事業拡大を実現するためのマイノリティ出資の活用を紹介

2023年11月8日

事業拡大を実現するためのマイノリティ出資の活用を紹介

このページのまとめ

  • マイノリティ出資は特定の株主から議決権50%未満の出資を受け入れるスキームである
  • マイノリティ出資を用いると、受入れ企業は経営権を維持しながら企業価値を実現できる
  • デメリットとしては利益配分や将来の資本政策のリスクがある
  • 受入れにはいくつかの留意点があり、特に契約書は慎重に作成すべきである
  • 企業価値向上を実現するためには、受入れ後の経営方法を工夫する必要がある

M&Aによる企業の売却方法は、全株式の売却だけではありません。マイノリティ出資という手法を活用すれば、経営権を維持しながら中長期的な企業価値の向上を図ることが可能です。この記事では、マイノリティ出資の具体的な内容やメリット・デメリットについて解説します。また、マイノリティ出資実施後に企業価値を向上させるための取り組みも紹介します。

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マイノリティ出資とは

マイノリティ出資は、企業の経営権を支配しない程度の出資といわれますが、具体的にはどのような出資を指すのでしょうか。マイノリティ出資の定義や目的について解説します。

マイノリティ出資の定義

マイノリティ出資とは、企業が株主との間で契約を結び、議決権比率の10%〜49%程度の出資を受けるスキームです。

日本の会社法において、株主の議決権が3分の1以上の場合には、重要事項の決議に対して拒否権を持つことができます。
また、議決権比率が50%以上であれば、その株主は企業に対して多数決による支配権を有します。
マイノリティ出資は、議決権の過半数を保有しないことで受入れ企業の独立性を尊重しつつも、一定の影響力を保持する点が特徴です。

ただし、出資額は必ずしも3分の1以上である必要はなく、10%程度のマイノリティ出資も考えられます。投資家がどれだけ影響力を持ちたいか、企業がどれだけコントロールを渡したいかによって出資比率は変わります。

マイノリティ出資の目的

次に、マイノリティ出資の目的について解説します。

売り手にとっての目的

受入れ側である売り手がマイノリティ出資を実施する主な目的は、企業の成長や事業拡大の実現です。投資家からの資金や専門知識の獲得によって、新たなビジネスチャンスにつなげたり、、既存事業の競争力を向上させたりすることができます。

例えば、企業が新しい製品を開発したいが資金が足りない場合、マイノリティ出資を受けて必要な資金を調達できます。また、外部から専門家を迎え入れることで製品の性能を改善し、市場での競争優位性を確立することも可能です。

投資家にとっての目的

投資家がマイノリティ出資を行う目的は複数ありますが、なかでも投資リターンの獲得を目的とする場合が多いです。マジョリティ出資よりもリスクは相対的に低く抑えて投資リターンを得ることができます。

また、戦略的パートナーシップを目的とする場合もあります。
例えば、原材料の調達先など自社のサプライチェーンに関わる企業に対し、一定の影響力を得ることで、事業戦略の優位性を確保するために出資するような場合です。

さらには、新規事業とイノベーションも目的になりえます。出資先が展開する新規市場やテクノロジーへのアクセスを通じて、未来のビジネスチャンスを探ることが可能です。

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売り手にとってのマイノリティ出資のメリット

売り手側の立場で、マイノリティ出資の主なメリットを2つ解説します。

経営権が維持できる

売り手がマイノリティ出資を受け入れる最大のメリットは、経営権を維持できることです。マイノリティ出資者はあくまで少数株主であるため、出資受け入れ後も売り手は経営上の重要な意思決定において主導権を握り、経営を続けることができます。

経営権を維持できれば、企業の方針やビジョンを維持しつつ、投資家から提供される資金や技術などを用いて新しい事業やサービスに挑戦できるでしょう。

経営の自由度を保ちつつパートナーシップを試すことができる

マイノリティ出資は、売り手にとってのデーティング投資の手法とも言えます。デーティング投資とは、投資家と企業とのパートナーシップに実効性があるかを検討するための「お見合い」のようなものです。

