渉中に経営が悪化して買収する魅力を失ったりする可能性もあるので、候補企業は複数リストアップすることが一般的です。

2.候補企業とコンタクトをとる

候補企業を選んだら、コンタクトをとります。買収の話を持ち掛けてみて好感触だった場合は、候補企業に基礎情報の提供を求めます。

買収をはじめとするM&Aは譲受側・譲渡側の双方にとって大きな決断であるため、相互理解を深めることが大切です。

3.候補企業に対して調査・分析を行う

候補企業から提供された情報をもとに、調査および分析を実施します。
調査・分析をとおして、買収する価値がある企業かどうかをあらためて見極めます。また、買収スキームやデューデリジェンスの範囲についても検討する段階です。

4.企業価値算定を行う

買収予定の企業の価値算定を行います。
企業価値算定方法は主に「マーケット・アプローチ」「コスト・アプローチ」「インカム・アプローチ」の3つです。

そのうち、PEファンドが買収対象とする非上場企業の価値算定に向いているのはインカム・アプローチです。DCF法や収益還元法を用いて企業価値算定を行います。
ただし、もし対象会社に類似した上場企業がある場合は、マーケット・アプローチの一つである類似会社比準法も活用できます。

5.買収スキームの策定をする

適切な買収スキームを策定します。
PEファンドは、非上場企業の未公開株式を買うことにより権限を得ます。そのため、このプロセスで定めることは株式の取得割合です。

株主の権利は持株比率によって変わります。持株比率ごとの権限の範囲は以下の表のとおりです。

持株数および持株比率得られる権限
株式を1株以上保有・議事録の閲覧請求権
・株主代表訴訟を起こす権利
全株式の1%超を保有・株主総会における議案請求権
全株式の3%超を保有・株主総会の招集請求権
・会計帳簿の閲覧請求権
・会計帳簿の謄写請求権
全株式の33.4%超
(3分の1超)を保有
・株主総会の特別決議を単独で否決できる権利
全株式の50%超
(2分の1超)を保有
・株主総会の普通決議を単独で可決できる権利
全株式の66.7%超
(3分の2超)を保有
・株主総会の特別決議を単独で可決できる権利
全株式の90%超を保有・株式等売渡請求の権利(スクイーズアウトを実行する権利)
全株式の100%超を保有・株主総会のすべての決議を単独で可決できる権利

持株比率が50%(2分の1)を超えると、普通決議を単独で可決することが可能です。つまり、役員(取締役・会計参与・監査役)の解任および選任や、役員報酬の変更、剰余金の配当など、会社の意思決定に大きく関わる内容を単独で決定することができるようになります。

持株比率が66.7%(3分の2)を超えると、特別決議を単独で可決できます。特別決議では定款の変更や増資および減資、会社の解散、M&Aを含む組織変更などの決定を行うことが可能です。

企業買収をして経営権を握るためには、全株式の50%(2分の1)あるいは66.7%(3分の2)を超える株式を購入する必要があるといえます。

6.交渉をする

譲渡企業に対して買収したい意向と買収条件を示したら、交渉に入ります。
交渉時によく話し合われる内容の例は以下のとおりです。

  • 買収スキーム
  • 買収価額
  • 実施スケジュール
  • 役員の処遇
  • 従業員の雇用の継続
  • 労働条件
  • 買収後の経営方針

買収を実施したあとにトラブルにならないよう、譲渡側と譲受側で認識をしっかりすり合わせましょう。

7.基本合意書を締結する

双方が買収に対して実施の意向を固めたら、基本合意書(MOU、LOI)を締結します。
基本合意書にはこれまでの話し合いの中で合意した条件や買収の実施予定日、独占交渉権の付与などについて記載されています。

基本合意書は基本的に法的拘束力を持ちませんが、買収実施までの工程をスムーズに進めるために大事な役割を果たす書面です。

8.デューデリジェンス(DD)を実施する

基本合意書の締結後は、デューデリジェンス(DD)の過程に移ります。デューデリジェンスとは、日本語では買収監査と呼ばれるプロセスです。
デューデリジェンスの目的は、リスクを回避してM&Aを成功させることです。買収先企業の実態について調査を行い、「買収金額が適正か」「提供された情報に嘘や間違いがないか」「簿外債務や法律上の問題がないか」などの事項を確認します。
デューデリジェンスの種類は多岐にわたり、たとえば以下のような種類があります。

  • 財務デューデリジェンス
  • 税務デューデリジェンス
  • 法務デューデリジェンス
  • 人事デューデリジェンス
  • ITデューデリジェンス
  • ビジネスデューデリジェンス
  • 環境デューデリジェンス

