キャピタルゲインにかかる税金とは?確定申告や節税方法についても解説
2023年8月22日
このページのまとめ
- キャピタルゲインは、保有している資産を売却した際に得られる利益のこと
- キャピタルゲインは、株式や不動産などの資産の種類によって、税金の計算方法が異なる
- キャピタルゲインは、源泉徴収ありの特定口座の場合、確定申告は不要
- キャピタルゲインは、損益通算やNISA口座を活用することで節税できる
- 株式譲渡を伴うM&Aで売却益を得た場合も、キャピタルゲインとして税金がかかる
経営者自身や企業で保有している資産の価値が上がり、キャピタルゲインにかかる税金について悩んでいる経営者の方も多いのではないでしょうか。
本コラムではキャピタルゲインにかかる税金や計算方法、確定申告が不要な場合や節税の方法について詳しく解説しています。キャピタルゲインのメリット・デメリット、海外との課税方式の違いについても紹介しているので、参考にしてください。
目次
キャピタルゲインとは
キャピタルゲインとは、株式や投資信託、不動産、FX、金・プラチナなどの資産を売却することによって得た利益のことです。具体的には、50万円で買った株式を100万円で売却した場合、差額の50万円(手数料・税金は除く)がキャピタルゲインにあたります。
キャピタルゲインは、英語では「Capital Gain」と表記します。
インカムゲインとの違い
インカムゲイン(Income Gain)とは、一定期間資産運用をして、継続的に得られる利息・利益のことを指します。株式による配当金や投資信託の分配金、銀行預金の利息がインカムゲインにあたります。
創業者利益との違い
創業者利益とは、創業者が自社の株式などを譲渡して得る利益のことです。キャピタルゲインと同じような意味合いの言葉ですが、厳密には違いがあります。
キャピタルゲインは資産を購入した際の価格と現在の価格の売却差による利益に対して、創業者利益は創業者がIPOやM&Aによって得た利益のことを指すのが一般的です。創業者利益は、売却額から出資した金額を差し引いて算出できます。
キャピタルゲインにかかる税金と計算方法
キャピタルゲインにかかる税金と計算方法は、保有する資産によって異なります。ここでは、以下の4つに分けて見ていきましょう。
- 株式譲渡・投資信託
- 不動産
- FX
- 仮想通貨
それぞれ詳しく解説するので、参考にしてください。
株式譲渡・投資信託
株式譲渡や投資信託によるキャピタルゲインは、譲渡所得に分類されます。申告分離課税が適用され、ほかの所得と分離して税金が計算されるので注意しましょう。譲渡益にかかる税率は20%(所得税15%+住民税5%)です。また、令和19年までは、復興特別所得税として所得税に2.1%を乗じた金額が加わるため、税率は実質20.315%となります。
計算方法は、下記のとおりです。
- 譲渡価額-必要経費(取得費+委託手数料等)=譲渡益
- 譲渡益×税率(20.315%)=税金
参照元:国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
不動産
不動産の売却によるキャピタルゲインは、株式と同じく譲渡所得に分類され、申告分離課税となります。株式と異なる点は、不動産の保有期間によって長期譲渡所得もしくは短期譲渡所得が適用される点です。それぞれの税率は、以下のとおりです。
- 所有期間が5年以上:長期譲渡所得「20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)」
- 所有期間が5年以下:短期譲渡所得「39.63%(所得税・復興特別所得税30.630%+住民税9%)」
このように5年以下の保有で不動産を売却すると税率が高くなるので、節税を意識する場合5年以上保有してからの売却がおすすめです。
また、不動産の売却にかかる税金の計算方法は、以下のとおりです。
- 譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(一定の場合)=課税譲渡所得金額
- 課税譲渡所得金額×税率=税金
特別控除の例は、マイホームなどを売却した際、所有期間の長さにかかわらず譲渡所得から最大3,000万円まで控除できるものなどです。
参照元:国税庁「土地や建物を売ったとき」「No.3223 譲渡所得の特別控除の種類」
FX
FXによるキャピタルゲインは、価格変動による為替差益に分類され、株式や不動産と同じく申告分離課税が適用されます。こちらも株式と同様に、平成25年から令和19年までは復興特別所得税(所得税の2.1%)が加わるため、税率は実質20.315%となります。
FX売却にかかる税金は下記のとおりです。
