民事再生とは?手続きの流れや再生を成功させるポイントについても解説
2023年7月24日
このページのまとめ
- 民事再生とは、会社を再生するための手続きのこと
- 会社を再生するための方法としては、民事再生法以外に会社更生法の適用がある
- 民事再生は、個人から法人まで幅広く利用でき、手続きも簡略化されている
- 民事再生を行ううえでは、弁護士のような専門家との協業が欠かせない
中小企業の経営者のなかには、民事再生を考えている人もいるのではないでしょうか? 会社を再生する手段として民事再生は有効な手段です。
この記事では、経営者なら知っておきたい民事再生手続きの流れについて、解説します。また、民事再生を成功させるためのポイントや、会社再生法との違いについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
民事再生とは
民事再生とは、債務を返済できない状態になった際、裁判所の認可のもと、返済計画や事業計画を立て会社を再生させるための手続きのことです。会社を再生するのが目的のため、破産とは違って会社は存続し事業は継続されます。また、経営者の交代もせず、債権者への責任をもって会社の再生を図ることになります。
民事再生手続きの流れ
ここからは、民事再生のための一般的な流れを解説します。
1.民事再生手続き開始
債務者は、初めに、民事再生法の専門家(たとえば弁護士や司法書士)と話し合い、民事再生のプロセスが適切かどうかを決定します。
民事再生の過程は、通常、事業を続行しつつ、相対的に短期間内に多くの手続きを遂行する必要があります。そのため、事業再生や倒産手続きに詳しい弁護士を申立て代理人として任命することが重要です。
特に、上場企業や大規模企業、または消費者被害の可能性がある事件など、負債額や債権者数が多いケースや、海外に拠点や外国債権者が存在し国際的な対応が必要な場合などでは、民事再生の手続きに豊富な経験と高度な専門知識を持つ中規模以上の法律事務所に依頼することが推奨されます。
2.債権調査と財産評定
民事再生プロセスを開始するという決定が下された後、債務者は、財産の価値の見積もりと債権の確認を行う必要があります。これらの手続きは、債務者が再生計画を策定し、債権者がその計画を承認するかどうかを決定するための基礎となります。債務者の資産と負債の状況を正確に理解することは、債務の返済に向けた計画を立てるために欠かせません。
債権調査の方法は、財産一覧と貸借対照表を用い、自身の財産の詳細を裁判所に提出して行います。そして裁判所は、債権者が債権を申告する期間と、債務者がこれらの債権を認めるか否定する「債権調査」の期間を設定します。
3.民事再生計画案の作成と提出
裁判所によって再生手続開始決定が下されたら、専門家は再生計画の草案を策定します。再生計画の草案には通常、借入金の返済手段、期間、利息率などが詳細に明記されます。
具体的な手続きとしては、申立代理人(弁護士など)を指名した後、専門家の助言に基づいて申立の準備を進めます。準備段階では、債権者の一覧やキャッシュフローの計画などの証明資料の作成と提出を行うのと同時に、再生債務者の代理人に支払う弁護士料や裁判所に対する予納金など、申立に伴う費用の準備も進めます。
裁判所に申立てが行われ、裁判所によってこれが承認された場合、通常は直ちに裁判所から弁済停止の保全処分決定が下され、申立前の原因によって再生債務者が負うべき再生債権に対する弁済が原則として禁止されます。同時に、裁判所により監督委員が任命され、再生債務者は監督委員の監督に従うこととなります。
もし申立の準備が会社外部に漏れた場合、予想外の債権者による回収行動や、債権の保全行動を招く可能性があるため、情報の取り扱いには注意が必要です。通常、申立の準備は企業の経営者や財務・会計担当者など限られたメンバーが秘密を守ることに注意しながら進行します。
4.裁判所への申し立て・認可
再生計画が策定された段階で、債務者自身またはその代理者は、地元の裁判所に民事再生の手続きを開始する申し立てを行います。裁判所は、再生債務者の業務遂行能力と財産管理権を維持しながら、債権者の同意を得て民事再生を認可します。この際、債権者の同意には、債権者の過半数および債権総額の半分以上の債権を有する債権者の同意が条件となります。