必ずしもすべての種類のデューデリジェンスを実施する必要はありません。
必要に応じて実施する種類を選択します。

9.最終契約書を締結する

デューデリジェンスが無事に完了し、最終的な条件の合意に至ったら、最終契約書(DA)を締結します。
最終契約書にはデューデリジェンスの結果を反映させます。最終的な条件や規約を漏れなく記載しましょう。最終契約書は法的拘束力を持つので、より慎重に作成する必要があります。

10.クロージングを実行する

最終契約書を締結したら、いよいよクロージングです。
クロージングとは、買収の対価の支払いや株式の引き渡し・株主名簿の書換などを行い、M&Aを完了させることです。クロージングを終えることによって、経営権がPEファンドに移行します。

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買収を行うPEファンドの5つの種類

企業を買収する投資ファンドの種類は、主に以下の5つです。

  1. ベンチャーキャピタル
  2. MBOファンド
  3. バイアウトファンド
  4. 企業再生ファンド
  5. ディストレスファンド

以下でそれぞれ詳しく解説します。

1.ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタル(Venture Capital、VC)とは、設立から日が浅いベンチャー企業に投資して利益獲得を目指すPEファンドです。ベンチャー企業からすると、ベンチャーキャピタルは重要な資金調達先です。
PEファンドがベンチャー企業に出資や経営に関するアドバイスなどをして業績を向上させたうえで株式公開(IPO)を行い、株式を売却して利益を獲得します。

新しいベンチャー企業であるため経営がうまくいかない可能性も高く、ハイリスクな方法です。しかし、買収額が比較的安く済むため、ベンチャー企業が飛躍的な成長を遂げた際にはハイリターンを得ることができます。

近年は、IPOではなくM&Aの実施によって利益獲得を目指すベンチャーキャピタルも増えています。ハイリターンは望めないものの、IPOと比べるとM&Aの実施による利益獲得は成功率が高くなっています。

2.バイアウトファンド

バイアウトファンドとは、好循環のキャッシュフローを生み出していて経営が安定している非上場企業に投資を行うPEファンドです。多くの場合、企業が保有する株式の過半数を買収して経営に積極的に参画し、企業価値を高めたのちに株式を売却して利益を獲得します。

経営が安定した企業が投資対象なので、リスクもリターンも大きいとはいえません。ミドルリスク・ミドルリターンで、確実に利益を獲得することに重きを置いた方法です。
バイアウトファンドがよく活用する買収の手法には、MBIやTOBがあります。

MBIとは「Management Buy In(マネジメント・バイイン)」の略称です。買収した企業に外部の専門家を派遣して経営の改善を図り、株式の価値を向上させる方法です。経営改善がうまくいって価値が上がったら株式の売却を行い、利益を獲得します。

TOBとは「Take Over Bid(テイク・オーバー・ビッド)」の略で、株式公開買付のことです。対象企業の株式を持っている不特定多数の株主に向けて買い取りの条件を公告し、取引市場外で株式の買い付けを実施します。TOBによって過半数以上の株式を保有し、経営に携わって企業価値を高めたあと、株式売却をして収益をあげます。

3.MBOファンド

MBOファンドとは、MBO(Management Buy-Out、マネジメント・バイアウト)によって企業買収をしようとする経営陣に対して資金提供を行うPEファンドです。
MBOファンドは、広義のバイアウトファンドの一種ですが、「企業の株式を直接買収する」のではなく「企業買収を目指す経営陣に出資する」という点で、バイアウトファンドと区別されることがあります。

PEファンドは経営陣が設立した特別目的会社(SPC)に出資します。
特別目的会社はPEファンドからの出資や金融機関による融資などで集めた資金をもとに買収対象となる会社から株式を取得し、対象会社を子会社化します。そして特別目的会社と対象会社を合併し、MBOを完了させます。
このとき、MBOファンドは合併後の会社の株主です。引き続き経営に携わり、企業の業績向上に寄与します。最終的には再上場やM&Aを行い、利益を獲得します。

4.企業再生ファンド

企業再生ファンド(事業再生ファンド)とは、経営が振るわず、経済的な支援を必要とする未上場の企業に対して投資を行うPEファンドです。企業の価値を上げることができたら株式を売却し、利益を得ます。

支援する対象会社は経営不振に陥った背景を持っているため企業再生に失敗する可能性も高く、大きなリスクが伴います。しかし、安く買収できるので、企業再生により株式の価値を大幅に上昇させることができれば、非常に大きなリターンを得ることも叶うでしょう。
企業再生の主な2つの手法は「ターンアラウンド」と「ワークアウト」です。

