資金調達コストとは?計算方法や費用を抑えるためのポイントを解説

2023年10月26日

資金調達コストとは?計算方法や費用を抑えるためのポイントを解説

このページのまとめ

  • 資金調達コストは企業の資金調達にかかる費用で、金利・手数料・配当などがある
  • 資金調達コストには負債コスト・株主資本コスト・内部留保コストの3つがある 
  • 資金調達コストの代表的な計算方法はWACC(加重平均資本コスト)
  • 公的機関や銀行からの借入でコストの抑制が期待できる
  • コスト削減には信用保証協会の活用や不動産担保、金融機関との交渉などが有効

「資金調達コストはどれくらいかかる?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
資金調達を検討している企業は、調達にかかるコストにも配慮が必要です。

今回は、企業が資金を調達する際のコストについて解説します。資金調達コストの概要やの種類、詳しい計算方法をご紹介します。コストを抑えられる資金調達の方法や、資金調達コストを削減するためのポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてください。

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資金調達コストとは

資金調達コストとは、企業が資金を調達するために必要となる費用のことです。

主な資金調達方法として、銀行からの借り入れと株主や投資家からの投資が挙げられます。
銀行からの借り入れには金利や手数料がかかり、株主や投資家からの投資には配当や株式の値上がり益などが生じます。これらが資金調達コストです。

資金調達コストの代表的な計算方法に「WACC」(Weighted Average Cost of Capital)があります。WACCは、日本語で「加重平均資本コスト(企業が調達した資金の平均コスト)」を意味し、企業の収益性を考えるうえで重要な指標です。

関連記事:資金調達とは?6種類の方法のメリット・デメリット、融資以外の方法を解説

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資金調達コストの主な3つの種類

資金調達コストには、主に以下3種類が存在します。 

種類内容
負債コスト金融機関などの融資に対して発生する利息によるコスト
株主資本コスト投資家へ支払う株の値上がり益・配当金によるコスト
内部留保コスト会社の利益で資金調達をする際のコスト 

負債コスト

負債コストとは、銀行等の金融機関から融資を受けて資金調達する場合にかかるコストです。借り入れは「負債による資金調達」とも捉えられるため、このように呼ばれます。

具体的な負債コストは、負債の利子率(支払利息の利率)です。ただし、利息は、利用する金融機関・企業の信用力・借入希望額などによって大きく変化します。 

負債コストの計算式は以下のとおりです。 

計算式
負債コスト=支払利息の利率×(1-法人税率)

上記の計算式から、負債コストで発生する利子は損金に参入でき、節税効果が生じることが分かります。支払い利息の利率は低い方が望ましいですが、節税効果も加味して考える必要があるでしょう。 

株主資本コスト

株主資本コストは、新株発行などの増資によって発生する資金調達コストです。
株を購入した株主に対しては配当金を支払う必要があり、そのコストは企業が負担します。

株主資本コストの計算式は以下のとおりです。 

計算式
株主資本コスト=リスクフリーレート+β×マーケットリスクプレミアム

求められる収益率が個々の株主で違うので、負債コストのように明確な数値のない点が、株主資本コストの大きな特徴です。そこで、CAPM(Capital Asset Pricing Model)という手法で、上記の計算式を用いてコストを算出します。

計算式で使われる用語の意味は以下のとおりです。

用語意味
リスクフリーレート長期国債や銀行預金などの収益率。投資リスクがほとんどない資産から期待できる収益率を意味する
β数値が高いほどリスクも大きくなる。マーケットの動きに対して、どれくらい資産が変動するかを示した数値
マーケットリスクプレミアムマーケット全体の利回りからリスクフリーレートを差し引いたもの

上記の計算式から「期待されるリターンは、リスクの高さに比例する」ことが分かります。ただし、株式資本コストの計算は難しく、一般の方が使いこなすのは困難かもしれません。

内部留保コスト

内部留保コストは、株主資本コスト(株主からの出資で得た資本)と実質的に同じです。

一般的に、企業の利益は株主への配当金に回されますが、収益性を高めるためにあえて株主に分配されるべき利益を会社に預けるケースがあります。

内部留保で期待される配当もコストとなりますが、それだけでなく内部留保そのものに課税される点にも注意が必要です。そのため、内部留保のみに頼った資金調達は得策ではないといえるでしょう。

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資金調達コストの計算方法

企業の資金調達においては、複数の方法が用いられるケースも少なくありません。そのようなケースで資金調達にかかるコストを把握する場合に活用されるのが、「WACC(Weighted Average Cost of Capital)」と呼ばれる計算方法です。 

WACCは「加重平均資本コスト」を意味し、各値を重要度に応じて調整したうえで平均値を求めます。具体的な計算式は以下のとおりです。 

計算式
資金調達コスト=rE×E/(E+D)+rD(1-t)×D/(E+D)

また、計算式に登場する用語の意味は以下のとおりです。 

用語意味
rE(株主資本コスト)すでにご紹介した株主資本コストと同じ。CAPM(リスクフリーレート+β×マーケットリスクプレミアム)と呼ばれる 計算方法が利用される 
rD(負債コスト)支払い利息の利率。利率の高い借り入れほど、負債コストが高くなる
E(株式時価総額)発行済み株式全体の時価総額を意味する
D(有利子負債総額)利子のついた債務金額を意味する
t(実効税率)法人税・事業税・住民税・地方法人税の合計額

