持株会社とは?設立方法や有名企業・メリット・デメリットを解説

2024年6月20日

持株会社とは?設立方法や有名企業・メリット・デメリットを解説

このページのまとめ

  • 持株会社とは企業グループ全体の支配・統治を目的として傘下企業の株式を保有する会社
  • 持株会社の目的は事業への裁量権や責任の明確化、意思決定のスピードUPなど
  • 持株会社は目的や成り立ちにより3種類に分類される
  • 経営・事業をスムーズに行える、M&Aを進めやすくなるといったメリットがある

自社の拡大する方法として持株会社を検討している、という方も多いのではないでしょうか。持株会社とは、株式を保有する他の株式会社を傘下に入れてグループ全体の支配・統治を目的とする会社のことです。

本記事では、持株会社について詳しく解説するとともに持株会社の種類や設立するメリットなども解説します。持株会社の設立を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

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持株会社とは

持株会社とは、企業グループ全体の支配・統治を目的として、傘下の会社の株式を保有する会社のことです。他社が発行した株式を「ホールド」(保有)していることから、英語表記(Holding Company)に由来し「ホールディングカンパニー」とも呼ばれています。

後述しますが、持株会社の中には運営自体に直接かかわる会社もあるほか、運営にはかかわらず傘下に入れた会社のマネジメントのみを行っているケースもあります。

持株会社の歴史を振り返ってみると、持株会社自体は、戦前の財閥などで運営されていました。しかし、自由で公平な市場競争を妨げるといった理由から、戦後に持株会社設立が禁止された経緯があります。

そのような中、近年は市場のグローバル化にともない、組織再編を促し効率よい経営を進めるためにも持株会社の設立が必要であるといった観点から独占禁止法が1997年に改正され、持株会社の設立があらためて解禁されました。

株式会社大和証券グループ本社が、上場企業における第1号の持株会社となり、現在では多くの上場企業が持株会社制度を導入しています 。

持株会社化を行う目的

持株会社化は、事業を分散させることで事業への裁量権や責任を明確化したり、意思決定のスピードを速くしたりする目的で行われます。そのほかの目的は、以下のとおりです。

  • 経営資源の分配
  • 株式の集約
  • 企業買収推進

資金・人員・ノウハウなどの経営資源の分配を行うことで経営をより効率化できます。また、出資元が別の会社の株式を1つのオーナーへ集約すれば、事業継承のほか持株会社の社長交代をより円滑に行うことが可能です。

持株会社の組織形態の分類

持株会社の組織形態には、大きく分けて集中型組織と分散型組織の2つがあります。さらに、分散型組織は事業部制、カンパニー制、分社制、持株会社制の4種類に分けられます。

各形態の詳細は以下の表のとおりです。

集中型組織経営の権限が、取締役により構成される取締役会などの1つの機能に集中している組織のこと
分散型組織経営に対する権限が、各機能に分散している組織のこと
事業部制、カンパニー制、分社制、持株会社制の4種類がある
事業部制製品/顧客/地域など、区分に応じて部門を配置し、各部門に権限と責任を持たせる形式
カンパニー制部門ごとにそれぞれ管理部門(経理など)を設置し、事業部それぞれを独立した会社のようにする形式
分社制各事業部門を法的に会社として独立する形式
持株会社制分社制によって誕生した会社の株式を保有し、各子会社に対する管理機能を高めるための形式

持株会社制は、カンパニー制と一見同じように見えますが、1つの会社内で形式されるカンパニー制に対して、別の法人格にまで分けるのが持株会社制度です。

持株会社における親会社と子会社の資本関係

持株会社では、親会社が子会社の発行する株式を所有することで子会社を支配下に置きます。そのような親会社の会社経営に対する意思は、会社の最高意思決定機関である株主総会で議決権を行使することで伝えられます。

議決権とは、株主総会の一員として決議に参加し、賛成/反対意見へ票を入れる権利のことです。そして、子会社をコントロールするうえで、親会社が保有する子会社の議決権の割合が影響を及ぼしてきます。保有する株式割合と影響の及ぶ範囲は、表のとおりです。

保有割合コントロールできる範囲
親会社が100%保有親会社が株式のすべてを所有している場合、親会社(完全親会社)と子会社(完全子会社)は完全支配関係にある状態です。

完全子会社の株主は親会社のみのため、親会社が絶対的な支配力を持つことになります。
親会社が100%未満~50%以上保有親会社が株式の100%未満~50%以上保有している場合、支配関係があると呼びます。