マイノリティ出資は、自社の企業価値向上に投資するパートナーを選定する仕組みとして機能します。投資家から出資を受け入れる企業は、資金に加えて経営的な支援や技術などのリソースの提供を投資家に期待します。

それらのリソースが有益で自社の企業価値向上につながることが確認できれば、パートナーとの関係性を深めていくことを判断できるでしょう。逆に、期待したような貢献が得られなかった場合は、関係性を現状のままに止めるか、場合によっては解消することも可能です。

ただし、マイノリティ出資ではなく50%超の出資を受け入れた場合は、企業側がこうした判断を行うことは難しくなります。企業の経営方針を決めるのは、議決権の過半数を保持する投資家であるためです。

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売り手にとってのマイノリティ出資のデメリット

マイノリティ出資は、売り手である企業にとってメリットがあるM&Aの手法ですが、デメリットも存在します。この章では、売り手にとってのマイノリティ出資のデメリットを解説します。

利益の内部留保が難しい場合がある

マイノリティ出資において、売り手は利益を投資家と分配する必要があります。売り手が一定の配当性向を求める場合、売り手企業は利益を内部留保できず、投資家に対して継続的に利益が流出することになります。

投資家とのコミュニケーションコストが生じる

マイノリティ出資に参加する投資家とのコミュニケーションは重要な課題です。売り手は投資家に対して事業の現状や計画、経営戦略などを適切に伝える必要があります。しかし、投資家との意見や価値観が異なる場合、頻繁なコミュニケーションの必要性が生じることもあります。

このようなコミュニケーションは場合によっては企業の経営陣にとって大きなコストとなる可能性があります。

将来的な資本政策が複雑になる

マイノリティ出資を受け入れることで、将来的な株式売却や新規投資の受け入れが難しくなるおそれがあります。もし契約書に以下のような条項が存在する場合、将来の資本政策の自由度は一定の制約を受けることになります。

  • ドラッグアロング条項
  • タグアロング条項
  • 優先的引受権

ドラッグアロング条項

ドラッグアロング条項とは、投資家が企業の株式を売却する際、他の株主に対してその売却に参加するよう強制できる条項です。少数株主が有する株式の流動性を高めることで、投資家がスムーズに売却できるメリットがあります。

しかし、マイノリティ出資をした投資家以外の投資家にも影響するため、将来的に株主構成が大きく変化してしまうリスクが生じます。

タグアロング条項

タグアロング条項は、ドラッグアロング条項とは逆の効果を持ちます。ある株式を売却する際、マイノリティ投資家はその売却に一緒に参加して自らの株式を売却する権利を有します。この権利は、マイノリティ投資家にとって有利なものです。

ただし、タグアロング条項にも、株主構成を大きく変化させるリスクがあります。

関連記事:タグアロングとは?条項の内容やドラッグアロングとの違いなどを解説

優先的引受権

優先的引受権とは、企業が新しい株式を発行する前に、マイノリティ投資家など既存の株主に対して株式購入の権利を提供する条項です。優先的引受権により、マイノリティ投資家は、出資比率の維持と将来的な影響力を保護しようとします。しかし、このような投資家が存在する場合、新しい投資家を受け入れることが難しくなります。

このように、マイノリティ出資にはメリットだけではなくデメリットもあるため、売り手は慎重に判断する必要があります。

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マイノリティ出資 VS マジョリティ出資

ここまで、マイノリティ出資のメリットとデメリットを解説しました。では、マイノリティ出資とマジョリティ出資の2つの選択肢がある場合、どのような観点から検討すればよいのでしょうか。

マジョリティ出資のメリットとデメリット

マジョリティ出資とは、企業が投資家から株式の過半数以上の出資を受ける形態です。受入れ先企業は、マジョリティ出資の以下のようなメリット・デメリットを理解しておくべきでしょう。

メリット

成長資金や経営リソースの確保

より大きな成長資金や経営リソースを獲得できることがメリットです。マジョリティ出資の場合、投資家から提供される資金や経営リソースはマイノリティ出資よりも大きくなる傾向があります。そのため、企業の成長に必要な研究開発、市場拡大、設備投資などの促進が可能です。企業の競争力向上に、大いに寄与するでしょう。

