ノンコア事業の意味とは?売却・買収する方法やメリットも紹介
2023年10月26日
このページのまとめ
- ノンコア事業とは企業の中核ではない事業のことを指す
- 近年では、コスト削減や労働力不足のため、ノンコア事業の売却が注目されている
- ノンコア事業を売却すると、コア事業に資金や人材を集中できるメリットなどがある
- ノンコア事業を買収すると、新規事業が円滑に始められるなどのメリットがある
- ノンコア事業を売却する方法には、主に「事業譲渡」と「会社分割」の2つがある
「ノンコア事業の意味とは何?」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。ノンコア事業とは、企業の中核ではない事業のことです。
このコラムでは、ノンコア事業の定義や注目されている理由を解説。また、ノンコア事業を売却・買収するメリットやその方法についても紹介します。そのほか、注意点も紹介するのでぜひ参考にしてください。
目次
ノンコア事業とは
コア事業ではない事業のことを「ノンコア事業」といいます。コアとは「中核」を表し、その企業の中核となっている事業が「コア事業」です。
たとえば電機メーカーが、血糖値センサーや電子カルテ、補聴器などのヘルスケア事業も手掛けているような場合、生活家電や空調家電、キッチン家電などの製造・販売がコア事業、ヘルスケア事業がノンコア事業にあたります。
ノンコア事業の売却が注目されている理由
企業としてノンコア事業を手掛けて事業を多角化させることで、会社の成長につなげられる可能性があります。仮にコア事業が不振になった場合でも、売上・利益を補える「リスク分散効果」が期待できます。
ところが、こうしたメリットがあるにもかかわらず、近年ではノンコア事業の売却が注目されています。
ノンコア事業でも人件費や運営費、管理費などのコストが必要です。コア事業の価格競争が激化してくると、こうしたノンコア事業にかかる経費さえも足かせになってくる可能性があります。
また、少子化による労働力不足が以前よりもはるかに顕著になっています。ノンコア事業どころかコア事業の人材も集めることが難しくなっている点も、ノンコア事業の売却が注目されている理由といえるでしょう。
ノンコア事業を売却する4つのメリット
ノンコア事業を売却することで、下記の4つのメリットが得られます。
- 経営を効率化できる
- コア事業に人材を集中できる
- 後継者問題を解決できる
- 従業員の雇用が継続できる
それぞれ詳しく解説します。
経営を効率化できる
ノンコア事業を売却すると、これまでノンコア事業に費やしていた資金をコア事業に集中させられます。会社全体の利益向上につながることが期待できます。
また、資金を有効活用していることから、投資家や株主の評価が高まり、さらなる資金調達もしやすくなるでしょう。金銭で売却する場合は売却益を得られて、運営資金に回すことも可能です。
コア事業に人材を集中できる
ノンコア事業の売却をすることで、コア事業に人材を集中させることができます。
少子化の影響により、なかなか優秀な人材を集めるのは難しい環境です。ノンコア事業を売却して人材をコア事業に集約することで、人材の有効活用にもつながります。
ノンコア事業からコア事業への人材移動をするため、新規の採用コストもかかりません。
また、ノンコア事業からコア事業に転属することで、モチベーションアップする従業員もいるでしょう。
後継者問題を解決できる
今はノンコア事業が軌道にのっていても、将来の後継者が見つからずに頭を悩ませている事業主もいるかもしれません。
しかし事業が売却できて、事業や従業員がそのまま存続できれば、ノンコア事業についての後継者問題は解決できるでしょう。
従業員の雇用が継続できる
ノンコア事業が不採算事業になっていた場合、立て直しができなければ事業を廃止することになるかもしれません。廃業になった場合、従業員は雇用を失ってしまいます。
しかしそうした採算の合わないノンコア事業を有力な買い手に売却することで、事業が存続し、従業員の雇用も維持されることが期待できます。事業主の精神的な負担も軽減できるでしょう。
ノンコア事業を買収する3つのメリット
ノンコア事業を買収するメリットは主に下記の3つです。
- スムーズに新規事業に参入できる
- 事業規模を拡大できる
- 開発・人材コストが削減できる
以下、詳しく解説します。
スムーズに新規事業に参入できる
新規事業に参入する際、本来は設備投資や販路拡大を一から行っていく必要があります。しかし、新規参入したい事業を他社がノンコア事業として売りに出していた場合、これを買収すればリソースや販路を一挙に確保することが可能です。スムーズに新規事業を始められます。
事業規模を拡大できる
ノンコア事業を買収することで、既存事業の強化や事業の多角化ができます。事業規模を拡大することが可能です。
会社や社会情勢の変化によって現在注力しているコア事業の業績が低下する可能性がないとはいえません。こうしたリスクに備えて、他社のノンコア事業を買収して規模を拡大し、経営基盤を安定させます。