5.債権者への説明会の実施
申立て直後には、再生債務者の資産を保護し、一方的な債権回収行為を債権者から防がなくてはなりません。同時に、再生プロセスを前進させるためには、債権者の理解と協力が必要で、それを確保するためには債権者に対して適切な情報を提供することが不可欠です。そのため、申立て直後には、主要な債権者を集めて、申立ての理由、再生手続き中の債権の取扱い、そして今後の手続きの進行について説明する債権者向けの説明会を開催することが一般的です。
6.再生計画の実行
再生計画が正式に決まった後、債務者は、この計画の全ての要素に従って、債権者への権利移転後の債務を弁済するなど、その実施に取り組むこととなります。その実行が完了した時点、もしくは再生計画が裁判所に正式に認可されてから3年が経過した場合、再生手続きは終わることになります。この期間では、監視委員によって再生計画が監視されます。
民事再生を成功させるためのチェックポイント
企業の困難な状況を克服し、その再生を果たすことは、多大な努力と厳密な戦略を必要とします。民事再生法のもとで、企業は再建の道を模索することができますが、その過程は容易なものではありません。
実際に企業の再建を成功させるためには、以下の5つの要素を重視することが求められます。それぞれの要素について、詳しく考察していきましょう。
1.会社が収益が確保できる見込みがあるか
民事再生の成功には、再生後の企業収益の見込みが重要なポイントです。ビジネスプランを見直し、製品やサービスの需給バランス、市場の競争状況、現在の市場トレンドを深く分析します。そのうえで、事業の成長性と収益性を十分に評価し、将来的なビジネスパフォーマンスを予測します。継続的な収益が見込めない場合、再生プランの策定や実行が困難になることがあります。
2.資金提供者を確保できるか
事業再生の過程では、稼働資金や再投資のための新たな資金が必要となります。これは、資金提供者、たとえば投資家や金融機関などを通じて得るのが一般的です。企業は説得力のあるビジネスプランを提示し、企業価値の回復や将来の収益性を示すことで、資金提供者を確保する必要があります。
3.未払いの優先債権が少ないか
優先債権(ほかの債権よりも優先して返済しなくてならない債権)の未払いが多い場合、その弁済が再生過程の大きな負担となり、事業再生を困難にする可能性があります。早い段階で優先債権の存在を確認し、可能な限り早くこれらの債務を解決することが重要です。
4.銀行などの強い反対がないか
銀行や主要な債権者の反対が強い場合、再生計画の実施は困難になる可能性があります。このため、早い段階でこれらの関係者と対話を行い、理解と協力を得ることが重要です。債権者に再生計画のメリットを理解してもらうための説明や交渉は、事業再生に向けた重要なステップです。
民事再生法とは
民事再生の手続きは、民事再生法にもとづき進められます。民事再生法とは、再建型の倒産手続きを定めた法律のことです。経済的に困窮する事業者を支援したり、あるいは会社を立て直したりすることを目的に定められています。そのため、民事再生法は、個人から大企業まで幅広く利用され、中小企業が事業の立て直しを図る際にもよく利用されます。
民事再生法と会社更生法の違い
会社を再生させるにあたっては、民事再生と似た手段として会社更生法にもとづく事業再生の方法もあります。会社更生法も民事再生法と同様、再建型の倒産手続きについて定めた倒産法です。
ここでは、民事再生法と会社更生法では、事業再生のプロセスにどのような違いがあるのかを解説します。
1.対象範囲の違い
民事再生法が適用されるのは、個人から会社までさまざまな主体が対象となります。しかし、会社更生法が適用されるのは株式会社だけです。会社更生法は、民事再生と同じく再建型の倒産制度ではあるものの、債権者数が多く債権額が多額であるような、比較的規模の大きい会社の再生を想定して定められています。
2.手続きのスピードの違い
民事再生法と会社更生法では、適用までに必要な手続きのスピード感が異なります。会社更生法は、大規模な会社向けの制度で、多くの債権者を保護するための手続きが定められています。したがって、会社更生法においては再建計画が裁判所により認可されるまで数年以上かかることも珍しくありません。一方で、民事再生法であれば、再建計画が裁判所に認可されるまでは概ね半年程度といわれています。