デメリット

経営権の制限

一方、デメリットとしては経営権の制限が指摘されます。マジョリティ出資を受けた企業は、多数派出資者が経営権を持つため、経営上の自由度が制限されるおそれがあります。投資家が取締役の選任などの重要な決定権を握る場合、企業の方針に対して大きな影響を与えることになります。

投資家とのコミュニケーションコスト

また、コミュニケーションコストもデメリットのひとつです。マジョリティ出資者は、受入れ先企業に対して、自社と経営方針やビジョンを一致させることを求めます。これを実現するためには、両者間でのコミュニケーションを通じて調整を行う必要があります。しかも、出資者側の都合で経営方針が変わるケースも少なくありません。経営方針の変更を受け入れられない場合、両者間で摩擦が生じるおそれがあります。

マジョリティ出資は、企業にとって大きな成長のチャンスを提供する一方で、経営においてさまざまな調整が必要となる複雑な投資形態です。

どちらか迷った際の検討ポイント

マイノリティ出資とマジョリティ出資のどちらを選ぶか迷った際には、以下の観点を考慮して判断することが重要です。

経営権の有無

第一に経営権です。マイノリティ出資を受ける場合は、経営権を維持できます。対して、マジョリティ出資を受けると、企業自体の意思決定権が制限される可能性があります。投資家との経営方針が完全に一致している場合はマジョリティ出資でも問題ありませんが、一致していない点や不明瞭な点がある場合は、マイノリティ出資が望ましいでしょう。

利益とメリットのバランス

利益とメリットのバランスも重要な検討ポイントです。出資比率が増えるほど、投資家に分配する利益は増加します。そのため、マイノリティ出資によって得られるメリットと流出する利益のバランスを見極める必要があるでしょう。特に、オーナーが資産管理会社のような形で株主にいる場合は、分配される利益額の変化を慎重に検討しなければなりません。

企業の戦略や現在の株主構成

最終的な選択は、企業の戦略や現在の株主構成を踏まえて慎重に行う必要があります。マイノリティ出資とマジョリティ出資それぞれの特徴を深く理解し、自社のビジネスモデルと整合させることが、企業の持続的な成長へとつながるでしょう。

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マイノリティ出資を受け入れる際の留意点

マイノリティ出資を受け入れる際の留意点について解説します。

買い手との相性や信頼性の観点でも評価する

マイノリティ出資を受け入れる際は、買い手の評価も重要です。以下に、評価のポイントを紹介します。

買い手との相性

まず、買い手との相性を考慮する必要があります。共通のビジョンや価値観を持っていることは、将来の紛争を回避するために重要です。相性が合わない場合、意思決定や経営方針の違いが問題となるおそれがあります。

また、投資家が持っている知見や経営リソースが自社とマッチしているかどうかも注意が必要です。たとえば、投資家が持つ店舗販売網に期待している場合においては、自社の店舗網や物流網とのシナジーが期待できるかを評価する必要があります。

買い手の信頼性

出資を受け入れた場合、相手方と年単位で長く付き合っていくことになります。信頼できない買い手との取引は、将来問題を引き起こすおそれがあるため、信用力をしっかりと調べることが重要です。

信頼性とは、財務的な観点も含みます。投資家の財務状況が不安定であると、当初合意した事項が遵守されない場合もあります。したがって、買い手の経営陣の考え方や経営実績などを評価し、慎重に判断しましょう。

契約書に記載する内容に注意する

マイノリティ出資の条件についても、契約書で合意を形成する必要があります。条件を明確にすることで、将来的に紛争が生じる可能性を抑えられるでしょう。
なかでも、技術的な側面が強い契約書での合意について注意点をいくつか説明します。

具体的な条件を明記する

契約書には具体的な条件を明記する必要があります。出資額や出資比率、議決権の割合など、マイノリティ出資に関する具体的な内容を盛り込みましょう。

投資家から企業に提供すべきことを明記する

投資家から企業に提供すべきことも、できるだけ具体的に明記しておくことが推奨されます。たとえば、技術面での支援を期待する場合は、特許などのライセンス方法についても明記してください。

