赤字経営の立て直し方とは?融資は受けられる?法人税の扱いも解説

2024年1月23日

赤字経営の立て直し方とは?融資は受けられる?法人税の扱いも解説

このページのまとめ

  • 決算上は赤字でも、手元に資金があり支払い能力があれば経営を継続できる
  • 「営業損失」「経常損失」「当期純損失」「現金収支の赤字」の4種類がある
  • 「赤字=経営難」とは限らず質の良い赤字と悪い赤字がある
  • 法人税の還付や軽減、赤字分の繰越・相殺を理由に赤字経営を選ぶこともある
  • 赤字経営の立て直しにはリストラクチャリングやM&Aなどの施策が有効

「赤字経営のまま、事業を継続しても大丈夫だろうか?」と悩んでいる経営者の方もいるのではないでしょうか。赤字が一時的なものであったり、決算上では赤字でも、資金に余裕があり支払い能力があったりすれば経営を続けられることがほとんどです。

本記事では、「質の良い赤字」の意味、あえて赤字を選ぶ理由や注意点を解説します。赤字経営を立て直す方法や融資を受けられるかどうかもお伝えしますので参考にしてください。

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赤字経営とは

赤字経営とは、損失が出ている状態で経営していることを指します。経営状態の悪化や特別な損失の計上などにより、事業の支出が収入を上回り、儲けが出ていない状態です。

黒字経営との違い

赤字経営と黒字経営の違いは、損失が出ているか利益が出ているかという点です。黒字経営であっても必ずしも事業を継続できるわけではなく、黒字倒産もあり得ます。黒字倒産とは、帳簿上は利益が出ているにもかかわらず、支払いに必要な資金が不足し、倒産してしまうことです。

赤字と黒字の呼び方については、簿記の帳簿に記載する際にマイナスを赤字で、プラスを黒字で記載していたことに由来しているという説が有力です。

赤字経営でも会社が倒産しない理由

赤字経営とは収益が出ていない状態であり、普通に考えると手持ち資金が目減りしていきます。しかし、手持ち資金が潤沢である、あるいは金融機関から融資を受けていて余裕があったりするといった場合は、赤字経営でも事業を継続することが可能です。

また、経営を続けられる要素として、赤字が慢性的か一時的かという点が挙げられます。売上が少なすぎたり、原価や固定経費が高すぎたりしている状態の場合、慢性的な赤字経営に陥っている可能性が高いでしょう。

これに対して、一時的な赤字経営には、自然災害や退職金の支払いによって多額の費用を計上しているといった状態が該当します。

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把握しておきたい4つの赤字の種類

一口に「赤字」と言っても、損益計算書上では以下のように「営業損失」「経常損失」「当期純損失」「現金収支の赤字」の4つの種類があります。

営業損失売上総利益から費用を引いた営業利益がマイナスの状態
経常損失営業利益に営業外利益を加え、営業外費用を差し引いた事業全体の収支がマイナスになっている状態
当期純損失経常損益と特別損益の合計額がマイナスになっている状態
現金収支の赤字損益計算書では黒字なのに運転資金を確保できていない状態

それぞれの赤字の性質は異なるため、まずは自社が赤字を計上した場合はどの分類に該当するのかを把握することが大切です。計上した赤字の性質次第では、すぐに経営が傾いたり、倒産の危機を迎えたりするとは限りません。赤字の詳細を読み解くことは、企業経営において重要なファクターだと言えるでしょう。

営業損失

営業損失とは、売上総利益から費用(売上原価や販売費および一般管理費の合計)を引いた営業利益がマイナスの状態を指します。たとえば、1,000万円の売上に対して2,000万円の費用がかかっていると1,000万円のマイナス収支です。損益計算書で「営業損益」がマイナスとなり、営業損失が出ている状態を意味します。順調に売上を計上していても費用が上回ることで結果的には損失が出ているので、収益体制の見直しや事業の方向転換が必要になります。

経常損失

経常損失とは、営業利益に営業外利益を加え、営業外費用を差し引いた事業全体の収支がマイナスになっている状態を指します。たとえば、営業収支が1,000万円であるのに対し、営業活動以外に発生した費用収支がー2,000万円だとすると、事業収支はー1,000万円となります。損益計算書上で、利益ではなく、損失になった状態です。

