このページのまとめ
- 株主総会は株式を保有する株主が集まって行われる会議のこと
- 株主総会には「定時株主総会」と「臨時株主総会」がある
- 株主総会の決議は「普通決議」「特別決議」「特殊決議」の3種類
- 株主総会決議は合併や買収などのM&Aを行う際にも必要
「株主総会の開き方を知りたい」「どのような内容を決議するのかわからない」と悩んでいる経営者もいるでしょう。株式会社では事業年度の終了後に株主総会を開催することが義務付けられ、法律の規定に基づいて招集しなければなりません。
本記事では、株主総会の目的や決議の種類、決定すべき事項などを解説します。開催に向けた準備・流れについても解説するため、参考にしてください。
目次
株主総会とは
株主総会とは、株式を保有する株主が会社の重要事項を決議する会議のことです。原則として、株式会社の組織・運営・管理その他株式会社に関する一切の事項について決議することができます。
ここでは、株主総会を開催する目的や開催時期などを解説します。
開催する目的
株主総会を開催する目的は、会社の所有者である株主が、会社経営に関する意思決定を行うため、議案を検討・決議することです。会社に関して決定すべき各種事項を、多数決によって決定します。
事業を行う上での重要事項を決定したり、決算や事業の成果について報告したりします。役員の選任や解任も行われるなど、会社の意思決定機関としての役割を果たすことが主な目的です。
開催時期
株主総会の開催時期は、定款の定めに従って決定します。会社法上、定時株主総会の開催時期は毎事業年度の終了後一定の時期と定められていますが、いつまでに開催するかという明確な決まりはありません。事業年度の終了後、3ヶ月以内に開催されるのが一般的です。
日本では3月決算の会社が多く、定時株主総会は6月に開催されることが多いでしょう。
取締役会との違い
会社には株主総会と並び、取締役で構成する取締役会があります。どちらも会社の重要な事項を決めるという点では共通していますが、それぞれ役割が異なります。
取締役会は、会社における日常的な業務について決定する機関ですが、そのうち重大事項は株主総会の承認を得なければなりません。また、株主総会には取締役の選任などの権限があり、取締役会を監視する機能を果たします。
株主総会を開催する必要性・メリット
株主総会の開催は、会社の所有者による経営の監視や情報の収集といったメリットがあります。
ここでは、株主総会の必要性やメリットをみていきましょう。
経営を監視する
株主総会は、会社の所有者である株主が会社経営を監視する役割を果たします。総会では企業の経営状況や経営方針などに関する情報が公表されるため、適正な運営が行われているかをチェックできるためです。
監視により健全な経営が行われることで、株主は安心できます。安定した経営で企業の成長が期待できるため、投資をしている株主にとって大きなメリットになるでしょう。
情報を収集する
株主総会は、株主と経営陣が直接コミュニケーションを取れる場所です。総会で株主は経営方針や業績の説明を聞き、経営状況や財務状況、株主の権利、今後のリスクや対策など、さまざまな質問を行って情報を収集できます。情報をもとに提言を行い、経営への影響力を発揮します。
企業への提言を通して発展や成長を促すことで、さらに安心して投資できる会社にすることができるのもメリットです。
株主総会の種類
株主総会は、「定時株主総会」と「臨時株主総会」の2種類があります。
種類 | 開催の時期 |
定時株主総会 | 毎事業年度の終了後、一定の時期に開催する |
臨時株主総会 | 必要に応じて臨時に開催する |
それぞれ、詳しくみていきましょう。
定時株主総会とは
定時株主総会とは、毎事業年度の終了後、一定の時期に招集することが義務付けられている株主総会です。
事業年度の終了後に行われるため、1年の締めくくりとして、事業報告や事業年度の決算書類の承認、剰余金の配当などを議題とするのが一般的です。それ以外の事項を決議しても問題はなく、会社の財務情報や今後の見通しの説明なども行われます。
臨時株主総会とは
臨時株主総会とは、必要がある場合にいつでも招集できる株主総会です。開催時期に制限はなく、主に会社に関する重要な事項を決定する必要性が生じた場合に開催されます。
招集される理由はさまざまですが、主に次のようなケースで審議が必要になった場合があげられます。
- 役員の選任・解任
- 本店の移転
- 支店の設置
- 資本金の増額
- M&A
定時・臨時のどちらも取り扱いのできる議題に制限はなく、必要に応じて議題を決定できます。
株主総会の決議事項
株主総会では、次の3つの事項を決議します。
- 経営における重要な事項
- 役員の選任・解任、役員報酬
- 株主の利害と密接に関わる事項
ここでは、それぞれの内容を解説します。
経営における重要な事項
経営における重要な事項の決議は、株主総会の最大の任務です。
主に、次のような事項があげられます。
- 定款の変更
- 事業譲渡
- 合併・会社分割・株式交換・株式移転
- 組織変更
これらはいずれも組織や事業の重要な部分を変更する行為であり、企業の経営について根幹となる部分です。そのため、必ず株主総会の決議を経なければなりません。
役員の選任・解任、役員報酬
役員の選任・解任は、すべて株主総会の決議事項とされています。決議する役員は、次のとおりです。
- 取締役