会社経営を進めるうえで株主総会で決議する事項の多くは、議決権の50%以上で決議されます(決議事項の重要性によっては、過半数以上の場合も)。そのため、50%以上株式を保有していると、親会社は子会社をコントロールしているといえるでしょう。
50%未満保有会社株式の50%未満を所有している場合は、支配関係にあるとはいえません。

有名な持株会社の例

日本にも多くの持株会社が存在しており、金融系では三菱UFJフィナンシャル・グループや野村ホールディングスが有名です。

また、食品系では日清食品ホールディングス、小売り系ではセブン&アイホールディングスといった例が挙げられます。そのほか、読売新聞やソフトバンクなどのメディア・情報系の企業にも持株会社は多く見られます。

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持株会社の種類

持株会社は、目的や成り立ちによって金融持株会社、事業持株会社、純粋持株会社の3種類に分類されます。それぞれの違いは表のとおりです。

金融持株会社・自らの事業活動を行わない
・銀行、証券会社、保険会社などの金融機関を傘下に置く金融関係の企業が設立した会社
・子会社の金融機関の管理・運営に専念し全体の業務効率化を目指す
事業持株会社・自らの事業を手がける
・グループ会社の株式を持ち、自ら製造、販売などの事業活動を行う
・子会社からの配当金、自身の生産活動で収益を上げられる
純粋持株会社・自らの事業活動を行わない
・株式保有による管理が目的

以下では、それぞれの持株会社の特徴について解説します。

金融持株会社

金融持株会社とは、銀行、証券会社、保険会社などの金融業界の企業が設立する持株会社のことです。統治・支配を目的として新規で持株会社を設立するため、純粋持株会社の1つに分類されることもあります。そのため、親会社になっている組織は、事業に基本的には直接かかわりません。

金融持株会社においては、1997年の独占禁止法改正で持株会社設立が解禁されて以降、銀行・証券・信託・保険といった異なる金融業の乗り入れが多く見られるようになってきたのが特徴です。代表例としては、三菱UFJフィナンシャル・グループ、東京海上ホールディングス、野村ホールディングスなどが挙げられます。

金融持株会社は次々に誕生しており、現在では経済的に重要な存在になっているといえるでしょう。

事業持株会社

事業持株会社とは、企業支配を目的とした株式保有だけでなく、直接的に事業も行う会社のことです。企業は持株会社となったあとも、継続して事業を行います。

事業持株会社の成り立ちの多くは、株式交換によるものです。保有する株式を交換することで、親会社(既存の事業会社=事業持株会社)と子会社として強固な関係を築きます。そのため、事業持株会社はグループを形成して成長を目指しつつも、ビジネスに引き続きかかわっていく場合に採用されるイメージです。

純粋持株会社

純粋持株会社とは、統治・支配を目的として対象企業の株式保有のみを行う会社のことです。純粋持株会社では、新たに企業が持株会社を設立する点や事業を行わない点、基本的に収益が子会社からの配当金に限られる点などが特徴といえます。

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持株会社を設立するメリット

持株会社を設立するメリットには、経営・事業をスムーズに行える、M&Aを進めやすくなる、グループ会社を買収から守れるといった3つのメリットがあります。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

経営・事業をスムーズに行える

持株会社化すると、子会社の経営方針の策定や判断は、親会社が行います。指揮系統が親会社に集約されることにより、グループ内の会社への意思決定がスピーディーに行われ、結果的に経営・事業をスムーズに実行できるようになる点はメリットです。

また、経営と事業の分離にともない、子会社は事業に集中できるため、より効率的に業務を進められるでしょう。さらに、ナレッジやノウハウをグループ内で共有しやすくなり、グループ全体の売上向上も期待できます。

M&Aを進めやすくなる

M&Aを進めやすくなる点も持株会社化するメリットです。持株会社では事業ごとに会社が独立しているため、規模の大きい会社の一部の事業のみを売却するよりも容易に売却が行えます。また、グループ内で買収や合併を進めやすい点もメリットといえるでしょう。

グループ会社を買収から守れる

敵対的買収を仕掛けられた際に、会社グループを守れる点も持株会社のメリットです。持株会社制では、一般の親子関係のある会社とは違って、持株会社と各グループ企業の株式所有は二重構造になっています。

傘下の企業はそれぞれに資本が独立しているため、仮に親会社である持株会社が敵対的買収を仕掛けられても、非上場のグループ企業の経営権を守るための対抗策は容易にとれるのは大きなメリットといえるでしょう。

