持分法とは?連結子会社や持分法適用会社の概要もわかりやすく解説

2023年11月15日

持分法とは?連結子会社や持分法適用会社の概要もわかりやすく解説

このページのまとめ

  • 持分法とは、グループの業績に影響を及ぼす会社の純資産や損益の一部を連結させること
  • 日本の会計基準で、関連会社と非連結子会社が持分法適用会社に該当する
  • 原則として、議決権保有比率が20%以上50%以下の相手が持分法適用会社
  • 持分法を適用する場合、連結会計で処理する場合と比べてスムーズ
  • 連結財務諸表を読めば、グループ内に持分法適用会社があるかわかる

「子会社に持分法を適用できるの?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。持分適用会社に該当するかを判断する基準のひとつが、議決権の保有比率です。

本コラムでは、持分法適用会社に該当する関連会社と非連結子会社の概要を紹介します。また、混同しがちな持分法適用会社と連結子会社の違いについても、表でわかりやすく解説しています。さらに、持分法適用会社の会計処理方法も紹介するので、参考にしてください。

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持分法とは

持分法とは、連結決算時にグループ全体の業績に影響を与える会社の純資産や損益の一部を連結させることです。

原則として、連結決算ではすべての子会社を連結させますが、持分法適用会社は親会社に帰属する部分のみを連結します。たとえば、X社が持分法適用会社Y社の株式25%を保有している場合、Y社が1,000の利益を上げると250(1,000×25%)が連結決算の対象です。

なお、一社単独ではなく、グループ全体(親会社や国内・海外の子会社、関連会社)で決算することを連結決算と呼びます。

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持分法適用会社とは(日本の会計基準)

日本の会計基準において、持分法適用会社に該当するのは以下の2つです。

  1. 関連会社
  2. 非連結子会社

それぞれの概要や、具体例を詳しく解説します。

1. 関連会社

関連会社とは、経営方針の決定に影響力を持つ会社を指します。

具体的に、他の会社の議決権を20%以上(50%以下)所有していれば、原則として関連会社です。また、議決権15%以上20%未満の場合も、「一定の要件」を満たす場合は関連会社とみなされます。

一定の要件とは、主に以下のとおりです。

  • 社員が対象会社の代表取締役などに就任している
  • 対象会社に重要な融資をしている
  • 対象会社に重要な技術を提供している
  • 対象会社との間に重要な営業上・事業上の取引がある
  • 事業方針の決定において、重要な影響があると推測される事実が存在する

さらに、議決権が15%未満の場合でも、自己の意思と同様の内容の議決権を行使すると認められた特定の者が所有する議決権とあわせて20%以上になれば、関連会社に該当します。

2. 非連結子会社

非連結子会社とは、グループ全体の経営や財務への影響が低い、支配が一時的などの理由で連結決算の対象から除かれた子会社のことです。議決権所有比率が20〜50%の非連結子会社には、持分法が適用されます。

なお子会社とは、発行済み株式の半数以上の株式が保有されているなど、特定の会社に経営を支配されている法人のことです。

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持分法適用会社と連結子会社の違いとは

持分法適用会社と連結子会社の違いを、以下の表にまとめました。

持分法適用会社連結子会社
議決権所有比率原則20%以上50%以下(15%以上で一定の要件満たす場合なども該当)原則50%超(40%超で一定要件を満たす場合も該当)
連結財務諸表への反映方法持分に応じて、持分法適用会社の純資産・損益を反映原則として全勘定科目を全額反映させる

議決権所有比率が50%以下か、50%超かが主な違いです。ただし、一定の要件を満たす場合など例外もあります。

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持分法適用会社のメリット

持分法適用会社として持分法を適用すれば、手間を省きスムーズに会計処理できる点がメリットです。

持分法を適用せずに連結会計で処理する場合、子会社の財務諸表の全勘定科目を合算してから少数株主持分の控除などの修正をしていかなければなりません。それに対し、持分法を適用する場合は、「投資有価証券」と「持分法による投資損益」の2つの勘定科目のみで、処理できます。

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持分法を適用する上で知るべきポイント3つ

自社に持分法を適用するうえで、知るべきポイントは以下の3つです。

  1. ルールに基づいた正しい記載が必要
  2. 日本基準とIFRSで対象が異なる
  3. 一度適用すると自社の判断で終了できない

それぞれ解説します。

1. ルールに基づいた正しい記載が必要

持分法を適用するにあたって、一定のルールに基づき正しく記載しなければなりません。主なルールは、以下のとおりです。

  • 持分法を適用した会社の数や主要な会社名を記載する
  • 持分法を適用しない関連会社や非連結子会社がある場合は理由を記載する

持分法を適用する際の記載ルールについては、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」の第13条第3項に規定されています。

