事業承継での消費税の納税義務は?課税されるケースや注意点を解説

2023年10月27日

事業承継での消費税の納税義務は?課税されるケースや注意点を解説

このページのまとめ

  • 2年前の事業の課税売上高が1,000万円以上の場合に消費税の納税義務が発生する
  • 事業承継の主な方法は「企業の売買「生前贈与」「相続」の3つ
  • 消費税が課税されるのは、売買によって事業承継を行ったとき
  • 企業を売却する際には、のれん代や棚卸資産額が含まれた資産額に消費税がかかる

事業承継する際に消費税やそのほかの税金がかかるのかどうか気になる方も多いのではないでしょうか。
事業承継に伴い発生する消費税は、事業承継の方法によって変わってきます。

本コラムでは、事業承継で消費税の納税義務や事業承継で発生する税金を方法別に解説します。事業承継の際に発生する消費税の注意点も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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消費税とは

消費税とは、商品や製品の販売、サービスの提供などの取引に対して課税される税金です。消費者が税金を負担し、事業者が納税をします。
事業者が対価を得て行う取引のほとんどが課税の対象となります。しかし、売上が発生した事業者全員が納税を行う義務があるわけではありません。基準期間である前々年(2年前)における課税売上高が1,000万円を超える事業者が課税事業者です。

参考:国税庁「消費税のしくみ」

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事業承継で消費税の納税義務があるケース

事業承継をした際には、承継した者が新たに事業者となります。国が定めたルールに則り、2年前の事業の課税売上高が1,000万円を超えていれば、消費税の納税義務が発生します。さらに、事業承継で会社を売却した際には、資産に対して課税されます。
課税される資産は「有形固定資産」と「無形資産」の2種類です。

消費税が課税される有形固定資産は以下のとおりです。

  • 建物
  • 車両運搬器具
  • 器具備品
  • 機械装置
  • 船舶

消費税が課税される無形資産は以下のとおりです。

  • 漁業権
  • 特許権
  • 商標権
  • 意匠権
  • ソフトウェア

形のないサービスに対して消費者が消費税を支払うように、事業承継でも形がない資産に対して消費税が発生するので覚えておきましょう。

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事業承継をする3つの方法

事業承継には、売買・生前贈与・相続の3種類の方法があります。
また、事業承継の対象は「個人から法人」と「個人から個人」の2パターンがあります。
事業承継の方法と、対象が何に該当するかの組み合わせは全部で6パターン存在しており、パターンごとに消費税の納税義務や発生する税金の種類が異なります。

まずは、事業承継をする3種類の方法を詳しく知っておきましょう。以下、それぞれ解説します。

1.売買

会社の売買はM&Aとも呼ばれます。会社を個人または企業に売却し、購入者が新たな事業者になります。

事業承継の手段として売買を選ぶことのメリットは、現経営者が売却益を得られることや、身内に後継者がいない場合も廃業せずに済むことです。
また、相続や生前贈与に比べ、売買による事業承継は後継者の権利が安定します。

一方、外部に売却する場合は売りたい条件で企業を購入してくれる購入者が見つかるとは限らないことが懸念点です。また、デメリットとして現経営者は譲渡所得税を、後継者は消費税などを支払うことになる可能性がある点が挙げられます。

2.生前贈与

存命している現経営者が会社を後継者に譲渡する形で、「生前贈与」として事業承継する場合もあります。
「生前贈与」とは、存命している個人から別の個人へ財産を無償で分け与えることです。親族に企業を譲渡する「親族内事業承継」と、外部に譲渡する「親族外事業承継」がありますが、一般的に生前贈与を行う際には「親族内事業承継」であることが多いです。

生前贈与による事業承継は、贈与税以外に後継者の金銭的負担がないこと、現経営者が存命の間から後継者が経営に関われることがメリットとして挙げられます。

一方、現経営者の死後に後継者が他の相続人から「遺留分侵害額請求権」を請求されるリスクがある点がデメリットです。
「遺留分侵害額請求権」とは、一部の相続人だけが多く資産を譲り受けている場合に、他の相続人が多くを譲り受けた相続人に対し遺留分の額を請求することができる制度です。