開発・人材コストが削減できる
新規事業を立ち上げると、事業に関連する研究・技術などの開発や人材育成を、ゼロからスタートしなければなりません。こうした研究・技術開発・人材育成は、膨大な時間と費用がかかるものです。
しかし他社のノンコア事業を買収すれば、技術や人材をそのまま引き継げる可能性があります。
ノンコア事業を買収することで、技術開発や人材育成にかかる費用、時間を大幅に減らせるでしょう。
ノンコア事業を売却する2つの手法
ノンコア事業を売却する主な手法としては、事業譲渡と会社分割の2つがあります。
事業譲渡
事業譲渡とは、事業の一部あるいは全部を選んで売却する方法です。
事業譲渡は自社内で残したい事業や資産を残せるため、継続したい事業に特化して投資できます。
不要なノンコア事業を売却すれば、売却益を得ることが可能です。ただし事業や資産を売却して得た利益には法人税がかかるので留意しておきましょう。
引き継ぎたい資産を選択できるので、負債がある場合は会社にそのまま残ってしまうことがほとんどです。しかし裏を返せば、負債まで引き継ぐ必要がないために買い手が見つかりやすくなるということです。負債を抱えていても売却できる点はメリットだといえるでしょう。
一方、事業譲渡は売却する資産や契約(債務・従業員・取引先・業務提携先など)を引き継ぐ手続きを個別にする必要があります。そのため、手続き完了までに時間がかかるという点には注意が必要です。
会社分割
会社分割は、会社の事業の一部あるいはすべての事業を、他の会社が継承する方法です。会社分割の方法には2つあり、会社を新しく設立したうえで権利や義務を継承する「新設分割」と、既存の会社に継承する「吸収分割」があります。
会社分割のメリットは、一部の事業のみを売却できるため、採算の合わない事業のみを売却して、収益性が高い事業のみ残せる点です。また、一般的に買い手は売り手企業に新株を発行すればよいため、買い手に十分な資金がなくても事業承継できます。
また、契約や許認可をそのまま引き継げる点も大きなメリットです。
しかし会社分割は事業譲渡と異なり、買い手は負債も含めたすべてを引き継がなければなりません。そのため、負債がある場合は買収先が見つかりにくくなります。
ノンコア事業の売却に関する3つの注意点
ノンコア事業の売却はメリットもありますが、注意すべき点もあります。
注意点は、主に下記の3つです。
- 競業避止義務に違反しないようにする
- 取引先や社員から個別に同意を得なければならない
- 引き継げない許認可もある
それぞれ詳しく説明します。
競業避止義務に違反しないようにする
事業譲渡によってノンコア事業を売却する場合は、競業避止義務に注意が必要です。
競業避止義務とは、事業売却をした側が、譲渡事業と同等あるいは類似した事業を行ってはならないという義務のことです。競業避止義務は、譲受企業(買収した側)に不利益を生じさせないことを目的としています。
仮に事業売却した企業が、仮にすぐに譲渡事業と同等の事業をすぐに始めてしまうと、譲受企業が目的としている事業拡大や企業活動で得られる効果が損なわれてしまうでしょう。
なお、事業を売買する際に契約書において競業避止義務が定められていなくても、会社法で競業避止義務についての制約があるため、注意が必要です。事業売却をした側が、類似する事業を手掛ける予定があるときは、競業避止義務期間の確認が必要になります。競業避止期間は原則20年ですが、延長することもできます。
違反した場合、事業の差し止めや損害賠償を請求される可能性があります。
取引先や社員から個別に同意を得なければならない
事業譲渡によってノンコア事業を売却する場合は、同意をとる必要があるので注意しましょう。
ノンコア事業の売却により、従業員の転籍が生じる場合、該当する従業員から個別に同意を得て、個別に買い手が雇用契約を締結しなければなりません。少数ならば個別に対応可能ですが、従業員の人数によってはかなりの時間を要するでしょう。
また仮に転籍を希望しない社員がいれば部署の異動が必要になり、退職希望者がいれば退職手続きも必要です。
引き継げない許認可もある
買収する側の会社分割のメリットは事業に付随する契約や許認可を引き継げることですが、引き継ぐことができないものもあります。たとえば、宅地建物取引業や貸金業などは許認可を再度取得することが必要です。
引き継げない許認可だった場合、買い手側が想定していたメリットが得られない恐れがあるので、トラブル防止のために事前に確認しておきましょう。
まとめ
ノンコア事業とは、企業の中核ではない事業のことを指します。近年では、限られたコストや人材をコア事業に集中させるために、ノンコア事業の売却が注目されています。ノンコア事業の買い手にとっても、スムーズに新規事業に参入できる、事業規模を拡大できるなどのメリットがあります。ただし売却する際は、競業避止義務を遵守しなければならない点や個別同意を得なければならない点などに注意が必要です。
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