自己株式の処分のメリット・デメリットとは?消滅させる方法や仕訳も解説

2023年6月13日

自己株式の処分のメリット・デメリットとは?消滅させる方法や仕訳も解説

このページのまとめ

  • 自己株式の処分とは、自社の株式を第三者に対して譲渡することを指す
  • 自己株式の処分を行っても、株式の総数は変わらない
  • 自己株式の消却を行った場合は株が消滅するので、総数が減少する
  • 自己株式を処分するメリットの一つは、資金調達ができること
  • 自己株式の処分によってM&Aを成立させるケースもある

自己株式の処分とは、株式会社が自社で保有している株式を何らかの形で譲渡することです。処分の方法は会社法で定められているため、自己株式の処分を考えている場合はやり方を知っておくと役立つでしょう。

本コラムでは、自己株式の処分におけるメリットやデメリット、自己株式の処分方法、会計処理などを解説しています。自己株式の消却についてもあわせて解説しているので、参考にしてください。

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自己株式の処分とは

自己株式の処分とは、企業が自社でもっている自己株式を、個人あるいは企業などに譲渡、つまり売却することを指します。

自己株式の処分においては会社法によって手続きや処分できる株の量が定められています。
過去には、自社で自己株を大量に買い取ることによって株価が必要以上に上がってしまうなど、自己株式の取得や処分は不正につながる可能性があると考えられ、禁止されていました。現在は一定の制限のもと、自己株式の取得や処分が認められるようになっています。

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自己株式の消却とは

自己株式を手放す方法には、処分のほかに消却があります。自己株式の消却とは、企業が自社の株を消滅させることです。あらかじめ自社で保有していた株を消却することもありますが、自社株を消滅させるために株主から株を買い戻す場合もあります。

自己株式の消却の目的は、株の発行総数を減少させ、会社にとって適正な数に絞ることです。これによって経営の意志決定をスムーズにしたり、株価を調整したりするほか、自社の持ち株比率を高めることで敵対的買収を防いだり、自社株の分散を防いで事業承継対策を行ったりしています。

自己株式の処分と消却とで大きく異なるのは、株の総数が変わらないか・変わるかということです。自己株式を処分する場合は、自社で持っている株を市場に向けて売却するだけなので、市場に出回る株の総数は変わりません。自己株式を消却する場合は手続きを踏んで自社で保有する株を消滅させるため、市場全体で自社株の流通総数が減ります。

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自己株式の処分を行う3つのメリット

自己株式を処分することには、どのような意義があるのでしょうか。
ここでは自己株式の処分におけるメリットを3つ紹介します。

資金が得られる

自己株式の処分を行うメリットは、自社株が市場に出回り、自社に株式売却による資金を得られることです。
売り出した株が買われたときに会社に資金が入り、会社はその資金を元手として新たな事業を行ったり、会社の基盤を補強したりすることができます。

企業再編の手段になる

自己株式の処分はM&A、企業合併や株式交換を目的としていることがあります。この場合、自己株式を処分することにより企業再編がスムーズに行えるのがメリットです。自己株式を売却してM&Aを実現できます。
また、自己株式の処分を利用してM&Aを実施すれば、既存の株主の既得権益を阻害せずに済みます。株主との良好な関係が継続しやすくなるでしょう。

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自己株式の処分を行うデメリット

自己株式を処分すると、市場に出回る自社株の数が増え、デメリットになることがあります。市場に多くの株式が出回ったことによって、ひと株あたりの価格が下がる可能性があるためです。

市場に出回る株式が増えても、企業の収益力が急激に上がるわけではないため、投資家としては、ひと株の価格を下げるのが妥当であると認識します。

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自己株式の処分方法

自己株式を処分する方法には、以下の3通りがあります。

  1. 第三者割当による譲渡
  2. 既存の株主に対する売却
  3. 代用株式として交付

それぞれについて解説します。

1.第三者割当による譲渡

第三者割当による譲渡とは、自社の株式の購入者を特定の第三者に割り当て、株式を購入してもらうことです。「特定の第三者」については、株式の譲渡が決定してから募集を行います。購入申込の期日や募集株式数といった募集要項は、募集開始の2週間前までに株主に対して通知しなければなりません。

