このページのまとめ
- 事業譲渡や株式譲渡などのスキームを使って、個人でも事業や会社を買える
- ビジネスをすぐに始められることやリスクを抑えられることなどが事業を買うメリット
- 簿外債務や法務・税務リスクを内包する可能性があることは、事業を買う際のデメリット
- 規模や業種によって、数百万円で事業や会社を買える
- 事業や会社を買う際は、予算を定めておくことや専門家に相談することなどがポイント
M&Aに関心を持ち、「個人でも事業を買うことができる?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。事業譲渡や株式譲渡などのスキームで、個人でも事業を買うことは可能です。
本コラムでは、個人が事業や会社を買う際の流れを紹介します。個人が事業を買うことのメリットとデメリットも比較しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
事業・会社を買うことはM&Aのひとつ
そもそも、事業や会社を買うことは、M&Aのひとつといえます。ここから、M&Aの概要や日本のM&Aの現状を確認していきましょう。
M&Aとは
M&Aとは、「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略で、主に会社の売買のことです。複数の会社がひとつになる「合併」や、ある会社が他の会社を買う(買収)ことを指します。
M&Aの種類は、以下のとおりです。
- 吸収合併
- 新設合併
- 株式譲渡
- 新株引受
- 株式交換
- 一部譲渡(事業譲渡)
- 全部譲渡(事業譲渡)
- 吸収分割
- 新設分割
それぞれの違いを表にまとめました。
M&Aの種類 | 特徴 |
吸収合併 | 合併で消滅する会社の権利・義務を存続する会社が引き継ぐ |
新設合併 | 合併で消滅する会社の権利・義務を新たに設立する会社が引き継ぐ |
株式譲渡 | 売り手の株主から発行済株式を取得することで、買い手が経営権を取得する |
新株引受 | 買い手が代金を支払うことと引き換えに売り手が発行した新株を引き受ける(例:第三者割当増資) |
株式交換 | 買い手が売り手の株主から株式を取得することと引き換えに、自社の株式を相手に割り当てる |
事業譲渡 (一部譲渡・事業譲渡) | 売り手が営む事業の一部もしくは全部を買い手に譲り渡す |
吸収分割 | 売り手を複数の法人格に分割し、既存の企業に引き継ぐ |
新設分割 | 売り手を複数の法人格に分割し、新たに設立する企業に引き継ぐ |
吸収合併・新設合併は「合併」、株式譲渡・新株引受・株式交換・事業譲渡は「買収」、新設分割・吸収分割は「分割」に分類できます。「分割」とは、会社の事業を切り離して他の会社に移転する手法です。
なお、本記事では、「買収」を中心に解説します。
日本のM&Aの現状
近年、日本ではとくに中小企業においてM&Aが増加傾向にあります。
年度 | 中小M&A実施件数 (事業承継・引き継ぎ支援センター) | 前年比 |
2013 | 33 | ー |
2014 | 102 | +69 |
2015 | 209 | +107 |
2016 | 430 | +221 |
2017 | 687 | +257 |
2018 | 923 | +236 |
2019 | 1,176 | +253 |
2020 | 1,379 | +203 |
中小企業庁の「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ」によると、事業承継・引き継ぎ支援センターにおける中小M&A実施件数は、2020年度に1,379件まで増加しています(2013年度は33件)。
M&Aの主な目的のひとつが、事業承継です。
年度 | 後継者不在率(%) | 前年比 |
2016 | 66.1 | ー |
2017 | 66.5 | +0.4 |
2018 | 66.4 | -0.1 |
2019 | 65.2 | -1.2 |
2020 | 65.1 | -0.1 |
2021 | 61.5 | -3.6 |
2022 | 57.2 | -4.3 |
2023 | 53.9 | -3.3 |
2017年度をピークに下降傾向にはありますが、依然として後継者が不在の企業の割合は53.9%にのぼります(帝国データバンクの「全国「後継者不在率」動向調査(2023年)」より)。