3.経営者の取り扱いの違い
民事再生法においては、基本的に経営者が退任することは求められません。しかし、会社更生法においては、基本的に経営者は全員退任しなければなりません。
会社更生法においては、企業の経営権は新たに指定される管財人に移されます。これは、旧経営陣が会社の経営から一旦離脱し、事業再建に向けて新たな視点をもたらすための重要なステップです。経営陣の変更は、新たな経営体制のもとで改善と成長を目指すために行われます。
新しく任命された管財人は、事業の継続や再建計画の策定、更生手続きの進行管理など、企業の運営に必要な業務を全般的に担当します。その過程で、管財人は経営陣だけでなく、債権者や従業員などの利害関係者とも協調しながら、企業の再生を実現するための最善の方策を探求します。このように、会社更生法は、経営陣の交代と管財人の導入という方式を通じて、企業の再建を支える仕組みを提供しています。
4.担保権の違い
民事再生においては、担保権は別除権(優先的に返済される権利)として取り扱われます。
担保権とは、債務者が債権を弁済できない場合に備え、債権者が確実に債権を回収できるように設定する権利のことを指します。民事再生法の適用を受けることが決定しても、担保権が別除権として扱われることで、担保権は会社の再生プロセスに影響されずに行使可能となります。これは、民事再生手続が開始されたとしても、担保権者の権利が一定程度守られることを意味します。
一方、会社更生法においては、担保権は別除権として取り扱われません。
会社更生法においては手続きが始まると、担保権者に対する返済も禁じられ、それに基づいた担保権の実行が禁止または一時停止されます。そのうえで、これらの権利の詳細が変更され、再建計画が実行されるようになります。
民事再生を考えている経営者の相談先
ここからは、民事再生を行うにあたって、アドバイスをもらえる相談先について解説します。
弁護士・司法書士
経営再生の初期段階では、専門的な法的知識を持つ弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。民事再生では、裁判所の認可を受けるにあたって、民事再生法にもとづいた条件をすべて満たすことが求められます。民事再生法について理解していないと、それらの条件を満たすことは困難になるでしょう。民事再生法のプロセスを深く理解している弁護士や司法書士に相談することで、滞ることなく民事再生の手続きを進めることが可能になります。
会計士・税理士
財務状況の分析を分析する際には、会計士や税理士の助けも重要となります。裁判所に提出する財産状況の資料に誤りがあった場合は、当然認可は降りず、民事再生の手続きが滞ることになります。普段相談している会計士や税理士に調査を依頼し、誤りのない資料を提出するようにしましょう。
経営コンサルタント
再生計画を策定するにあたっては、経営コンサルタントの力を借りることを検討すると良いでしょう。これから会社を立て直すにはどうすれば良いのか、専門的な見地からアドバイスをもらうことができます。これまでの経営状態を鑑みて、プロの知見を借りることで事業再生への確率が高まるといえます。
M&A仲介会社
民事再生を行う前に、M&Aができないか検討することも重要です。もしM&Aで会社を売却することができれば、民事再生を回避することができるだけでなく、まとまった資金も得ることができます。債務が多い状態ではM&Aが成功する確率は高くはありませんが、ブランド力や特許などの無形資産が評価され、成約にいたるケースも存在しています。そのため、民事再生の前に、M&A仲介会社やFAなどの専門会社に相談してみるのも1つの手です。
まとめ
民事再生は、債務超過などで経営破綻した会社を再生させるための手続きです。手続きは裁判所を通じて行われ、裁判所の認可と債権者の同意を経て履行されます。民事再生の認可を得た経営者は、綿密な事業計画と返済計画をもって、会社を再生させることが可能になります。
確実に民事再生を成功させるには、弁護士や会計士などの専門家にアドバイスを求めるのが良いでしょう。また、民事再生を行う前に、会社を売却できないか検討することも大切です。
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