無税償却とは?要件や種類・有税償却との違いなどをわかりやすく解説

2023年8月23日

無税償却とは?要件や種類・有税償却との違いなどをわかりやすく解説

このページのまとめ

  • 無税償却とは、不良債権を会計上でも税務上でも損金として計上すること
  • 有税償却とは、会計上では損金計上しても税務上では損金不算入となること
  • 無税償却には、直接償却と間接償却がある
  • 直接償却には、私的整理・法的整理・債権の売却の3種類の方法がある
  • 無税償却が認められる要件は厳しく定められているので専門家への確認が必要

「M&Aの買収先に不良債権がある場合、どう対応したらいいの?」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。その場合、無税償却が行える不良債権であれば、節税や貸借対照表の健全化などが可能です。本コラムでは、無税償却の内容や種類、具体的な方法と認められるための要件、企業グループで債権放棄・債務免除をする場合の注意点などを解説します。

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無税償却とは

無税償却とは、企業の税務において、不良債権化してしまった金銭債権を損金として計上することで、法人税の課税対象から外せる手続きのことです。

法人税は益金と損金を通算した金額に課税されるため、不良債権化した金銭債権を損金として計上できるということは、節税にもつながります。

金銭債権に該当する勘定科目は以下のとおりです。

  • 売掛金
  • 受取手形
  • 未収入金
  • 貸付金
  • 賃料債権
  • 立替金
  • 預金

不良債権とは、債務者側の企業が経営不振などによって債務の履行ができなくなることで、債権者側が、回収ができなくなった金銭債権のことです。

本来、不良債権は原則として税務上の損金にはできません。したがって、有利を得られる無税償却は、特別な処理手続きとして、実施できる場合の要件などが細かく規定されています。

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無税償却と有税償却はどう違う?

不良債権の通常の処理方法として、有税償却があります。ここでは、有税償却の内容および無税償却と有税償却の違いを解説します。

有税償却とは

有税償却とは、会計(決算)上では不良債権を貸倒損失や貸倒引当金などの費用(損失)として計上するものの、税務上では損金不算入となる処理手続きのことです。損金不算入とは、損金として計上できないことを指します。

会計上は費用(損失)であっても税務上は費用(損金)として認められないということは、法人税の課税における損益通算結果に影響を及ぼすことです。損金不算入の金額が大きいほど、会社の利益=法人税の課税対象額が大きくなり税額が高くなります。

無税償却と有税償却の主な違い

まず、無税償却と有税償却の手続きにおける共通点は以下のとおりです。

  • 不良債権を会計(決算)上は費用(損金)として処理する

次に、無税償却と有税償却の手続きにおける相違点は以下のとおりです。

  • 税務(確定申告)上、無税償却では不良債権を損金として計上できるが、有税償却では損金として計上できない
  • そのため、無税償却では税金の節税につながる

また、無税償却と有税償却では、その目的に違いがあります。無税償却の目的は、不良債権化した金銭債権の貸倒れという事実を明らかにして、適切に処理を終わらせることです。

これにより金融機関などでは融資環境が安定し、一般企業では新たな金銭債権を伴う取引が行いやすくなります。一方、有税償却の目的は、不良債権を貸倒引当金として計上することで、貸借対照表の正常化を図ることです。

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無税償却の種類

無税償却の方法には、以下の2種類があります。

  1. 直接償却
  2. 間接償却

それぞれの内容、違いを説明します。

1.直接償却

無税償却の2種類のうちの1つである直接償却とは、不良債権をオフバランス化することです。オフバランス化(正確にはOff Balance Sheet)とは、資産や負債、取引などを貸借対照表から外す(消す)ことを意味します。オフバランス化の具体的な方法は以下の3種類です。

  • 私的整理
  • 法的整理
  • 債権の売却

それぞれの内容を説明します。

私的整理

私的整理とは、債権者と債務者の当事者間で協議をして債権債務の一部または全部を放棄・免除(債務整理)をすることです。裁判所などを通して法的な手続きを踏まずに行うため、「私的」と表現されます。

私的整理の注意点としては、法的な手続きを行っていないため、公的なエビデンスがありません。不良債権が本当に回収が不可能であったことを証明する資料などを残しておかないと、後日、課税対象とみなされるおそれがあります。

法的整理

法的整理とは、債務者側が裁判所を通じ法令に則って行う倒産手続きです。法的整理には、大別して以下の2種類があります。

  • 清算型:債務者に残っている資産を売却して債権者に比例分配し債務者の法人格を消滅させる
  • 再建型:事業を継続する前提で債務の圧縮や返済のリスケジュールなどを行い、残りの債務を返済しながら債務者の再建を図る

清算型には「破産」と「特別清算」の2種類があります。再建型は「民事再生」と「会社更生」の2種類です。法的整理が行われた場合、債権者側としては、その決定内容に従い債権を放棄する形になります。

債権の売却

債権の売却とは、不良債権の一部または全部を第三者に売却することです。第三者は誰でも構いませんが、サービサー(債権回収会社)や公的専門機関である整理回収機構などに売却するのが一般的でしょう。

一般社団法人全国サービサー協会には、74社の債権回収会社が加盟しています。整理回収機構の出資者である預金保険機構は、日本政府および日本銀行が出資している機関です(民間金融機関もごく一部出資)。債権回収会社を用いる無税償却について、詳しくは後述します。

2.間接償却

間接償却とは、不良債権を貸倒引当金として計上したうえで税務上、損金算入する無税償却です。債務者の経営状況の悪化時や、法的整理の申し立てを行ったときなどに、回収が不可能となるであろう金額を貸倒引当金として計上します。

