このページのまとめ
- 株式譲渡益とは、株式を売却した際に発生した利益のことである
- 個人の株式譲渡益には所得税、住民税、復興特別所得税の3つの税が発生する
- 法人の株式譲渡益には法人税が課税される
- 株式譲渡益にかかる税金は、制度を活用すれば節税できる
株式譲渡益とは、保有する株式を売却する際に発生する利益のことです。株式譲渡益は所得となるため、税金が発生します。大きな金額となる傾向があるため、株式の売却を検討する際には、税金の計算方法や、節税方法についての知識が重要となります。
この記事では、株式譲渡益に関して、株式配当金との違いやかかる税金の種類と計算方法、注意点や節税方法を紹介していきます。
目次
株式譲渡益とは
株式譲渡益とは、保有する株式を売却した際に発生する利益のことです。株式を売却した金額から、購入した金額を差し引くと株式譲渡益が求められます。譲渡益が出るのは、株式を購入した額より譲渡した額の方が高値であった場合です。株式を売却した金額が購入した金額を下回る際には利益は発生せず、購入額と売却額の差額を「譲渡損」と呼びます。
株式譲渡益と株式配当金の違い
株式配当金とは、企業の利益から株式を保有する株主に分配されるお金のことです。株式譲渡益が株式を売却した時に発生するのに対し、株式配当金は株式を保有している時に発生します。
企業は出した利益を株主に還元するために配当金を分配します。ただし、配当金は企業の判断により分配されるため、株式を保有しているからといって必ず受け取れるわけではありません。
株式譲渡の際に株式取得時より株価が下がっていると損失となりますが、株式配当金は株価の変動にかかわらず、分配されるかどうか企業の判断で決まります。
個人の株式譲渡益にかかる税金
個人が株式を譲渡する際に発生する株式譲渡益には、以下3種類の税金が発生します。
- 所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
合計でかかる税率は20.315%です。
それぞれどのような税か解説します。
所得税
株式譲渡益には、所得税が発生します。所得税とは、個人の所得に対してかかる税金です。株式を譲渡して得た所得にも、漏れなく所得税が発生します。
1年間の収入から必要経費を差し引いた金額を「所得」とします。通常は所得からさらに控除額を差し引いた金額に、控除後の所得に応じた税率をかけた金額が税額です。
しかし、株式の譲渡で得た所得は他の所得とは切り離して「申告分離税」として税額を計算します。そのため、得た金額にかかわらず、株式譲渡益には一律で15%の課税が行われます。
住民税
株式譲渡益には、住民税も発生します。住民税とは、居住する地域の行政サービスに対する費用を負担する税金です。その年の1月1日時点で市区町村および都道府県に住所がある人に対して課税されます。
「都道府県民税」と「市町村民税」の2種類を一括で払う仕組みになっており、通常は個人の所得に応じて税率が変動します。
しかし、株式譲渡益に対しては「申告分離税」として一律で5%の課税が行われます。住民税を申請分離税として申告する手続き方法は自治体により異なるため、住民税の申請の際には居住する自治体へ確認しましょう。
復興特別所得税
株式譲渡益には、復興特別所得税も発生します。復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興のために必要な財源として徴収される特別税です。2013年から導入された税制で2037年12月31日までの期間にわたり、所得税に対して2.1%の復興特別所得税が課税されます。株式譲渡益の税率に対し、復興特別所得税は0.315%となります。
法人の株式譲渡益にかかる税金
株主が法人の場合に株式譲渡益にかかる税金は、法人税です。
法人税の税率は法人の規模や年間所得額によって変動します。目安となる法人税の税率は30~40%です。
株式譲渡益にかかる税金の計算方法
ここからは、株式譲渡益にかかる税金の計算方法を説明していきます。
税金の額を求めるには、以下の3つを計算する必要があります。
- 取得費
- 譲渡所得等
- 株式譲渡益にかかる税率
それぞれの計算式を紹介します。
取得費の計算式
株式を取得した時に支払った金額のことを「取得費」と呼びます。株式の価格だけではなく、購入の際にかかった手数料や名義書換料など、株式の取得にかかった費用はすべて取得費です。確定申告時には、前年度に売却した株式の取得費を計算しなければなりません。まず、株式の取得単価を求め、単価に売却株数をかけることにより取得費が求められます。計算式は以下のようになります。
確定申告時の取得単価=買付代金合計÷売却時までの保有株数
確定申告時の取得費=売却時の取得単価×売却株数
1年間にある株式を400円で4000株、350円で1000株取得し、5000株保有したうち3000株を年内に売却したと仮定して計算してみましょう。
確定申告時の取得単価=(400円×4000株+350円×1000株)÷5000株=390円
確定申告時の取得費=390円×3000株=1,170,000円
譲渡所得等の計算式
譲渡所得(株式譲渡益)は、株式の譲渡額から必要経費を差し引いたものです。所得税、住民税、復興特別所得税など株式を売却した際に発生する税金は、この譲渡所得等に課税されます。譲渡所得等の計算式は、以下のようになります。
譲渡所得等=株式の売却金額-(取得費+株式譲渡にかかった費用)
