M&Aにおける資金調達とは?一般的な方法やLBO・MBOをわかりやすく解説

2024年1月18日

M&Aにおける資金調達とは?一般的な方法やLBO・MBOをわかりやすく解説

このページのまとめ

  • M&Aで買収する際は高額な費用がかかるため、資金調達を実施するのが一般的
  • M&Aの資金調達方法は直接金融や間接金融、資産の現金化などがある
  • 直接金融・間接金融による資金調達方法はさらに選択肢があり、自社に合う手法を選ぶ
  • 資金調達はリスクを抑えた方法を選び、調達しやすくする準備も大切

M&Aで企業を買収する際は、買収資金をはじめさまざまな費用が発生します。自己資金のみでは難しい場合、資金調達をどうすべきか悩む方も多いでしょう。資金調達方法は、直接金融と間接金融など複数の選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、特徴を理解し、適切な資金調達方法を選びましょう。本記事では、M&Aの成功に向けて、資金調達方法を解説します。

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資金調達とは?

M&Aで企業を買収する際は高額な費用がかかるため、資金調達を行うのが一般的です。

そもそも資金調達とは、起業したりビジネスを拡大させたりする際に必要な資金を、外部から調達することです。たとえば、起業時に金融機関から融資を受けたり、投資家から投資を受けたり、補助金や助成金制度を活用したりすることは、資金調達に該当します。

資金調達は、一般的に以下のような場面で実施されます。

  • 新規事業の立ち上げ
  • 事業拡大
  • 設備投資資金の確保
  • 運転資金の確保

必要な資金を全額内部留保分だけで賄える場合は、資金調達は必要ありません。しかし、ビジネスを興したり、企業を成長させたりするためには多額の資金が必要であり、内部留保分だけで賄うのが難しいケースも多いです。不足分を調達するために、多くの企業が資金調達を実施します。

関連記事:資金調達とは?6種類の方法のメリット・デメリット、融資以外の方法を解説

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M&Aにおける資金調達の4つの目的

M&Aを実施する際も、以下のような場面で資金調達を行うことが多いです。

  • 買収資金の調達
  • 納税資金の調達
  • 専門家へ支払う費用の調達
  • その他諸経費のための調達

ここでは、M&Aにおける資金調達の4つの目的について順番に解説します。

1.買収資金の調達

M&Aで資金調達を行う主な目的は、買収資金の調達です。M&Aで企業を買収する場合、企業や事業を譲り受ける対価を支払う必要があります。株式で支払う場合もありますが、現金で支払うケースがほとんどです。

買収の対価は、買収する企業の価値によって異なります。中小企業の買収であれば数百万円~数億円かかるのが一般的です。大企業であれば、数千億円~数兆円にのぼることもあります。
このように、買収にあたって多額な資金が必要になるため、内部留保分では足りない場合は、外部から調達しなければなりません。

2.納税資金の調達

M&Aで盲点になりやすいのが、納税額の増加です。M&Aで企業や事業を買収すれば、企業の規模が拡大します。売上・利益が増加すれば、その分支払わなければならない税額も増加します。

さらに、譲渡企業に税金の未払い分があったり、決算後に納税する見込みがあったりする場合、納税資金は譲受企業が負担しなければなりません。譲渡された中に消費税課税資産が含まれている場合は、消費税の支払いも必要です。

このように、M&Aの実行により、多額の納税が必要になるケースがあります。資金が足りず納税できないという事態を避けるためには、納税額を考慮して、前もって資金調達を実施しておきましょう。

3.専門家へ支払う費用の調達

M&Aは、仲介会社やアドバイザリー企業など、専門家に業務を依頼するのが一般的です。専門家に依頼する場合は、手数料が発生するため、その分の費用を確保しておく必要があります。
専門家に支払う費用と金額の目安は、以下のとおりです。

費用内容金額目安
相談料M&Aについて専門家に相談する際に発生する費用。0~1万円
※無料であるケースが多い
着手金M&Aの実行を決めた後、正式に依頼する際にかかる費用。0~200万円
中間報酬基本合意書の締結後のように、M&Aがある程度進んだときに支払う費用。基本合意契約書(意向表明書)の提示金額の10〜20%
※買手企業のみが対象
成功報酬M&Aの最終契約締結後に支払う費用。株式譲渡価額×料率(レーマン方式)
※大手仲介の場合、移動総資産×料率(レーマン方式)の場合もあり
デューデリジェンス依頼費用最終契約締結前に、M&Aに問題がないか、譲渡企業を調査する際に発生する費用。デューデリジェンスを公認会計士や税理士、弁護士に依頼するために発生する。100~500万円
※原則、買手企業のみが対象
リテイナーフィー毎月固定で支払う費用。リテイナー契約を締結し、一定期間固定の業務を依頼する場合に発生する。0~50万円(1カ月あたり)