ターンアラウンドとは、中・長期的な視点で経営改善を目指す企業再生の方法です。組織構造の変更や財務の管理、ビジネスモデルの見直しなどに取り組みます。企業再生のスペシャリストであるターンアラウンドマネージャーを経営者に登用することもあります。

根本的な問題解決を目的とするため、会社にとって大きな変革が起こることもあるでしょう。
ワークアウトとは、短期的なスパンで成果を出すことを目指す企業再生の手法です。人員削減(リストラ)や規模縮小などを行ってコストを減らしたり、資産を売って売却益を得たりして、短期間で経営の立て直しを図ります。

5.ディストレスファンド

ディストレスファンドとは、倒産した企業や困窮状態にある企業に対して投資を行うPEファンドです。企業の株式や社債を安い価格で買い取って、企業価値が向上したタイミングで売却して利益の獲得を目指します。投資対象の企業は経営状態が悪いので、立て直すためには高レベルな経営手腕が必要です。しかし企業再生が成功した場合は多額のキャピタルゲインを獲得できます。ハイリスク・ハイリターンな投資方法です。

経営破綻している企業あるいは破綻寸前の企業との取引になるため、買収する側のディストレスファンドにとって有利な条件で取引が進められることがほとんどです。
悪印象を与えるような強引なやり方で取引を進めた場合、「ハゲタカファンド」と揶揄されることもあります。

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投資ファンドに買われた会社はその後どうなる?

ここでは、投資ファンドに買われた会社の経営者・役員・従業員はその後どうなるのかを、立場別に解説します。

買収後の経営者の処遇

投資ファンドに買収された会社の経営者は、そのまま経営者としてトップに立ち続けるケースもあれば、退任を求められるケースもあります。

投資ファンドが経営者の能力を高く評価している場合は続投を求められるでしょう。投資ファンドの介入を受けつつ、業績向上に取り組みます。
一方で、経営を改善するために変革が必要だと判断されれば、ファンド側から経営陣が送り込まれて経営者の座を交代することになります。なお、経営者を退任しても、キーマン条項(ロックアップ)が取り決められている場合は、一定期間引き継ぎのために会社に残留します。

会社に残る場合の報酬についても、株式の過半数を保有する投資ファンドが普通決議で決定します。

買収後のその他役員の処遇

その他の役員の続投および報酬についても、経営者と同様、買収を実施した投資ファンドに決定権があります。

なお、役員が親族であり、非常勤として会社に所属しているものの実際は経営に携わっていないケースでは、買収後に退任を求められることが多いようです。

買収後の従業員の処遇

経営状態が非常に悪化していて人員整理をせざるを得ないような状況の場合は、大量リストラや減給が実施される可能性も否めません。しかし、そのような状況ではないのであれば従業員の雇用や待遇は守られることがほとんどです。
PEファンドは経営の立て直しを図って企業価値を向上させたいと考えているため、ノウハウを持つ従業員を解雇したり、従業員のモチベーションを下げたりするような変化は避けると考えられます。

投資ファンドに買われた会社に雇用されている従業員の処遇は、投資ファンドと譲渡企業の合意のもとで決定されます。交渉時に雇用の継続や雇用条件の内容について、PEファンドと話し合っておきましょう。

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投資ファンドに買収される7つのメリット

企業が投資ファンドに買収されるメリットは、主に下記の7つです。

  1. 後継者問題を解消できる
  2. 資金調達ができる
  3. 想定よりも高値がつく可能性がある
  4. 経営のノウハウが獲得できる
  5. 企業を効率的に成長させることができる
  6. 企業の信用度が上がる
  7. 個人保証や債務から解放される

投資ファンドに買収されると多くのメリットを享受することができます。以下でそれぞれのメリットについて詳しく解説します。

1.後継者問題を解消できる

投資ファンドに買収されて外部から経営者を迎え入れることができれば、後継者問題が解決します。

現在、経営者の高齢化が進んだり後継者候補が見つからなかったりすることなどが原因で、事業承継に悩む経営者が多く存在します。投資ファンドに会社を売却すれば、自分で後継者を見つける必要なく会社を引き継ぐことができます。後継者問題に悩んでいる経営者にとっては最も大きなメリットだといえるでしょう。

2.資金調達ができる

資金調達ができることも、投資ファンドに買収されるメリットの一つです。投資ファンドに買収されると、売却した株式の分の資金が手に入ります。財務基盤が安定し、経営の改善や新たなビジネスへの挑戦も可能になります。

