プロキシーファイトの実態と対策|株価から見えるメリットとデメリット

2023年9月13日

プロキシーファイトの実態と対策|株価から見えるメリットとデメリット

このページのまとめ

  • プロキシーファイトとは、株主総会での議決権をめぐる争いである
  • プロキシーファイトのメリットは、経営陣に対するチェック機能や企業価値の向上
  • プロキシーファイトのデメリットは、経営陣と株主の対立や企業イメージの低下
  • プロキシーファイトを収束させるためには、第三者委員会の設置や仲介者の導入が必要

株主と経営陣の間で繰り広げられる激しい争いがプロキシーファイトです。プロキシーファイトは、会社の経営に大きな影響を与えます。しかし、具体的な内容や回避方法などはあまり知られていません。本稿では、プロキシーファイトの発生要因や事例、メリット・デメリット、円満な収束方法について詳しく解説します。

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プロキシーファイトとは

プロキシーの語源の由来は「委任状」です。プロキシーファイトとは委任状をめぐる争いを指し、株主と経営陣の間で起こります。

そもそも、日本の株式会社においては、株主総会で過半数または3分の2以上の議決権を行使できれば、事実上経営権を握ったことになるのが一般的です。そして、株主総会で決議に参加する(議決権を行使する)ためには、委任状が必要です。

プロキシーファイトが発生するのは、株主が経営方針や配当金の増額、買収防衛策の発動を求める場合などです。また、敵対的買収を仕掛けるときにも発生します。

まず初めに、経営陣に不満を持った一部の株主が、経営権を掌握するために委任状を集めます。株主名簿を閲覧して他の株主の個人情報を入手し、委任状用紙を送付して議決権を勧誘するのです。

それに対抗して、経営陣側も委任状を集めて阻止しようとします。経営陣は議決権行使書面を送付して賛成票を集めます。株主総会で委任状や議決権行使書面によって議決権を行使し、多数派を確保することで勝利する流れです。

株主と経営陣の対立は、日本ではまだ珍しい現象ですが、欧米では企業統治の手法として多く活用されています。

プロキシ―ファイトの目的

株主がプロキシーファイトを実施する目的は、株主総会で自らの株主提案を可決させることです。実施する株主は、経営陣に不満を持っている場合が多く、経営陣の交代や経営方針の変更、増配や自社株買いなどを求めているでしょう。株主主導の経営へ移行することを目的とし、プロキシーファイトを仕掛けます。

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プロキシーファイトの事例

経営権を握るためには、プロキシーファイトに勝利することが条件です。敵対的買収や経営者交代など、株主に影響が出る場面で発生します。ここでは、国内の代表的なプロキシーファイトの事例を紹介します。

TBSと楽天の事例

TBSと楽天が、敵対的買収を阻止するためにプロキシーファイトを行った事例です。2005年に楽天がTBSの筆頭株主となり、経営統合を提案しましたが、TBSはこれを拒否しました。楽天は、2007年の株主総会で自ら提案した議案を可決するためにプロキシーファイトを仕掛けました。この資本提携は、2011年に解消しています。

結果的に、楽天は株主から委任状を集めることができず、要求は受け入れられずに終わります。その後、楽天はTBS株を売却し、経営統合は実現しませんでした。この事例から、プロキシーファイトが敵対的買収を阻止する手段として使われることがわかります。メディア企業に対するプロキシーファイトは社会的な影響も大きいといえるでしょう。

※参照元:
日経新聞「TBS、楽天の保有株すべて買い取り 資本関係解消
日経新聞「楽天保有のTBSHD株、買い取り価格1株1294円に確定
日経新聞「楽天保有のTBS株、取得の半値以下が確定
M&A総合研究所「3.TBSによるプロキシー・ファイトの事例

大塚家具の親子対立の事例

大塚家具の親子対立は、経営者交代に際してプロキシーファイトが発生した事例です。2015年に創業者である勝久氏と、長女で社長の久美子氏が経営方針を巡って対立したことがきっかけで勃発しました。

結果、久美子氏がプロキシーファイトに勝利し、勝久氏は退任しました。久美子氏は新たな経営陣を擁立しましたが、業績は低迷しました。この事例から、同族経営における後継者問題やガバナンス問題を引き起こす場合があるため、社外取締役や機関投資家の役割が重要であることがわかります。

※参照元:
日経新聞「消耗品と一生モノの高い壁 ヤマダ電機が大塚家具買収
日経新聞「大塚家具、40億円資本増強、ヤマダ電機とは業務提携
日経新聞「大塚家具、社長の役員報酬4割減に拡大 株主総会
日経新聞「相いれぬ父娘 大塚家具、泥沼化する「お家騒動