このように、譲渡企業だけでなく、専門家にも一定金額の支払いが発生するため、準備が必要です。
ただし、業者によっては無料に設定している料金もあるので確認してください。
費用負担を軽減するために、専門家を介さない直接交渉を検討している方もいるでしょう。しかし、直接交渉には以下のようなデメリットがあります。

  • 適正な企業価値を算定できない
  • 交渉が破綻してしまうリスクが大きい

M&Aを正しくスムーズに進めるためには、法律や税務に関する専門知識や交渉スキルが欠かせません。直接交渉では失敗するリスクが大きいため、信頼できる専門家に依頼して進めましょう。

4.その他諸経費のための調達

M&Aでは、そのほかにもM&Aを担当する従業員の人件費や交通費、宿泊費といった諸経費が必要です。株主総会を開催する場合は、会場の使用料もかかります。

買収資金や納税資金、専門家に支払う費用などに比べると金額は小さいですが、想定外の費用発生が発覚して資金が不足してしまう、という事態に陥らないよう、前もって準備しておきましょう。

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M&Aにおける資金調達4つの種類

上記のとおり、M&Aを実施し、その後も問題なく経営を続けるためには、資金調達が必要です。
M&Aで資金調達を実施する方法には、以下のようにさまざまな選択肢があります。

  • 直接金融(増資)
  • 間接金融(融資)
  • 資産の現金化
  • 補助金・助成金の活用

ここでは、それぞれの資金調達方法と、メリット・デメリットについて解説します。

1.直接金融(増資)

直接金融とは、簡単に言えば株主の協力を得て資金を調達する方法です。株式を発行して出資者に割り当て、出資を受けます。
直接金融は、株式を誰に割り当てるかによって、主に以下の3つの種類に分かれるのが特徴です。

  • 公募増資
  • 株主割当増資
  • 第三者割当増資

それぞれの内容については、次の章で詳しく解説します。

直接金融のメリットは、金融機関から借り入れる場合と異なり、元本を返済する必要がない点です。また、金融機関への手数料等の支払いがないため、資金調達を低コストで実行できます。さらに、投資家から企業の成長性を期待されれば、金融機関からの融資が難しい場合でも資金調達できる点は、特に中小企業にとってはメリットです。

一方、株主に配当を支払わなければならない点や、経営に対して関与される点は、デメリットと言えます。敵対的買収のリスクがある点にも注意が必要です。

2.間接金融(融資)

間接金融とは、銀行や信用金庫といった金融機関から融資を受けて、資金を調達する方法です。資金調達を実施する企業と投資家の間に金融機関が入るため、間接金融と呼ばれます。
間接金融には、以下のような種類があります。

  • 公的融資:国や地方公共団体などから融資を受けること
  • ビジネスローン:事業資金専用のローン商品
  • プロパー融資:企業が金融機関から直接融資を受けること。信用保証協会による保証がないため、金融機関が貸し倒れリスクを負う

間接金融のメリットは、審査基準さえ満たせば、どの企業でも資金を調達できる点です。設立直後で株主が少なく、投資家から出資を受けるのが難しい場合であっても、資金を調達できます。

さらに、金融機関によっては、経営についてのアドバイスや情報提供を行っている場合もあります。
一方、「借り入れ」と呼ばれるように、元本の返済義務があり、利子を支払わなければいけない点はデメリットです。資金調達コストが高く、決められた期日までに返済しなければならないため、返済可能かを判断したうえで融資を受ける必要があります。