経常損失は、為替・株式相場の変動・不動産の価格下落などに起因するケースがあります。本業以外の事業でマイナスを計上しているので、自社の事業整理に努めることが先決です。

当期純損失

当期純損失とは、経常損益と特別損益の合計額がマイナスになっている状態です。特別収益は、企業の経営における業務内容とは直接関係ない特別に発生した収益を指します。特別損失は特別収益とは反対に、損失を計上している状態です。

営業利益・経常利益ともに黒字で、当期純損失が出るのは特別損失が原因だと考えられます。しかし、事業経営とは異なる一時的な赤字と捉えられるため、緊急性のある赤字であるケースはほとんどありません。一方、営業利益・経常利益ともに赤字の場合は倒産リスクが非常に高くなります。

現金収支の赤字

現金収支の赤字とは、損益計算書では黒字なのに運転資金を確保できていない状態を指します。最たる例は、「売上は好調なのに売掛金ばかりが増え、未回収の資金が増幅するケース」です。事業継続においては、売上はもちろん、売掛ではなく計上した資金をきちんと回収することが重要です。運転資金をうまく捻出できず、充填できる資金がなくなれば黒字のまま倒産する恐れがあります。

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必ずしも「赤字=経営難」とは限らない

「赤字は経営難に陥っている証拠」と解釈されている方も多いでしょう。確かに「赤字」と聞くと、マイナス収支の自転車操業のような悪いイメージが先行しがちです。しかし、前述したように赤字にはさまざまな種類があり、赤字計上したからといって企業がすぐに倒産に追い込まれるわけではありません。損益計算書上の赤字には良し悪しがあるため、赤字の質を正しく把握することが大切です。

質の良い赤字とは

質の良い赤字とは、中長期にわたり収益が発生するモデルを形成している状態のマイナス収支を指します。保険会社は質の良い赤字の最たる例です。保険は長期契約の場合、初年度に営業リソースを投下するので販管費がかかりますが、その後のランニングコストはほぼかかりません。そうした保険の収益構造ゆえに、初年度が赤字に見えることは多々あります。

しかし、中長期的に徐々に赤字が黒字転換するので質の悪い赤字ではありません。顧客1人が生涯にわたって生み出す収益「LTV(Life Time Value)」が初期コストを上回っていれば、赤字はもはや計画の範疇であり、倒産に直結する危険性も低いと言えるでしょう。

赤字でも経営を続けるのに支障がないケースも、質の良い赤字に含まれます。損益計算書上は赤字であっても、預貯金が潤沢なケースや、役員退職金や貸倒損失などで一時的に多額の費用を計上しているケースなどが該当します。

質の悪い赤字とは

質の悪い赤字は、質の良い赤字とは反対の概念です。つまり、回収できずに蓄積される赤字を指します。顧客を獲得するためのコストがLTVを上回ると、永久に黒字化することは難しいでしょう。そのまま赤字案件が増え続けると不採算な事業としてみなされます。赤字が蓄積して販管費を投下しづらい状況になると、徐々に販売力が低下し、売上もそれに伴って下がっていくという「負のスパイラル」に突入します。中長期的に見ても黒字転換が難しく、販売力が徐々に低下するジリ貧のような状態が質の悪い赤字の典型例です。

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あえて赤字経営を選ぶ理由・注意点

「質の良い赤字」が存在するだけに、事業計画や経営戦略的にあえて赤字経営を狙うケースも珍しくありません。ただし、戦略的に赤字経営を狙うことはメリットもある一方で、周囲からの見られ方が悪いなどのデメリットも当然あります。下記表は、赤字経営を選ぶ理由と注意点をまとめたものです。

赤字経営を選ぶ理由・法人税の還付がある
・赤字分の繰越・相殺が可能
・法人税を軽減できる
赤字経営の注意点・資金調達が困難になる
・税務調査の対象になる
・倒産リスクが上昇する
・従業員のモチベーション低下を招きやすくなる