- 会計参与
- 監査役
- 会計監査人
また、会社所有者である株主は役員の雇い主であり、役員報酬が定款に定めがない場合、株主総会で決議することになります。
ただし、取締役・会計参与・監査役がそれぞれ2名以上いる場合は、各役員について報酬を定めずに総額を定めることが可能です。
株主の利害と密接に関わる事項
株主の経済的利益と大きく関わる次の事項は、株主総会の決議事項とされています。
- 資本・準備金の減少
- 剰余金の配当
これらの事項は株主の権利が害されるおそれがあり、事前に株主総会決議を要求して、株主に拒否する機会を与えなければなりません。
なお、譲渡制限株式の譲渡承認も株主総会決議事項ですが、取締役会設置会社の場合、あるいは定款で別段の定めがある場合は取締役会の決議事項とされています。
株主総会の決議方法
株主総会では、1株につき1議決権が与えられています。決議事項は原則として多数決で可決されるため、株式を多く取得している株主ほど会社経営に対する影響力をもつということです。
決議方法は、決議事項の内容や重要性に応じて次の3つに分けられます。
決議方法 | 決議内容の違い |
普通決議 | 株主総会における一般的な方法 |
特別決議 | 定款変更や事業譲渡など、重要性の高い事項を決める方法 |
特殊決議 | 株主にとって特に影響のある重要な事項を決める方法 |
ここでは、決議方法の概要を説明します。
普通決議
一般的な株主総会の決議は、普通決議で行われます。
代表的な決議事項は、次のとおりです。
- 役員の選任・解任
- 役員報酬の決定
- 計算書類の承認
- 配当金の決定
- 議長・検査役の選任
普通決議は議決権をもつ株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その議決権の過半数の賛成を得て可決する方法です。たとえば、行使可能議決権が80万個の場合、合計40万1個の議決権を有する株主が出席することが必要となります。そして、株主総会出席株主がもつ議決権が50万個の場合、合計25万1個以上の議決権を有する株主の賛成があれば決議が可決されるということです。
ただし、定足数は、定款で引き下げたり、排除したりすることができます。役員(取締役・会計参与・監査役)の選任・解任については、定足数を総株主の議決権の1/3未満に引き下げることはできません。
定足数要件の緩和もしくは撤廃は、株主が多い場合に過半数の出席が難しいことから設けられている例外処置です。株主数が少ない会社では、撤廃するメリットはあまりないといってよいでしょう。
特別決議
特別決議は、重要性の高い事項を決定する際に行う方法です。主に、次のような事項を決議する際に必要とされます。
- 定款変更
- 事業譲渡
- 合併その他の組織再編行為
- 資本金の減少
- 譲渡制限株式の買取
- 全部取得条項付種類株式の取得
- 株式の併合
- 募集株式、新株予約権の募集事項の決定(非公開会社のみ)
- 募集株式の第三者割当の場合の有利発行
- 会社の解散
議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席した株主の議決権の2/3以上にあたる多数の賛成が必要です。
定足数は、定款によって議決権の1/3まで緩和できます。
特殊決議
特別決議で取り扱う事項よりもさらに重要な事項を決定する場合、特殊決議を行います。会社や株主にとって重要性が非常に高い事項について、特別決議を上回る決議要件を必要とするものです。
特殊決議では定足数の要件はありませんが、決議要件は厳しく設定されており、決議事項に応じて2種類の決議要件が定められています。
1つめは、「公開会社から非公開会社になるための定款変更」などの決議をする場合です。
可決には、議決権をもつ株主の過半数が出席し、その2/3以上にあたる多数の賛成が必要です。
2つめは、「非公開会社において、株主ごとに異なる権利内容を設ける場合の定款変更」の決議をする場合です。
可決には、総株主の半数以上が出席し、総株主の議決権の総数に対する3/4以上の賛同が必要です。
特殊決議は出席株主の頭数と議決権数の両方が必要になり、大口株主の意向だけでは可決しにくいという特徴があります。
なお、これらの決議のほか、書面決議(みなし決議)という方法で会議を省略することも可能です。株主の全員が書面により提案内容に同意の意思表示をすることで、実際に株主総会を開催せずに、提案を可決する株主総会の決議があったとみなすことが法で認められています。
株主が取締役のみであるなど、容易に全員の同意を得られる場合は招集の手続きを経る必要がなく、迅速に決議を行う方法として活用されています。
株主総会を開催する場所
株主総会を開催する会場は、取締役会が招集事項を決める際に個別に決定します。開催場所・会場に、特別な決まりはありません。 主に貸し会議室やイベントホール、ホテルのイベント会場などで開催されるケースが多く、参加人数や交通アクセスなどを考え、適切な会場を選ぶことが大切です。
毎回同じ場所である必要はありませんが、前年に開催した会場・場所から離れたところで開催する場合は、その場所を決定した理由を招集通知などで明らかにしなければなりません。
ただし、次の場合には、場所の明示は不要です。
- 定款で開催場所が定められている
- その場所で開催することについて、株主総会に出席しない株主全員の同意がある