また、個人によるM&Aが占める割合が大きい点もポイントです。日本政策金融公庫の「事業承継マッチング支援」によると、スモールM&A(主に小規模事業者に対するM&Aのこと)向け融資のうち、約66%(*)は「個人企業」へのものでした。
*2019年度~2022年度の事業承継・集約・活性化支援資金の融資件数(国民生活事業)のうち、第三者承継にかかる融資1,685件を抽出して分析したもの
参照元:中小企業庁「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ p.6」
参照元:帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2023年)」
参照元:日本政策金融公庫「事業承継マッチング支援」
個人でも事業・会社を買うスキームと相場
法人だけでなく、個人も事業や会社を買えます。ここから、個人が事業・会社を買う際のスキームと、相場について紹介します。
個人が事業・会社を買う際のスキーム
個人が事業を買う際は事業譲渡、会社を買う際は株式譲渡などのスキームが用いられます。
事業譲渡とは、会社が営んでいる事業の全部もしくは一部を他に譲渡することです。譲渡対象には、建物や機械などの有形資産だけでなく、ブランドや契約などの無形資産、債務なども含まれます。
事業譲渡の実施には、売り手と買い手で事業譲渡契約の締結が必要です。また、売り手は事業譲渡にあたって株主総会決議による承認を得なければなりません(会社法167条)。
株式譲渡とは、M&A対象の会社の株主が、所有する株式を買い手に売却することです。事業譲渡と異なり、株式譲渡では会社の経営権が丸ごと買い手に移転します。
買い手が株式を取得する主な方法は、公開買付(TOB)・市場買付・相対取引です。中小企業のM&Aでは、株主との直接交渉により取引する相対取引で実施されます。
参照元:e-Gov法令検索「会社法 第四百六十七条」
個人が事業・会社を買う際の相場
個人が買う際の相場は、事業・会社規模、業種などによってさまざまです。具体的な価格は、帳簿に記載されている数字などを参考に、コストアプローチ・マーケットアプローチ・インカムアプローチといった手法を用いて双方の交渉で決めます。
個人のM&Aでは、売買金額が1億円以下のスモールM&Aが中心です。小規模な案件であれば、数百万円単位で購入できるケースもあるでしょう。
ただし、安い価格で購入できる会社はさまざまな課題を抱えている可能性があります。価格だけで安易に判断しないようにしましょう。
個人で事業・会社を買うことが注目を集める理由
M&Aのマッチングサイトが充実したことが、個人で事業や会社を買うことに注目を集めるようになった理由として挙げられます。
M&Aマッチングサイトとは、インターネットを通じてM&Aの売り手と買い手を引き合わせるシステムのことです。パソコンやスマートフォンを使って条件を入力すれば、手軽に売り手の会社を検索できるため、個人でもM&Aを実施しやすくなりました。
また、働き方に対する意識が変化しつつあることも、個人で事業や会社を買うことに注目が集まる理由です。働き方改革に伴い、企業で副業解禁の動きが活発化しています。会社員が事業や会社を買い、副業の一環として経営に挑戦するケースもあるでしょう。
個人で事業・会社を買うメリット
個人で事業や会社を買うメリットは、主に以下のとおりです。
- ビジネスをすぐに始められる
- 売却することで利益を狙うこともできる
- リスクを最小に抑えられる
それぞれ解説します。
ビジネスをすぐに始められる
個人で事業や会社を買えば、すぐにビジネスを始められる点がメリットです。
一般的に、株式会社を設立してビジネスを始めるには、定款を作成して認証を受ける、登記申請書類を法務局に提出する、従業員を雇うなどさまざまな手間やコストがかかります。また、ビジネスを開始してからも、軌道に乗せるためにリピーターを確保したり、競合企業の動向をうかがいつつ有効なマーケティング施策を打ち出したりしなければなりません。
すでに軌道に乗っている事業や会社を買って従業員や設備などをそのまま引き継げば、手間やコストを抑えられます。今まで携わったことがない業界でも、ノウハウを取得できるため、スムーズにビジネスを始めやすいです。
売却することで利益を狙うこともできる