ここからは、あえて赤字経営を選ぶ理由と、赤字経営の注意点を紹介します。

あえて赤字経営を選ぶ理由

赤字経営を選ぶ理由には「法人税の還付」「赤字分の繰越・相殺が可能」「法人税の軽減」の3つが挙げられます。法人税は、法人が事業活動を行ううえで得た収益・所得に対してかかる税金です。多くの経営者は、主に税負担を軽減できることに赤字経営の利点があると考えているでしょう。損失を計上している状況を逆手に取り、未来を見据えてあえて赤字経営を選択するのも1つの事業戦略だと言えます。

1.法人税の還付がある

赤字になった期は、前期に支払った法人税から還付を受けられます。大企業とは異なり、中小企業は資金力が充実していないケースも珍しくなく、赤字を補填するだけの経営力がないと判断されていることが理由に挙げられます。ただ、法人税の還付を受けられる下記の条件を満たした法人のみです。

  • 資本金が1億円以下
  • 青色申告書で確定申告をしている

還付される法人税はあくまでも前期までに支払ったものに限り、前期以前に支払っている法人税の還付は受けられません。また、青色申告をしていなければ、たとえ赤字経営だったとしても還付を受けられない点には注意が必要です。特にギリギリ黒字で期を終えるのであれば、赤字経営となって還付金を受け取るほうが長い目で見ると賢い場合もあります。

2.赤字分の繰越・相殺が可能

一般的に赤字決算の場合は、法人税が軽減されます。さらに法人税負担が減るだけでなく、赤字分を翌年以降に繰越・相殺も可能です。仮に繰り越した場合だと税務会計上では「繰越欠損金」として扱われるため、翌年の決算が黒字だったとしても課税所得から控除できます。つまり、法人税を抑えられます。また、2018年4月1日以降に事業を開始した法人であれば最大10年間の赤字繰越が可能です。さらに、黒字が出た場合の相殺も可能なので、課税所得をゼロにもできます。

赤字分の繰越・相殺も法人税の還付と同様にいくつか条件があり、たとえば、資本金が1億円以上の法人だと控除できる金額に制限があります。また、欠損金が出た事業年度に、青色申告書で確定申告をしているかどうかも条件の1つです。

3.法人税を軽減できる

法人税は事業利益が出た場合にのみ支払い義務が生じるので、赤字であれば支払う金額が軽減されます。決算期を迎えると法人税を算出し申告・納付しますが、法人税はあくまでも「事業活動を行ううえで得た収益・所得に対してかかる」ため、赤字で決算期を迎えた法人からは徴収されない仕組みです。

中にはあえて赤字経営をしている法人が存在します。中長期的に収益を生み出すようなモデルだと、1~2年度は赤字決算で終了し法人税の支払いをゼロにして、収益を一気に生み出してから他の法人と同じように税金を納める戦略も珍しくありません。ただ、法人税額を算出する際に必要な法人税率は企業規模や利益・自治体により異なるので、事前の確認が必須です。

赤字経営の注意点

赤字経営には意外なメリットが多くありますが、当然ながら一般のイメージ通りのデメリットも存在するので注意する必要があります。特に「資金調達が困難」「税務調査の対象化」「倒産リスクの上昇」「従業員のモチベーション低下」の4つを意識することが重要です。赤字経営は周囲からの見られ方が厳しくなる傾向にあるので、その点をしっかり意識しましょう。

1.資金調達が困難になる

赤字経営の状態では、銀行の信用格付けが低下するため資金調達が難しくなります。特に中長期的に収益を生み出すモデルだと、初期投資に大きなコストがかかります。銀行からの融資が受けられなくなると運転資金が足りなくなり、想定していた収益を生み出せなくなる割合が高まるでしょう。投資家からの投資も検討・視野に入れている法人は多いものの、赤字経営というだけで選択肢から外されるケースも多くあります。

2.税務調査の対象になる

赤字経営が続くと、税務調査の対象になることがあります。たとえば「本当は黒字なのにわざと赤字にして法人税の支払いを逃れているのでは」など、税務局が疑いをかけるケースもあるのです。当然、赤字経営でも長期的な視点で健全であれば問題ありませんが、税務調査のために多くの時間やコストを割かなければなりません。さらに、経営上問題があると判断されれば追徴金として税金を納める必要があります。