3.資産の現金化

企業が保有する資産を売却し、現金化して資金に充てる方法もあります。アセットファイナンスと呼ばれ、代表的な方法は以下のとおりです。

  • 使用していない土地や建物などの不動産を売却する
  • 商品・サービスの商標権を売却する
  • 売掛金をファクタリング会社へ売却する

有形資産だけでなく、無形資産も現金化できます。

アセットファイナンスのメリットは、買い手が見つかればすぐに資金を確保できるため、迅速に資金調達ができる点です。

一方、そもそも資産がなければ実行できない方法であることや、場合によっては企業イメージの悪化につながりかねないリスクがある点は、デメリットと言えます。

4.補助金・助成金の活用

国や地方自治体が運営する補助金や助成金を活用するのも、資金調達の1つです。制度ごとに、補助額や利用条件などが異なります。

補助金や助成金制度を活用して資金調達を行うメリットは、基本的に返済義務がない点です。費用負担の軽減に役立ちます。

一方、制度によっては審査基準が厳しく、申請したからといって補助や助成を受けられるわけではない点に注意が必要です。また、後払いが多いため、支払いを受けるまでは内部留保やほかの調達方法で得た資金を利用しなければなりません。

さらに、募集が不定期であるため、必要なタイミングで利用できるとは限りません。昨年は実施されていたが今年は募集がない、条件が変わって今年は申請できなくなった、などのケースが考えられます。補助金や助成金制度については、逐一情報をチェックしましょう。

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リスクを抑えて資金調達を進める方法

4つの資金調達方法について紹介しましたが、どの方法にも何らかのリスクが伴います。直接金融の場合は経営に関与される可能性があり、間接金融では返済義務というリスクがあります。

M&Aの資金調達ではできるだけリスクを抑えたいと考える場合、次の順番で検討することをおすすめします。

  1. 助成金・補助金
  2. 間接金融
  3. 直接金融

まず、リスクを回避することを重視するのであれば、返済義務のない助成金・補助金の利用が優先されます。間接金融と直接金融はどちらもリスクがありますが、間接金融のリスクは元本と利息の返済義務という点に限られます。返済計画を立てるなど、リスクのコントロールが可能です。

一方、直接金融は返済義務がない代わり、会社経営に対して発言権を行使される可能性があります。また、自社の株式を購入した投資家は投下資本を回収するためハイリターンを期待しており、会社はその期待に応えなければなりません。

これらの違いを踏まえ、資金調達を検討するとよいでしょう。

なお、資産の現金化は 保有する資産の有無や資産価値にもよるため、リスクの判断は相対的といえます。

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直接金融による資金調達の3つの方法

前述のとおり、直接金融による資金調達は、株式の割り当て先に応じて以下の3つに分かれます。

  • 公募増資
  • 株主割当増資
  • 第三者割当増資

中でも、第三者割当増資はM&Aで活用されることが多く、資金調達だけでなく、M&Aを実行するうえでも理解しておくことが大切です。

ここでは、直接金融による資金調達の3つの方法について解説します。

1.公募増資

公募増資は、不特定多数の投資家から出資を受ける方法です。既存株主や特定の第三者に限らず、一般の投資家に対して広く新株を発行します。

上場企業がビジネスを拡大させるための資金を確保したり、財政基盤を強化したりするために用いることが多い方法です。非上場企業であっても公募増資は可能ですが、事務作業の手間がかかるため、あまり活用されていません。

公募増資で新株を発行する際の株価は、市場株価や投資家の需要をもとに決定されます。投資家の需要によって株価が変動する方法を、ブックビルディング方式と呼びます。投資家からの需要が高ければ株価も高くなり、需要が低ければその分株価は低くなる仕組みです。

2.株主割当増資

株主割当増資とは、既存株主に対して新株を発行し、出資を受ける方法です。株主割当増資の特徴は、株式を割り当てる相手が既存株主に限定されている点です。既存株主が申し込んだ場合、持ち株数に応じて新株式が割り当てられます。

基本的には株主構成が変化せず、既存株主が保有している株式が希薄化することもありません。
なお、株主が株主割当を申し込むことは義務ではありません。そのため、申し込みがなければ、資金調達を実行できない点には注意が必要です。

3.第三者割当増資

第三者割当増資は、新たな株主に新株を割り当て、出資を受ける方法です。株主割当増資と似たようなスキームですが、第三者割当増資の特徴は、割り当て先が特定の第三者である点です。自社の役員や取引先、業務提携先、取引している金融機関など、自社と近い関係にある相手に新株を割り当てます。

第三者割当増資は、単なる資金調達だけでなく、取引先や業務提携先との関係性強化や財務健全化、スタートアップの成長資金注入や敵対的M&Aに対する防衛策としてなど、幅広く用いられています。M&Aの1つのスキームとしても活用されているのがポイントです。

