リストラクチャリングとは?意味・M&Aを活用した方法などを解説

2023年9月13日

リストラクチャリングとは?意味・M&Aを活用した方法などを解説

このページのまとめ

  • リストラクチャリングは、企業の構造改革や事業の再構築を意味する
  • 単に解雇や事業縮小だけではなく、収益が見込める有望事業への経営資源集中も含まれる
  • M&Aによるリストラクチャリングや財務リストラクチャリングなどがある

リストラクチャリングは、会社経営において経営者が実施する施策ですが、具体的にどのようなことを実施するのかは理解できていない方も多いのではないでしょうか。この記事では、リストラクチャリングの実施を検討している経営者の方などに向けて、リストラクチャリングの意味やメリットを詳しく解説します。

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リストラクチャリングとは

まずは、リストラクチャリングの意味や目的について解説します。

リストラクチャリングとは

リストラクチャリング(再構築・再編成・改革)とは、幅広い意味で使用される用語です。政治・経済・社会構造の観点では「政治体制の再編成」「抜本的な経済改革の実施」などがリストラクチャリングに該当します。

特に会社経営において、リストラクチャリングは重要な概念です。会社経営におけるリストラクチャリングは「企業が経営不振や成長の停滞といった課題を解決し、収益性を向上させるために、組織や財務体質を戦略的な視点から抜本的に見直すこと」を指します。

「リストラ」と聞くと「解雇」を連想する方もいるかもしれませんが、実際には解雇はリストラクチャリングの施策の一部でしかありません。

企業が成長戦略を実現するために、組織全体を根本から見直さなければならないケースがあります。業績不振や成長の停滞が起こると、不採算な部門を縮小・撤退させたり、人員を削減したりして事業を再構築する必要が出てくるでしょう。

リストラクチャリングには、単に人を解雇することや事業を縮小することだけではなく、収益が見込める有望な事業に経営資源を集中するという意味も含まれます。

リストラクチャリングの目的

リストラクチャリングの主な目的は「企業価値を高めること」です。企業価値とは、通常、事業価値に非事業資産の価値を加えて算出される企業全体の財務的な価値を意味します。

金融機関や投資ファンドは、企業価値を評価して投融資の可否や金額を決定します。また、企業が他の企業と取引を行う際も、倒産するリスクがある会社との取引を避け、企業価値が高い企業と取引することを好むのが一般的です。

そのため、経営不振が続いている企業は、各事業の収益性などを見直した上でリストラクチャリングを実施し、企業価値を高める必要があります。

リストラクチャリングは、自社の経営部門が中心となって全社的なプロジェクトで実施する場合もあれば、外部の専門家に協力を依頼する場合もあります。

リエンジニアリングとの違い

リストラクチャリングと混同されやすい手法に「リエンジニアリング」があります。リエンジニアリングとは、ビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)とも呼ばれ、戦略や業務フローなどの観点から業務プロセスを見直し、経営状態の改善を目指す手法です。

例えば、ABCの3つの部門がある場合に、A部門だけが慢性的な赤字であるとします。この場合、A部門を廃止して組織的な観点から会社全体の財政状況を改善することを目指すのが「リストラクチャリング」です。一方で、A部門の赤字の要因を見直し、生産プロセスの効率化を図るのが「リエンジニアリング」です。

両者とも業績改善を目的としていますが、リストラクチャリングは組織構造の観点からアプローチし、リエンジニアリングはプロセスの観点からアプローチする点で異なります。

近年では「製造ラインのIT化」という話題がよく取り上げられますが、これは業務プロセスに着目した収益性向上の手法であり、リエンジニアリングの一種です。

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日本企業におけるリストラクチャリング

日本では、リストラクチャリングは一般的にリストラと略されます。リストラとは、人員削減によって事業規模を縮小すること(ダウンサイジング)を指し、根本的な会社の改革よりも限定的な意味合いを持ちます。
そのため、事業の再構築や主力事業への経営資源の集中といった戦略とは別の概念として捉えられることも少なくありません。

日本国内では、バブル崩壊による景気の悪化を理由に、不採算事業を整理する目的で従業員の解雇が盛んに行われたことで、リストラという用語が広く知られるようになりました。結果的に、「事業の再構築」といった前向きな意味合いではなく、「従業員の解雇」のようにネガティブな意味で使われることが多くあります。

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リストラクチャリングのメリット

リストラクチャリングを実施すると、企業の構造に変革が生じます。この構造の変革は、企業の在り方に大きな影響を与え、さまざまな変化が目に見える形で現れます。リストラクチャリングの主なメリットは以下のとおりです。

  • キャッシュフローの改善
  • 事業売却による利益獲得
  • 負債による負担の軽減
  • 主要事業への資金・人材の集中
  • 収益率の向上

それぞれのメリットについて、詳しく説明します。

キャッシュフローの改善

リストラクチャリングでは通常、キャッシュフローの改善が求められます。資産の見直しや売却による現金化、外部からの出資を受けての増資などの手段を通じてキャッシュフローを改善しなければなりません。ただし、リストラクチャリングには会計や財務の専門知識が必要となるため、専門家のサポートを受けることが重要です。

事業売却による利益獲得

収益性の低い事業を売却することで利益を得られます。自社で問題のある事業でも、他社の販路やノウハウと組み合わせれば、大きな利益を生む事業に変わる可能性があるでしょう。得た利益は、負債の返済や、収益性の高い事業や新規事業への投資に充てられます。