3.想定よりも高値がつく可能性がある

投資ファンドに買収を持ちかけられた場合、自社に対して「企業価値を上げることができる会社だ」と見込んでくれている可能性があります。将来的に生み出す価値を評価したうえで買収価額を算定してくれるので、現在の企業価値を大きく上回る高値がつくこともあります。

4.経営のノウハウが獲得できる

投資ファンドに買収されるメリットの一つは、高いレベルの経営ノウハウが獲得できることです。
買収後、投資ファンドは経営の立て直しのために有識者を企業に送り込みます。派遣される人物は経営に関するプロフェッショナルです。買収される企業の経営陣が、買収された後も退任せず会社に残る場合、外部のプロフェッショナルとともに経営改善に取り組むことになります。
優れた経営手腕で改革を進めていく人物と一緒に立て直しに携われることは、経営陣の経営ノウハウが磨かれる貴重な機会になるでしょう。

5.企業を効率的に成長させることができる

投資ファンドに買収されることによって、企業を効率的に成長させることが可能です。
企業を大きく成長させるためには、膨大な時間と費用がかかります。特に「大胆な方向転換をしたい」「新規事業に挑戦したい」といった場合には、さらなるコストを要します。
その点で、投資ファンドに買収されれば、事業展開に必要な資金を調達することが可能です。

加えて、投資ファンドは今後企業が目指したい方向性や開拓したい分野に適したスペシャリストを外部から派遣し、経営の改善を図る場合があります。
自社内だけでは一朝一夕には獲得できない資金・ノウハウが一挙に手に入るので、スピーディにめざましい発展を遂げることができるでしょう。

6.企業の信用度が上がる

投資ファンドが出資を行うことによって、財務面が盤石な状態になったと判断され、落ちていた信用度が回復することが期待できます。

また、投資ファンドが出資したという事実自体も信用度のアップにつながります。
投資ファンドは、出資して企業価値を上げたあとに売却して利益を上げるビークルです。つまり、投資ファンドが出資を行ったということは「対象企業がこれから株式価値を上げていく見込みがある」と投資ファンドが判断したことになります。その結果、世間からの評価が見直されて信用度が上がります。

7.債務・債権や個人保証から解放される

経営者が債務・債権や個人保証から解放されることも、投資ファンドに買収されるメリットの一つです。

買収によって投資ファンドに経営権が移った場合、企業が所有する資産のすべてが原則として自動で譲受先に承継されます。承継される試算には、債務・債権も含まれます。

個人保証についても、経営権が移る場合は投資ファンド側に引き継がれることがほとんどです。しかし、個人保証は自動的には解除されないので注意が必要です。
個人保証が外せなかった場合、経営権の移行後も不安を抱えつづけることになります。個人保証から解放されるために、買収の交渉をするなかで解除手続きに関して話し合いを実施しておきましょう。

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投資ファンドに買収される6つのデメリット

たくさんのメリットを得られる一方で、デメリットも存在します。
投資ファンドに買収されるデメリットとして挙げられるものは、主に下記の6つです。

  1. 短期間で経営権が移行する
  2. 人員や事業がカットされる可能性がある
  3. 企業風土が変えられることがある
  4. 従業員が離職する恐れがある
  5. 財務状況が悪化するリスクがある
  6. 分離独立によりアナジー効果が生まれる可能性がある

発生しうるデメリット6つについて、詳しく解説します。

1.短期間で経営権が移行する

投資ファンドに買収されるデメリットの一つは、短期間で経営権が移行することです。

投資ファンドは、IPOや株式の売却をすることを前提に企業を買収しています。そのため、買収した企業をバリューアップさせ、十分な収益を獲得できる状態になれば、イグジット(Exit)を実施します。
イグジットとは、IPOや株式譲渡などによって別の第三者に企業を売却し、投資した資金を回収することです。イグジットに至るまでの期間は一般的に3~5年ほどと言われています。
経営者や会社組織の変更が短いスパンで行われることで、従業員に混乱が生じる恐れがあります。あらかじめイグジットの予定があることを従業員に説明しておきましょう。

2.人員や事業がカットされる可能性がある

企業の経営状態がかなり悪い状態である場合、買収後に人員整理が行われる可能性があります。
しかし、交渉や契約を進める話し合いのなかで従業員の雇用や待遇についてあらかじめ定めておけば、特別な理由がないかぎりリストラされることはありません。従業員が今後の事業展開に有用なスキルを持っていれば、むしろ待遇が良くなることもあるでしょう。交渉段階でしっかり話し合っておくことが大切です。

また、事業の縮小・廃止が実施される可能性もあります。会社の伝統ともいえる事業であっても、投資ファンドに不要だと判断されればカットされます。
ただ、投資ファンドは企業再生の経験を数多く持っていることが多いです。事業の縮小・廃止も経営改善に向けた取り組みの一つだと考えられます。