また、営業協力のような支援を期待する場合は、支援の範囲や、可能であれば目標数値を記載しましょう。

パートナーシップの解消や株式売却手続きについて明記する

将来的な紛争を予防するためには、パートナーシップの解消や株式売却手続きについても明記することが重要です。

先に紹介した、ドラッグアロング・タグアロング・優先的引受権といった条項は、常に記載されるものではありません。投資家と企業の関係性や自社の戦略を踏まえて、その要否を慎重に判断する必要があります。

契約書作成の際には、専門家の助言を受けることが推奨されます。法律専門家の意見とM&Aに詳しい専門家に相談することで、将来起こり得る問題を網羅的に把握でき、適切な対処方法を契約書に定められるでしょう。

関連記事:資金調達とは?6種類の方法のメリット・デメリット、融資以外の方法を解説

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マイノリティ出資受け入れ後の経営

マイノリティ出資により企業価値を高めるためには、出資受け入れ後の経営が重要です。この章では、マイノリティ出資受け入れ後の経営方法と、企業価値向上のために取り組むべきポイントを紹介します。

マイノリティ出資後の経営におけるポイント

マイノリティ出資を受け入れた企業は、その出資者とのパートナーシップを構築し、共同で企業を運営していく必要があります。以下では、マイノリティ出資後の経営におけるポイントを紹介します。

経営戦略の共有と合意形成を行う

まず、経営戦略の共有と合意形成です。マイノリティ出資者との間で、共通の目標や方向性について合意を形成するための、定期的な報告や意思決定のプロセスを構築しましょう。

これには両者間の認識相違を避ける目的がありますが、それだけではありません。経営戦略の立案や実行計画の策定において、出資者の意見や知見を活用し、より良い結果を生み出す機会を増やすことにつながります。

組織文化の融合を図る

組織文化の融合も重要です。特に、投資家と企業の業種や市場が異なる場合、相手方の組織文化を尊重して取り込むことはシナジーを生み出す源泉となります。

マイノリティ出資者が持つバックグラウンドや経験を活かし、組織全体の多様性を尊重することが重要です。組織文化の融合は、チームのモチベーション向上やイノベーションの促進につながります。

会計報告やリスク管理の対応を行う

会計報告やリスク管理の対応も忘れてはいけません。出資比率や契約内容によっては、記号が投資家にとっての会計上の持分法適用会社に該当します。その場合、投資家は企業からの情報提供が、各種法律を遵守するためには不可欠なものとなります。

受入れ先である企業には意識しづらいものですが、適切に会計報告やリスク管理の対応を行うことは、パートナーシップを深めるために重要です。

企業価値向上のため取り組むべきこと

企業価値向上のために、具体的に取り組むべきこととして以下の2つが挙げられます。

アクションプランの策定

100日プランのように、シナジー創出のためのアクションプランを両者間で策定しましょう。出資後に実施するべきことをリストアップし、それらをスケジュールに反映して着実に実行していくことが重要です。

両者間のパートナーシップを活性化させるのにもっとも良いタイミングは出資直後です。そのため、出資から一定期間内にやるべきことを一緒に取りまとめることで、推進力が高まります。

会議体の設置

会議体を設置することも欠かせません。経営陣同士が意見交換を行う定期的な会議体を四半期から半期に一度設定することで、互いの課題や目標をタイムリーに更新できます。

また、特定の目的や機能に合わせたワーキンググループを、できるだけ早い時期に設けることも重要です。たとえば、技術協力を投資家に期待する場合、受入れ先はその実現をミッションにしたワーキンググループを両者間に設置することで、出資受入れの目的を早期に達成できるようになります。

ワーキンググループは、IT・システムや会計など、必要と考えられるさまざまな分野で設置することが望ましいでしょう。

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まとめ

マイノリティ出資を活用することで、経営権を維持しながら、企業価値向上のための経営資源を獲得できます。一方で、マイノリティ出資を成功させるためには、相手方との合意形成や適切な契約書の作成など多くの準備があります。

また、出資を受け入れたあとも、企業価値向上のためにはさまざまな工夫が必要です。こうした取り組みには、通常の事業運営とは異なる専門的な知見が求められます。マイノリティ出資をスムーズに実施し、成功させるためにも、まずは専門家に相談しましょう。

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