株式譲渡にかかった費用とは、手数料や消費税を示します。譲渡額が6,000,000円、取得費と株式譲渡にかかった費用が2,000,000円と仮定して計算しましょう。
譲渡所得等=6,000,000円-2,000,000円=4,000,000円
もし、取得費と株式譲渡にかかった費用が株式の売却金額を上回る場合は損失となるため、税金は発生しません。
株式譲渡益にかかる税率
1年間(1月1日〜12月31日)に発生した株式譲渡益には、決まった税率で税金が課税されます。株式を譲渡したのが個人の場合には、譲渡所得等に対し、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%、と合計20.315%の税率がかかります。
譲渡者が法人の場合は法人税が課税されますが、税率は個人と違い一律ではありません。
これに復興特別所得税の0.315%が追加されます。
株式譲渡益にかかる税率(個人)=20.315%
株式譲渡益にかかる税率(法人)=(約30~40%)+0.315%
株式譲渡益にかかる税金を節税するには
株式を譲渡した際には、株式譲渡益が大きいほど、かかる税金も高額になります。高額な税金は法人であれば経営難などにつながるリスクもあるため、節税し負担を軽減しましょう。
節税の方法として活用できるのは、主に以下の3つです。
- 退職金
- 損益通算
- 基礎控除
以下で詳しく説明します。
退職金による節税
自社の株式を譲渡する際に「退職金」を活用できます。株式譲渡の対価の一部を「退職金」として自社から受け取るという方法です。退職金にかかる税率は比較的低いため、譲渡金額から退職金を差し引いた金額に課税され節税になります。
ただし、条件によってはかえって損をする可能性もあるので、よく確認しましょう。
損益通算による節税
株式の売買による損失がある場合は、利益から損失額を差し引いて計上できます。この制度を「損益通算」といいます。3年間にわたり損失を引き継ぐ「繰越控除」という制度を活用することにより、前年の損失を翌年、翌々年に繰り越すことが可能です。なお、損失が利益を上回る場合には税金は発生しません。
基礎控除による節税
確定申告を行い「基礎控除」を受けることにより、節税できます。
なお、基礎控除の金額は最大48万円であるため、他に所得がなく株式譲渡益が48万円以下であれば税金が実質0円となります。
株式譲渡益にかかる税金に関する注意点
株式譲渡益にかかる税金は、状況によって変わります。株式譲渡益にかかる税金を考える際には、以下の2点について注意しましょう。
- 譲渡損失は繰り越しする
- みなし配当は課税される
譲渡益に対しては税金が発生しますが、損失が出ている場合は損失を繰り越して、翌年以降に利益が出ていても損失を繰越分の損失額が控除されるようにできます。ただし、この制度を利用するには確定申告で繰越控除の手続きが必要です。手続きをしていない場合は損失を翌年以降に繰り越せないので、注意しましょう。
また、上場していない企業の株主がその企業に株式を譲渡した場合「みなし配当」という所得が発生する点にも注意が必要です。みなし配当とは、配当金には該当しないものの、企業が出資先の法人から金銭その他の資産の交付を受けた場合に1株あたりの資本金を上回る額だった場合に課税されるという制度です。
株式譲渡益にかかる税金に関するよくある質問
ここからは株式譲渡益にかかる税金に関して、よくある疑問点に回答していきます。
Q.株式譲渡益には確定申告が必要?
譲渡益には原則として確定申告が必要となります。株式等の譲渡益は他の所得とは区別し、計上します。しかし、以下の5つのケースでは確定申告が不要となります。
- 源泉徴収ありの特別口座を利用している場合
- 年間を通して株式等の損失が出ている場合
- 譲渡益を含む年間の所得が、所得控除額より少ない場合
- 譲渡益を含む年間の所得が20万円以下の場合
- 年間の収入金額が400万円以下の年金受給者で、譲渡益を含む年金以外の所得が20万円以下の場合
損失を繰り越しする制度を利用する場合には必ず確定申告が必要となるため、2に該当するケースは確定申告をした方が節税となるでしょう。
Q.相続した株式の場合、株式譲渡益はどうなる?
相続した株式を売却した場合にも、株式譲渡益には税金が発生します。株式譲渡益は株式を売却した価格から取得費と売却費用を差し引いた額です。相続した株式である場合、取得費は被相続人の取得費を引き継ぐことになります。
また、相続した株式を相続開始の翌日から3年10ヶ月以内に譲渡すると、譲渡益から差し引く取得費に一定金額が加算される取得費加算特例の制度があります。特例が適用される条件であれば、相続した株式を売却し譲渡益が出た場合に、相続しない株式を売却して出た場合の譲渡益より税額を抑えられます。
ただし、売却した時だけではなく、株式を相続するタイミングで相続税がかかる場合があるので注意しましょう。
関連記事:株式譲渡による事業承継のメリットは?税金や手続きについても解説
まとめ
株式譲渡益は、株式を売却した額から購入時の価格と売却にかかった費用を引いた額のことです。株式譲渡益には所得税、住民税、復興特別所得税が一律の税率で課税されます。法人が株式を売却する場合は、法人税がかかります。
株式譲渡益にかかる税金は、退職金・損益通算・基礎控除を活用すれば節税することが可能です。ただし、節税になるかどうかは条件によって変わってくるため、自分の条件が当てはまるかどうかを確認しましょう。
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