為替差益×税率(20.315%)=税金
参照元:国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」
仮想通貨
仮想通貨の取引で得たキャピタルゲインは、暗号通貨取引による雑所得に分類されます。給与所得など他の所得と合わせて課税される総合課税が適用されるので、その点を踏まえて計算方法を見ていきましょう。計算方法は、下記のとおりです。
- 総収入-必要経費=雑所得
- 雑所得×税率(所得により異なる)=税金
所得税は累進課税となっているため、所得の合計額によって税率が変わります。累進課税の一覧は、下記のとおりです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
引用元:国税庁「No.2260 所得税の税率」
キャピタルゲインは条件によって確定申告が不要
キャピタルゲインは基本的に確定申告が必須ですが、条件によって不要なケースがあります。
確定申告が不要な条件は、以下の3つです。
- 源泉徴収ありの特定口座での取引
- NISA口座で得た収入
- 特定の条件を持つ人
確定申告が不要な条件や人について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
源泉徴収ありの特定口座での取引
株や投資信託を源泉徴収ありの特定口座で行っている場合は、原則確定申告が不要です。株式の譲渡益にかかる税金を、証券会社が天引きして納税してくれるためです。
しかし、場合によっては自分で確定申告をしたほうが収める税金が少なくなる場合もあります。複数の特定口座の間で損益通算ができる場合や、過去の損失の繰越控除が適用できる場合は、源泉徴収ありの特定口座を利用している場合でも、確定申告をすることで還付金を受け取れるケースがあります。
NISA口座で得た収入
NISAとは一定金額の範囲内であれば利益が非課税になる制度です。NISA口座の取引で発生したキャピタルゲインは非課税なので、確定申告をする必要がありません。ただし、非課税になる投資額には年間で上限が設定されているので、注意してください。
特定の条件を持つ人
普通の会社員で年収2,000万円以下かつ給与を1ヶ所から受けていて、給与所得以外の所得の合計が20万円以下の人は、原則確定申告が不要です。ただしこの条件は所得税に限り、住民税は申告が必要なので注意しましょう。
また、すべての合計所得が48万円以下の場合も所得税の確定申告は不要です。こちらも住民税の申告は必要で、自治体によって課税対象となる基準が異なるのでそれぞれ確認しておきましょう。
参照元:国税庁「No.2020 確定申告」
キャピタルゲインにかかる税金を節税する3つの方法
キャピタルゲインにかかる税金を節税する方法は、以下の3つです。
- 損益通算を活用する
- 利益を確定させない
- NISA口座で資産を運用する
それぞれ詳しく解説していくので、自分に合った方法を選択して節税対策をしましょう。
損益通算を活用する
株式投資等で得たキャピタルゲインは、口座間の損益通算をすることが可能です。ある口座で大きな利益が出たときに、別の口座で含み損を抱え塩漬けとなっていた株式を売却すれば、譲渡益が相殺され節税対策になります。
例えば口座Aで含み損が800万円、口座Bで確定した利益が1000万円あった場合、通常は利益の1000万円に税金がかかります。しかし、口座Aの株式を売却すれば、損益通算により譲渡益は1000万円-800万円=200万円となり、800万円×20.315%=約162万円分の節税につながります。
利益を確定させない
含み益は確定させた時点で課税対象になりますが、利益を確定させなければ税金を払う必要がないので、元の資産を減らさずに運用を継続することが可能です。
これは投資でよく用いられる方法で、安いときに購入して、その後売却せずにひたすら保有することで長期的な利益を狙います。
利益を確定させないことは、長期的に投資をする人にとって節税にもなる良い方法なので覚えておきましょう。
NISA口座で資産を運用する
NISAで運用する資産は非課税です。キャピタルゲインはもちろん、インカムゲインにも税金がかかりません。
しかし非課税枠には上限額があり、損益通算ができないことや損失の繰り返し控除ができないなどデメリットもあるので、注意が必要です。
キャピタルゲインの2つのメリット
キャピタルゲインを狙うメリットは、以下の2つです。
- 短期間で大きな利益を出せる
- 元本が少なくても運用しやすい
詳しく見ていきましょう。
短期間で大きな利益を出せる
適切なタイミングで株式や仮想通貨などの資産を売却できれば、短期間で大きな利益が期待できます。配当などのインカムゲインは少ない利益が長期的にもらえる仕組みなので、短期間での大きな利益は期待できません。