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M&Aにおける第三者割当増資のメリットとデメリット

第三者割当増資によって、新株の引受人は発行会社の株式を一定割合取得できます。そのため、第三者割当増資はM&Aにも活用されるのです。
ここでは、M&Aのスキームの1つとして用いられる第三者割当増資について、メリットとデメリットを解説します。

第三者割当増資のメリット

第三者割当増資のメリットは、以下のとおりです。

  • 資本業務提携が実現し、シナジー効果が期待できる
  • のれん代を抑えられ、のれんの償却負担を軽減できる

1点目は、資本業務提携によって、シナジー効果が期待できる点です。資本業務提携とは、第三者割当増資と同時に業務提携を行うことを指します。業務提携に加え、資本と議決権の移動も伴うため、より詳細な情報交換が可能です。その結果、単なる業務提携よりも強固な関係性を構築できます。資本業務提携によって、シナジー効果が期待できるのがメリットです。
さらに、会計上ののれん代を抑えられるのも特長です。会計上ののれんは、「投資金額-(取得比率×対象会社の時価純資産)」で算出されます。第三者割当増資によって、買収側が対象会社に資金注入を行うと、対象会社の時価純資産が増加します。そのため、株式譲渡よりものれん代を低く抑えられ、償却負担を軽減できるのです。

第三者割当増資のデメリット

一方、第三者割当増資には以下のようなデメリットがあります。

  • 株式譲渡よりも多くの資金が必要になる可能性がある
  • 既存株主の利益保護が必要
  • 完全子会社化は実現できない
  • 売却側に株式を手放すメリットが少ない

まず、第三者割当増資では、目標の株式比率を得るためにより多くの資金が必要になる可能性があります。たとえば、以下のケースについて、株式譲渡と第三者割当増資それぞれで必要な資金を計算してみましょう。

  • 発行済み株主総数:100株
  • 株価:50万円
  • 時価総額:5,000万円
  • 目標の株式比率:50%

このとき、株式譲渡を行う場合は、50株を持つ株主から2,500万円で株を購入することで、目標の株式比率を達成できます。

一方、第三者割当増資を行う場合は、新株を100株発行して総数を200株にし、100株分の新株を5,000万円で買い取ることが必要です。

このように、第三者割当増資では、株式譲渡よりも多くの資金が必要になる可能性があります。

さらに、第三者割当増資では発行済株式数が増えるため、1株あたりの価値が下がる株式の希薄化が生じるリスクがあります。既存株主に不利益が及ぶ場合があるため、既存株主の利益保護が必要です。

第三者割当増資では、既存株主がいるため完全子会社化は実現できないのもデメリットです。完全子会社化のためには、第三者割当増資を行ったのち、既存株主から買収側へ株式譲渡を実行しなければなりません。

見逃せないのが、売却側に株式を手放すメリットが少ない点です。たとえば、売却側が株式を100%有する会社に第三者割当増資を行う場合、第三者割当増資分の資金は会社に入ります。売却側が資金を手にすることはできません。

このように、売却側にとって株式を積極的に手放す理由が少ない点には、注意が必要です。交渉がうまくいかない可能性があります。スムーズに進めるためには、第三者割当増資と株式譲渡を組み合わせ、売り手に一部エグジットさせて金銭的リターンを与えることが効果的です。

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間接金融「金融借入」のメリットとデメリット

M&Aの資金調達では、直接金融だけでなく、以下のような金融機関から融資を受ける間接金融も多く用いられます。

  • 都市銀行・地方銀行
  • 政府系金融機関(日本政策金融公庫など)
  • 信用金庫・信用組合
  • ノンバンク

金融機関から借り入れる際は、審査に通過しなければなりません。そのため、金融借入で資金調達を行いたい場合は、審査に通過するための条件やポイントを理解することが大切です。
ここでは、金融機関から借り入れるメリット・デメリットと、借り入れを成功させるためのポイントについて解説します。

金融借入のメリット

金融借入で資金調達を行うメリットは、以下のとおりです。

  • 手元に資金がなくても借り入れた資金を使ってすぐに投資ができる
  • 持株比率に影響が出ない
  • 信用があれば、低コストで資金調達できる

M&Aや新規事業を興す際、手元に資金がなければ投資は行えません。金融借入で資金調達を実施すれば、先に必要資金を確保できるため、すぐに投資を実行できるのがメリットです。