不良債権は、貸倒引当金として貸借対照表に残るのが直接償却との違いです。債務者の経営が破綻したり、法的整理が決定したりするタイミングで貸倒引当金を取り崩します。同時に、不良債権は貸借対照表上からも消えるという仕組みです。

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無税償却を行うための要件

ここでは、直接償却による無税償却と間接償却による無税償却の要件を確認しましょう。

直接償却の要件

無税償却を直接償却で行うための要件は以下のとおりです。

  • 金銭債権が更生計画により放棄させられた
  • 債務者の状況から債権の全額が取り戻せないことが明確
  • 債務超過が持続し債権の完全な返済が不可能

それぞれの要件の内容を説明します。

金銭債権が更生計画により放棄させられた

債務者により、会社更生法や民事再生法に基づく法的整理が実施された場合、債務者の会社更生計画において一定の債務整理が行われます。債権者側が債務整理の内容に該当する債権がある場合、該当債権を放棄せざるを得ません。この場合、原則的に直接償却による無税償却が認められます。

また、破産や特別清算などの法的整理の場合も、債務者の資産売却後に債務が残れば、その債務の弁済はされないため、債権者は残った債権を放棄するしかありません。

債務者の状況から債権の全額が取り戻せないことが明確

債務者の経営状況や財務状況などを総合的に判断して、債務の支払い能力がないことが明確である場合、直接償却による無税償却が認められます。ポイントは、「債務の支払い能力がない=債権の全額が回収不可能」と判断できることです。一部でも債権の回収が可能な場合は、直接償却による無税償却は認められません。

債務超過が持続し債権の完全な返済が不可能

債務者が明らかに債務超過に陥っているケースにおいて、債務者へ度重なる催促を行っても支払いをしない場合、または債務者と1年以上にわたって取引停止している場合、債務者へ書面で債務免除通知を行えば、直接償却による無税償却が認められます。このときの債務免除額は、債権の全額でなくても構いません。

間接償却の要件

無税償却を間接償却で行うための要件は以下のとおりです。

  • 債務超過が持続し債権の回収見通しが絶望的
  • 債務者に法的整理の申し立てや銀行取引の停止処分が発生した
  • 債務者の翌年度の事業開始日から6年目以降に弁済が予定されている

それぞれの要件を確認しましょう。

債務超過が持続し債権の回収見通しが絶望的

長期間にわたって債務超過が継続している債務者の場合、客観的に見て債権回収の見通しは絶望的です。この場合、間接償却による無税償却が認められることになっています。ただし、無税償却が認められる金額は債権全額ではなく、回収ができないと判断される金額です。

債務者に法的整理の申し立てや銀行取引の停止処分が発生した

債務者が、破産・特別清算・民事再生・会社更生のいずれかの法的整理手続き開始の申し立てを行った場合や、金融機関との間で取引停止処置を施された場合は、間接償却による無税償却が認められています。

ただし、債権の50%相当額が無税償却が認められる金額です。また、債権の一部の回収が見込まれる場合は、その金額を除いた50%相当額となります。

債務者の翌年度の事業開始日から6年目以降に弁済が予定されている

民事再生や会社更生における更生計画、特別清算における協定の認可、および私的整理における弁済計画において、債務者の翌年度の事業開始日から6年目以降に債務の弁済が予定されている場合、その債権は間接償却による無税償却が認められます。事業開始日から5年以内に弁済される分の金額は、無税償却には含めません。

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グループ会社への債権では「寄附金課税」に留意が必要

企業グループにおいて、親会社が子会社への債権を放棄した場合、必ずしも無税償却が認められるとは限りません。それは寄附金とみなされてしまう場合があるためです。ただし、子会社の倒産を避けるためなどの事情であれば、無税償却と認められるでしょう。

また、寄附金とみなされた場合、子会社は受贈益を得たことになり、債務免除額が法人税の課税対象となってしまいます。ただし、このケースで完全親子会社関係であれば、グループ法人税制が適用され、税務上寄付金への課税は繰り延べされることになります。

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債権回収会社を活用した無税償却のメリット

従来、債権の管理回収業務は弁護士だけに認められたものでした。しかし、法改正により法務大臣の認可を受けた民間企業も、債権管理回収業を行えるようになったのです。認可の要件は以下のようになっています。

  • 1名以上の取締役が弁護士
  • 資本金5億円以上の株式会社
  • 暴力団員の参入排除

また、債権回収会社が扱う金銭債権は法令で以下のように定められています。

  • 金融機関などの貸付債権
  • リース・クレジット債権
  • 流動化資産に関する金銭債権
  • ファクタリング業者の金銭債権
  • 法的倒産手続き中の会社の金銭債権
  • 保証契約にある債権
  • そのほかに政令で定める債権

債権回収会社に債権を譲渡(売却)した場合、本来の債権額と譲渡額との差額は無税償却にできます。この債権回収会社を用いた無税償却は、実施しやすい方法としてM&Aを行う際でもよく用いられているものです。

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まとめ

回収が見込めない不良債権がある場合、無税償却は有用な手段です。しかし、制度上は税務当局の税収面とのバランスを取る必要があり、厳格な要件が定められていることから、実施できる場面は限られています。無税償却の実施を検討する場合は、専門家に相談しましょう。

また、M&Aで買収先が不良債権を持っているケースでは、無税償却を活用することで節税ができたり、貸借対照表が正常化できたりなど経営の安定化が図れます。無税償却によって、不良債権が必ずしも全面的なマイナス要因ではなくなる点に着目しましょう。ただし、無税償却の可否の判断は専門家に相談してください。

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