負債による負担の軽減

負債による負担が企業の成長を妨げることがあります。リストラクチャリングによって不要な資産や効率の悪い事業を売却し、得た利益を負債の返済に充てることで、健全な企業成長を目指せます。また、負債そのものを減らすだけではなく、外部からの出資を受けて債務の返済にあて利子負担を軽減することも可能です。

主要事業への資金・人材の集中

収益性の低い事業を売却し、得た利益を主要事業に投入すれば、収益性の高い事業を拡大できます。また、事業の売却によって人材を主要事業に集中させることも可能です。

収益率の向上

リストラクチャリングで業績の思わしくない事業を切り離すことで、企業全体の収益率の向上を図れます。収益率が向上し、負債の早期完済や事業拡大などにつながれば、企業の成長が加速するでしょう。

ただし、売却が難しい場合は、従業員の配置転換や人員削減の検討が必要です。人員削減による退職金の支払いに伴い、一時的に会社の資産が減少する可能性もあります。

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リストラクチャリングのデメリット

この章では、リストラクチャリングのデメリットについて解説します。

将来性のある事業がなくなるおそれがある

リストラクチャリングを実施すると、余剰資金を借入金の返済などにあてるなどの理由で、将来的に成長が見込まれる新規事業への投資が一時的にストップするおそれがあります。

新規事業は収益が安定するまでに時間がかかるため、リストラクチャリングが早すぎると将来性のある事業が制約されてしまう場合があります。赤字が続く新規事業ではリストラクチャリングを検討する必要がありますが、中長期的な戦略を考慮して実施することが重要です。

従業員のモチベーションが下がる

リストラクチャリングは一般的にネガティブなイメージがあります。特に日本ではリストラのイメージが強く、人件費削減のためにリストラクチャリングが行われると従業員の間で不安や懸念が広がり、モチベーションの低下につながるおそれがあります。

また、リストラクチャリングのための引当金である構造改革引当金を計上した会計年度は業績が悪化するというケースも考えられるため、人件費の削減のための人員整理には慎重なアプローチが必要です。

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M&Aによるリストラクチャリング

M&Aはシナジー効果の獲得や事業の多角化などを主な目的としていますが、リストラクチャリングの手段としても効果的です。M&Aによって不採算事業を売却することで、売却資金を入手でき、事業構造の根本的な改革が可能となります。

リストラクチャリングの目的でM&Aを実施する場合、事業譲渡や会社分割などの手法が一般的です。事業譲渡では、売却代金から法人税や消費税を差し引いた利益を得られます。会社分割では、税制の適格要件を満たせば非課税でM&Aを実行できます。

自社にとって不採算で邪魔な事業でも、他の会社にとっては望ましい事業となる可能性があります。不採算事業でも、諦めずにM&Aに取り組んで解決策を見つけましょう。

M&Aによるリストラクチャリングのメリット

売却利益に加えて、不採算事業に投入するはずだった経営資源が残ります。M&Aによって不採算事業を切り離し、経営資源を主力事業に集中することで、全社的な収益構造を改善できるでしょう。

買い手企業にとっても、M&Aによって他社の事業を買収して不足している部分を補完すれば、短期間でのリストラクチャリングにつながります。

M&Aは、単純な人員削減よりも効果的なリストラクチャリング手法であると言えます。

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財務リストラクチャリング

「財務リストラクチャリング」は、企業の財務状況の悪化を早期に改善し、適正化することを目的としています。一般的に、以下の3つのステップで業務が進められます。

現状把握

まず、財務デューデリジェンスを通じて、現在の経営状況を分析し、財務上の問題点を明らかにします。主に貸借対照表の分析を行い、純資産や余剰、不要資産などを時価ベースで評価します。また、事業デューデリジェンスで得られた情報も総合的に考慮し、再生計画の基礎資料を作成します。

再生計画策定

デューデリジェンスの結果を基に、具体的な財務健全化計画を策定します。キャッシュフロー改善のための増資、不動産や人員の整理によるスリム化、事業売却など財務改善に向けた施策の検討が必要です。他の指摘事項も考慮し、現実的な計画案を策定します。

計画実行

計画実行では、計画のモニタリングを行います。予定通りに事態が進まない場合や、金融機関や市場との関係による課題が生じる場合もあります。そのため、柔軟に財務面から解決策を検討し、新たに浮き彫りになった課題に対処しなければなりません。

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M&A及び財務以外のリストラクチャリング

この章では、M&Aによるリストラクチャリング及び財務以外のリストラクチャリングについて説明します。

事業リストラクチャリング

事業リストラクチャリングとは、企業が複数の事業を見直し再構築することで、キャッシュフローの改善を目指す取り組みです。具体的には、不採算事業の売却や廃止、収益性や成長が期待できる事業への経営資源の集中投下が含まれます。自社の事業の特徴を可視化し、現状を把握するためにPPM分析などのフレームワークを活用します。

業務リストラクチャリング

業務リストラクチャリングの目的は、事業内容を革新して売上や利益を増やし、キャッシュフローを改善することです。顧客に対する長期的なマーケティングや、顧客のニーズに基づいた商品開発や経費削減などが挙げられます。経費削減には人件費の削減も含まれますが、法的な要件を満たす必要があるため、専門家の助言を受けながら進めましょう。

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まとめ

企業におけるリストラクチャリングは、企業の構造改革や事業の再構築を指します。リストラクチャリングの目的は「企業価値を高めること」です。効果的に実施するためには、専門家の支援を受ける必要があるでしょう。

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