3.倒産リスクが上昇する

赤字経営が続き資金調達が難しくなると、倒産リスクが上昇します。戦略的に赤字経営を採択していたとしても、何らかの要因で想定通りにプロジェクトが進まない恐れもあります。初期は余剰金等で賄えていたとしても、累積赤字となり債務超過により倒産した企業は数多く存在するのも事実です。法人税の還付や繰越・相殺ができる期間こそあるものの、事業継続のためにはきちんと利益を生み出せる体制構築が不可欠であることを念頭に置きましょう。

4.従業員のモチベーション低下を招きやすくなる

従業員のモチベーション低下を招きやすくなることも、赤字経営の注意点です。

あえて赤字経営を選択していることを知った従業員が、経営に対して「赤字を理由にして給与を下げられるのではないか」と、不信感を抱くリスクがあります。実際に経営難を理由とした赤字に対しては、事業の継続性や将来性に関して、不安を覚える従業員が続出するでしょう。

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赤字経営でも資金調達できる理由

「収益は出ていないが、金融機関から融資を受けていて資金には余裕がある」状況は、赤字経営でも経営を続けられるケースの1つです。赤字経営でも資金調達できる場合があるのは、「赤字融資」という概念が、銀行や消費者金融などに存在するためといえるでしょう。

資金調達をすることで経営状態を持ち直す企業もあるため、将来的に返済能力が見込める場合は赤字であっても融資を行うのが赤字融資の考え方です。

赤字経営を立て直す7つの方法

赤字経営をあえて採択している場合は特段問題ないケースもありますが、戦略的赤字ではない場合は事業の再建が必要です。「どのコストをカットするのか」「どういった黒字転換方法を採択するのか」など、自社の状態に適した施策が求められます。

赤字経営の立て直しを目指すうえでの一般的な方法は、主に以下の7つです。

  • 商品やサービスの見直し
  • リストラクチャリング
  • 過剰在庫の処分
  • コストの見直し
  • キャッシュフローの見直し
  • 赤字経営でも使える方法での資金調達
  • M&A

それぞれの方法を解説します。

1.商品やサービスの見直し

そもそも赤字経営とは、事業の支出が収入を上回ってしまっている状態です。赤字経営を立て直すためには、売上をしっかり稼ぐ必要があり、そのためには商品やサービスを見直すことが欠かせません。

商品やサービスの見直しには、たとえばマーケティング戦略の強化や、顧客ニーズに合わせた商品やサービスの見直しといった施策が効果的です。

2.リストラクチャリング

リストラクチャリングとは再構築の意味であり、通称「リストラ」と呼ばれる経営再建のための施策です。「リストラ」と聞くと従業員を解雇するイメージがありますが、それはリストラクチャリングの一部と言えます。広義でのリストラクチャリングは以下の施策が挙げられます。

  • 不採算事業の規模縮小
  • 成長可能性のある事業の見直し
  • 収益見込み事業への経営資源投下

不採算な事業は会社全体の収益性を下げている恐れがあるため、早めに規模を縮小・撤退する必要があります。また、成長可能性・収益見込みのある事業へ経営資源を投下し利益を拡大させていくのもリストラクチャリングの1つです。

3.過剰在庫の処分

過剰在庫の処分も、赤字経営を立て直すために効果的な対策の1つです。赤字経営の場合、在庫を過剰に抱えることは避け、早めに処分することを検討しましょう。利益を生まずに価値が低下していく在庫を抱えていると、無駄な管理コストが発生してしまいます。

また、期末在庫は売上原価の金額に影響を及ぼし、結果的に法人などの所得金額に対する税金が課税されることにも注意しましょう。

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4.コストの見直し

赤字経営に苦しむ企業がもっとも注視すべきなのが、コストの見直しです。無駄なコストをきちんと把握し、原因を究明したうえで、見直しを図れる体制を構築しましょう。そうすれば、必要のないコストを抑えるだけでなく、経営資源を拡充することも可能です。多くの企業でカットできるコストには、下記の4つが挙げられます。

  • 外注費
  • 人件費
  • 広告費
  • 原材料費

たとえば、内製化できるリソースが余っているにもかかわらず外注に頼っている状況であれば、外注費をカットするのも施策の1つです。社内リソースの関係上仕方なく外注しているのであれば問題ないものの、適切なリソース活用に目を向けることが求められます。