東京スタイルと村上ファンドの事例

アクティビストによるプロキシーファイトの事例として、東京スタイルと村上ファンドのプロキシーファイトがあります。アクティビストとは、投資家が積極的に経営陣に提言を行い、企業価値向上を目指す投資家を指します。2004年に村上ファンドが東京スタイルの株式を買い集めて筆頭株主となりました。その後、自ら提案した議案を可決させるため、プロキシーファイトを実施したのです。

村上ファンドは勝利し、自ら提案した議案が可決されます。その後、村上ファンドは東京スタイルの経営改革を推進しましたが、2006年にインサイダー取引の疑いで逮捕されました。プロキシーファイトがアクティビストによる経営権獲得行動の一つであることや、株主提案制度を活用して株主主導の経営へ移行するチャンスであることがわかります。

※参照元:
M&A総合研究所「1.東京スタイルによるプロキシー・ファイトの事例
日経ビジネス「異端児ではなくなった「村上ファンド」

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プロキシーファイトのメリットとデメリット

プロキシーファイトにはメリットとデメリットがあります。株主側と経営陣側それぞれの視点から、メリットとデメリットを比較してみましょう。

株主側のメリット

プロキシーファイトによって増配や自社株買いが実施されれば、株主は配当や株価の上昇により資産価値が高まります。株価が上昇すれば、株式を高く売って利益を得ることも可能で、この利益のことをキャピタルゲインと言います。これらは、株主側のメリットだと考えられます。

株主側のデメリット

株主側のデメリットは、多大な労力や費用がかかることです。プロキシーファイトを行うには、他の株主に対する勧誘活動や広報活動などを行わなければならず、多くの時間や人員、資金などが必要となります。また、事業の拡大が停滞するリスクもあります。

経営陣や株主間に対立が生じると、プロキシーファイトによる委任状の争奪戦に時間や資源を割かなければなりません。

その結果、事業の計画や戦略の策定、新規事業の開発、競合他社との対抗策など、本来重要な事業運営が一旦停止することもあります。これらは事業の成長や競争力の低下につながるため、事業に支障が出てしまうでしょう。

経営陣側のメリット

経営陣側のメリットは、株価が大きく変動することです。プロキシーファイトが発生すると、市場ではその結果に注目が集まります。勝利した場合や妥協したときには、株価が上昇する可能性があり、経営陣や株主にとって有利です。

経営陣側のデメリット

経営陣側のデメリットは、自らの権限を失う危険性があることです。敗れた場合や妥協したとき、経営陣は自らの権限を失います。これは、経営陣や株主にとって不利な事象です。また、プロキシーファイトによって経営陣や株主間に対立が生じると、事業運営の決定権を握る経営陣がうまく機能せず、事業の拡大が停滞するおそれもあります。

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プロキシーファイトを円満に収束させるポイント

プロキシーファイトは、企業統治における重要な役割を持つ一方で、経営陣や株主にとってマイナス面もあります。両者の対立や分断だけではなく、企業イメージや株価の低下、事業拡大の停滞リスクも伴います。

また、プロキシーファイトにかかる多大な労力や費用もマイナス要素です。
そのため、経営陣と株主は互いに対話を重ねて信頼関係を築き、プロキシーファイトを円満に収束させることが望ましいでしょう。対話を円滑に進めるためには、以下の方法があります。

  • 株主側は経営陣に対して具体的な要求や提案を実施し、企業価値の向上や株主利益の実現につながるものを明確化。合理的かつ妥当なものであることを示す。
  • 経営陣側は株主側の意向を尊重して柔軟な対応を行う。株主側の要求や提案に対して、正当な理由や根拠により応じる。株主側の要求や提案に一部でも対応できる場合は、積極的に妥協する。
  • 株主側と経営陣側は、第三者委員会の設置や中立的な仲介者の導入などを検討。第三者委員会や仲介者は、両者の利害関係にとらわれず公正かつ客観的な判断を行う。
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まとめ

プロキシーファイトとは、株主総会での議決権行使の委任状をめぐる株主と経営陣の対立です。株主は経営陣に不満を持ち、経営権の獲得や経営方針の変更を要求します。経営陣は株主の要求に対抗し、自らの地位や権限を守ろうとするでしょう。

プロキシーファイトには、株主主導の経営へ移行できる、経営陣の交代による変革を実現できる、敵対的買収を阻止できるなどのメリットがあります。一方で、多大な労力や費用がかかることや、事業の拡大が停滞したり株価が大きく変動したりするリスクがあることがデメリットです。

そのため、経営陣と株主が互いに対話を重ねて信頼関係を築き、円満に収束させることが望ましいでしょう。株主側は経営陣に対して具体的な要求や提案を行います。経営陣側は、株主側の意向を尊重した柔軟な対応が必要です。

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