募集要項の決定にあたっては、非公開会社の場合は株主総会の特別決議が必要となります。これは、非公開会社であれば必ず定款で株式の譲渡制限がかけられているためです。

一方、公開会社の場合は原則として取締役会会議での決定が可能です。ただし、定款で定められた発行可能株式総数範囲を超えている場合、株主総会の特別決議で発行可能株式総数を変更する必要があります。

2.既存の株主に対する売却

新しく売却する株の売却先を、既存の株主に絞る方法もあります。新しく株を市場に出回らせると、株式の価値が変動して既存の株主が損をすることが考えられます。そのため既存株主の損失を防ぐ目的で、既存の株主に限定して売却する方法です。

この場合、譲渡可能な日の2週間前までに、株主に対して募集要項や申込み期日、割り当てとなる募集株式数などを通知します。割り当てとなる株式数は、持ち株数の割合に応じた数となっています。

3.代用株式として交付

自己株式を処分するとき、代用株式として交付することを、代用交付と呼びます。代用交付は、自己株式の処分によってM&Aを行う際にとられる手法です。

M&Aの際、売り手側となる企業が、買い手側となる会社に対して自己株式の処分を行います。すると、売却企業の株を買取企業が保有する形となり、M&Aが成立する流れです。

なお、自己株を現金を対価に処分する場合とは別に、買取企業の株を売却企業が保有する形となる場合もあります。これが株式交換です。株式交換のケースでは、売却企業には株式売却分の現金が入らず、資金調達の効果は薄れてしまいます。しかしその分、親会社となる買取企業の株を保有することができるため、敵対的な関係になることを防ぐ意味であえて株式交換を行うケースもみられます。

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自己株式を処分した際の会計処理

自己株式の処分の前提として、自己株式の取得があります。自己株式を有償で取得した場合は、勘定科目「自己株式」での処理が必要です。支払手数料がある場合は「支払手数料」で処理します。なお、無償で取得した場合の会計処理は不要です。

次に、自己株式を処分した場合、自己株式の帳簿価額と処分対価を帳簿上で処理する必要があります。勘定科目は「その他資本剰余金」または「その他利益剰余金」の項目に属する、「自己株式処分差損」もしくは「自己株式処分差益」で処理をおこないます。
処分に対して得た入金については、当座預金、普通預金、現金など、実際の入金方法に即して、該当する項目を選択しましょう。

なお自己株式を消却した場合は、「その他資本剰余金」で「自己株式消却損」を処理しなければなりません。自己株式を処分した場合とは大きく違うため、注意してください。

それぞれの勘定科目をまとめると、以下のとおりです。

借方の勘定科目貸方の勘定科目
自己株式を取得したとき(有償のみ)自己株式
支払手数料
現金・普通預金など(実際に株式取得の際、支払った方法を選択する)
自己株式を処分したとき当座預金・普通預金・現金など(実際に処分代金を受け取った際の方法を選択する)自己株式(処分する自己株式の帳簿価格)
自己株式処分差損(損失が出た場合)
自己株式処分差益(利益が出た場合)
※処理項目は「その他資本剰余金」または「その他利益剰余金」
自己株式を消却したとき自己株式消却損
※処理項目は「その他資本剰余金」
自己株式

自己株式の処分にあたっての会計処理は、大まかには上記のように行いますが、当座預金や預かり金を利用する場合など、細かい会計処理についてはケースバイケースです。
会計処理の方法に迷ったときは、専門知識がある人に相談すると安心です。

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まとめ

自己株式の処分とは、自社で保有している自己株式を第三者に売却することです。
自己株式の処分を活用することによって、資金調達ができたり、M&Aを進められたりするなどのメリットがあります。その一方で、自己株式の処分により自社の株価が下がるリスクもあります。
自己株式の処分を考えている場合は、自社の現状とメリット・デメリットを照らし合わせたうえで決定しましょう。

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