3.企業風土が変えられることがある

買収後、投資ファンドが派遣する専門家が会社の経営に介入します。経営権が投資ファンドに移る場合、投資ファンド側が経営を主導することになります。それにともない、企業風土に変化が起こる可能性もあるでしょう。

企業風土は会社の軸ともいえるものです。企業風土が変われば、今まで会社に勤めてきた従業員は戸惑うと考えられます。
また、買収後に投資ファンドがM&Aを実施した場合、別の企業風土を持つ従業員が入ってくることになります。文化や価値観の相違から対立が起こる可能性もあるので、従業員同士の相互理解を深められる機会を創出することがおすすめです。

4.従業員が離職する恐れがある

投資ファンドに買収されると、経営者が入れ替わったり、人員整理・事業カットが実施されたり、企業風土が変えられたりするなど、数多くの変化が起こります。状況がめまぐるしく変わったり、慣れない環境にさらされたりすることで、従業員には多かれ少なかれストレスがかかります。

ストレスが蓄積されつづけてしまった場合、従業員は退職やほかの企業への転職を考えるでしょう。大量離職が起こる可能性もあります。
従業員の離職を防ぐために、ファンドによる買収や今後の経営方針について説明する場を設けましょう。また、必要に応じて一対一の面談も併せて実施することも検討してください。

5.財務状況が悪化するリスクがある

投資ファンドがLBO(Leveraged Buyout、レバレッジド・バイアウト)の手法を用いて買収を実施した場合、企業の財務状況が悪化するリスクがあります。
LBOとは、投資ファンドが持つ自己資金のほかに外部資金を活用して買収を行う手法です。外部から融資を受ける際は買収の対象企業の資産を担保にします。買収の対象企業が負債を返済することになるため、財務状況が悪化することになります。また、金利が高くなる傾向にあるので、返済の負担が重くなるでしょう。

投資ファンドがLBOによる買収を検討している場合は、負債を抱えるリスクについてよく考えたうえで決断してください。

6.スタンド・アローン・イシューが発生する

買収によってスタンド・アローン・イシュー(Stand Alone Issue、スタンド・アローン問題)が発生した場合、大きなデメリットを被る可能性があります。

スタンド・アローン・イシューとは、グループに属する企業を買収した際に発生する問題です。買収をはじめとするM&Aを行ったことで企業がグループから独立し、スケールメリットを失うことで発生するさまざまなアナジー効果を指します。
グループに所属している会社は、顧客基盤や設備、原材料、技術などを親会社に提供してもらっていることがあります。買収によりスタンド・アローン・イシューが発生した場合、期待していたシナジー効果を得るどころかマイナスの効果が生まれてしまい、経営の立て直しに失敗する恐れもあるでしょう。

想定外のアナジー効果に苦しめられることのないよう、買収を実施するまでの面談のなかでスタンド・アローン・イシューについても話し合ってください。また、デューデリジェンスの段階でスタンド・アローン・イシューが発生した場合の影響について明らかにしましょう。

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投資ファンドとのM&Aを成功させるための6つのポイント

投資ファンドとのM&Aを成功させるためのポイントは、主に以下の6つです。

  1. 自社の現状を正しく知っておく
  2. 企業価値算定をして適正価格を把握する
  3. デューデリジェンスに備える
  4. 企業価値を高める
  5. 譲れない条件をあらかじめ決めておく
  6. M&Aの知見がある人物に相談する

投資ファンドとのM&Aを成功させるためには、入念な準備が必要です。その第一歩として、成功のポイントをしっかり押さえておきましょう。
以下でそれぞれのポイントについて詳細に解説します。

1.自社の現状を正しく知っておく

まずは、自社の現状を正しく把握することが大切です。
事業の業績や財務状況、キャッシュフロー、会社の強み・弱みなど、あらゆる方面で自社の現状をチェックしておきましょう。
自社の現状を把握しておくことで、適切な手法や投資ファンドを選ぶことができるようになります。

2.企業価値算定をして適正価格を把握する

企業価値算定をして適正な評価額を知っておきましょう。もし適正価格を把握していなかった場合、好条件で買収を持ちかけられたにもかかわらず取引を断ってしまったり、相場よりも安く買い叩かれたりする可能性があります。
適正価格を把握しておくことで、投資ファンドとのM&Aを満足のいくものにすることができます。