持株比率に影響が出ないのも魅力です。直接金融で資金調達を行うと、株式発行数が増えるため、経営者の持株比率が希薄化してしまう恐れがあります。結果、会社への影響力が弱まることもあります。一方、金融借入では持株比率が希薄化するリスクはありません。そのため、持株比率が過半数に近く、増資を行いたくない場合は、金融借入が適しています。

さらに、信用力が高い企業にとっては、低金利で借り入れられるのもメリットです。会社の信用力は、財務状況をはじめ企業規模や技術力、ブランド力、市場優位性といったさまざまな観点から判断されます。信用力を活かして低金利で借り入れることができれば、低コストで資金調達を実現できるのです。

金融借入のデメリット

一方、金融借入で資金調達を行うことには、以下のようなデメリットがあります。

  • 元本の返済義務があり、金利を支払う必要がある
  • 追加融資を受けられなくなるリスクがある
  • 経営者個人が借金の返済義務を負うリスクがある

融資で得た資金は、返済しなければなりません。決められた期日や方法に従って返済する必要があります。また、金利が発生するのもデメリットです。金利も考慮したうえで、期限内に返済しきれるように資金繰りを考えましょう。

信用力によっては、追加融資を受けられなくなるリスクがある点にも注意が必要です。期日までに返済できないといった事態が発生した場合、信用力が低下して追加融資を断られてしまうでしょう。追加融資を受けられなければ、資金繰りが悪化し、別の手段で資金調達しなければ会社の経営が立ち行かなくなる可能性があります。

さらに、会社が倒産して返済できなくなった場合は、経営者個人が借金を返済しなければならないリスクが高いです。中小企業が金融借入を行う際は、経営者個人の連帯保証を求められることも少なくありません。連帯保証に入るにあたって、経営者自身が借金の返済義務を負うリスクは忘れずに認識しましょう。

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M&Aにおいて資金調達する前にチェックすべき点

M&Aに際して資金調達をする際は、調達後に困ることのないよう、事前に次の点のチェックが必要です。

  • 返済期間や調達する金額は妥当か
  • 資金調達しやすい状態か

詳しくみていきましょう。

返済期間や調達する金額は妥当か

M&Aの資金調達として金融機関からの融資を選ぶ場合、返済が負担にならないよう、返済期間や借入金額が妥当かの確認が必要です。

返済期間が長くなると利息が高額になり、返済期間が短くなると毎月の返済額が増えるため、バランスを考えた利用が求められます。

また、借入金額が増えることで、当然ながら返済に負担がかかります。利息も高額になるでしょう。しかし、借入金額を減らすとその分の自己資金が必要になり、手元の資金を減らすと経営に影響することもあります。金融機関とも相談しながら、毎月無理なく返済できる期間と金額を割り出すようにしてください。

資金調達しやすい状態か

資金調達しやすい状態にあるかもチェックしましょう。資金調達には金銭的・時間的コストがかかります。

金融機関から融資を受ける場合は、元金の返済と利子の支払いが発生し、資産の売却やファクタリングなど資産の現金化では、業者に支払う手数料がかかります。

時間的なコストも把握しておきましょう。融資を受ける場合、金融機関に提出する書類の準備が必要です。出資を受ける場合は、既存株主や投資家へのプレゼンテーションやその準備をしなければなりません。

これらの金銭的・時間的コストの負担が難しいと、資金調達できなくなります。また、金融機関からの融資には審査があり、審査基準が厳しい場合は調達が難しくなるでしょう。

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M&Aの際に資金調達しやすくするための準備

M&Aのための資金調達で金融機関からの融資を選ぶ場合、金融機関の審査に通過する必要があります。金融機関が審査でチェックする主なポイントは、以下のとおりです。

  • 返済能力(キャッシュフローや損益の状況など)
  • 財務状況
  • 金融機関との取引履歴
  • 提出書類の内容(財務諸表・事業計画書・収支計画書など)

審査に通過しやすくするためには、次の準備を行いましょう。

  • 自己資金を増やす
  • 事業計画書と収支計画書を作成する

ここでは、金融機関からの融資で資金調達しやすくするための準備を紹介します。

自己資金を増やす

金融機関からの融資を検討する場合、自己資金を増やすことが資金調達をしやすくするポイントです。借入金額を減らして返済の負担を減らすだけでなく、審査に通りやすくするためです。

