経営権とは?企業経営に関わる権利や譲渡方法などについて解説

2023年10月26日

経営権とは?企業経営に関わる権利や譲渡方法などについて解説

このページのまとめ

  • 経営権とは企業経営に関わる事柄において指揮・管理・決定する権利を意味する
  • 議決権を持つ株式の保有割合によって、経営への影響力が変化する
  • 経営権の譲渡方法は、株式譲渡と株式交換が主流である
  • 敵対的買収とは、譲渡企業の合意を得ずに経営権を強引に奪う手法のこと
  • 事業承継の失敗や敵対的買収を防ぐためには、事前に対策を立てておくことが大切

経営権を譲渡したいが適切な方法がわからないと悩んでいる経営者の方も多いのではないでしょうか。経営権の譲渡に際しては、両社の合意のもとで適切な持株比率や譲渡方法を決めていくことが大切です。

本記事では、経営権を含む企業経営に関わる権利や必要な持株比率に加え、M&Aにおける譲渡方法について詳しく解説します。経営権を巡るトラブル例やその回避策についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

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経営権とは

経営権とは、企業のさまざまな事柄において指揮・管理・決定することができる権利です。

企業を経営する権利という意味合いで用いられることの多い経営権という言葉ですが、法律によって明確に定義された言葉ではありません。
企業経営に関わる重要な権利が行使できる状態にあれば、一般的には企業を経営する権利があるとみなされます。その状態とは、議決権のある株式を一定割合以上保有していることを意味します。

議決権とは、株式総会の決議の際に投票できる権利であり、原則として保有する株式の数だけ議決権は多くなります。そして多くの議決権を保有していればいるほど、経営に関するさまざまな決定に対しておよぼす影響力が大きくなるのです。
そのため、議決権をもつ株式をどれだけ保有しているかという点が、実質的に経営権を保持しているかどうかを示す基準となっています。

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企業経営に関する6つの権利

経営権以外にも、経営に関係する権利が存在しています。
そして、株主が企業経営に対してどの程度の影響をおよぼす権利を所持・行使できるかは、議決権のある株式をどのくらいの割合で保有するかによって決まります。

ここからは、企業経営にまつわる6つの権利を紹介します。また、それぞれにおいて必要な株式の保有割合と、権利を持つことで可能となる議決についても併せて解説します。

1.経営権

議決権のある株式の2分の1を超える株式を保有している場合、経営権を保持しているとみなされます。

経営権を保持している場合、株主総会の普通決議を単独の判断で決定することが可能です。
決議内容としては以下のようなものが挙げられます。

  • 取締役・監査役の選任・解任
  • 役員報酬の決定
  • 資本剰余金の配当
  • 資本剰余金にかかる利益準備金・繰越利益剰余金、別途積立金などの処理
  • 資本剰余金からの資本準備金の増額

経営権を保持することで、企業経営に関わる大方の意思決定が可能になります。

2.支配権

支配権とは、企業におけるあらゆる重要事項について単独で決定できる権利を指します。支配権を持つためには株式保有割合が3分の2を超える必要があります。

支配権を保持している場合、株主総会の普通決議と特別決議の両方において単独の判断で決定できるようになります。
その際に可能となる特別決議の内容としては以下のようなものが挙げられます。

  • 株式の併合
  • 定款の変更
  • 資本金額の減少
  • 事業譲渡の承認
  • 吸収合併・分割や株式交換にかかる契約の承認
  • 特定株主からの自己株式の取得
  • 特定株主に対する株式等の売渡請求
  • 全部取得条項付種類株式の取得

株式保有割合からもわかるように、支配権は経営権と比べて企業のより根幹に関わる重要事項への影響力が大きい権利といえます。

3.拒否権

拒否権とは、株主総会の特別決議における重要な決議の可決を阻止することができる、支配権の裏返しとなる力を持つ権利です。

特別決議が可決するためには、議決権の過半数を保持する株主が出席する株主総会において、出席者の3分の2以上が賛成する必要があります。
そのため、議決権のある株式保有割合が3分の1を超えていれば、単独で特別決議の可決を阻止することができるのです。
つまり、3分の1超の株式を保有している株主の存在は、経営者にとっては特別決議を阻む存在となります。

