事業投資とは?3つの投資方法と成功のポイントなどを解説

2023年9月11日

事業投資とは?3つの投資方法と成功のポイントなどを解説

このページのまとめ

  • 事業投資とは、事業への投資を通して利益を獲得すること
  • 投資目的はキャピタルゲイン・インカムゲイン・既存事業とのシナジー創出に大別される
  • 代表的な投資方法には新規事業投資・既存事業投資・M&A投資がある
  • 事業投資のポイントは、事業計画を策定して定性と定量の両面から投資評価すること

事業投資とは、事業への投資によって何らかの利益を得ることです。事業会社が持続的に成長するためには、事業投資が欠かせません。また、新聞やテレビで「設備投資」という言葉をよく目にしますが、設備投資も事業投資のひとつとして捉えられます。本記事では、企業が事業投資をする目的や、事業投資の代表的な方法、成功させるためのポイントを解説します。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

事業投資とは

事業投資とは「事業への投資によって、何らかの利益を得ること」です。製造業において生産性向上のために新しい機械を導入する設備投資や、企業価値向上を目的とした新規事業の開発投資、新規採用による人的投資などが事業投資の代表例です。

また、企業の買収や売却に代表されるM&Aも事業投資のひとつです。設備投資やM&Aも、事業への投資を通じて利益を得るという観点で捉えると、事業投資の意味合いを理解しやすくなるでしょう。

事業投資の主体は事業会社以外にも、投資会社や総合商社があります。投資会社は、IPOや他社への株式売却を通じて、元々の出資金額と売却金額の差額を利潤として獲得します。中長期的に投資を行う会社もあれば、ファンドのように2~3年といった短期での利潤獲得を目指す会社もあります。

総合商社は、投資会社よりも長いスパンで株式取得や商社からの人的派遣を行い、投資先企業の価値向上を図る投資形態が特徴です。投資会社と総合商社はいずれも、投資先企業の株式を取得して自社の取締役や社員を投資先企業に送り込み、経営に参画します。

なお、投資会社は総合商社よりも投資先企業の株式取得率が高く、総株式数の過半数以上の株式を取得する、いわゆるマジョリティとして投資先企業の経営に強く関与するケースが大半です。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

事業投資の目的とは

事業投資の目的は、大きく3つに分類されます。

1.キャピタルゲイン

投資した金額よりも高い譲渡額で売却することで獲得できる売却益です。キャピタルゲインを目的とした事業投資の代表的な例として、株式投資と不動産投資があります。
株式投資では、ある会社の株式を取得し、企業価値が高まった段階で売却することで、株価が上昇した差分を売却益として獲得できます。プレイヤーとしては投資ファンドが挙げられます。

不動産投資も同様に、購入時の不動産価格よりも売却時に地価が上昇していれば、売却益を得ることが可能です。ただし、地価が下落すれば売却損が発生します。

2.インカムゲイン

何らかの資産を保有している間に、その資産から継続的に得られる利益のことです。インカムゲインを目的とする事業投資の代表的な例が、株式投資や不動産の家賃などです。株式投資は保有している株式の配当があり、継続的な利益を得られます。

また、M&Aによって買収した企業の事業資産から得る継続的な利益もインカムゲインです。となります。たとえば、買収した企業が事業用の土地を保有しており、その土地を他企業に工場用地として賃貸して賃料を得ている場合です。

3.既存事業とのシナジー創出

既存事業から得ている利益以上に新規事業とのシナジー効果を発揮させることで、単純に既存事業と新規事業を足し合わせる以上の利益を得られる可能性があります。

たとえば、既存事業の販路を活用して新規事業の商品を販売したり、仕入先を共通化してコストを低減させたりすることが可能です。また、新規事業を立ち上げる場合に、ゼロから自社で立ち上げるのではなく、M&Aにより既存事業とのシナジーが発揮できる対象会社を買収することがあります。

既存事業とのシナジーを創出するための新規事業開発は、自前で行う会社もあれば、M&Aの譲受により行う会社もあります。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

事業投資の代表的な3つの投資方法

事業投資には主に新規事業投資、既存事業投資、M&A投資の3つの方法があります。それぞれの特徴について詳しく解説をします。

新規事業投資

すでにある既存事業とのシナジー効果を高めることで大きな利益の獲得を目指すことや、既存事業とは異なるビジネスモデルで新たな収益を獲得していくために、新規事業の立ち上げを通して事業投資を行う方法です。

事業を拡大し、事業ポートフォリオを強化する点では効果的な投資方法である一方、ゼロベースで事業を立ち上げるため、収益化して事業が軌道にのるまでに時間がかかるデメリットがあります。また、追加の経営資源(人・カネ)が必要になるほか、場合によっては事業を収益化できないおそれもあるでしょう。

多くの企業で新規事業投資が行われています。投資の目的としては、「既存事業だけでは将来性が見込めない」「既存事業の利益率が芳しくないため、ビジネスモデルの異なる事業を立ち上げたい」「既存事業のある資源の活用により収益化が見込めるため、新規事業を立ち上げたい」などが挙げられます。

