投資・出資・融資は何が違う?それぞれの意味、メリット・デメリットを徹底比較

2023年9月13日

投資・出資・融資は何が違う?それぞれの意味、メリット・デメリットを徹底比較

このページのまとめ

  • 投資とは利益を得るために資金を出す行為であり、出資や融資が該当する
  • 出資を受ける側のメリットは、返済する義務なく資金調達できること
  • 出資を行う側のメリットは、出資額に対して大きな利益を得る可能性があること
  • 融資を受ける側のメリットは、資金調達後における経営の自由度が高いこと
  • 融資を行う側のメリットは、資金を回収できる可能性が比較的高いこと

融資は資金を融通すること、出資は事業運営に対して資金を出すことであり、どちらも投資手法の1つです。ただし、出資と投資を同じ概念と捉える考え方もあります。融資と出資(投資)には、それぞれメリットとデメリットがあるため、違いを理解した上で使い分けることが大切です。融資・投資・出資の意味や具体的な方法について、違いを明確にしながら解説します。

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投資・出資・融資の概要

はじめに、投資、出資、融資それぞれの意味を解説します。

投資とは

世界大百科事典によると「投資」とは、「将来得られる収益を目的として、現在資金を支出すること」と定義しています。簡単にいうと、利益を得るために資金を出す行為全般が投資に該当します。そのため、広義の意味では後述する「融資」と「出資」は投資の一種です。

ただし、投資と出資を同じ概念と捉え、融資とは異なる資金調達の手段とする考え方もあります。
本記事では、辞書の定義に則り、出資と融資を投資の一種として解説します。

出資とは

日本大百科全書によると「出資」とは「事業運営に必要な資金として、金銭その他の財産を出捐すること」と定義しています。出資の一例として、株式会社における株式の払込みが当てはまります。

投資の手段として考えた場合、出資は「投資家が利益を得るために、株式を得る代わりに資金を会社に投じること」です。一方で、資金調達の手段として考えると、株式を交付する代わりに資金を受け取ることを指します。

本記事では、この定義に沿って解説を進めます。

融資とは

日本大百科全書によると、「融資」とは「資金を融通すること」であり、貸出とほぼ同じ意味としています。簡単にいうと、お金を貸す行為が融資に該当します。資金を調達する側の視点では、返済義務がある資金を調達することです。

ビジネスにおいては、銀行などの金融機関が企業や経営者に対して融資を行なっています。また、金融機関は「利益として定期的に利息を得る目的で」融資を行います。したがって、貸し出す側から見ると融資も「投資」の手段と言えるでしょう。

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出資のメリット

出資のメリットを、受ける側と行う側それぞれの視点で解説します。

出資を受ける側

出資を受ける側の企業は、以下3つのメリットを期待できます。

返済義務がない

出資の最大のメリットは、返済する義務がなく資金を調達できることです。特段の契約がない限り、万が一事業が失敗して会社を畳むことになっても、経営者個人が借金を負うことはありません。また、毎月元本の返済を行う必要もないため、資金を事業に集中投下できるでしょう。

利息返済で資金繰りが悪化する心配がない

元本の返済だけではなく、利息の返済も不要です。元本の返済や利息の支払いによって資金繰りが悪化する心配がないため、資金繰りの悪化を理由として事業の継続が困難となる事態を回避可能です。売上が立たない創業初期でも安心して事業を進められる点は大きなメリットと言えます。

投資家からのアドバイスや経営支援を得られる場合がある

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の中には、経営の成功実績やノウハウを持つ人も少なくありません。こうした投資家から的確なアドバイスを受けたり、企業とのネットワークを最大限活用させてもらったりすることで、事業の成功可能性や成長速度が高まることが期待できます。

出資を行う側

出資を行う側(VCなど)のメリットは、莫大なリターンを得られる可能性があることです。

出資先の事業が成長し、企業価値が大きく上昇した場合、出資額に対して非常に大きな配当益や売却益を得られます。持株比率が高い場合や事業の成長性が高い場合には、投資した金額の数倍〜数百倍もの利益を得ることも期待できるでしょう。

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出資のデメリット

出資のデメリットを、受ける側と行う側それぞれの視点で解説します。

出資を受ける側

出資を受ける側には、以下2つのデメリット(注意点)があります。

経営の自由度が低下する

出資によって資金調達する場合、投資家に対して一部の株式を交付することが一般的です。株式会社では原則として保有する持株比率(正確には議決権割合)に応じて意思決定権の度合いが変わるため、相対的に経営陣の意向が通りにくくなってしまいます。