融資をするかの判定では、自己資金がどれくらいあるかも審査項目となります。自己資金がある程度必要なことを把握しておきましょう。

自己資金がどれくらいあれば審査に通りやすいかは、金融機関により異なります。自己資金のほかにも、事業の実績などが審査に影響します。

事業計画書と収支計画書を作成する

金融機関からの融資で企業の信用を高めるために重要なのが、事業計画書と収支計画書です。事業計画書とは、事業内容や戦略など、事業をどのように展開していくかをまとめた計画書を指します。

収支計画書とは、企業の今後の方針や収益の見込みをまとめた文書です。収入と支出がどの程度あるか将来にわたって予測し、利息を含めて返済できることを示します。

事業計画書と収支計画書の内容は、金融機関が融資をするかどうかの判断を左右するものです。融資前に短時間で作成するのは難しいため、早めに準備しておくとよいでしょう。質問に答えられるようにしておくことも大切です。納得を得られる書類を準備するためには、専門家に相談するのもおすすめです。

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M&Aの資金調達「LBO・MBO」の特徴と事例

間接金融には、金融借入だけでなく、以下の方法もあります。

  • LBO(Leveraged Buy Out)
  • MBO(Management Buy Out)

LBOは、買収対象企業の資金や将来キャッシュフローを担保に借り入れを行う方法です。一方、MBOでは経営陣が株主から株式を買い取り、経営者として独立します。
ここでは、LBOとMBOの具体的な特徴と事例について解説します。

LBO(Leveraged Buy Out)

LBOとは、「レバレッジド・バイアウト」の略で、買収対象企業の資産や将来のキャッシュフローを担保に、投資家や金融機関から資金調達を行って買収する方法です。

LBOによって、買い手企業は少ない手元資金で大きな規模の企業を買収できる可能性があります。レバレッジが効くことから、レバレッジド・バイアウトと呼ばれます。

一方、金利が高かったり、一般的な融資よりも条件が悪かったりするケースが多い点には注意が必要です。さらに、LBOでM&Aを実施したもののM&Aが失敗に終わった場合は、大きな損失を被る可能性もあります。

LBOの代表的な事例は、アメリカの投資会社であるリップルウッドによる日本テレコムホールディングスの買収です。リップルウッドはLBOを用いて約2,090億円を調達し、2003年8月に、日本テレコムを2,613億円で買収しました。その後、ソフトバンクグループが日本テレコムを約3,400億円で買収し、リップルウッドは投資利益を得たため、LBOに成功した事例と言えます。

MBO(Management Buy Out)

MBOは、「マネジメント・バイアウト」の略で、経営陣が会社の株式を買い取り、経営者として独立する方法です。所有と経営の一致を目的に実施され、経営者が株式を100%保有すれば、迅速な意思決定が実現します。

一方、100%株式を取得するには、通常の時価総額より高いプレミア価格で買収する必要があるため、投資コストがかかるのが難点です。また、計画どおりに業績を伸ばせず再上場できなかった場合、イグジットの機会が少なくなってしまうというデメリットもあります。
MBOの代表的な事例は、すかいらーくです。すかいらーくは、2006年9月、MBOによって上場廃止となりました。8年後に再上場しましたが、時価総額はMBO時点よりも700億円ほど低く、MBOによって企業価値を高められなかった事例です。

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資金調達からM&A実施までの手順

資金調達を行ってM&Aを実施するまでは、次の手順で進めます。

  1. 秘密保持契約の締結
  2. 資金調達の実施
  3. M&Aの実施
  4. 債務管理を行う

まず、M&Aで買収する相手企業と秘密保持契約を締結します。M&Aで買収する際は相手企業の財務状況などを調査するため、事前に秘密保持契約を締結し、トラブルを防ぐことが大切です。

その後、M&A仲介会社や専門家にも相談しながら買収の対価を見積もり、資金調達を実施します。

相手企業との交渉が成立したら、買収の実行に進みます。M&Aの完了後、債務が残る場合は完済に向け、適切な管理が必要です。

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まとめ

M&Aで企業を買収する際は多額の費用がかかり、自己資金で賄えない場合は外部から調達しなければなりません。
資金調達方法には、直接金融や間接金融、資産の現金化、補助金・助成金制度の活用といった多様な選択肢があります。直接金融と間接金融にはさらに複数の方法があり、LBO・MBOを選ぶことも可能です。

資金調達を行う際は、自社に合う方法を見極めるため、方法ごとの特徴とメリット・デメリットを把握しておきましょう。
そのためには、できるだけリスクを抑える方法を選ぶこと、調達しやすくする準備を行うことも大切です。

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