2020年の新型コロナウイルス感染症の広がりによる「コロナショック」以前から、日本の経済は長期的に見ると、少子化による労働人口の減少などの影響で国内の需要が減少しており、既存事業だけで永続的に成長することは簡単ではありません。新規事業投資は企業が永続的に成長するためには避けて通れない投資であると言っても過言ではありません。しかし、投資のリターンという意味では、一定のリスクがあります。

新規事業を立ち上げるためには、多くの経営資源を投入しなければなりません。さらに、安定した収益基盤になるまでには年単位の時間がかかります。また、大きな利益をもたらす新規事業の開発は、成功よりも失敗するケースのほうが多い点にも注意が必要です。サンクコストに縛られないためにも、新規事業投資は見込みがないと判断した時点で、投資を引き上げることが重要となります。

既存事業投資

企業が持続的に成長し、規模を拡大していくためには、新規事業投資だけでなく、既存事業に対してさらなる投資を行い、より収益性を高めていくことも必要です。既存事業への投資は、新規事業投資と比較して、顧客基盤や販路をはじめ、すでにあるインフラやリソースを活用できる投資となるため、軌道に乗るまでの時間を短縮できる点がメリットです。

一方で、新規事業投資のように新たなシナジーを発揮できるわけではなく、ビジネスモデルが大きく変わるというわけではないため、一度に大きな収益拡大を目指すことは通常難しい、などのデメリットがあります。

既存事業投資の代表例は設備投資、IT投資、人的投資などです。設備投資は製造業であれば、生産設備である新工場の建設や、生産能力を増強するために大型機械の入替えに伴う新規購入が該当します。

IT投資は、ペーパーレス化や少人化のために、マニュアル(手作業)だったものをデジタルに切り替え、システム化するといったDXへの取り組みが代表例です。
人的投資としては、既存社員のモチベーションアップや退職防止を目的とした、人事制度の改定や報酬の見直しなどが挙げられます。

既存事業投資はどの会社でも取り組んでいる投資方法です。新規事業投資とは異なり、すでに収益化できている事業への投資であるためリスクが少なく、積極的に投資が行われる傾向があります。

M&A投資

M&Aには、対象会社が発行する株式の過半数を取得して経営権を取得する「買収」や、契約によって複数の会社を1つにする「合併」があります。

対象企業を買収または合併する前に、デューデリジェンスと呼ばれる買収監査をしているため、統合後の収益見込みを想定しやすい点が特徴です。また、対象企業の顧客基盤や人的資本を活用できるため、事業展開しやすいメリットもあります。

M&Aでは、対象会社の株式の一部または全部を買い取ることにより買収や合併が可能です。この株式取得に資金を投資するため、事業投資の一種といわれます。投資の性質上、投資額よりもリターンが大きければ成功、リターンが少なければ失敗となります。

M&Aの事業投資も相応のリスクはあります。M&Aにより、対象会社の組織風土が買収会社と大きく異なる場合は、対象会社から多くの退職者が出ることが想定されます。高度な技術を有する人材や幹部が退職すれば、想定した成果につながりません。

統合前のデューデリジェンスで、財務や顧客関連に関しては監査を通して事前に把握ができるものの、人事、特に働く社員のモチベーションは統合後に大きく変化することがあるでしょう。

事業投資としてM&Aを実行する上では投資効果が求められるため、できるだけ事業リスクは低減させなければなりません。統合前に両社幹部の人的交流を積極的に行い、「どういう会社にしたいのか」を何度もすり合わせすることで、事業投資のリスクを低減させる必要があります。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

事業投資を成功させるための4つのポイント 

事業投資の目的は利益の獲得ですが、投資の性質上、投資額よりも得られる利益が少なくマイナスになることもあります。新規事業、既存事業、M&Aのどの事業投資パターンでも、事業投資のプロセスはほとんど同じです。

共通の投資プロセスを適切に実行することで、リスクを最小限に抑えるとともに、収益の最大化につながるでしょう。リターンが獲得できる効果的な事業投資を実現するためのポイントを、プロセスごとに解説します。

1.事業計画の策定

投資実行前のプランニングは重要なプロセスです。中期の経営計画では、事業の投資方針や成長戦略を決め、既存の事業と新しい事業のバランスを考えながら、最適な組み合わせを見つけることを目指します。
既存のポートフォリオと、投資をした場合の収益の差分を数値で把握し、客観的かつ定量的に投資効果が認められない場合は、投資の中止または投資規模を縮小するなどの判断が必要です。

また、中期経営計画における予算編成を見直し、投資案件の優先順位や判断基準をあらかじめ決めておくことも、事業ポートフォリオ作成のポイントといえます。予算の計画立案は、他のプロジェクトとの関係も考慮して調整が必要な場合があります。しかし、最初に優先順位を設定しておかないと、判断が揺れてしまう原因となりえます。