コロナ禍の影響もあり、近年はリモートワークを採用する企業が増えました。それに合わせてオフィスを移転すれば賃料を抑えられるケースもあります。消耗品や新聞図書費も出社する従業員の数に合わせて調整すればコストカットにつながるでしょう。しかし、無駄を省くことに執着しすぎることで、本当に必要なコストまで削減の対象にしかねません。まずは現状のコストが適正かどうかを的確にジャッジするためにも、現場で働いている従業員の声をヒアリングし、実態調査をしたうえで判断することが大切です。

5.キャッシュフローの見直し

赤字経営の立て直しのためには、キャッシュフローを見直すことも重要です。キャッシュフローとは、企業が一定期間において受け取る現金と支払う現金の流れを表します。

赤字経営であっても自己資金が豊富にあれば倒産しないものの、赤字の状態が継続すれば自己資金が目減りし、事業の継続は困難になります。事業運営におけるお金の流れを可視化し、改善策を検討することは、赤字経営の立て直しにつながるでしょう。

6.赤字経営でも使える方法での資金調達

資金調達をすれば、赤字経営の企業を立て直せる可能性があります。そのため、赤字経営でも使える方法での資金調達を行うことも、検討の余地があります。赤字経営でも活用できる主な資金調達方法は、以下のとおりです。

  • セーフティネット貸付
  • リースバック
  • ファクタリング
  • ビジネスローン

下記表に、それぞれの概要をまとめました。

概要
セーフティネット貸付日本政策金融公庫による融資制度
リースバック所有する不動産などの資産を売って、同時にそれを借りる金融取引の手法
ファクタリング支払期日前の売掛債権をファクタリング業者に買い取ってもらい、資金調達する方法
ビジネスローン法人や個人事業主が、事業資金として利用できるローン商品

セーフティネット貸付制度は、日本政策金融公庫が行う融資制度で、正式名称は「経営環境変化対応資金」です。社会的・経済的環境の変化などの外的要因によって、売上が一時的に減少している中小企業を支援することを目的としています。融資限度額は4,800万円で、返済期間は運転資金の場合は8年以内、設備資金の場合は15年以内です。利率は金融情勢によって変動しますが、2023年12月1日現在では2.1%〜3.3%です。

リースバックとは、不動産や設備、車両などの売却先とリース契約を結び、資産を売却すると同時にそれらを借りることで資金調達を行う制度を指します。支払期日前の売掛債権がある場合は、ファクタリングもおすすめです。支払期日前の売掛債権をファクタリング業者に買い取ってもらうことで、資金化ができます。

また、ビジネスローンの中には、決算書不要で融資を受けられるものもあります。ただし、基本的には、最初の決算期を迎えていない企業を想定しているローンが多いため、創業期で赤字の場合に検討の余地があるでしょう。

参照元:日本政策金融公庫「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付制度)」

7.M&A

M&A(Mergers and Acquisitionsとは、企業の合併買収を指します。経営におけるいわゆる「選択と集中」であり、成長性や収益性のあるコア事業だけを会社に残し、ノンコア事業を他社へ売却する手法です。ノンコア事業へ割くリソースをコア事業に充填し、成長スピードを向上させることが主目的となります。また、M&Aにより事業を売却できれば多額の事業譲渡益が得られるため、コア事業へ経営資源として投下できるようにもなります。
しかしながら、ノンコア事業を手放してしまうのは惜しいと感じる方も多いかもしれません。黒字だったのにもかかわらずコア事業に専念するためにノンコア事業を売却するのはよくある話ですが、コア事業に専念することには下記のメリットがあります。

  • 顧客ニーズの発掘につながる
  • 新しいアプローチを見つけられる
  • 経営資源投下により市場を確保できる

多くの事業を同時に進めることで多角的な経営を目指せますが、リソースが分配されることで成長スピードは鈍化してしまいがちです。特にトレンドの移り変わりが激しい業界においては、時に参入・撤退における経営者の意思決定が業績に大きなインパクトを与えることもあるでしょう。コア事業に専念し一気に収益化を図ることが、現代で生き残るために必要な経営手法の1つと言えます。