場合によっては、過半数以上の議決権を投資家側が持ってしまい、経営権を失う事態も想定されます。経営権を失うと、経営陣側による長期的な視点での事業運営も困難となるため注意が必要です。

調達した資金と比べて多額のリターンを渡す必要が生じ得る

出資に際して株式を渡すため、投資家は株式の売却や配当金の受け取りによって利益を得られるようになります。株式の売却益や配当金の金額は、基本的に業績が良いほど多くなります。そのため、会社が出資を受けた時点よりも大幅に成長していれば、調達資金と比べて多額のリターンを支払う必要が生じます。

出資を行う側

出資する側のデメリット(注意点)は、資金回収やリターン確保の保証がない点です。融資とは異なり出資は返済義務がないため、投資家は原則として株式売却または配当の受け取りでしか利益を得られません。

しかし、会社が成長して企業価値や業績がアップしなければ、株式の売却益や配当金額も上がらないため、上昇度合いによっては出資額を回収できないおそれがあります。極端な例として、出資した会社が倒産した場合、1円すら回収できない事態も想定されます。

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融資のメリット

融資のメリットを、受ける側と行う側それぞれの視点で解説します。

融資を受ける側

融資を受ける側の企業は、以下3つのメリットを期待できます。

資金調達後における経営の自由度が高い

資金提供側から経営介入されない上に、経営権を握られることもありません。そのため、融資を受けたあとも、引き続き経営陣は自由に意思決定を行えます。長期的な目線で経営を進めたい場合には、融資の優先順位は高くなるでしょう。

元本+利息以上の資金を返済する必要がない

融資によって資金調達する場合、事業の成長や利益額に関係なく返済額と利息の支払額は原則一定です。そのため、融資された資金によって稼いだ利益が大きいほど、自社に残せる利益は相対的に多くなります。

多額の資金調達を期待できる

財務の健全性が高い、事業が好調であるなどの理由で信用力が高い企業であれば、短期間で多額の資金調達を実現できる可能性があります。緊急性が高い資金調達において重宝すると考えられます。

融資を行う側

融資を行う側(金融機関など)は、以下2つのメリットを期待できます。

利息を得られる

融資を行うことで、定期的に利息を得られます。定期的に同じ金額の収益が入ってくるため、収益計画の見通しを立てやすいでしょう。

資金を回収できる可能性が高い

「返済の確実性が高いかどうか」を基準に融資先を決定するため、投じた資金を回収できる可能性は高いといえます。また、融資する際には保証人や担保の提供を企業側に求めることが一般的です。仮に経営状況が悪化したなどの理由で返済が困難になっても、最終的には貸し出した資金を回収できる可能性が残ります。

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融資のデメリット

融資のデメリットを、受ける側と行う側それぞれの視点で解説します。

融資を受ける側

融資を受ける側には、以下3つのデメリット(注意点)があります。

信用力が低い場合は資金調達しにくい

融資を受ける際には、金融機関側から財務の安全性などに関する審査を受けなければなりません。財務状況が悪い、過去に返済を滞納した事実がある、創業したばかりなどの場合、融資を断られてしまうリスクが高まります。

ただし、創業したばかりの企業に関しては、後述する日本政策金融公庫の「創業融資(新創業融資制度)」を活用することで、比較的資金調達しやすいと考えられます。

定期的に利息を返済する必要がある

融資による資金調達を行うと、元本とは別に利息の支払いを求められます。つまり、借りたときの金額よりも多くのキャッシュを返済する必要があります。また、利息の支払いが原因で資金繰りが悪化するおそれがある点にも注意が必要です。

会社が倒産した場合に、経営者個人が負債を負うことになり得る

融資を受ける際、経営者が個人保証を負うケースは少なくありません。個人保証を負っていると、万が一会社が倒産した場合に、経営者が個人的に負債の返済義務を負う事態となってしまいます。

なお、M&A(株式譲渡)によって会社ごと売却する場合には、負債ごと買い手側に移るため、個人保証を解除してもらえる可能性が高いです。そのため、個人保証のプレッシャーから解放される手段としてM&Aは効果的な手段となるでしょう。

融資を行う側

審査を行うとはいえ、業績悪化などを理由に融資先が元本を返済できなくなるリスクはあります。前述した個人保証の設定や担保の提供などによって事前に対策はできるものの、いざ実行するには多大な手間が発生するでしょう。