事業や会社を売却することで、利益を狙える点もメリットです。買った事業や会社が順調に成長していけば、将来事業や株式を買ったときよりも高値で売却できる可能性があります。自分の経営手腕が将来の利益にもつながるため、モチベーションも高まるでしょう。
ただし、売却して多額の資金を得るためには、事業・会社の選定段階で成長性の期待できるものを選ばなければなりません。また、M&A後に経営判断を誤ると、かえって損失を発生させる可能性もあります。
リスクを最小に抑えられる
リスクを最小に抑えられる点も、個人で事業や会社を買うメリットです。
とくに今まで経営に携わったことがない場合、新たに始めてもうまくいかない可能性があります。経営の経験があっても、新規事業でノウハウがなければ今までと同様にうまくいくとは限りません。
すでに軌道に乗っている事業を買えば、成功できるか不明確な事業を新たに立ち上げるよりも、失敗する可能性が低いため、リスクを抑えられるでしょう。取引先なども引き継ぐため、ビジネス開始後に顧客を獲得できない事態を避けられます。また、従業員をあらかじめ確保することで、人手不足の不安も軽減できるでしょう。
個人で事業・会社を買う際のデメリット
個人で事業や会社を買うことには、デメリットもあります。主なデメリットは、以下のとおりです。
- 簿外債務がある可能性がある
- 法務・税務リスクがある
- 相手側の従業員・取引先が好意的でない可能性がある
- 利益が出るとは限らない
- 自由に事業を展開できるとは限らない
各デメリットを解説します。
簿外債務がある可能性がある
引き継ぐ事業や会社に、簿外債務がある可能性がある点がデメリットです。
簿外債務とは、賞与引当金や退職給付引当金のように、貸借対照表上に記載がない債務を指します。交渉段階で簿外債務を引き継いでいることを把握せずにM&Aを実施してしまうと、当初見込んでいた以上のコストがかかるでしょう。
賞与引当金・退職給付引当金だけでなく、売り手のミスで買掛金の計上漏れが発生していることもあります。また、売り手が交渉を有利に進めるために、意図的に虚偽の情報を提示していることも稀にあるでしょう。
簿外債務を引き継いだり、虚偽の情報に惑わされたりすることを防ぐためには、デューデリジェンスが欠かせません。デューデリジェンスとは、M&Aの対象となる会社の価値やリスクなどを専門家が分析することです。
また、表明保証を明記することも回避策として挙げられます。表明保証とは、M&A時に契約の内容について一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、保証することを指します。
法務・税務リスクがある
事業や会社を買うことに法務リスク・税務リスクなどがある点も、デメリットとして挙げられます。
法務リスクとは、M&A対象の事業・会社に関する法務全般のリスクです。たとえば、買収してから、会社が訴えられる可能性、必要な許認可が実は取れていないことが判明する可能性などが挙げられます。
税務リスクとは、M&A対象の会社側の主張や解釈が税務調査で認められないリスクです。M&A実施後に、税務局との間でトラブルに発展する可能性などが挙げられます。
また、業績がよく見える会社でも、脱税している可能性がある点に注意が必要です。過去に脱税行為をしている会社を買ってしまうと、のちに法的問題が生じます。
簿外債務と同様に、法務リスク・税務リスクを軽減するためにはデューデリジェンスが欠かせません。
相手側の従業員・取引先が好意的でない可能性がある
対象会社の従業員や取引先が好意的ではない可能性がある点も、デメリットです。
前経営者に思い入れがある場合、買い手に対して悪い印象を抱いている場合などに、M&A対象の会社の従業員が退職することがあります。その結果、優秀な従業員が抜けて業務効率や業績が悪化したり、大量に従業員が抜けて人手不足に陥ったりすることがあるでしょう。
また、M&Aの方法によっては、既存取引先との契約を新たに結び直さなければなりません。取引先に悪い印象を持たれていると、継続取引を締結できず、当初見込んでいたような売上を出せない可能性があります。
そのため、優秀な従業員が揃っていて、優良取引先も多い会社でも、M&A後に状況が変わる可能性を考慮してM&Aを決断しなければなりません。
利益が出るとは限らない
M&Aを決断した段階で見込んでいた利益を出せるとは限らない点も、デメリットです。
