黒字倒産はなぜ起こる?資金繰りが悪化する原因から回避方法まで解説!

2023年7月12日

黒字倒産はなぜ起こる?資金繰りが悪化する原因から回避方法まで解説!

このページのまとめ

  • 黒字倒産とは黒字の状態で会社が倒産することを指す
  • 黒字倒産が起こる原因は、現金がなくなり払うべき債務が払えなくなるから
  • 黒字倒産を回避するためには、資金管理が重要になる
  • 黒字倒産を回避するためには、在庫管理や債権・債務の管理が重要になる
  • 黒字倒産のリスクに備えて、すぐに資金を調達できる手段を知っておく

「黒字倒産とは? なぜ起こるの?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
損益計算書上、利益が出ている状態は黒字と呼ばれます。しかし、黒字であることが事業がうまく行っていることの証明にはなりません。なぜなら、会社が黒字の状態であっても、倒産するケースがあるからです。

本コラムでは、黒字倒産が起こる理由を解説したうえで、黒字倒産を回避するための具体的な方法を解説していきます。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

黒字倒産はなぜ起こる?

ここでは、黒字倒産が起こる理由を説明していきます。黒字倒産が起こる理由を理解しておくことで、黒字倒産を起こさないための具体的な方法が考えられるようになります。

黒字倒産とは

黒字倒産とは、損益計算上、黒字であるにもかかわらず会社が倒産する事態を指します。

そもそも、会社は支払うべき債務が支払えなくなったときに倒産します。そのため、黒字倒産とは、黒字であるにもかかわらず、会社が支払うべき債務が支払えなくなった状態です。

たとえば、取引先に対する債務の支払いができなくなれば、今後取引を継続できなくなり、事業が運営できなくなるので倒産するわけです。銀行からの借入を返済期日までに返済できない場合、銀行からの取立が行われます。金融機関からの借入れができなくなって、その後の事業資金を確保できなくなって倒産します。
したがって、黒字であるからといっても、倒産しないとは限りません。

黒字倒産が起こる原因

黒字倒産が起こる原因は、会計上の損益と収支が合わないことがあるからです。会計上の損益は次のように計算します。

損益 = 収益 – 費用

一方、現金による収支は次のように計算されます。

収支 = 収入 – 支出

黒字倒産が起こる理由が理解できる具体的な例を考えてみましょう。12月末日決算の会社が12月15日に現金60万円を支払って仕入れた商品を、100万円で取引先A社に販売しました。取引先A社とは、取引を請求書払いで行っており、この商品の代金は1月末日に支払われることになっています。

この場合、12月末日の損益と収支はどうなるかを考えます。ここで、会計上の損益は次のように計算されます。

損益(+40万円) = 収益(+100万円) – 費用(△60万円)

よって、この会社は40万円の利益が出ていますから黒字決算になることがわかります。 一方、現金の収支は次のように計算されます。

収支(△60万円) = 収入(0万円) – 支出(△60万円)

取引先A社との取引は請求書払いとなっているので、まだ12月末の時点では入金がありません。そのため、会計上の「収益」はあっても現金による「収入」はないというわけです。このように、収益と収入にはズレが生じることがあります。当然、費用と支出にも同様のズレが生じることもあります。

このズレが、黒字倒産が起きる要因です。会計の世界では、このようなズレを「勘定合って銭足らず」と表現します。つまり、黒字である場合でも、会社にお金がないという状態がありえるため、支払うべき債務が支払えなくなり、黒字倒産が起きるというわけです。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

黒字であってもキャッシュがなければ倒産してしまう

業績が黒字であったとしても、現金(キャッシュ)がなければ倒産してしまいます。したがって、会社には事業活動に必要となる資金を一定量留保しておかなければなりません。どの程度の量の資金が留保されるべきかは、その会社が属する業界や事業内容によって変わります。現金取引が多い企業については、売却から資金回収のタイミングにズレがないので、会社からキャッシュがなくなる事態は起こりにくいといえるでしょう。

しかし、信用取引が多い企業については、売却から資金回収のタイミングがズレるので、会社からキャッシュがなくなりやすい状態です。したがって、自社の業界特性や事業内容を踏まえたうえで、できる限り現金を社内に留保できるように努める必要があります。

手元のキャッシュ不足が起きる5つの理由

手元のキャッシュ不足によって資金繰りが苦しくなる理由はさまざまです。代表的なものとしては次のような理由が考えられます。

収入の減少

企業の主要な収入源である商品やサービスの売上が減少すると、その結果として企業の現金流入が減少します。経済の低迷、市場の競争激化、新製品の失敗、顧客の離散など、収入が減少する原因は多岐にわたります。

コストの増加

原材料の価格上昇、人件費の増加、設備投資の必要性など、企業のコストが増加すると、利益が減少し、結果として資金繰りに影響を与えます。コストの増加は、収入の減少と同時に発生すると、その影響はさらに深刻になります。

在庫の増加

商品が売れ残り在庫となると、それは資金を占有し、現金化されるまでの間に時間がかかります。適切な在庫管理がなされていない場合、在庫の増加は資金繰りに大きな負担をかける要因となります。