また、明示する手続きを踏んだ場合でも、株主の参加が難しい場所で開催する場合は、株主総会決議における取消事由になる可能性があります。
バーチャル(オンライン)株主総会とは
株主総会の開催場所は、オンライン開催も可能です。近年は幅広い株主に議決権行使の機会を保障する観点から、バーチャル株主総会が注目されています。
バーチャル株主総会には、いくつかのパターンがあります。
バーチャル株主総会のパターン
バーチャル株主総会は、次の2種類があります。
- オフラインの株主総会の開催と並行して、オンライン参加を認めるハイブリッド型の方法
- 実際の会場を設けず、オンライン参加のみで行う方法
また、オフラインの総会と並行する場合でも、オンラインでの傍聴を認める方式と、オンラインでも株主総会への法律上の「出席」を認める方式の2つに分かれます。
現行法上は、バーチャルオンリーで開催する株主総会は、2021年の「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」の法改正に伴い、一部の上場企業にのみ認められている状況です。
そのため、オンラインを採用する会社でも、そのほとんどが実際に株主総会を開催した上で、オンラインでの参加・出席を認めるという方法がとられています。
バーチャル株主総会のメリットと注意点
バーチャル株主総会には多くのメリットがありますが、注意すべき点もあります。
主なメリットは、次のとおりです。
- 遠方に住んでいる株主も参加しやすい
- 株主の出席が増えることで、議事の透明性が向上する
- 会場費を節約できる
オンラインによる開催は株主の出席を容易にし、多くの株主が参加できることで株主総会の透明性向上につながる点がメリットです。また、会場を用意する手間と会場費のコストを削減できます。
一方で、バーチャル株主総会には次のような注意点があります。
- 運営の手間がかかる
- システム導入にコストがかかる
- 回線トラブルのリスクがある
バーチャル株主総会はシステム構築に手間とコストがかかり、開催当日の株主に対するサポートも必要です。
回線トラブルが発生する可能性もあり、その場合は結果的にバーチャル出席者の参加の機会が奪われることにもなります。
株主総会を開催する流れ
株主総会を開催の流れは、次のとおりです。
- 招集事項の決定
- 招集通知の発送
- 開催の準備・開催
- 議事録の作成と保存
それぞれのプロセスをみていきましょう。
招集事項の決定
株主総会は、取締役会で招集事項を決定します。招集事項は、次のとおりです。
- 日時と場所の決定
- 議案や報告事項などの目的事項
- 株主総会に出席しない株主に書面による議決権行使を認める場合は、その内容
- 株主総会に出席しない株主に電磁的方法(オンライン)による議決権行使を認める場合は、その内容
- その他
これらの内容を決めたら、株主に通知します。
招集通知の発送
所定の事項を決定したあと、株主に対して招集通知を発送します。通知の期間は公開会社・非公開会社で異なります。公開会社は開催日の2週間前までに、非公開会社は原則として1週間前まで、書面投票・電子投票を採用する場合は2週間前までに発送しなければなりません。
通知方法は、原則として書面で行います。ただし、株主の承諾を得た場合、メールなどに代えることは可能です。
開催の準備・開催
株式総会の事前準備を行います。提出する計算書類や事業報告、議事案などをまとめ、株主に提供する参考資料などの準備が必要です。
株主総会当日は、次の流れで実施します。
- 議長の就任・開会宣言
- 出席株主数と議決権数の報告、議事進行に関する説明
- 監査報告
- 事業内容の報告・計算書類説明
- 議案の提出
- 審議方法の確定と審議
- 質疑応答
- 議案の決議
- 閉会宣言
特に、事業報告から決議までの流れは重要です。株主からの質問は、事前に想定質問集の準備も必要になります。
議事録の作成と保存
株主総会の終了後は、取締役が議事録を作成し、株主総会の日から10年間、本店に備え置きます。議事録は会議の概要や議論内容、決定事項などを記録するもので、会議内容の検証や確認のために重要です。
会議中にノートをとって、整理・編集しますが、会議後1~2週間以内の作成が望ましいとされています。長期保存のために、デジタル形式の保存も認められています。
まとめ
株主総会は会社の実質的な所有者である株主が、会社の重要な事項を決定するための意思決定機関です。1年に1回は必ず開催しなければならず、決議事項や決議方法などが決められています。
株主総会の内容を正しく理解し、適切に開催しましょう。
M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を
M&Aのために株主総会決議の開催を検討している方は、レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社のご利用をご検討ください。各領域で実績を積み重ねたコンサルタントが在籍し、相談から成約まで一貫してサポートを行います。
料金体系は、M&Aご成約時に料金が発生する完全成功報酬型です。譲受会社のみ中間金の設定があるものの、M&Aのご成約まで、ご相談も含めて無料でご利用いただけます。「M&Aの成功に向けて株主総会の決議を無事に乗り越えたい」という方は、お気軽にお問い合わせください。