3.デューデリジェンスに備える

投資ファンドとM&Aを実施するのであれば、ほとんどの場合でデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスでは、財務面や税務面、法務面、人事面など、多方面から調査が実施されます。投資ファンドに提出を求められる資料も多く大変なので、前もって情報や資料をまとめておくことが必要です。
また、のちのち問題にならないように、簿外債務や訴訟リスクなどについても整理しておきましょう。

4.企業価値を高める

投資ファンドからできるだけ高い金額で買収してもらうために、企業の価値を高めましょう。
自社独自の強みを磨けば、投資ファンドの目に留まる可能性が高まります。また、人材育成や技術開発に力を入れることも有効です。事業が成長していることが伝われば、「買収後に株式価値を大きくアップさせることができる」と判断してもらえて、買収条件が有利になるでしょう。

5.譲れない条件をあらかじめ決めておく

譲歩できない条件を前もって洗い出しておいてください。あらかじめ決めておくことによって投資ファンドの主張に流されて決断してしまうことを防げます。
また、絶対に譲れない条件は交渉の初期段階で提示しましょう。提示した条件が投資ファンドにとって譲歩できない条件とぶつかってしまった場合、買収の話は破談になります。もし交渉が進んだ段階で相容れないことが判明した場合、今までかけてきた時間が無駄になってしまいます。

6.M&Aの知見がある人物に相談する

M&Aを確実に進めていきたいのならば、M&Aの専門家に相談することがおすすめです。

M&Aの実施までには複雑なプロセスを踏む必要があり、専門性の高い知識が要求されることもあります。また、M&Aに必要な資料も多く、経営者として通常業務をこなしながら資料作成を同時に求められることもあります。多忙であるためにM&Aを後回しにしてしまうこともあるでしょう。

M&A仲介会社などの専門家の力を借りれば、買収の成約までにかかる手間や時間を大幅に省くことが可能です。
M&Aに関するノウハウや経営に関する知識を豊富に持っているので、自社の現状把握や企業価値算定などを手伝ってくれます。また、専門知識と徹底確認力が求められるデューデリジェンスについても、専門家に任せれば安心です。あらゆるプロセスでサポートしてくれるので、M&Aを円滑に進められるようになります。

無料で相談に乗ってくれるM&Aの仲介会社が多く、価値算定も無料で受け付けていることが多いです。投資ファンドに買収の話を持ちかけられた場合や、将来的にM&Aを行う可能性がある場合は、仲介会社に問い合わせてみましょう。

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は相談・価値算定が無料で、譲渡企業さまには中間金等の料金も発生しません。料金体系は完全成功報酬型で、M&Aのご成約まで無料で利用できます。ぜひご相談ください。

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投資ファンドに注目されやすい会社の特徴

投資ファンドに注目されやすい会社の特徴として、以下の点が挙げられます。

  • 将来性がある
  • 規模が大きい

それぞれ簡単に解説します。

将来性がある

将来性がある会社は、投資ファンドに注目される可能性があります。

将来性を判断する上で大切なポイントのひとつが、会社の収益性です。収益が上昇傾向にある場合、今後も事業が成長する可能性が高いため、投資ファンドに注目されることがあります。

また、技術力や人材もポイントです。現段階で収益を確保できていなくても、高い技術力やすぐれた人材がいれば今後の成長を期待できるため、投資ファンドに注目されることがあるでしょう。

規模が大きい

規模が大きい会社も投資ファンドに注目されることがあります。なぜなら、規模が大きい会社を買収することにより、コスト削減や競争力・知名度の向上といったスケールメリットの効果を期待できるためです。

なお、自社が「将来性がある」「規模が大きい」に該当していなくても、業種・技術などの観点でシナジー効果を期待できる場合に、投資ファンドが興味を持つ可能性はあります。

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投資ファンドによる買収・M&A事例11選

ここから、投資ファンドが買収した事例や投資ファンドによるM&A事例を11個紹介します。

1. カーライル・グループによるオリオンビール買収

2019年3月、オーシャン・ホールディングス株式会社(以下、オーシャン・ホールディングス)による、オリオンビール株式会社(以下、オリオンビール)へのTOBが成立しました。オーシャン・ホールディングスは、米国の投資法人カーライル・グループと、野村HD子会社の野村キャピタルパートナーズが設立した買収目的の会社です。

オリオンビールの筆頭株主は、同業者のアサヒビール株式会社でした。しかし、保有する全普通株式について本件TOBに応募したため筆頭株主から外れ、新たにオーシャン・ホールディングスが筆頭株主になっています。

参照元:オリオンビール株式会社「オーシャン・ホールディングス株式会社による当社株券等に対する公開買付けの結果並びに親会社、主要株主及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」
参照元:オーシャン・ホールディングス株式会社「オリオンビール株式会社(非上場)に対する公開買付けの結果に関するお知らせ」