また、拒否権の中には、1株だけの保有であっても拒否権を発動することができる拒否権付株式も存在しています。拒否権付株式は事業承継の際に用いられ、後継者に事業を引き継いだ後も元の経営者が拒否権付株式を持っておき、経営をコントロールできるようにするために活用されることが多いです。

4.単独株主権

単独株主権とは、1株しか持たない株主でも行使できる権利を意味します。

株主には企業の経営に参加することができる共益権があり、この権利を守るために株式の保有数や保有期間に関係なく行使できる権利が存在しています。

行使できる権利には、株主総会における議決権や株主代表訴訟の提訴権、新株発行の差し止め権などが挙げられます。

5.少数株主権

少数株主権とは、一定割合以上の株式を保有する株主が行使できる権利を意味します。

株式の保有割合によって行使できる権利が異なり、以下はその一部です。

  • 株式総会の招集請求権:株式の保有割合が3%以上
  • 役員解任請求権:株式の保有割合が3%以上
  • 株主総会の議題提案権:株式の保有割合が1%以上
  • 会社の解散請求権:株式の保有割合が10%以上

少数株主権の行使に際しては、複数の株主が保有する株式の合計が一定割合以上である場合でも、権利行使することが可能となります。

6.完全経営支配権

完全経営支配権とは、​​株式保有割合が100%、つまり全ての株式を保有している株主が持つ権利です。この権利を持つことによって、全く制約がない状態で企業運営に関する全権を単独で掌握することができます。

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経営権を譲渡する2つの方法

経営権の譲渡は、企業の所有権を移転させることを意味する重要なプロセスです。

ここからは、経営権を譲渡する際に用いられることの多い、株式譲渡と株式交換の2つの方法について解説します。

1.株式譲渡で経営権を譲渡する

個人または企業が保有する株式を譲渡することで、経営権も移転することができます。
ここでは、株主譲渡の基本的な仕組みとメリットについて解説します。

株式譲渡とは

株式譲渡とは、譲渡企業の株主が保有する株式を譲受企業(もしくは個人)へ譲渡し、譲受企業は受け取った株式の対価を株主に支払うという方法です。

株式譲渡では、「株式譲渡契約」の締結と株主名簿の名義書換によって、譲受企業は議決権が行使できるようになり、経営権の譲渡が完了します。

株式譲渡で経営権を譲渡するメリット

株式譲渡によって経営権を譲渡するメリットの1つとして、譲渡企業・譲受企業双方にとって手続きが比較的簡易であることが挙げられます。

必要な手続きは株式を移動する手続きだけで、事業も従業員の雇用も継続したままでスムーズに経営権のみを譲渡することが可能です。

また、株式譲渡では対価として現金を選択できます。譲渡企業の創業者は老後資金や新規事業の立ち上げ資金を得られる点が、譲渡企業にとって大きなメリットといえます。

2.株式交換で経営権を譲渡する

株式交換は、株式譲渡とは異なる目的を達成するために経営権譲渡に用いられることの多い手法です。
ここからは、株式交換の基本的な仕組みとメリットについて解説します。

株式交換とは

株式交換とは、譲渡企業の全株式と譲受企業の株式の一部などを交換する方法です。譲受企業が譲渡企業の株式を100%保有することになるため、両社間には完全な親子関係が成立します。

株式交換は、会社法における組織再編行為に該当します。グループ企業の形成や再編を前提とし、譲渡企業の完全子会社化を目的とした経営権移転スキームです。

株式交換で経営権を譲渡するメリット

株式交換で経営権譲渡を行うにあたっても、譲渡企業と譲受企業の双方にメリットが生まれます。

まず譲渡企業にとっては、株式交換の対価として譲受企業の株式を受け取れることがメリットです。譲受企業の株価が上がればその利益を享受でき、譲受企業の株主として経営にもある程度関与することが可能となります。

対して譲受企業は、株式の取得対価を自社の株式とすることで、新たに買収資金を調達することなく子会社化の手続きを進めることができます。

また、譲渡企業側に完全子会社化に反対する少数株主がいた場合、譲渡企業は株主総会の特別決議で承認を得られれば、反対株主の保有する株式を譲受企業に強制的に移動させることが可能です。これにより、株式移動に際しての煩雑な個別対応が不要となる点も、大きなメリットです。