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持株会社を設立するデメリット

一方で、持株会社を設立するデメリットも存在します。人件費・設備費用などのコストが増えやすい点やグループ内での連携の難易度が上がる点は、注意したいポイントです。

持株会社を設立する際は、デメリットも把握したうえで設立するようにしましょう。

人件費や設備費用などのコストが増えやすい

持株会社を設立すると、持株会社の子会社が増えるぶん、グループ全体の人件費や設備費用などのコストが増えやすい点には注意が必要です。

持株会社は事業ごとに会社として独立しているため、会社ごとに人事や経理、総務などの部署を置く必要があります。そのため、子会社が増えるほど、グループ全体の人件費や設備費用も大きくなる傾向にあることは理解しておきましょう。

さらに、子会社化には50%以上株式を保有する必要があります。そのために資金的コストがかかることは当然ですが、グループを形成してから成果が出るまでに時間的コストがかかる点も把握しておかなければなりません。

長い目で見た経営と、それに耐え得る基礎体力が持株会社制には求められます。

グループ内での連携の難易度が上がる

グループ内の子会社同士は兄弟会社の関係にあるため、連携難易度が上がることも理解しておきましょう。

グループ内の子会社同士には支配関係はありません。また、グループ内の各子会社は、それぞれ独立採算制を採用していて、経営方針も会社ごとに裁量権があることが多くなっています。そのため、連携がうまくいかずにグループ全体に悪影響があったりトラブルにつながったりする可能性もあるため、注意が必要です。

うまく連携を取るうえでも、持株会社である親会社がリーダーシップを発揮して調整するようにしましょう。

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持株会社を設立する方法

最後に、実際に持株会社を設立する方法を紹介します。設立方法は、以下の3パターンです。

  • 株式移転方式
  • 会社分割方式
  • 抜け殻方式

それぞれ詳しく見ていきましょう。

株式移転方式

株式移転方式では、既存企業が新たな企業を設立したうえで、既存企業の株主が新設企業に株式を移転し、その会社を親会社とします。

株式移転方式の流れは、以下のとおりです。

  1. 別グループの会社同士が経営統合を行う
  2. 株式を移転する親会社を新たに設立する

子会社となる会社は、それぞれの株主が保有するすべての株式を新設会社に移転させ、完全子会社となります。その後、本社機能を移転させれば完了です。

株式移転方式のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 許認可の移転手続きが必要ない
  • 持株会社となった既存会社に対する事業への影響が最小限に留められる
  • 手続きを短期間で完結できる
  • 他の方式と比較して資金調達などが必要ない
  • 取引先や従業員などへの影響も少なくてすむ

各子会社は法人格を維持したまま業務を続行できるため、事業に与える影響が少なくてすみます。また、許認可が必要な事業の場合でも、移転の必要がないことも大きなメリットといえます。

会社分割方式

会社分割方式は、既存の会社の下に子会社を設立し事業と権利義務を包括的に承継させる方法です。

会社分割方式の流れは、以下のとおりです。

  1. 親会社の出資による子会社を設立する
  2. 事業と権利義務を子会社に引き継ぐ

引き継ぐ事業は、すべての場合もあれば一部の場合もあるなどさまざまです。子会社設立と事業の切り離しが終われば、持株会社の設立は完了です。

会社分割方式のメリットとしては、権利義務を包括的に承継できるため負担が少ない点や、現金の準備が不要で資産の引き継ぎなどが簡単に行える点などがあります。

抜け殻方式

抜け殻方式は、子会社に親会社内の事業を譲渡したり、事業を分割したりする方式です。譲渡や分割をした会社は、持株会社に移行します。既存事業をほかの組織に渡して独立することから「抜け殻」と呼ばれています。

抜け殻方式の流れは、以下のとおりです。

  1. 子会社を設立する
  2. 事業譲渡や現物出資などで親会社の事業を子会社に移動させる

抜け殻方式は、経営の効率を高めるために行われることが多いです。親会社は自身で事業を行わず、子会社の支配を事業とする手続きを行います。

抜け殻方式のメリットとしては、現金の調達が不要であることや株式の移動がないことなどが挙げられます。

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まとめ

持株会社を設立することで、経営・事業をスムーズに行えたりグループ会社を買収から守れたりするメリットがあります。一方で、人件費・設備費用などのコストが増えやすい点やグループ内での連携の難易度が上がる点は、注意したいところです。

また、持株会社には複数の形態や種類が存在するため、目的に応じて決める必要があります。持株会社設立を検討中の方は、ぜひレバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社にご相談ください。レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社では、全国から候補企業をご紹介し、成約まで一貫したサポートをご提供いたします。

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