2. ブラックストーンによる武田の子会社買収

2021年3月、武田薬品工業株式会社(以下、武田薬品工業)が、子会社である武田コンシューマーヘルスケア株式会社(以下、TCHC社)の全株式をOscar A-Co株式会社(以下、Oscar A-Co)に譲渡したことを発表しました。Oscar A-Coは、The Blackstone Group Inc.とその関係会社が運用するPEファンドが管理する買収目的会社です。

武田薬品工業は、自社の資産売却戦略に寄与するものと判断し、TCHC社の売却を決断しました。譲渡後にTCHC社は武田薬品工業の連結子会社から除外され、「アリナミン製薬株式会社」として事業を継続しています。

参照元:武田薬品工業株式会社「武田コンシューマーヘルスケア株式会社株式のBlackstoneへの譲渡完了について」

3. ベインキャピタルによる雪国まいたけ買収

2015年2月、米国の投資ファンドであるベインキャピタルグループが、株式会社雪国まいたけ(以下、雪国まいたけ)に対してTOBを実施することを発表しました。当時、企業統治体制が問題視されており、上場廃止の可能性もあったため、危機感を持った雪国まいたけ経営陣と取引銀行がファンド傘下での立て直しを決断したとのことです。

買収に伴い、ベインキャピタルは議決権所有割合51%を有していました。しかしその後、2020年9月の雪国まいたけが東京証券取引市場第一部(当時)に上場した際に株式を売却し、主要株主・筆頭株主から外れています。

参照元:日本経済新聞(電子版)「米ベインキャピタル、雪国まいたけにTOB 最大95億円」
参照元:株式会社雪国まいたけ「親会社及び主要株主である筆頭株主の異動並びにその他の関係会社の異動に関するお知らせ」

4. ベインキャピタルによる大江戸温泉買収

2015年3月、米国投資ファンドのベインキャピタルグループが、訪日外国人の需要に注目し、大江戸温泉物語グループの株式を取得しました。その後ベインキャピタルは、大江戸温泉のマーケティング強化、IPO・IPO後の運用支援などを実施しています。

買収後、ベインキャピタルは大江戸温泉の収益を伸ばしていましたが、新型コロナウイルス感染拡大後に集客が落ち込みます。そこで、2022年2月に同じく投資ファンドであるローン・スター・ファンドへ、大江戸温泉の親会社株式を売却することを決断しました。

参照元:日本経済新聞(電子版)「ベインキャピタル、大江戸温泉HD買収 訪日客に狙い」
参照元:日本経済新聞(電子版)「大江戸温泉、米ローンスターが買収 コロナで苦戦」
参照元:ベインキャピタル「ポートフォリオ 大江戸温泉物語」
参照元:大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社「沿革」

5. 企業再生支援機構による日本航空買収

2010年1月、株式会社日本航空(以下、日本航空)は、株式会社企業再生支援機構(以下、機構)による公的支援を申し込むとともに、裁判所に会社更生法に基づく更生手続き開始の申し立てを行いました。2008年秋以降に発生した金融危機の影響で、国際旅客のビジネス需要減少・国際貨物需要の急減により収入が大幅に減少したことが日本航空の経営が悪化したきっかけです。

その後、日本航空は再生に向けて着実に前進し、2012年9月には東京証券取引所第一部(当時)へ上場しました。上場のタイミングで、機構は保有する全株式を売却し、公的支援を完了しています。

参照元:株式会社日本航空「株式会社企業再生支援機構による支援決定及び会社更生手続の開始決定等に関するお知らせ
参照元:国土交通省「日本航空の再生について」

6. ポラリスキャピタルグループによる総合メディカルグループ買収

2020年3月、ポラリス・キャピタル・グループ株式会社(以下、ポラリス)はPSMホールディングス株式会社を通じて、総合メディカルホールディングス株式会社(以下、総合メディカル)のTOBを完了しました。総合メディカルは、医療機関へのコンサルティングや、全国で調剤薬局を運営する会社です。

買収後、ポラリスは総合メディカルの大胆な事業構造の転換を図り、総合ヘルスケア企業としての成長を目指していくとのことです。

参照元:ポラリス・キャピタル・グループ株式会社「総合メディカルホールディングス株式会社に対する公開買付けについて」
参照元:ポラリス・キャピタル・グループ株式会社「総合メディカルホールディングス株式会社株式(証券コード 9277)に対する公開買付けの結果に関するお知らせ 」