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経営権譲渡における問題

経営権の譲渡においては、譲渡側と譲受側が円満な関係で進めることができれば、問題なく経営権移転を完了することができます。

しかし以下の2つのケースにおいては、経営権の譲渡を巡って大きな問題に発展するケースが多く見られます。

  • 敵対的買収
  • 準備が不十分な事業承継

ここからは、上記のケースが経営権に対して及ぼす影響と、トラブルに対する防衛策について解説します。

敵対的買収

「敵対的買収」とは、買収対象企業側の合意がないままに、株式の買い占めによって強引に企業買収を行う手法のことです。譲渡企業の意向に関係なく経営権を奪われてしまうことから、多くの場合において、経営権を巡った両社間の争いに発展してしまいます。

敵対的買収の標的となる可能性はどの企業にもあることから、経営者は平時より防衛策を考え準備しておくことが必要です。防衛策を講じて、一方的な買収により経営権を奪われるリスクを抑えましょう。

敵対的買収に対する代表的な防衛策は以下の4つです。

  • 黄金株
  • ポイズンピル
  • パックマンディフェンス
  • ホワイトナイト

ここからは、それぞれの特徴を説明します。

1.黄金株

黄金株は、株主総会や取締役会にて重要な決議を否決することができる権利を与えられた特別な種類株式を指し、拒否権付株式とも呼ばれます。

あらかじめ黄金株を発行しておくことで、株主総会にて多くの普通株式を保有する株主が賛成しても、黄金株の株主が拒否すれば決議を否決することができます。そのため、敵対的買収に対して非常に強力な拒否権を発動することが可能です。

2.ポイズンピル

ポイズンピルとは、企業が敵対的買収者以外の株主に対して、新株を市場価格より安く取得できる新株予約権をあらかじめ付与しておくという防衛策です。

買収が仕掛けられたら、株式を大量発行することで敵対的買収者の持ち株比率を下げ、経営権・支配権の獲得を断念させることができます。

ただし、ポイズンピルには株価の低下を招いたり、敵対的買収者によって新株発行の差し止め請求が行われたりするデメリットがあります。近年は、敵対的買収に対する防衛策が増えてきたため、ポイズンピルがとられることは少なくなっているようです。

3.パックマン・ディフェンス

パックマン・ディフェンスとは、敵対的買収を仕掛けられた企業が、逆に買収者に対してTOB(株式公開買付)を仕掛ける対抗措置です。逆買収やデッドマンズトリガーなどと呼ばれることもあります。

ただし、この防衛策は当初の買収者も逆買収を仕掛ける側も、双方が対応に疲弊したり企業価値が低下したりする恐れのある非常にリスキーな防衛策です。そのため、実施する際は慎重な判断が必要となります。

4.ホワイトナイト

ホワイトナイトとは、敵対的買収を仕掛けられた企業のことを、友好的に買収・合併してくれる企業のことです。救済会社と呼ばれることもあります。

敵対的買収の対象となった企業が、自ら友好的な相手に買収される道を選択することで、敵対的買収者に経営権を奪われることを防げます。

買収する際は、ホワイトナイトがTOBで買付するほか、敵対的買収の対象となった企業の第三者割当増資を引き受ける方法などがあります。

準備が不十分な事業承継

事業承継を実施する際も、経営権を巡るトラブルに発生する可能性が高いため、注意が必要です。

中小企業では、創業者が経営権を保有し、別の人物が経営の実務にあたっているというケースが少なくありません。

経営権を保有している人と経営の実務を行う人がバラバラの状態で、創業者が後継者や株式相続について明確に定めないまま急逝した場合、その後の経営権を巡って創業者の同族間で争いに発展する可能性が高くなります。

後継者にスムーズに経営権を移すことができるように、現時点で経営権を保持している経営者や創業者は、生前または引退前から後継者の指名や株式譲渡などを実施しておくことが大切です。

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まとめ

経営権とは、企業の経営に関するさまざまな事柄を決定する権利のことです。議決権のある株式の保有割合が多いほど、経営に対して強力な権利を行使できるようになります。
また、敵対的買収や現経営者の急逝といった事態が発生すると、不本意な形で経営権を譲らなければならなくなってしまう可能性が高くなります。安定した企業経営のために、日頃からリスクヘッジ策を考え、万が一の事態に備えておきましょう。

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