買収を判断する際の見込みが甘い場合、経営判断を誤った場合、想定外のことが発生した場合などに、思うような利益を出せない可能性があります。買収後に利益を出せない、赤字を出すなどを防ぐためには、あらかじめ対象会社の置かれている環境を細かく分析することが必要です。
自由に事業を展開できるとは限らない
M&Aで自分が経営者になっても、買収前に思い描いていたように事業を展開できないことがある点もデメリットです。
事業や会社を買えば、いちから自分で立ち上げる場合と比べてスムーズにビジネスを進められます。しかし、その分すでにある事業や会社のリソースにしたがって経営しなければならないため、いきなり抜本的な改革は難しいでしょう。
従業員の雇用も、自由に事業を展開できない理由に関連します。なぜなら、M&A後に自分のやりたい経営を進めて方針を大幅に転換すると、従業員の離職につながりかねないためです。
個人で会社を買うためのポイント
個人で会社を買う際のポイントは、主に以下のとおりです。
- 予算や狙う業種を決めておく
- 相手先のことを十分に理解した上で買収する
- 専門家に相談する
それぞれ詳しく解説します。
予算や狙う業種を決めておく
個人で会社を買うにあたって、事前に予算を決めておくことがポイントです。買収額以外にも、各種手数料などのコストがかかります。
また、狙う業種を定めておくことも大切です。自分の経験、やりたいこと、将来性などを考慮して買収する会社の業種を決めましょう。
予算や業種を決めておくことで、候補先をある程度絞れます。
相手先のことを十分に理解した上で買収する
対象先を十分に理解した上で買収することも大切です。会社のことを理解せずに経営を進めると、従業員や取引先から反発を受ける可能性があります。
数字やデータなどを見ただけでは、会社のことを理解したことにはなりません。そこで、ビジネスの現場を訪れたり、従業員が実際に働いている様子を見学したりするとよいでしょう。
M&Aの前に自分が実際にそこで勤めるケースもあります。従業員からやり方を教えてもらったり、現場で実際に社風を感じたりすることで、対象会社の魅力や抱える課題にも気づけるでしょう。また、知らない経営者が突然現れるよりも、一緒に働いた仲間が経営者になる方が従業員側も受け入れやすくなります。
専門家に相談する
専門家に相談することも、個人で事業や会社を買う際のポイントです。
とくに今まで経営に深く関与したことがない場合、どのように案件を探せばよいかわからないでしょう。また、M&Aの手続きには専門的な知識を必要とするため、ビジネスの経験がある方でも専門家でなければわからない部分があります。
事業や会社を買う際の主な専門家は、弁護士・公認会計士・税理士や、M&A仲介会社などです。M&A仲介会社に相談すれば、M&Aの候補先を選定してもらえるだけでなく、手続きのサポートなども受けられます。
個人が買収しやすい会社とは
資金力を考慮すると、数百万円で買える事業や会社なら買収しやすいでしょう。また、以下が買収しやすい主な業種として挙げられます。
- Webサービス
- 飲食業
- 小規模の塾
ECサイト(モノやサービスを販売するサイト)を始めとするWebサービスは、店舗が不要なため参入しやすいです。また、飲食業や塾は、設備やスタッフを引き継ぐことでスムーズに経営を始められます。
なお、経営者の経験や取り巻く環境によって、他の事業の方が買収しやすいこともあるため、注意が必要です。
個人が事業・会社を買う方法・流れ
個人が事業や会社を買う際の流れ(方法)は、以下のとおりです。
- 候補を探す
- 秘密保持契約を締結する
- 売買条件を交渉する
- 基本合意書を締結する
- デューデリジェンスを実施する
- 最終契約書を締結する
- クロージングし買収後の作業を進める
各手順について詳しく解説します。
1. 候補を探す
予算や希望する業種などを絞った上で、候補先を探します。自分だけで条件に見合う事業・会社を探すことは難しいため、M&Aマッチングサイトを利用したり、M&A仲介会社に相談したりするとよいでしょう。
M&A仲介会社を選ぶ際は、実績や得意分野、かかる費用などをチェックすることが大切です。仲介会社によって、着手金がかかるケースもあれば、中間金と成功報酬のみで対応してもらえることもあります。
2. 秘密保持契約を締結する
候補先が見つかったら、相手と秘密保持契約を締結します。
秘密保持契約(NDA)とは、自分の秘密情報を相手に開示する際に、対象の情報の秘密を保持してもらうために締結する契約のことです。情報の漏洩や不正利用を防ぐことが、秘密保持契約締結の主な目的として挙げられます。