7. KKRによる日立国際電気買収

2017年4月、株式会社日立製作所(以下、日立製作所)はHKEホールディングス合同会社(以下、HKE)・日本産業パートナーズ株式会社との間で、子会社である日立国際電気株式会社(以下、日立国際電気)に関する基本契約を締結しました。投資ファンドKohlberg Kravis Roberts & Co. L.P(以下、KKR)が間接的に保有・運営するファンドが、HKEの全持分を所有しています。

基本契約では、HKEによる日立国際電気の完全子会社化などが盛り込まれました。日立製作所は、事業ごとに経営の最適化を追求する方がそれぞれの企業価値向上につながると判断し、日立国際電気の売却を検討していたとのことです。

参照元:株式会社日立製作所「子会社株式に対する公開買付け等に係る基本契約の締結に関するお知らせ」

8. 前澤ファンドによるGROOVE X買収

2022年3月、GROOVE X株式会社(以下、GROOVE X)は、自社の株式の過半数を株式会社前澤ファンド(以下、前澤ファンド)が取得したこと、そして同年4月5日時点で全株式を取得予定であることを発表しました。

GROOVE Xは、家庭用ロボット事業を手掛けるベンチャー企業です。GROOVE X側は、前澤ファンドの代表者である前澤友作氏の経験・人脈・資金力などを期待し、本件取引を決断したとのことです。

参照元:GROOVE X株式会社「GROOVE X株式の過半数を前澤ファンドが取得。前澤氏が『LOVOT』で家庭用ロボット事業に参入し『LOVOT』の国内外の事業展開を加速化」(PR TIMES)

9. 新生企業投資によるコモドソリューションズ買収

2022年5月、新生企業投資株式会社(以下、新生企業投資)が本件投資目的で設立した特別目的会社を通じて、株式会社コモドソリューションズ(以下、コモドソリューションズ)の全株式を譲り受けたことを発表しました。

コモドソリューションズは、ITシステムのコンサルティングから設計・開発・構築・保守・運用に至るまでのトータルサービスを手掛ける会社です。新生企業投資は、経営管理体制の強化やM&Aの実行支援などを通じてコモドソリューションズの成長をサポートすると発表しています。

参照元:新生企業投資株式会社「株式会社コモドソリューションズに対する成長支援を目的とした投資実行について」

10. メルカリによる複数のVCからの資金調達

2014年3月、株式会社メルカリ(以下、メルカリ)はアメリカ事業の立ち上げなどを目的として、第三者割当増資の手法で14.5億円を調達したことを発表しました。調達先は、グローバル・ブレイン、グロービス・キャピタル・パートナーズ・伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(ITV)、GMOベンチャーパートナーズなどのファンドです。

メルカリは、2016年3月にも欧米事業展開などを目的に、第三者割当増資を実施しています。その際の調達先は、株式会社日本政策投資銀行・三井物産株式会社・ジャパン・コインベスト投資事業有限責任組合などです。

参照元:株式会社メルカリ「フリマアプリ「メルカリ」、14.5億円を調達し、アメリカ展開へ」
参照元:株式会社日本政策投資銀行「(株)メルカリの第三者割当増資引受けについて」

11. 野村キャピタルパートナーズとリップスの資本提携

2022年6月、野村グループの野村キャピタル・パートナーズ株式会社(野村キャピタル・パートナーズ)が、株式会社リップス(当時は株式会社レスプリ)と資本提携したことを発表しました。

株式会社リップス(以下、リップス)は、ヘアケアやメンズコスメ商品の開発・販売、ヘアサロンのフランチャイズ事業などを手掛けている会社です。野村キャピタルパートナーズは、野村グループ内外のネットワークを活用してリップスの成長を支援していくとのことです。

なお、リップスは商品認知度の向上やブランドイメージ醸成を目的に、資本提携をきっかけに株式会社レスプリから株式会社リップスに社名変更しています。

参照元:野村キャピタル・パートナーズ株式会社「株式会社リップスとの資本提携について」

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まとめ

投資ファンドとは、ヘッジファンドやPEファンドなどのように、投資家から集めた資金を投資先に共同投資して運用する基金のことです。

自社が投資ファンドに買収されるメリットとして、後継者問題を解消できる点や、資金調達できる点などが挙げられます。ただし、買収後に人員や事業がカットされる可能性がある点、企業風土が変えられる可能性がある点などに注意が必要です。

また、投資ファンドに注目されやすい会社の特徴として、将来性があることや規模が大きいことが挙げられます。該当しない場合でも、シナジー効果を期待できればM&Aの相手先が見つかるでしょう。M&Aの候補先探しに不安がある場合は、M&A仲介会社などへの相談を検討してください。

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