生前贈与している場合は相続する場合と比べると「遺留分侵害額請求権」から後継者の権利を守れる可能性は高まりますが、売買ほど確実に権利が安定するわけではないと理解しておくとよいでしょう。

3.相続

経営者が亡くなり、後継者となった相続人が事業を引き継ぐ場合もあります。被相続者が事業者であった場合、相続財産の一部として株式を後継者が相続します。

経営者が亡くなってからの引き継ぎは、一般的には「親族内事業承継」となり、従業員が心理的に受け入れやすいというメリットがあります。

しかし、相続による事業承継は不確定要素が多いです。例えば、時期が予測不能であり、後継者に経営者のノウハウや経営方針が引き継がれていないまま相続する事態も起こりえます。
また、遺言がないまま現経営者が亡くなった場合は相続人同士が話し合い、現経営者の意志が反映されないまま後継者が決まってしまいます。
遺言があり後継者が指定されていた場合も、「遺留分侵害額請求権」によって後継者が他の相続人から侵害額に相当する金銭を請求されるリスクがあります。

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【方法別】事業承継で発生する税金 

事業承継には複数の方法があり、方法によって支払い義務のある税金の種類が変わります。ここからは、方法別に事業承継における税の支払い義務について、消費税を中心に紹介していきます。

売買による事業承継にかかる消費税

売買による事業承継にかかる消費税について、「個人から法人」と「個人から個人」の2パターンに分けて解説します。

個人から法人への売買の場合

個人から法人へ事業を売買する場合、売却側(現経営者)は売買によって得た利益に対し、所得税と消費税を支払う義務が発生します。

また、法人は所得を得た際に、法人税が課税されます。そのため、買い手側(後継者)が法人である場合、事業で発生した利益に対し法人税を支払う義務が発生します。

個人から個人への売買の場合

個人から個人へ事業を売買する場合、売却側(現経営者)は個人から法人への売買と同様に、売買によって得た利益に対する所得税と消費税を支払う義務が発生します。

買い手側(後継者)には、消費税の納税義務はありません。基本的には贈与税、相続税などの税金の支払い義務も発生しません。
ただし、ケースによっては贈与税が発生する場合があり、不動産を取得する場合は所得税や消費税の支払い義務が発生します。また、登録免許税が発生するケースもあります。

生前贈与による事業承継にかかる消費税

生前贈与による事業承継にかかる消費税について、「個人から法人」と「個人から個人」の2パターンに分けて解説します。

個人から法人への生前贈与の場合

個人から法人へ生前贈与の形で事業承継する場合、現経営者に消費税の支払い義務はありません。しかし、法人へ譲渡した場合はみなし譲渡所得が発生することがあります。みなし譲渡所得が発生した場合には、消費税ではなく「みなし譲渡所得課税」がかかります。

みなし譲渡所得とは、個人や企業が無償または著しく低い価値で資産を譲渡した際に、財産を時価で譲渡したとみなして課税譲渡所得金額を計算する制度です。個人が法人に資産を譲渡した場合に、譲渡所得が計算されます。

一方で、後継者は、引き継いだ事業で発生した所得に対し法人税が課されます。また、必要な場合には登録免許税と不動産取得税が発生します。

個人から個人への生前贈与の場合

個人から個人へ生前贈与の形で事業承継する場合は、現経営者は消費税を含め税金の支払い義務がありません。

後継者は、相続時精算課税という制度を活用することで、累計2,500万円までの贈与であれば贈与税の支払い義務がありません。贈与額が2,500万円を上回った場合には、一律20%の贈与税が課税されます。
また、他の事業承継の方法と同様に、登録免許税と不動産取得税が発生する場合もあります。

生前贈与による事業承継は、現経営者が存命中に準備が進められ、節税しながら事業を後継者へ引き継げるため、後継者を育てながら効率的に事業を拡大できる方法といえます。

相続による事業承継にかかる消費税

相続による事業承継にかかる消費税について、「個人から法人」と「個人から個人」の2パターンに分けて解説します。

個人から法人への相続の場合

個人から法人へ相続の形で事業承継する場合、相続が行われることになるのは被相続者(現経営者)が亡くなった後であるため、被相続者(現経営者)に消費税を含めた税金の支払い義務は発生しません。