WACCの計算式の「E / (E + D)」は株式資本、「D / (E + D)」は負債の各重要度を意味し、そこにコストを掛け合わせることで、資金調達コストを算出します。

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コストを抑えられる3つの資金調達方法

資金調達の方法は、融資や補助金・助成金、直接金融、中小企業支援法の活用、クラウドファンディングなど、多岐にわたります。資金調達に際しては、できるだけコストを抑えられる方法を選ぶと良いでしょう。

ここからは、比較的コストが抑えられる資金調達の方法を3つご紹介します。 

  • 公的機関からの融資
  • 銀行からの借り入れ
  • 増資

3つの方法について、それぞれ詳しく解説します。

公的機関からの融資

公的機関は、最も低コストでの資金調達が期待できる借入先です。発生するコストは、借り入れに対する利息のみです。

たとえば、政府系金融機関である日本政策金融公庫では、高い成長性が期待できる新事業に対して「新事業育成資金」を用意しています。
融資を受けるための条件や審査が厳しい点はデメリットですが、積極的に利用を検討すべき方法だといえるでしょう。融資を受けるためには 事業計画の内容を充実させるとともに、健全な経営と財務諸表の維持に務めるなど、企業そのものの信用力を高める意識も必要です。

そのほかにも「女性、若者/シニア起業家支援資金」や「新事業活動促進資金」、「中小企業経営力強化資金」など、さまざまな融資制度があります。

銀行からの借り入れ

銀行等の金融機関は、代表的な資金調達先だといえるでしょう。公的機関からの融資と同じく、資金調達コストは利息です。

公的機関からの融資に次いで低金利での借入が期待できる点がメリットです。また、取引を重ねることで審査に通りやすくなる可能性もあります。

一方、 信用力の低い新興企業などのケースでは、融資を断られたり、金利が高めに設定されたりする可能性があります。審査に時間がかかる点もデメリットです。
なお、融資に際して変動金利を選んだ場合、想定よりも金利が高くなる可能性がある点にも注意が必要です。

増資

増資とは、新株発行によって資金調達する手段です。かかる資金調達コストは株主資本コストです。
公的機関や銀行からの融資とは異なり、資金に対する返済義務がなく、利息などが発生しないメリットがあります。

 一方、将来的なコストの予測がしづらい点がデメリットです。会社の業績が上向くにつれ、支払う配当が高くなる可能性があります。また、会社の業績が下がった場合には、第三者が経営に加わる、あるいは敵対的買収などのリスクも高まるため、注意が必要です。

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資金調達コストを削減するための4つの方法

資金調達コストを削減するための方法は、以下の4つです。 

  • 信用保証協会の保証付き融資を利用する
  • 不動産を担保に金利を下げる
  • 損益計算書で金融機関と交渉する
  • 返済計画で金融機関と交渉する

低金利で資金調達できる融資先を選んだ後は、コストを最大限削減しましょう。 

信用保証協会の保証付き融資を利用する

スタートアップやベンチャーなど実績の少ない新興企業、あるいは信用力の低い中小企業などは、金融機関から融資を断られたり、高金利での融資となったりする恐れがあります。

このような場合は、信用保証協会(一般社団法人)の保証を利用することで、資産調達コストを抑えられる可能性があります。

また、「担保・保証人に不安がある」「融資枠を拡大したい」「長期借り入れを希望する」などの事情がある企業は、信用保証協会の保証付き融資の利用を検討すると良いでしょう。

不動産を担保に金利を下げる

不動産を担保に設定することで、発生する金利を下げたり、融資額を増やしたりできる可能性があります。

ただし、不動産を担保にする場合は、融資額に対して1~3%程度の手数料が発生します。他にも登記や鑑定などに費用がかかる点にも注意が必要です。
これらの費用より負債コスト(利息)が高い場合に利用を検討するのが良いでしょう。

損益計算書で金融機関と交渉する

金融機関との交渉にあたって、損益計算書を利用する方法もあります。

すでに融資を受けており、経営状況が芳しくないケースなどでは「現在の負債コストでは返済が難しくなる」ことを金融機関に示すことで、金利を引き下げてもらえる可能性があります。

返済計画で金融機関と交渉する

損益計算書を利用した交渉で金融機関が納得しない場合には、 返済計画を作成・提出すると良いでしょう。

返済計画には、借入金額や発生する金利や、毎年の返済額・残高などの詳細を記載します。計画の詳細を見せたうえで「具体的にいつ返済が難しくなるか」といった点を示すことで、金利を引き下げてくれる可能性が出てくるでしょう。

交渉に際しては自社のキャッシュフローを見直し、業績改善への取り組みがアピールできるとベターです。

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まとめ

資金調達コストは、金融機関から融資を受けたとき、新株発行で増資したときなどの資金調達をした場面で生じるコストです。資金調達コストをゼロにすることは難しいですが、資金調達の方法を慎重に検討し、信用保証協会の保証付き融資や担保の利用、金融機関との交渉などによって、コストを抑えつつ資金調達を実現できる可能性があります。

また、資金調達には事業譲渡・株式譲渡などM&Aの手法が使えるケースもあるため、気になる場合は検討してみてください。

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