債務の返済

融資を受けている場合、返済のスケジュールに従って現金を支払う必要があります。返済期日が近づいているにもかかわらず現金が十分にない場合、資金繰りに問題が生じる可能性があります。

入金の遅れ

企業が販売した商品や提供したサービスの代金の支払いが遅れると、企業の現金流入が遅れ、その結果、資金繰りが苦しくなる可能性があります。

以上のような要因が組み合わさると、資金繰りの問題はさらに深刻化します。そのため、企業は定期的に財務状況を監視し、予防策を講じることが必要です。また、適切な資金繰り計画を作成し、それを厳密に実行することで、これらの問題を最小限に抑えることができます。利益だけでなく、キャッシュフローをしっかりと管理することが重要な経営課題です。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

黒字倒産を回避するための方法

黒字倒産を回避するための方法は、主に以下の2つです。

収支のズレを把握する

黒字倒産を回避するためには、収支のズレを把握し、会社から現金がなくならないようにしなければなりません。

収益と収入のズレをなくすための分かりやすい方法は、請求書払いのような信用取引をしないことです。信用取引をしなければ、必ず現金払いとなるので、商品を販売したタイミングと入金のタイミングが同じになります。結果として、収益と収入のズレはなくなります。
しかし、現代の商慣行では信用取引が一般的なので、「信用取引をしない」というのは困難です。

したがって、信用取引を行う場合には、商品を販売したタイミングと入金のタイミングがどれだけズレているかを適切に把握して、会社からお金がなくならないように管理する必要があります。

キャッシュフローを把握する

黒字倒産を回避するためには、会社から出ていくお金(キャッシュアウトフロー)と会社に入ってくるお金(キャッシュインフロー)を正確に理解する必要があります。キャッシュアウトフローとキャッシュインフローを把握することで、会社の資金繰りがしっかり管理できるようになります。

キャッシュフローとは

そもそも、キャッシュフローとは、企業が一定期間内に実際に出入りする現金の流れを指すした言葉です。
現金の流入と流出を細かく把握・予測し、適切な経営判断を行うことができれば、会社が倒産する可能性は低くなります。必要な資金調達や投資計画を立てられるようになり、将来的な現金不足のリスクを避けられるからです。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

黒字倒産を防ぐための5つのチェックポイント

黒字倒産を防ぐために、以下で説明する5つのチェックポイントを確認してください。

1.在庫の滞留がないか

商業を営む企業は、商品を仕入れてその商品を販売し、その対価を得て活動しています。商品を仕入れるということは、企業はそこに資金を投下するということです。投下した資金を回収するためには、その商品を販売する必要があります。逆に言えば、商品を販売できなければ、投下した資金は回収できないということです。したがって、在庫を抱えていては、投下した資金はいつまでも回収できません。

売り逃しがないよう、商品の在庫を一定量維持することは大切です。しかし、その在庫が現金に変換されるまでには時間が必要となります。特に、過大な在庫を保有すると売れ残ってしまう可能性があり、これは大きな資金負担となりかねません。そのため、適切な在庫の管理を実施し、財務の流動性が妨げられることのないよう配慮が必要です。

黒字倒産を防ぐために、滞留している在庫がないかしっかり確認しましょう。また、滞留している在庫がある場合には、セールをして在庫を現金化することも大切です。

2.売上債権の回収漏れがないか

せっかく商品を販売できたとしても、売上債権が回収できなければ会社にお金は入ってきません。したがって、売上債権を回収することは、会社の資金繰りを悪化させないためにも重要です。売上債権が発生した場合には、その発生を記録するだけでなく、入金日がいつなのかもしっかりと記録しておかなければなりません。

入金が滞った取引先があった場合には、今後の信用取引について考え直す必要があります。売上債権によって貸倒れる可能性が高いからです。したがって、売上債権の回収漏れがないかきちんとチェックし、貸倒れの可能性が高い取引先については、今後現金取引のみとするなど、対策を考える必要があります。

3.運転資金があるか

会社が事業を展開するうえでは運転資金が欠かせません。運転資金(Working Capital)とは、企業が日々の業務運営を円滑に行うために必要な短期的な資金のことを指します。これは、原材料の購入、人件費、リース料、電気料金など、企業が日常的に支払うべきコストをカバーするための資金です。

運転資金は、企業が日常的に支払う費用であるため、これがなければ事業活動を行えません。したがって、運転資金分の現金は必ず企業内に留保しておく必要があります。運転資金は現金や預金、売掛金など短期的に現金化が可能な資産と、買掛金や未払金、借入金など短期的に支払うべき負債との差額で表されます。

適切な運転資金の管理は、企業のキャッシュフローを健全に保つために重要です。運転資金が不足してしまうと、支払いが滞ったり、生産活動が停止したりするなど、企業の運営に支障をきたす可能性があります。そのため、企業の健全な経営には適切な運転資金の確保と管理が欠かせません。

4.無理な投資をしていないか

将来の売上を向上させるためには事業への投資が欠かせません。しかし、事業への投資をする場合、その投資をどれくらいの期間で回収するか事前に考えておく必要があります。投資資金を回収するまでにあまりに時間がかかる投資は本来であればするべきではありません。無理な投資はキャッシュフローを悪化させ、資金繰りを悪くするので注意が必要です。