秘密保持契約を締結する際は、秘密情報の定義を明確にすること、有効期間や目的を適切に設定することなどが重要です。
3. 売買条件を交渉する
売買条件の交渉にあたって、基礎情報の交換や企業概要書の開示、意向表明書の提示などが実施されます。
意向表明書とは、買い手が売り手に対して事業の譲受や会社の買収の意思を示すための書類を指します。必須ではありませんが、スムーズな交渉を進めるために提出することが一般的です。
M&Aの売買条件の交渉は、基本的にM&A仲介会社が代行します。また、並行して進められるトップ会談も大切なステップです。面談で気づいた代表者の印象や、聞き取りした社風などがM&Aの可否を左右することもあります。
4. 基本合意書を締結する
売買条件の交渉やトップ会談の結果、双方がM&Aに前向きであれば、基本合意書を締結します。基本合意書とは、買収価格や買収条件といったM&Aの基本的な内容について双方で合意した際に締結する書類です。
特段の記載がない限り、基本的に基本合意書に法的拘束力はありません。しかし、基本合意書を締結しておけば、双方でその後の交渉を進める際の基準にできるでしょう。
なお、事業・会社を買う側は、基本合意書に「独占交渉権」に関する条項を設けることがポイントです。独占交渉権とは、売り手側に自分以外の相手とのM&A交渉を禁じることを指します。
5. デューデリジェンスを実施する
基本合意書の締結後に、買い手が売り手に対してデューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスの種類は、主に以下のとおりです。
- 財務デューデリジェンス(簿外債務や業績などを確認)
- 法務デューデリジェンス(訴えられる可能性や取引先との契約内容などを確認)
- 税務デューデリジェンス(適切な納税をしているか、税務調査の指摘事項があるかなどを確認)
- ビジネスデューデリジェンス(対象の会社が置かれている経営環境やM&Aによるシナジー効果などを確認)
- 人事デューデリジェンス(人員の状況や人件費などを確認)
専門家に依頼するため、デューデリジェンスにはコストがかかります。しかし、各種リスクを軽減するためにも大切な作業です。
6. 最終契約書を締結する
デューデリジェンスの結果を踏まえて再度交渉を進め、合意すれば最終契約書を締結します。
最終契約書とは、双方の合意事項を網羅して書面にまとめたものです。法的拘束力を持つ点で、基本合意書とは異なります。
なお、締結する最終契約書の種類は、スキームによってさまざまです。たとえば、事業を買う場合は事業譲渡契約書、株式譲受により会社を買う場合は株式譲渡契約書を締結します。
7. クロージングし買収後の作業を進める
最終契約書を締結したら、クロージングに入ります。
クロージングとは、最終契約書に基づき、M&Aを実施することです。資産や株式を譲り受ける、対価を支払うなどの作業がクロージングの具体例として挙げられます。
クロージング後も、各種契約の締結や定款・規定の変更、人事配置の変更といったさまざまな作業が必要です。また、自分が買った会社の役員に就任したり、役員を変更したりする場合は役員変更の登記を申請しなければなりません。
まとめ
M&Aマッチングサイトが充実したことや、働き方改革が進むことで、個人が事業・会社を買うことが注目されるようになりました。
事業や会社を買うことで、ビジネスをすぐに始められる点や、リスクを最小に抑えられる点などがメリットです。ただし、簿外債務や法務リスク・財務リスクを内包することがある点、従業員や取引先が買収に対して好意的でない可能性がある点に注意しなければなりません。
事業や会社を買う際は、あらかじめ予算や業種を定めておくこと、相手先のことを十分に理解することなどが必要です。また、専門的な手続きが必要なため、M&A仲介会社などの専門家へ相談しましょう。
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、M&A全般をサポートする仲介会社です。約30,000の独自の顧客データベースで候補先を選定するため、個人で事業を買う場合も適切な候補先を見つけられるでしょう。
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