参照元:e-Gov法令検索「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則 第十三条3

2. 日本基準とIFRSで対象が異なる

日本基準とIFRS(国際会計基準)で、持分法の適用対象が異なる点も押さえておきましょう。

日本基準では、議決権株式の保有比率が持分法適用の可否を判断する基準のひとつです。それに対してIFRSでは、実質的な支配力や影響力から適用を判断します。

なお、IFRSとは、国際会計基準審議会が策定する会計基準です。EU域内の国々をはじめとして、近年IFRSを採用しようとする動きが活発化しています。

3. 一度適用すると自社の判断で終了できない

一度持分適用会社になると、自社の都合で簡単に持分法の適用を除外することはできません。関連会社や非連結子会社に該当すれば、重要性がある限り適用が続く点に注意しましょう。

なお、議決権株式の保有比率が下がり対象会社への影響力が低下する場合や、保有比率が増加して連結対象になった場合には、持分法の適用が終了します。

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持分法適用会社の会計処理方法

持分法適用会社で会計処理する具体例として、以下のケースにおける仕訳方法を紹介します。

  1. 持分法適用会社と取引した際の仕訳
  2. 配当を受け取った際の仕訳
  3. 当期利益(損失)が確定した際の仕訳

A社がB社に対して議決権所有比率20%を有している前提で、それぞれの処理方法を確認していきましょう。

1. 持分法適用会社と取引した際の仕訳

持分法適用会社に商品(価格200万円・利益50万円)を掛け販売する場合の仕訳を紹介します。

まず、通常の取引と同様に、売掛金と売上高を記載しましょう。

借方貸方
売掛金2,000,000売上高2,000,000

また、持分法適用会社に対する利益は、持分の分だけ実現していないことになるため、10万円(50万円 × 20%)を取り消す仕訳が必要です。

借方貸方
持分法による投資損益100,000関連会社株式100,000

10万円分を「持分法による投資損益」と「関連会社株式」で仕訳しています。

2. 配当を受け取った際の仕訳

A社がB社から20万円の配当を受け取った際の仕訳を紹介します。

まず、A社個別の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
現金預金200,000受取配当金200,000

また、持分法を適用するにあたって、以下のように仕訳しなければなりません。

借方貸方
受取配当金200,000関連会社株式200,000

なぜなら、B社から受け取った分だけ株式の評価を下げなければならないためです。

3. 当期利益(損失)が確定した際の仕訳

B社の当期純利益が400万円で確定した場合の仕訳方法が、以下のとおりです。

借方貸方
関連会社株式800,000持分法による投資損益800,000

A社は議決権株式の保有比率が20%のため、80万円(400万円 × 20%)分株式の価値が上昇したことになります。なお、「持分法による投資損益」は金融損益が生じたケースと同様に営業損益として計上します。

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M&Aの交渉先が持分法適用会社か確認する方法

連結財務諸表を確認すれば、M&Aの交渉先のグループ内に持分法適用会社があるか判断できます。

連結財務諸表とは、グループをひとつの会社として、貸借対照表や損益計算書を作成したものです。一般的に、連結財務諸表の「注記事項」に持分法適用会社について記載されています。

また、連結財務諸表に記載がない場合は、有価証券報告書の「関係会社の状況」や「注記事項」を確認しましょう。有価証券報告書とは、会社の情報や経営状況を外部に示した資料のことです。

なお、交渉先が非上場会社の場合、直接相手に依頼しない限り連結財務諸表や有価証券報告書の確認は一般的に難しいでしょう。

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まとめ

持分法とは、連結決算時にグループ全体の業績に影響を与える会社の純資産や損益の一部を連結させることです。連結子会社と異なり、持分法適用会社は親会社に帰属する部分のみを決算時に連結します。

持分法適用会社か連結子会社か判断する基準のひとつが、議決権保有比率です。たとえば、子会社以外の他の会社の議決権を20%以上(50%以下)所有していれば、原則として関連会社で持分法が適用されます。

自社のグループ内に現在持分法適用会社がない場合でも、今後M&Aを予定している場合は相手先が該当しないか確認が必要です。M&Aの手続きや、相手先の調査などでわからないことがあれば、専門家へ相談すると良いでしょう。

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