常に資産の動きを把握できる人やリスクを背負ってでも大きいリターンが欲しい人にとって、キャピタルゲインはメリットの大きい方法です。
元本が少なくても運用しやすい
株式の売買でキャピタルゲインを得るのは、数万円程度から行うことができます。もちろん少額の場合は利益も少なくなりますが、元本に対する利幅はインカムゲインよりも大きく、タイミングさえ良ければ大きな利益を獲得することもできるでしょう。
インカムゲインは配当による利益なので、元本に対する利回りは5%以上だと高いとされています。そのため、ある程度元本がないとまとまった利益を獲得するのは難しいでしょう。
キャピタルゲインの2つのデメリット
キャピタルゲインを狙う場合のデメリットは、以下の2つです。
- 損失額が大きくなるリスクがある
- 投資の知識が必要
それぞれ説明していきます。
損失額が大きくなるリスクがある
キャピタルゲインは短期間で大きな利益を出せると同時に、資産保有中の価格下落によって大きな損失を被る場合もあります。投資先の業績はもちろん、経済の動きや自然災害の影響も受けるため、予想が難しい投資方法です。
投資の知識が必要
キャピタルゲインを得るには、利益が大きくなるタイミングを見定めることが重要です。損失が大きくなりそうな場合には、損失を最低限にとどめる損切りの対応が必要になります。利益を得るためには予想やタイミングに関する知識が重要になるので、最新の情報を追って学ぶ姿勢を持つことが大切です。
海外でキャピタルゲインにかかる税金
キャピタルゲインにかかる税金は、日本と外国で異なります。株式譲渡における日本と海外の主要国の税金は、以下のとおりです。
課税方式 | 非課税限度など | |
日本 | 申告分離課税(20.315%) | |
アメリカ | 申告分離課税3段階の段階的課税(0、15、20%)+総合課税(州・地方政府税) | |
イギリス | 申告分離課税2段階の段階的課税(10、20%) | 土地等の譲渡益と合わせて年間12,300ポンドが非課税 |
ドイツ | 申告不要(源泉徴収)26.4%総合課税も選択可 | 利子・配当を含む資本所得については年間合計1,000ユーロが非課税 |
フランス | 申告分離課税と総合課税の選択式申告分離課税は30%総合課税は17.2〜62.2% |
引用元:財務省 主要国における株式譲渡益課税の概要(2023年1月)
課税方式や税率が大きく異なるので、日本以外を拠点にしてキャピタルゲインを得ている方はチェックしておきましょう。
また、キャピタルゲインはすべての国で課税対象になるわけではありません。マレーシアは不動産に関するキャピタルゲイン以外は、非課税になります。マレーシアにおける不動産のキャピタルゲインは「RPGT(不動産譲渡益税)」と呼ばれ、保有期間によって税率が変わり課税対象です。香港はすべてにおいてキャピタルゲインに対する税金がないので、すべての売却益が手元に残ります。
キャピタルゲインをメインに考えている投資家の中には、拠点を香港などに移す人もいるようです。
しかし拠点を移す場合、資産を日本に戻す際に税金がかかるなど注意点もあるので、しっかり下調べをしたうえで行いましょう。
キャピタルゲインの税金はM&Aにもかかる
M&Aのスキームのうち、株式の譲渡を行うものでは、譲渡益に対してキャピタルゲインとして税金がかかります。
株式のやりとりが個人間で行われる場合は、かかる税金はすでに解説したとおりですが、法人が売却する場合は、キャピタルゲインには法人税が適用され、ほかの所得と合算して実効税率約30%の税金が課されることになります。
ほかにも、非上場株式を時価よりも低額で譲渡した場合などに適用される税制もあるため、M&Aに関するリスクやキャピタルゲインにかかる税金の問題は個人で対処するよりも、税理士などの専門家のサポートを受けるのが良いでしょう。
まとめ
キャピタルゲインは保有する資産を売却した際に出る利益のことです。キャピタルゲインは保有資産によって、税金や計算方法が異なります。キャピタルゲインは「短期間で大きな利益を出せる」「元本が少なくても運用しやすい」などのメリットがあります。
一方で、損失額が大きくなるリスクがあったり、投資の知識が求められたりするなど注意すべき点もあります。また、株式譲渡を伴うM&Aの際にもキャピタルゲインは発生し、場合によって計算方法は複雑になります。そのため、M&Aを実施する際は専門家に相談することがおすすめです。専門家であれば、節税効果が見込める方法を提案してくれることも期待できるでしょう。
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