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赤字経営の企業の事例

ここからは、赤字経営の企業の事例をご紹介しましょう。

Netflix

動画ストリーミングの配信サービスで知られるNetflix合同会社(以下、Netflix)のビジネスモデルは、高い収益性を誇ります。しかし、キャッシュフロー上はマイナスであることが多いことが特徴です。理由としては、オリジナルコンテンツの制作とコンテンツのライセンシングにコストを費やしているためです。特にオリジナルコンテンツの制作については、持続的に顧客を獲得・維持することを目的に、大規模な投資を行ってきました。

なお、Netflixの2023年第3四半期の売上は前年同期比7.8%増、前四半期比4.3%増の85億4000万ドル(約1兆2795億円)を記録しています。営業利益率22.4%で、売上・利益ともに予想を上回りました。

Uber 

Uber Technologies Inc(以下、Uber)は、本社をアメリカに置き、自動車の配車や食事デリバリーシステムを提供している会社です。日本でも知名度の高いUberですが、利益は安定していません。2009年の創業以降赤字計上が続き、その理由としては事業の拡大による支出の増加が挙げられます。

ただし、2023年第2四半期決算で初めて黒字化したことを発表しました。コロナ後で配車の需要が増えたことや、フードデリバリーの成功が黒字の大きな助けになったと考えられます。

Amazon

eコマースにおける世界的なリーディングカンパニーであるAmazon.com, Inc.(以下、Amazon)は、 新事業や既存事業の成長に資金を先行投資して赤字経営を行ってきた代表例です。創業初期は7期連続で赤字であり、その後2000年代前半も、赤字もしくは利益が出たとしてもごくわずかという時期が続きました。

Amazonは創業以降、システムや人材、広告費などに資金を投資してきました。 そのため、赤字となり借り入れが増える一方、それに比例して売上も指数関数的に伸びてきています。ただし、最終利益は赤字でしたが、実は営業利益は黒字であったことがポイントです。

Amazonの2023年第3四半期の売上は、前年同期比13%増の1431億ドルを記録、アナリスト予想である1414億1000万ドルを上回りました。また、純利益は前年同期比3倍以上の99億ドルで、1株あたり利益の0.94ドルはアナリスト予想の0.59ドルを大きく超えています。

RIZAP

RIZAPグループ株式会社(以下、RIZAP)は、スポーツジムの運営で知られている会社です。RIZAPは、M&Aを活用して急速に成長した結果、2018年に70億円の赤字に転落しています。赤字転落の原因はM&Aで買収した業績不振の会社の立て直しがうまくいかず、その影響によるものと考えられます。

2023年4~9月期の連結決算でも、低価格ジム「chocoZAP(チョコザップ)」事業の拡大のための投資が重荷となり、最終損益が75億円の赤字、営業損益が57億円の赤字でした。

東芝

日本の総合電機メーカーである株式会社東芝(以下、東芝)は、2017年には9,656億円の赤字決算となりました。2015年に利益を水増しする不正会計が発覚してダメージを受けたことに加え、アメリカの原発を買収したM&Aも失敗に終わったことが影響しています。そして、2023年9月には、非上場化を目指す投資家グループが同社株式の大半を買い付け、ついに上場廃止が決定しました。

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まとめ

赤字経営でも手持ち資金が潤沢であったり、金融機関から融資を受けていて余裕があったりするといった場合は、事業を継続することが可能です。また、一時的な赤字であれば、経営を続けられる可能性は高いでしょう。

なお、赤字経営と一言でいっても、損益計算書上では「営業損失」「経常損失」「当期純損失」「現金収支の赤字」の4つの種類があることを押さえておきましょう。

事業計画や経営戦略的にあえて赤字経営を狙うケースも珍しくありません。赤字経営を選ぶ理由としては、「法人税の還付がある」「法人税を軽減できる」「赤字分の繰越・相殺が可能」といったことが挙げられます。しかし同時に、資金調達が困難になったり、税務調査の対象になったりするリスクがあります。

赤字経営から立て直しを図る方法としては、「商品やサービスの見直し」「リストラクチャリング」「過剰在庫の処分」「キャッシュフローの見直し」「資金調達」「M&A」などが効果的です。特にM&Aによる事業継承は経営再建の有効な選択肢となるため、ぜひご検討ください。

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