5.入出金のタイミングを把握できているか

商品を販売しても、その対価として現金を得られなければ、会社の資金は減少していく一方です。逆に、商品を仕入れた時に、取引先と信用取引ができるのであれば、その場では現金を支払わずとも良くなります。つまり、販売代金の回収は素早く、仕入代金の支払いはできるだけ遅らせることが、キャッシュフローや資金繰りを悪化させないためには重要です。

販売から入金までにかかる時間は「回収サイト」、仕入から支払いまでにかかる時間は「支払サイト」と呼ばれます。回収サイト、支払サイトを確認したうえで、入出金のタイミングをしっかりと把握して、会社の資金繰りが悪化しないように努めることが大切です。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

黒字倒産を避けるための4つの対策

最後に、黒字倒産を避けるための具体的な対策法を4つ解説していきます。紹介したもののなかで、自社の現状に合った対策法を選んでください。

1.手形割引を活用する

取引先との取引で手形を利用している場合、手形割引を利用すれば資金を調達可能です。手形割引を利用して資金を調達する場合は、金融機関に手形を持ち込んで、所定の手数料を支払い、資金を調達します。

手形割引を活用すると、金融機関に対して手数料を支払わなければなりません。この手数料は、借入れなどで発生する金利の水準よりも高いのが普通です。したがって、頻繁に手形割引を利用するとその分割高の手数料がかかるので注意してください。「どうしても今すぐ資金が必要だ」という場合にのみ、利用されることをおすすめします。

2.ファクタリングを活用する

ファクタリングを利用することで支払日よりも早く資金を回収できます。ファクタリングは、ファクタリング事業者に保有している売掛金などの債権を譲渡する契約を結び、手数料を支払って期日よりも前に現金化する手法です。売掛金などの債権は、支払期日が決まっているので、基本的にその日にならないと入金されません。しかし、ファクタリングを利用すれば、ファクタリング事業者から期日よりも前に手数料を差し引いて現金が支払われます。そのため、ファクタリングは債権の早期現金化のための手法として活用されている手法です。

手形割引と同様に、ファクタリングについてもファクタリング事業者に支払う手数料が割高です。ファクタリングについても頻繁に利用するものではなく、どうしても資金が足りないというときにだけ利用するのがおすすめです。

3.補助金・助成金を活用する

黒字倒産を避けるためには、会社の現金保有量を増やすことが欠かせません。補助金・助成金を活用すれば、会社の現金保有量を増やせます。

たとえば、中小企業庁は、中小企業等の新分野展開、業態転換、業種転換などの事業再構築の挑戦をサポートする「事業再構築補助金」や、日々の業務の効率化や自動化のためのITツールの導入をサポートする「IT導入補助金」を提供しています。このほかにも、厚生労働省の「雇用調整助成金(新型コロナ特例)」などがあります。

ただし、補助金・助成金を得るためには、申請書類を書いたり必要書類を用意したりしなければなりません。また、補助金・助成金が得られることが決まっても、実際に入金されるまでに時間がかかります。したがって、補助金・助成金はあくまでも補助的な資金調達手法と位置づけて、その他の手段と組み合わせて活用することが大切です。

参照元:
中小機構「事業再構築補助金
IT導入補助金「IT導入補助金2023
厚生労働省「雇用調整助成金(新型コロナ特例)

4.金融機関からの融資を受ける

資金が足りない場合には、金融機関からの融資を受けることを検討してください。
ただし融資には審査があるため、審査に通らないかぎり資金を調達することはできません。審査があるので、入金までには時間がかかります。したがって、緊急的に資金を調達しなければならないケースには金融機関からの融資は向いていません。

しかし、審査がある分、他の資金調達手段と比べれば低い金利(手数料)が設定されています。そのため、中長期的な計画のもとで金融機関から融資を受け、資金管理を徹底することが倒産を防ぐうえでは重要です。

M&Aに関する資料を
無料でダウンロードする

まとめ

黒字倒産を防ぐためには、収益と収入、費用と支出の違いを理解したうえで、会社に現金が不足しないように対策を講じる必要があります。会社は支払うべきお金が支払えなくなった時点で倒産します。支払うべきお金が支払えなくなり、黒字倒産とならないためにも、会社に現金をある程度留保しておくことが大切です。
黒字倒産を防ぐために、入金・出金のタイミングまでしっかりと管理しましょう。また、運転資金には基本的に手を付けずに事業活動を展開したほうが、キャッシュフローを意識した健全な経営ができるようになります。

M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を

レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社には、各領域の専門性に長けたコンサルタントが在籍しています。もし会社が黒字倒産しかねない状況であるならば、M&Aを視野に入れても良いかもしれません。会社のキャッシュフローや資金繰りを悪化させないことはM&Aの際にも重要となります。
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社ならM&Aのご成約まで一貫したサポートを提供することが可能です。安心かつ円滑なM&Aを実現します。ぜひレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社のご利用をご検討ください。