いずれの事業会社も、予算や人をはじめとした有限のリソースをコントロールします。そのため、他のプロジェクトや活動に使う予定だった資源を、本当に投資すべきかどうかを検討する際に、どの投資を優先するかを事前に決めておくことが重要です。

2.事前評価と投資撤退基準 

投資判断をする際には、数量的なデータと質的な要因の両方を考慮した評価を行います。リスク分析は、投資のリターンに直結する収益に関するものが最も重要です。収益以外では、海外案件であればカントリーリスク・投資事業が依存している資源の状況・事業のバリューチェーン・コンプライアンスリスクなどの定性面でのリスクもコントロールできる状態であることが大切です。

投資の際には、具体的な数字と状況や質的な要素の両方を考えてリスクを予測し、そのリスクを軽減するための計画を作る必要があります。これはリスク分析の重要な一環です。事業投資においては、不確実性は可能な限り可視化、排除して投資を実行することが、リスクの低減につながります。

投資後にサンクコストによって、なかなか撤退の決定ができず、投資継続により既存事業を傷つけることもあります。サンクコストとは、すでに投資した事業から撤退しても回収できないコストで、埋没費用ともいいます。

それまでに費やした労力やお金、時間などを惜しんで、「ここまで投資してきたのだから、あともう少し続けよう」といったケースです。このように、今後の投資継続の意思決定に影響を与えることをサンクコスト効果と呼びます。

サンクコストに引っ張られて、投資継続の意思決定で失敗しないためには、投資撤退基準の設定が必要です。たとえば、「投資スタート後の3年間で営業利益がXX円に到達しなければ、投資を撤退する」などのルールを決めることが有効です。

もちろん、目標利益に到達していなくても、その時点で大口顧客との契約締結が完了しており、収益が上がる見込みがある場合は、新たな判断を行います。いずれにしても、投資の引き際をあらかじめ設定し、経営陣をはじめとした社員全員で認識しておくことが重要です。

3.投資モニタリング 

事業投資では、実行後のモニタリング・評価がリスク管理のための重要なポイントです。実行における良し悪しも大切ですが、経営環境の変化は短いサイクルで訪れるため、環境変化に対応して計画通りの投資を進めるためには、事業投資後のモニタリングが欠かせません。

事業投資を実行し、収益を軸にした投資回収状況やさまざまなリスク発生状況についてのモニタリングを行い、投資前の計画とのギャップを把握することが投資モニタリングの要諦となります。

一方、投資した既存事業や新規事業が順調に拡大していくと、認知をはじめとした社会的なインパクトが大きくなり、レピュテーションリスクも高まる点には留意が必要です。そのため、事業が拡大基調になればなるほど、定性面でのリスクの発生状況は慎重に確認しなければなりません。

投資モニタリングは、投資前の計画に対して定量・定性の両面で行う必要があります。この両面に対する計画差異をプラス、マイナスの両方の側面から常に把握しておくことが大切です。これらのモニタリングは、経営会議取締役会といった意思決定の最高機関で行い、スピーディーな意思決定が求められます。

投資モニタリングにより、追加投資をしたほうが事業の拡大や収益性の向上が見込まれるケースもあれば、事業撤退基準に触れるほど状況が悪化し、投資の撤退や一部撤退の検討を余儀なくされるケースもあります。意思決定ができる会議体で、定期的に経営陣も含めてモニタリングすることで、投資の効果を最大化できるでしょう。

4.M&A専門のエージェントのアドバイス 

事業投資方法のひとつであるM&Aを進める上では、事前の対象企業の評価(株価算定)や契約締結前の買収監査(デューデリジェンス)など、高度な知識と専門技術が必要となります。
M&Aという事業投資を成功させ、失敗のリスクを低減させるためには、M&Aの専門エージェントを外部のアドバイザーとして活用することが効果的です。

なかには、IT専門のM&Aエージェントなど、特定の業界・分野に強みを持つM&Aエージェントも存在します。業界によってビジネスモデルや収益モデル、業界の慣習やルールは異なるため、想定している業界に強みのあるM&Aエージェントを選ぶとよいでしょう。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

まとめ

本稿では、事業投資の目的や方法、成功させるポイントについて解説しました。事業投資は、どの会社においても多くの資金とリソースを投じて実行します。そのため、極力リスクヘッジをすることが重要です。

既存事業や新規事業投資において、シナジーが見込める企業を買収するM&Aを通して、短期間で収益化を目指す会社も増えてきています。M&Aでは、今まで内情を知らなかった事業会社を一定期間で見極める必要があり、高い専門性が求められます。失敗のリスクを減らし、M&Aを成功に導くためにも、M&Aの専門エージェントを活用しましょう。

M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、各領域の専門性に長けたコンサルタントが在籍しています。M&Aにおける株価算定をはじめ、デューデリジェンスや買収後の統合作業(PMI)など、専門かつ高度な知識を求められる分野にも対応しており、M&Aが完了するまで一貫したサポートを提供することが可能です。

安心かつ円滑な事業承継を実現します。ぜひレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社のご利用をご検討ください。