一方、相続者(後継者)の法人は、法人税、登録免許税、不動産取得税が課される場合があります。ただし、相続をしたからといって消費税の支払い義務は発生しません。

個人から個人への相続の場合 

個人から個人へ相続の形で事業承継する場合、法人の場合と同様に被相続者(現経営者)には税金の支払い義務は発生しません。

一方、相続者(後継者)は相続税の支払い義務が発生します。相続した時点での企業の資産価値によって、相続税の税額は変わります。消費税の支払い義務は発生しません。

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事業承継の消費税に関する3つの注意点

売買による事業承継によって発生する消費税に関して、注意する点を3つ紹介します。

  • のれん代によって消費税が高額になる場合がある
  • 棚卸資産額は変動する
  • 消費税課税事業者選択届出書の提出が必要な場合がある

以下でそれぞれ詳しく説明します。

1.のれん代によって消費税が高額になる場合がある

上場していない企業を売買によって事業承継する場合、純資産額に上乗せされたのれん代によって消費税が高額になってしまうケースもあるため注意しましょう。

のれん代とは、企業が持っている無形の固定資産です。たとえば、ノウハウやブランド力などの価値を指します。のれん代がいくらになるかは一律ではありませんが、一般的には営業利益の1~5年分で計算されます。

のれん代により企業の譲渡価格が上がり消費税が高額になってしまう場合、事業譲渡ではなく消費税の発生しない会社分割や合併といった方法を検討するとよいでしょう。企業の売買に詳しい専門家に相談しながら事業の承継方法を決めることをおすすめします。

2.棚卸資産額は変動する

消費税は企業の譲渡価格に対して発生する税金です。
譲渡価格は純資産とのれん代によって決定しますが、純資産は棚卸資産額を含めた額となります。そのため、棚卸資産額についても注意しなければいけません。

ここでポイントとなるのが、棚卸資産額は変動する点です。
棚卸資産額とは、企業が在庫として保管している商品、製品、原材料などのことです。企業が保有する棚卸資産は日々変動します。いつ企業を譲渡するかによって棚卸資産額が変動するため、企業の譲渡価格および消費税の額も変わります。
在庫が多い時期に企業を売却すると、棚卸資産の額に伴って消費税も高額になるでしょう。棚卸資産額によって消費税が高額になる際には、譲渡対象の棚卸資産を絞ったり、M&A以外の事業承継を検討したりといった対応が必要です。

3.消費税課税事業者選択届出書の提出が必要な場合がある

事業承継した際に、節税のために消費税課税事業者選択届出書の提出したほうがよい場合があります。

消費税課税事業者選択届出書とは、消費税の申告義務のない売上1,000万円以下の免税事業者が、自ら課税事業者になることを希望する場合に提出する書類です。管轄の税務署に書類を提出することにより、売上が1,000万円以下であっても消費税を納税することになります。

消費税を払う義務がない免税事業者が課税事業者になる理由は、消費税課税事業者選択届出書を出し消費税を払ったほうが得となるケースがあるからです。
消費税を支払ったほうが得となるのは、仕入れの際に支払う消費税が、売上として消費者から受け取る消費税より多くなるケースです。「仕入税額控除」という仕組みがあり、受け取った消費税より支払った消費税が多い事業者は超過分が還付されます。
仕入れ時に払う消費税と売上で得る消費税を比べ、還付金が受け取れるかを判断してください。

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まとめ

事業承継をするには売買・生前贈与・相続の3種類の方法があります。そのうち、消費税の支払い義務が発生するのは売買による事業承継だけです。
しかし、生前贈与、相続でも税金の支払い義務は発生するため、事業承継の予定がある場合には、事業を譲り受ける対象や状況によってどれくらいどんな税金を払う必要があるのかを把握しておきましょう。
売買により事業承継する際には、のれん代や棚卸資産額なども考慮し、いくら消費税がかかるかを試算してください。また、免税事業者でも消費税の課税事業者になることで得をする場合もあるので、売上にかかる消費税の金額と仕入控除税額をチェックしましょう。

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