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出資と融資の違い

この章では、投資や資金調達の手段である出資と融資の違いについて、「資金を出す目的」「返済義務の有無」「貸借対照表における扱い」「資金を出す人・機関」という4つの視点で解説します。

資金を出す目的

出資は、事業の将来性を重視した上で、株式の売却益や配当を得る目的で行います。より多くの利益を得るためには、事業の成長(企業価値の向上)が欠かせません。そのため、出資者となったファンドや個人投資家が会社経営に対して積極的に関与する場合もあります。

一方で融資は、資金回収の確実性を重視した上で、契約に基づいて安定的に利息を得る目的で行います。あくまで利息を得ることが目的であるため、経営への積極的な関与は行わないことが一般的です。

返済義務の有無

出資の場合、資金の返済義務は原則としてありません。一方で融資は、借り入れた資金に対して返済義務が存在します。また、元本とは別に利息の支払いも求められます。

貸借対照表における扱いの違い

出資では、受け入れた資金分が「純資産」として財務諸表に記載されます。新たに出資してもらった場合には「純資産の増加」として貸借対照表に計上されます。一方で融資は、借り入れた資金が「負債」として財務諸表に記載されます。新たに融資を受けた場合には「負債の増加」として貸借対照表に計上されます。

なお、融資の割合が多い(負債比率が高い)場合は、金融機関や取引先から財務状況が悪いと判断されるおそれがあります。

資金を出す人・機関

出資は、エンジェル投資家やベンチャーキャピタル、提携先の企業などが資金提供者となります。一方で融資は、主に銀行などの民間金融機関や日本政策金融公庫などが資金提供者です。

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出資や融資によって資金調達する方法

最後に、資金を集める側の視点から、出資や融資によって資金調達する具体的な方法を解説します。

出資を受ける方法

出資を受ける主な方法として「公募」と「第三者割当増資(M&A)」の2つを解説します。

公募

公募とは、不特定多数の投資家に対して新しく発行する株式の取得を募る資金調達の方法です。勧誘対象が50名以上の場合を「公募」といい、該当しないものは「私募」と呼ばれます。一度に多数の投資家から資金を集めることで、大規模な資金調達が可能です。また、株主数の増加や株式の流通度合いを高める効果も期待できます。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、特定の第三者に対して株式を引き受けてもらう代わりに資金調達する方法です。純粋な資金調達の手段として行われるだけではなく、資本業務提携やM&Aの一環としても活用されます。

株式付与の対象を選べる点や、引受先との関係強化を図れる点、原則として簡便な手続きのみで実施できる点などがメリットです。一方で、既存株主の保有割合が低下する点には注意が求められます。

関連記事:第三者割当増資とは?実施目的やメリット、必要な手続きを解説!

融資を受ける方法

融資を受ける主な方法(資金調達先)として「銀行」「日本政策金融公庫」「ビジネスローン」の3つを解説します。

銀行

1つ目は、民間の銀行から融資を受ける方法です。前述のとおり、銀行は信用力や返済能力を基準に審査を行います。また、利用する銀行や前述した審査の結果によって融資の条件は変わってきます。

日本政策金融公庫

2つ目は、国が出資している金融機関である日本政策金融公庫から融資を受ける方法です。民間銀行と比較して低金利で融資を受けられるなど、資金調達のハードルは低いといえます。民間の銀行から融資を受けられなかった場合には、こちらの方法を活用することがおすすめです。

ビジネスローン

3つ目は、ビジネスローンの利用です。ビジネスローンとは民間の金融機関や貸付業者が運営している事業者向けのローン商品です。上記2つの方法と比較して、スピーディーに融資を受けられる点がメリットです。ただし、金利は比較的高い点に注意が必要です。

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まとめ

本稿では、投資の一形態である融資と出資の違いを解説しました。

資金を調達する側の視点で見ると、出資では「返済義務がないこと」、融資では「経営の自由度を維持できること」がメリットです。一方で、出資には調達した資金と比べて多額のリターンを渡す必要がある点、融資には定期的に返済や利息の支払いが発生する点などのデメリットがあります。資金を投じる側にも、同様に出資と融資でそれぞれメリットとデメリットがあります。

融資と出資はどちらも一長一短の資金調達・投資手段であるため、状況に応じて使い分けましょう。

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